ベトナムのサプリメント市場動向

市場概要

ベトナムのサプリメント(健康食品)市場は近年著しく拡大しており、経済成長と生活水準の向上を背景に需要が急増しています​。2022年の市場規模は約60億米ドル(約9,000億円)に達し、2030年まで年平均18%前後の高い成長率が続くと予測されています​。これは東南アジアでもトップクラスの成長速度であり、市場拡大が今後も期待されています。また、新型コロナウイルス禍を経て健康志向が一層高まり、免疫力向上を目的としたサプリメントへの関心も急上昇しました​。このように、堅調な経済背景と国民の健康意識の高まりが相まって、市場規模は毎年二桁成長を続けています。

成長要因

ベトナムのサプリメント市場を牽引する主な成長要因には、次のようなものがあります​:

  • 経済成長と所得向上: 年平均6-7%前後という高いGDP成長率の下で中間層が拡大し、可処分所得が増加しています。収入増に伴い、健康増進のための支出に余裕が生まれ、サプリメント購入に回す消費者が増えました。
  • 健康意識の高まり: 都市部を中心に生活習慣病予防や美容・体調管理への関心が強まっています。特に若年層で栄養補助食品や健康飲料の定期的な摂取が一般化しつつあり、家族の健康管理への投資意欲も向上しています。新型コロナの影響で免疫力維持への意識も高く、ビタミン類などを習慣的に摂る層が拡大しました。
  • 人口動態の変化: ベトナムは「人口黄金期」と呼ばれる生産年齢人口の多い時期にありますが、高齢化も徐々に進行しています。シニア層の増加に伴い、健康寿命を延ばす目的でのサプリメント利用(例: 関節ケア、認知機能サポートなど)ニーズが増大しています。若年層から高齢者まで各世代で目的に合った商品の需要が育っています。
  • 都市化とライフスタイルの変化: 都市への人口集中と食生活の欧米化により、野菜不足や運動不足など健康面の課題が認識され始めました。これに対処するためのビタミン剤や栄養補助食品への需要が伸びています。また都市部では美容やフィットネス志向も強く、プロテインやダイエット系サプリの市場も拡大しています。
  • 流通網の発達: 国内の小売流通が近代化し、全国チェーンのドラッグストアやスーパーマーケットが増加したこと、さらにECサイトの普及により、消費者がサプリメントを入手しやすくなりました。これら新たな販売チャネルの整備が、市場全体の底上げに貢献しています。

消費者トレンド

ベトナムの消費者の嗜好を見てみると、特定のカテゴリーのサプリメントに人気が集中しています。特に以下のような種類の商品が支持を集めています​:

  • 美容系サプリメント: 肌の健康や髪質改善、美白など美容目的のサプリが大きな市場を占めています。コラーゲンドリンクやヒアルロン酸配合サプリなどは若い女性を中心に人気で、肌の弾力改善やアンチエイジングを期待して継続摂取するケースが増えています。実際、「スキンケア」「ヘアケア」といったキーワードは製品広告でも頻出で、美容意識の高さが反映されています​。
  • ダイエット系サプリメント: 体重管理や脂肪燃焼を目的としたサプリも需要が伸びています。都市部の若年層を中心にスリムな体型志向が強く、食事代替シェイクや脂肪燃焼サプリ、デトックス茶などの市場が拡大傾向です。米系のHerbalife(ハーバライフ)に代表されるダイエットシェイクや、国内外のハーブ由来ダイエット製品が広く浸透しています。
  • ビタミン・ミネラル系: ビタミンCやマルチビタミン、カルシウム、鉄分など基本的な栄養素補給のサプリは幅広い年齢層で常用されています。食事で不足しがちな栄養素を補う目的での利用が一般的で、特に疲労回復や免疫力維持を謳った総合ビタミン剤の売れ行きが好調です。妊産婦向けの葉酸・鉄分サプリ、高齢者向けのカルシウム・ビタミンDなど、特定層向けの商品も伸びています。
  • プロバイオティクス(乳酸菌など): 腸内環境を整え消化を助けるプロバイオティクスや酵素系のサプリも注目されています。ヨーグルト由来の乳酸菌ドリンクやサプリが「お腹の調子を整える」「免疫を高める」などの効能で人気を博し、胃腸の健康や美容との関連で需要が高まっています​。特に抗生物質の使用や食生活の変化で腸内フローラを気にする人が増え、乳酸菌や食物繊維サプリの市場が形成されています。
  • その他の注目領域: 上記以外にも、関節・骨の健康維持(グルコサミン、コンドロイチンなど)や認知機能サポート(DHA・EPA、イチョウ葉エキスなど)、心臓血圧ケア(オメガ3、コエンザイムQ10等)といった目的別サプリも一定の市場があります​。またスポーツ愛好家向けのプロテインやBCAAといったフィットネスサプリも都市部を中心に浸透しつつあります。実際「プロテイン」は製品説明で頻出キーワードとなっており​、健康志向と相まって運動習慣のある層に支持されています。

総じて、美容全般健康維持全般が二大ニーズであり、その中で細分化されたカテゴリごとに専門サプリメントが市場を牽引しています​。消費者は自分の目的(美しくなりたい、痩せたい、元気でいたい、など)に合致した商品を選ぶ傾向が強く、各メーカーもそれぞれのターゲットニーズに特化した商品開発・マーケティングを展開しています。

主要プレイヤー

現在、この成長市場には多くの国内外企業が参入しており、競争が激化しています​。主なプレイヤーの特徴と戦略を概観すると以下のとおりです。

  • 国内企業: ベトナム系企業としては、大手製薬会社や食品メーカーが健康食品分野に参入しています。例えば、医薬品大手のTraphacoやDHGファーマ(ハウザン製薬)は伝統生薬を活かしたサプリやビタミン剤を展開し、市場シェア拡大を狙っています。また中小の専門サプリメント企業も乱立しており、国内の機能性食品メーカーの数はここ数年で大幅に増加しました​。彼らはローカルハーブ(ニンニク、ウコン、高麗人参のベトナム品種など)を活用した商品や、価格競争力のある一般栄養補助食品で存在感を示しています。地場企業は価格面で優位性があり、地方の伝統小売チャネルにも浸透しているため、一部では国外製品に対する競争力を発揮しています。
  • 海外企業(外資系): 外資勢では、米国系のサプリメント大手が早くから進出しており、市場の一角を占めています。例えばAmwayHerbalifeといった米国マルチ商法(直販)系企業は、代理店ネットワークを通じてプロテインやダイエットシェイク、ビタミンサプリを広域に販売しています。またAbbott(米国)の「Ensure」や小児用サプリなど栄養補助食品、Nestlé(スイス)の強化ミルク・ビタミン製品など、グローバル企業も参入しブランド力を活かした戦略を展開しています。近年は韓国やオーストラリアのブランド(例えば韓国・CJ系列の紅参サプリや、豪州・Blackmoresのビタミン剤など)も価格帯を抑えつつ参入し、市場の選択肢が広がっています。こうした海外企業は信頼性の高いブランドイメージや先進的な商品開発力を強みに、市場ニーズに合致した商品ラインナップを投入しており、特に高品質志向や最新成分への関心が高い層を取り込んでいます。加えて、直販モデルや専門店展開など各社の強みを活かしたチャネル戦略でシェア拡大を図っています。
  • 日系企業: 日本企業もこの市場で存在感を示しており、高品質・高信頼性を武器にプレミアムセグメントを中心に支持を得ています。例えばDHCオリヒロといった日本の代表的サプリメントブランドは、美容補助食品やビタミン類、ダイエットサプリなど幅広い製品を投入し、現地消費者から高い評価を受けています​。実際、日本製サプリメントは「品質が良いが価格も高い」という位置づけながら、品質と伝統を重視する層にはプレミアムな選択肢とみなされています​。また資生堂ロート製薬はコラーゲンドリンクや美容サプリで実績を上げており、ベトナムのコラーゲンサプリ市場では資生堂・ロートといった日本勢が主要プレイヤーの一角を占めています​。これら日系各社は、「日本ブランド=安心・安全・高効果」という信頼感を醸成し、現地代理店との協業や独自販売チャネルの構築によって市場開拓を進めています。総じて、国内外の大小プレイヤーがそれぞれ価格帯や訴求ポイントの異なる商品を展開し、市場競争は日増しに激しくなっています。

規制環境

ベトナムにおけるサプリメントは「機能性食品(保健機能食品)」として法的に位置づけられ、保健省(Ministry of Health, MOH)傘下の食品行政局によって監督・管理されています​​。市場参入に際しては、製品の輸入・製造・販売それぞれの段階でいくつか留意すべき法規制と認可手続きがあります。

まず製品の登録について、国内で流通させる全てのサプリメントは事前に保健省へ製品登録(適合宣言の登録)を行い、許可証を取得する必要があります​。これは製品ごとの成分や安全性が所定基準に適合していることを証明する手続きで、輸入品・国内製造品を問わず必須です。登録申請には製品の成分情報、品質試験結果、製造工程の基準適合証明(後述のGMP等)が求められ、概ね3~4週間程度で登録完了するのが一般的です。

次に製造に関する規制として、国内の健康食品製造業者にはGMP(適正製造基準)取得が義務付けられています。2019年以降、保健省の指導によりサプリメント製造施設は医薬品並みのGMPやHACCP、ISO22000といった品質管理認証を取得・維持することが求められており​、これにより製品の安全性確保と業界の質的向上が図られています。海外の製造業者についても、輸出国で同等の製造品質基準(例えば米国FDAのcGMPなど)を満たしていることが暗黙的に期待されており、実績あるメーカーの製品であることが輸入許可の前提となります。

また輸入手続きにおいては、通常の食品輸入時の通関に加え、上記の製品登録証明書の提示や食品安全検査の合格証の提出が必要です​。税関当局は輸入時に製品ラベルの適法性(ベトナム語表示の有無、法定項目の記載)をチェックし、不備があれば通関が認められない場合があります。したがって、日本企業を含む海外サプリメント供給者は、現地の法令に沿ったラベル表示(成分表記、用法用量、注意事項のベトナム語翻訳など)を用意することが重要です。

表示・広告規制についても注意が必要です。ベトナムでは医薬品とサプリメントの境界を明確にするため、サプリメントに疾病の治療・予防効果を謳う表示や広告を行うことを厳しく制限しています。広告内容は事前に保健省の審査を受ける仕組みになっており​、許可無く「○○に効く」といった表現はできません。違反した場合、罰金や販売停止などの処分対象となります。さらに2023年末には栄養成分表示に関する新たな政令(通達29/2023)が公布され、2026年1月以降、全ての包装食品(サプリメント含む)にエネルギー・たんぱく質・脂質・ナトリウムなど主要栄養成分の表示が義務化されることになりました​​。このように当局は消費者保護と市場健全化の観点から規制を年々強化しており、品質基準の順守と適正なマーケティングが求められます。一方で明確な法制度の整備は、信頼できる製品を提供する事業者にとって参入障壁というよりも市場の信頼性を高める追い風となっており、長期的には健全な市場発展につながると期待されます。

日本企業の進出戦略

ベトナムのサプリメント市場において、日本企業が成功を収めるための戦略として、いくつか重要なポイントが挙げられます。日本製品ならではの強みを活かしつつ、現地の市場環境に適応したアプローチが求められます。

  • 日本企業の強み・利点: 日本製のサプリメントは「高品質・高信頼」のイメージが確立されており、健康や安全を重視する層には魅力的な選択肢となります。実際、ベトナム市場で日本のサプリメントは伝統的な健康哲学と先端技術の融合により差別化され、品質に見合うプレミアム商品として評価されています​。このようなブランド力は大きな武器であり、「日本ブランドだから安心」という信頼感が購買動機につながります。また日本は長寿国であり健康管理の先進国というイメージもあるため、「日本式の健康習慣」を提案することで付加価値を伝えることができます。
  • 成功事例の共有: 既に進出して成功している企業の事例から学ぶことも重要です。例えばDHCやオリヒロは早期にベトナム市場に参入し、自社ECサイトや現地パートナーを活用して着実にブランド知名度を高めました。現在ではビタミン類やダイエットサプリの分野で両社の製品が人気上位となっており、日本企業の成功モデルと言えます​。またキリンホールディングスは免疫ケア飲料「iMUSE」をベトナムで発売し、機能性表示の許可を取得するなど(「免疫機能を強化する」旨の表示を実現)、日本の技術力を活かした製品展開を行いました。これらの例は、日本企業が現地ニーズに合った製品を投入し的確なマーケティングを行えば十分に成果を上げられることを示しています。さらに2023年時点で日本はベトナムへの健康関連商品の輸出国上位10か国に入っており、第7位にランクインしています​。大きなシェアではないものの存在感は確保しており、今後参入する企業にとって追い風となるでしょう。
  • 適した販売チャネルの選択: ベトナムで販路を確立するには、現地の流通チャネルを上手に活用する戦略が求められます。都市部では近代的ドラッグストア(PharmacityやLong Chauなど)が台頭し主要な購入先となっているため、まずはそうしたチェーンへの商品導入が有効です。同時にEC(電子商取引)も急速に普及しており、LazadaやShopee、Tikiといった大手プラットフォーム上で公式ショップを開設することも重要です​。実際、DHCはベトナム語の公式オンラインストアを立ち上げ、自社製品の直接販売を開始しました​。さらに現地有力企業との代理店契約によるオフライン流通網の構築も効果的です。(DHCは2019年に現地企業と独占販売契約を結び、ドラッグストア等への流通を強化しています。​)このようにオンライン・オフライン双方で公式ルートを整備することで、模倣品対策や顧客との接点強化にもつなげることができます。日本製品専門店(例えばSakukoなど日本商品のみを扱う小売店)も都市部に増えており、自社製品をそうした店舗に置くことで「日本製」の強みを前面に出すこともできます。総じて、多角的なチャネル戦略によって消費者の目に触れる機会を最大化し、いつでもどこでも買える環境を作ることが成功の鍵となります。
  • ローカライズ(現地化)戦略: 日本企業が進出する際には、製品・マーケティングのローカライズも不可欠です。まず製品面では、現地消費者の嗜好やニーズに合わせた改良が求められます。例えば味や剤形の調整(錠剤の大きさや飲みやすい風味の導入など)、パッケージにベトナム語表記を大きく配置する、使用方法を視覚的にわかりやすくする、といった工夫が信頼感に直結します。またベトナムではハーブや天然素材への信頼が厚いため、日本の強みである抹茶、ウコン(ターメリック)、高麗人参エキスなど伝統的な素材を配合した商品は現地でも好まれる傾向があります​。実際、日本ブランド各社はそうした天然素材の専門知識を活かし、ベトナム人の嗜好に響く商品開発を行っています​。マーケティング面でも、広告や宣伝文句は現地の文化や価値観に合わせたメッセージに翻訳・最適化する必要があります。例えば、「家族の健康を守る」「美は内面から」といったコンセプトはベトナム人にも共感されやすいため、そうしたテーマでプロモーション展開すると効果的です。さらに現地語でのカスタマーサポートや問い合わせ対応を整えることで、消費者との信頼関係構築にもつながります。要するに、日本企業の持つ製品力に加え、「現地の言葉と心に届く工夫」を凝らすことが、競合他社との差別化と長期的なブランドロイヤルティ獲得につながるでしょう。

デジタルマーケティングの活用

ベトナムではデジタルマーケティングがサプリメント市場の拡大において極めて重要な役割を果たしています。インターネットとスマートフォンの急速な普及に伴い、消費者はオンラインで健康情報を収集し、商品を購入する習慣が根付きつつあります。

まず、EC(電子商取引)市場の成長が顕著です。特に都市部の若い世代を中心に、サプリメントをオンラインで購入する層が年々拡大しています。ShopeeやLazada、Tikiといった主要ECプラットフォーム上には「ビタミン・サプリメント」カテゴリーが設けられ、人気ランキングやユーザーレビューを参考に商品を選ぶ消費者も多く見られます。各ブランドも公式オンラインストアや認証バッジを活用して、正規品であることを強調しながら販売促進を行っています。新型コロナ禍でオンラインショッピングが一般化したことも追い風となり、健康食品のEC売上は大きく伸びました。もっとも、オンライン販売では模倣品や不正商品の流通リスクも指摘されており​、消費者の信頼を得るために公式チャネルの周知やシリアルコードによる真贋判定サービスなど、各社ともデジタル上での信頼醸成に努めています。今後も便利さと品揃えの豊富さから、ECはサプリメント流通の重要な柱として成長していくでしょう。

次に、SNSを活用したマーケティングも不可欠です。ベトナムは世界有数のSNS利用率を誇り、人口の約70%が何らかのソーシャルメディアを日常的に使っています​。特にFacebookの影響力が大きく、ユーザー数は約7000万とも言われ国内最大の情報発信源となっています。このため、多くのサプリメント企業がFacebook上に公式ページを開設し、定期的に健康に関する有益な情報発信やキャンペーン告知を行っています。SNS上でフォロワーとのコミュニティを形成し、製品の効果的な使い方や成功事例(ビフォーアフターの紹介など)を共有することで、ブランドへの信頼と親近感を高めています。またインフルエンサーマーケティングも盛んで、美容やフィットネス分野の人気インフルエンサーが特定のサプリメントを紹介すると、その投稿が数万単位で「いいね」されることも珍しくありません。例えば、美容系ユーチューバーがコラーゲンドリンクの体験レビュー動画を上げたり、フィットネストレーナーがプロテインの味や効果をSNSでコメントしたりといった形で、若年層を中心に口コミ効果が波及しています。ベトナム人は知人や著名人の口コミを製品選択の重要な判断材料とする傾向があるため​、SNS上でポジティブな評判を築くことが販売拡大につながります。さらにZalo(ベトナムの国産メッセンジャーアプリ)やInstagram、TikTokなどプラットフォームも多様化しており、各プラットフォームに合わせたコンテンツ戦略(例:TikTokで短い美容Tips動画を配信、など)を取る企業も登場しています。デジタル広告についても、FacebookやGoogleの広告を使ってターゲット層に絞ったプロモーションを行う手法が一般化しつつあります。

まとめると、デジタルチャネルは低コストで広範囲にリーチできる手段として今後ますます重視されます。ただし前述のとおりデジタル上では情報の真偽や商品の品質に対する消費者の不安もあるため、オフラインでのブランド体験(店頭プロモーションやセミナー開催など)と組み合わせて、オンライン・オフライン統合型のマーケティング戦略を構築することが理想です。日本企業にとっても、現地のデジタル文化に精通したスタッフや代理店と協力し、SNSマーケティングやECプロモーションを駆使することが市場攻略の重要なポイントとなるでしょう。

今後の展望

ベトナムのサプリメント市場は、中長期的にも高い成長が見込まれています。経済アナリストによれば、向こう数年間は年率10%以上の拡大が続き、2025年には市場規模が少なくとも85〜90億米ドル規模に達するとの予測もあります​。人口約1億人を抱えるベトナムは一人当たりサプリメント支出こそ先進国比でまだ小さいものの、都市部富裕層を筆頭に消費意欲は急速に高まっており、将来的には東南アジア有数の巨大市場へと成長するポテンシャルを秘めています。特に医療インフラや公的医療保険が十分でない部分を民間の健康投資(セルフメディケーション)で補う動きが強まれば、サプリメントは「予防医療の柱」として定着し、一人当たり消費額が大幅に伸びる可能性があります。

このような市場の将来性は、日本企業にとって大きなビジネスチャンスと言えるでしょう。まず需要の質的高度化が進むと考えられます。消費者の知識レベルが上がるにつれ、単なるビタミン剤から、エビデンスに裏付けられた機能性成分(例えば「血糖値を抑える○○エキス配合」等)を求める傾向が強くなるでしょう。日本企業は研究開発力が高く、科学的根拠に基づいた付加価値商品の開発に長けているため、こうした高度なニーズに応える商品でマーケットリーダーシップを発揮できる可能性があります。次に高齢化対応です。ベトナムでも将来的な高齢化は避けられず、関節ケア、認知症予防、骨粗鬆症対策など日本が得意とするシニア向けサプリメントの需要は確実に増えます。日本企業が国内市場で培ったノウハウを持ち込めば、このセグメントで優位に立てるでしょう。さらに安心・安全ニーズの増大も予想されます。市場拡大に伴い粗悪品や偽物も出回りやすくなりますが、日本製品の徹底した品質管理や正直なマーケティングは、そうした問題への対策として一層評価が高まるはずです。

もっとも、市場の魅力が増す分、各国企業との競争も激化します。韓国や米国、欧州などからの参入も増え、価格競争やプロモーション合戦になることも考えられます。その中で日本企業が持続的に成功するには、単に製品を売るだけでなく現地社会への貢献ブランド体験の提供がカギになるでしょう。例えば栄養啓発セミナーの開催や、学校・職場向けの健康プログラム支援、無料検診イベントとの協賛などを通じてブランドの信頼性を高める戦略も考えられます。ベトナム消費者の心を掴むには「このブランドは自分たちの健康を本気で考えてくれている」という共感を得ることが重要です。

総括すると、ベトナムのサプリメント市場は高成長かつ魅力的であり、日本企業にとっても大きなビジネスチャンスが横たわっています。適切な市場分析と現地適応策を講じれば、日本発の高品質サプリメントが支持される余地は十分にあります。今後5年・10年の展望としては、市場規模のさらなる拡大とともに市場の成熟化も進むでしょう。その中で、日本企業が培った信頼・品質・技術力を活かしつつ、現地の文化やニーズに寄り添った展開をすることで、ベトナムの人々の健康に貢献しながら持続的な成長を実現できると期待されます。ベトナム市場への進出を検討する日本企業にとって、同国のサプリメント市場はリスクよりも大きなリターンと発展可能性を備えた、有望で魅力的なフィールドです。​

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です