ベトナムのペットフード市場が熱い!成長する市場の最新動向

近年、ベトナムでは犬や猫などのペットを家族の一員として迎える家庭が急増しています。その流れに伴い、ペット関連市場が活況を呈し、中でもペットフード市場は急成長を遂げています。経済成長と中間所得層の拡大を背景に、ペットに高品質なフードを与えたいというニーズが高まり、海外からも注目を集める分野となりました。本記事では、ベトナムのペットフード市場の最新動向について、市場規模や人気ブランド、消費者トレンド、流通チャネル、輸入品と国産品の比較、さらには法規制や業界課題までを整理します。また、こうした成長市場に日系企業が参入する際のポイントも解説します。

市場規模と成長率:拡大を続けるペットフード市場

ベトナムのペットフード市場はここ数年、二桁成長を続けています。ペット数の増加が著しく、2023年には犬猫のペット数が1,200万匹以上(犬約650万匹・猫約560万匹)に達したとされます。ペットオーナーの増加に伴い、ペットフード消費量も拡大しており、2023年の消費量は前年比15%増の17,000トン超になる見込みです。市場規模も年々大きくなっており、2024年には約1.42億ドル(約200億円)に達すると予測されています。さらに今後も年平均9%前後の成長が見込まれ、2029年には2.22億ドル(約310億円)規模にまで拡大するとの予想もあります。ペットフード市場はまだ発展途上ではあるものの、このように急成長しており、ベトナムはアジアで注目すべき新興ペットフード市場と言えるでしょう。

人気のペットフードブランド:外資系が市場をリード

ベトナムのペットフード市場では海外ブランドが大きな存在感を示しています。ペットショップの店頭には、Pedigree(ペディグリー)やRoyal Canin(ロイヤルカナン)など世界的な大手ブランドの商品が並び、その他にもタイ・日本・韓国・欧米から輸入されたフードが数多く販売されています。市場全体で見ると、外資系企業がシェア上位を占めており、主要5社で市場の約6割を占有しているとのデータもあります。具体的には、米国のMars社(ペディグリーやシーザー等)やNestlé Purina社、タイのチャロンポカパン(CP)グループ、日本のドギーマンハヤシ、そして大手農産物企業のADMといった名前が挙げられます。これらグローバル企業の製品は品質と知名度の面で強みがあり、ベトナム全国のペットショップで広く扱われています。

一方、国産ブランドのシェアはまだ小さいのが現状です。国内にもペットフードを製造する企業は存在しますが、その多くは外資系メーカーが現地生産している工場であり、純粋なベトナム資本のメーカーは少数です。ホーチミン市発のMaster Careなど、自社工場で安全な国産ペットフードを生産し富裕層向けに展開する試みも出始めていますが、規模は限定的です。また、流通には正規輸入品だけでなく並行輸入品も出回っており、人気海外ブランドの商品が公式ルート以外でも手に入る状況です。総じて、市場をリードしているのは海外ブランドであり、国産品は今後これからという段階ですが、消費者の選択肢は増えつつあります。

消費者トレンド:高級志向・健康志向の広がり

ベトナムのペットオーナーの意識は年々高度化しており、消費者トレンドにも大きな変化が見られます。主な傾向として次のようなポイントが挙げられます。

  • ペットの家族化:犬や猫を単なる番犬やマスコットではなく家族の一員として扱う風潮が広がりました。そのため、ペットの健康や快適さにお金を惜しまないオーナーが増え、高品質なフードやサービスへの需要が高まっています。特に都市部の若い世代ほどこの傾向が強く、ペットに対して人間同様のケアを求める声が大きいです。
  • 高級志向のフード需要:可愛いペットにはできるだけ良いものを与えたいと考える飼い主が多く、プレミアムフードや輸入の高級フードが人気です。価格は高めでも品質の良い餌を選ぶ層が拡大しており、ペットフード市場全体の単価上昇にもつながっています。例えば、グレインフリー(穀物不使用)やヒューマングレード(人間が食べられる品質)のフードなど、ひと昔前なら一部でしか売れなかった商品も、中間層・富裕層を中心に受け入れられるようになっています。
  • 健康志向・ナチュラル志向:ペットの健康を気遣うオーナーが増え、オーガニック原料を使ったものやグルテンフリー/グレインフリー、合成保存料不使用といった健康志向のフードが注目されています。高タンパクで低アレルギーのレシピや、特定の機能に特化したフード(歯の健康維持用、体重管理用など)も人気です。ベトナムでは最近「グリーン消費」と呼ばれる、自然由来で環境に優しい商品を選ぶトレンドも広がっており、ペットフードでも添加物を減らしたナチュラル志向の商品が好まれています。
  • 猫ブームの到来:伝統的に犬のほうが多かったベトナムですが、若年層を中心に猫の飼育数が急増しています。集合住宅でも飼いやすい猫は人気が高く、ペット全体に占める猫の割合は約4割に達しました。それに伴いキャットフードの市場が拡大している点も見逃せません。現在は売上規模でドッグフードが最大ですが、キャットフードは年率にして20%近い高成長をしているというデータもあり、今後ドッグフードとの差を縮めると予想されます。

このように、ペットのヒューマナイズ(人間化)傾向と経済力の向上が合わさって、高品質・高付加価値なペットフードへのニーズが急速に高まっているのがベトナム市場の特徴です。

輸入品と国産品の比較:価格帯・品質・人気の違い

ベトナムのペットフード市場では輸入品国産品で明確なポジションの違いがあります。簡単に言えば、「輸入品=高品質・高価格」「国産品=手頃な価格帯」といった図式です。

品質面では、輸入ペットフード製品は総じて原材料や栄養バランスの点で優れており、ペットの総合的な健康に配慮した商品が多く見られます。例えば、アメリカや欧州、タイから入ってくる製品には、オーガニック原料や穀物不使用、低アレルギー性といった付加価値が付いたフードや、サプリメント的なおやつ・栄養補助食品まで揃っています。国内製造の製品も近年品質向上が進んでいますが、トップクラスの栄養価・安全性という点では、依然として欧米・タイ製など輸入品に一日の長があります。

価格面では、輸入品は現地の一般的な国産品と比べてかなり高価です。高品質ゆえに値段も高く、価格が2~3倍以上するケースも珍しくありません。例えば、タイから輸入される有名ブランドのドッグフード500gが約12万ドン~16万ドン(約600~800円)で売られている一方、国内ブランドの同容量フードはその半額以下ということもあります。こうした価格差から、輸入品は主に都市部の富裕層や愛犬・愛猫家に支持され、地方や低所得層では依然として安価な国産品や自家調理のエサが使われる傾向があります。

人気・シェア面では、前述の通り市場の大半を輸入製品が占めているのが現状です。特にタイ製(約35%)、米国製(22%)、フランス製(15%)などが大きな割合を占めており、高級ペットフードほど海外製が多い傾向です。ただし近年、国内消費者のニーズに応える形で国産ブランドも徐々に台頭し始めています。Master Careのように安全・新鮮さを売りにした国産フードや、一部のローカル企業による低価格帯の商品開発など、国産品の質と種類も増えつつあります。それでも、**「高級品=海外ブランド」**という認識は根強く、安心感やブランド力で勝る輸入品が人気上位を占めている状況に変わりはありません。

このように、輸入品は高品質だが高価、国産品は安価だが品質面で劣るという構図があるため、消費者は予算や求めるクオリティに応じて商品を選択しています。今後、国産メーカーが高品質化を進め輸入品にどこまで迫れるか、あるいは輸入品の価格が下がり手の届く範囲が広がるかが、市場動向を左右するポイントとなるでしょう。

流通チャネル:オンラインと実店舗の動向

販売チャネルについて見ると、ベトナムでは従来型の実店舗販売が主流ですが、近年はオンライン経由も伸びています。現在の主な流通チャネルと特徴は以下の通りです。

  • ペットショップ(専門店):ペットフードの約75%は個人経営のペットショップや大型チェーンのペット専門店で販売されています。都市部を中心にペットショップが数多く存在し、各店が輸入・国産問わず多様なブランドを取り扱っています。品揃えが豊富で専門知識のあるスタッフがいることから、ペットオーナーの信頼も厚く、依然として最大の流通経路となっています。著名なチェーン店としては「Pet Mart」などがあり、犬猫のフードや用品が一通り揃うため多くの飼い主が利用しています。
  • スーパーマーケット・量販店:一部のスーパーやハイパーマーケットでもペットフードコーナーが設けられています。ただし取り扱いブランドや種類は限定的で、主に汎用的なドライフードや缶詰が中心です。市場シェアとしてはそれほど大きくなく、買い物ついでに手軽に買える反面、専門店ほどの深い品揃えは期待できません。地方の小規模な食料品店などで安価な国産ペットフードが売られる例もありますが、都市圏以外ではペットフード専用売り場自体がまだ少ないのが実情です。
  • オンライン販売(ECサイト):ベトナムでもEコマースの発展に伴い、ペットフードのオンライン購入が増えてきました。ShopeeやLazada、Tikiといった総合ECサイトに加え、ペットショップ各社の公式オンラインストアやFacebookなどSNSを利用した販売も盛んです。現状では市場全体の割合としてオンラインの占める比率はまだ小さいものの、若年層を中心にネットで定期購入するユーザーが増えており、毎年着実に売上を伸ばしています。特に都市部の忙しい飼い主や、大型サイズのフードをまとめ買いしたい層にとって、宅配してもらえるオンライン購入は便利な選択肢となっています。

まとめると、**「ペットショップ中心、オンラインが追い上げ」**という構図です。今後はEコマース市場の成長やデジタル世代の台頭によってオンライン比率がさらに高まる可能性がありますが、当面は専門店での対面販売が主力であり続けるでしょう。日系企業が参入する際も、まずは現地の有力ペットショップチェーンへの商品配荷や、オンラインモールでの公式出店など、チャネル戦略が重要となります。

法規制や業界の課題:輸入ルールと市場の見通し

急成長するベトナムのペットフード市場ですが、その発展には法規制や業界特有の課題も存在します。参入企業にとって押さえておくべきポイントを整理します。

輸入規制と関税:ペットフードをベトナムに輸入する際は、所定の検疫手続きや品質証明が必要です。動物由来の原料を含むため、農業農村開発省など所管官庁による成分・安全性の審査を経る必要があります。また関税面では、ペット用の犬猫フード(HSコード230910)に対し通常7%程度の関税が課せられます。ただし、FTA/EPAによる優遇措置もあります。日本企業の場合、日越経済連携協定(EPA)に基づく原産地証明書(フォームVJ)を取得すれば、関税を0%にできる制度があります(小売用ドッグ・キャットフードの場合)。タイなどASEAN諸国からの輸入品も、域内協定により関税が免除または低減されるため、実質的に主要輸入国からのペットフードは低関税で流通しています。もっとも、並行輸入品など正規ルート外の商品も存在するため、品質管理や表示の面で規制当局が取り締まるべき課題も残っています。

市場競争と参入障壁:前述のように既に世界的ブランドが市場を押さえており、新規参入者にとって競争は容易ではありません。特に一般的なペットフード(ドライフードなど)の分野では、知名度も信頼感もある外資ブランドが強いため、同じ土俵で勝負するのは困難です。加えて、ブランド認知のない新製品を広めるには広告宣伝や流通網構築にコストがかかり、中小企業にとってハードルが高い側面があります。このため、差別化されたニッチ商品や独自の付加価値がないと埋没してしまう可能性があります。

品質管理と安全性の課題:市場拡大に伴い、ペットフードの品質ばらつきや偽物・粗悪品の問題にも注意が必要です。現在のところ大きな社会問題にはなっていませんが、消費者の目が肥えてくれば商品の安全性・信頼性に対する要求も厳しくなります。業界としては、ペットフードの成分表示や品質検査の制度を整え、不適切な商品を排除する体制作りが今後の課題と言えるでしょう。また、獣医療やペット栄養学の知識を持った人材育成も遅れており、ペットの健康をサポートする専門家の育成が求められています。こうしたソフト面のインフラ整備も、ペットフード市場の健全な発展には不可欠です。

市場の地域格差:ベトナム国内でも、ペットフード市場の発展度合いには都市部と地方で差があります。ハノイやホーチミン市といった大都市ではペット関連ビジネスが盛んですが、地方ではまだ商機が限られています。今後、中小都市や農村部でもペットブームが波及すれば市場は一段と拡大しますが、それには所得水準の向上やペット文化の浸透が必要でしょう。企業にとっては、まずは都市部でのブランド確立が優先ですが、中長期的には地方展開も視野に入れることで一層の成長が見込めます。

総じて、法制度や競合環境の把握、そして品質・信頼性への取り組みが、今後のベトナム・ペットフード市場攻略の鍵となります。適切な輸入手続きでコストを抑えつつ、現地消費者の信頼を得る商品戦略が求められるでしょう。

日系企業にとっての参入ポイント:成功のための戦略

成長著しいベトナムのペットフード市場は、日系企業にとっても大きなビジネスチャンスです。日本企業が持つ強みを生かしつつ、現地ニーズに合わせた戦略を取ることで、十分に活躍の場が見込めます。以下、日系企業が参入・展開する際のポイントをまとめます。

  • 高品質・安全性で差別化: 日本製品は一般に「高品質で安全」というイメージがあり、これはベトナムのペットオーナーにも魅力的です。実際、日系ブランドのドギーマンは、安全で栄養価の高いおやつやフードを提供し、消費者の信頼を得ています。日本企業はこの信頼性を武器に、ペットの健康に配慮した安心品質のフードを提案することで市場で存在感を示せるでしょう。
  • プレミアム志向への対応: ベトナムではペットのためにお金を惜しまない層が増えており、高級輸入ペットフードが人気です。日本企業にとっては、オーガニック食品や機能性サプリメント、療法食など専門性の高いハイエンド製品ラインを投入できる好機と言えます。日本発の高度な製造技術や独自レシピを生かし、現地では手薄なプレミアムセグメントを開拓すれば、価格競争に巻き込まれにくい優位なポジションを築けます。
  • ナチュラル・エコ志向の取り込み: 若い消費者や中間層の間で、天然成分のみを使ったペットフードや環境に優しい商品への関心が高まっています。日本企業は、無添加・無着色のナチュラルフードやエコロジー包装など、環境配慮型の商品開発で強みを発揮できます。日本で培った繊細な品質管理や安全基準を前面に出し、「ペットにも環境にも優しい日本ブランド」としてアピールすることで、他国製品との差別化につながります。
  • マーケティングと流通戦略: 進出に際しては販売チャネルの確保とブランド認知向上が不可欠です。具体的には、現地の大手ペットショップチェーンや信頼できるディストリビューターと提携し、店頭での露出を増やすことが重要です。同時に、ShopeeやLazadaといった人気ECサイトへの出店や、Facebook・TikTokなどSNSを活用したプロモーションで若い世代への認知拡大を図りましょう。商品やブランドの知名度がない状態では品質が良くても売上につながりにくいため、SNS広告やペットコミュニティとの連携により、「日本ではこんなに支持されている」「ペットの健康にこんな効果がある」といった情報発信を行い、信頼感を醸成することが大切です。
  • 現地ニーズへの適応: 日本企業と言えども、日本で売れている商品をそのまま持ち込むだけでは成功しない可能性があります。ベトナムの気候や飼育環境、消費者の嗜好に合わせて製品をローカライズする視点も必要です。例えば、暑い気候に対応した水分補給スナックや、東南アジア特有の風味を取り入れたフード、あるいは小型犬・室内猫向けの栄養設計など、現地市場を調査して最適化した商品開発が有効でしょう。また、現地語での分かりやすいパッケージ表示やカスタマーサポート体制を整えることで、消費者の安心感を高めることができます。

以上のポイントを踏まえ、日本企業は持ち前の品質と技術力を活用しつつ、市場ニーズに合った商品展開と現地密着のマーケティングを行うことで、ベトナムのペットフード市場で大きなチャンスを掴めるはずです。

まとめ:今後のチャンスと日系企業の可能性

ベトナムのペットフード市場は、ペット文化の成熟とともに力強い成長を続けており、可能性に満ちたマーケットです。中間所得層の拡大と高品質志向の高まりによって、プレミアムな輸入製品が牽引する形で市場規模は拡大を続けています。この流れは今後も続き、少なくとも今後5年間は年率二桁近い成長が期待できるでしょう。ペットを巡る価値観の変化(家族の一員として扱う意識の定着)は一時的なブームではなく、世代を超えて根付きつつある文化です。それに合わせて、関連ビジネス全般—ペットフードに限らずペット用品やサービス、医療まで—幅広い分野で発展が見込まれます。

もっとも、好機がある一方で課題も存在します。市場が拡大するにつれ競合も増え、特に既に進出している外資大手との競争は厳しいものがあります。また、品質管理や流通インフラなど、発展途上ゆえの不備をどう克服するかも問われています。しかし、これらの課題は裏を返せば改善の余地が大きいとも言えます。消費者教育が進み規制が整っていけば、市場はより健全に成長し、新規参入企業にも公平なチャンスが生まれるでしょう。

日系企業にとって、ベトナムのペットフード市場は参入する価値の高い魅力的なフィールドです。日本製品への信頼感や、高機能なプレミアム商品を開発できる技術力は、現地のニーズに合致すれば大きな強みとなります。また、日本とベトナムの経済連携協定による関税メリットも追い風です。重要なのは、現地の最新動向を的確に捉え、市場が求める製品・サービスを提供することです。ベトナム語で「かわいい」「おいしい」と評判になるペットフードを生み出せれば、SNSを通じて一気に人気が広がる可能性もあります。

結論として、ベトナムのペットフード市場は「熱い」成長を遂げており、これからも中長期的な拡大が見込まれます。その熱気に応えるように、日系企業が持つノウハウと情熱をもって参入すれば、新たな成功ストーリーを描けるでしょう。市場のポテンシャルを最大限に引き出すために、品質へのこだわり、消費者ニーズの深堀り、そして現地パートナーとの協力体制づくりを重ね、ベトナムのペットたちに愛される商品を提供していきたいものです。ベトナムのペットフード市場には、日系企業にとって今後ますます多くのチャンスが広がっていると言えるでしょう。

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