米中摩擦の長期化や供給途絶の経験を経て、「中国一極集中をどう見直すか」は多くの日本企業にとって避けて通れないテーマになりました。その文脈でよく挙がるのが「チャイナプラスワン」、そして候補国としてのベトナムです。本記事では、なぜベトナムが選ばれやすいのか、一方でどんな注意点があるのか、そして「全面移管」ではなく分散としてどう現実的に進めるかを、ホーチミン拠点の日系商社の視点から整理します。
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チャイナプラスワンとは?なぜ今、見直されているのか
チャイナプラスワンとは、中国一極集中のリスクを下げるために、調達や生産の一部を中国以外の国へ分散させる考え方で、地政学リスク・コスト上昇・供給途絶という三つの経験が再注目の背景にあります。
「プラスワン」という言葉自体は新しいものではありません。ただ近年は、その動機がより切実になっています。第一に、米中間の貿易摩擦や追加関税、輸出規制といった地政学リスクが、調達コストや事業継続性に直接影響するようになりました。第二に、コロナ禍では一国・一工場に依存していた企業ほど供給途絶の打撃を受け、「分散していなかったこと」自体がリスクだと再認識されました。第三に、中国の人件費上昇が続き、かつての「安いから中国」という前提が品目によっては崩れてきています。
重要なのは、チャイナプラスワンは「中国をやめる」話ではないという点です。中国は依然として巨大なサプライチェーンと生産能力を持つ拠点であり、多くの企業にとって主力であり続けます。あくまで「もう一つの選択肢を持っておく」ことでリスクを下げる、という発想です。なお、関税や貿易規制の具体的な内容は時期や品目によって変わり得るため、自社のケースは公的情報や専門家への確認が前提になります。
なぜベトナムが有力候補なのか(4つの理由)
ベトナムは「通商協定の広さ・若い労働力・対日関係の良さ・中国に近い地理」という四つの点で、チャイナプラスワンの分散先として現実的な選択肢になりやすい国です。
1. 通商協定のネットワーク。 ベトナムはCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)やEVFTA(EU・ベトナム自由貿易協定)、RCEPなど、複数の自由貿易協定に参加しています。条件を満たせば関税面で有利になり得る点は、輸出を前提にした生産・調達の魅力です。ただし、関税メリットは原産地規則などの適用条件を満たして初めて受けられるもので、税率や運用は変わり得ます。実際に効くかどうかは、品目ごとに最新の協定規定・税関情報で必ず確認してください。
2. 若く豊富な労働力。 ベトナムは人口が約1億人規模で、相対的に若い年齢構成を持つとされ、製造業の担い手という観点で評価されています。勤勉で手先が器用といった現場評価も聞かれます。一方で後述の通り、賃金は上昇傾向にある点は織り込む必要があります(数値は時点で変動)。
3. 対日関係の良さ。 ベトナムは親日的とされ、日本企業の進出実績も厚みがあります。日本式の品質・納期管理への理解が比較的得やすく、商習慣の面でも協業しやすいという声は実務上よく聞かれます。
4. 地理的な近さ。 中国と陸続きで近く、ASEANの中心に位置することは、既存の中国サプライチェーンと組み合わせる「分散」を考えるうえで物流面の現実味につながります。
これらは「ベトナムが万能」という意味ではなく、あくまで分散先として検討に値する条件が揃っている、という整理です。実際の調達では、原材料や半製品の輸出入を伴うことも多く、ベトナム製品の調達・輸出支援のような実務サポートの有無が進めやすさを大きく左右します。
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見落とされがちな注意点(メリットだけでは決められない)
ベトナムはサプライチェーンの成熟度や部材の現地調達率、インフラ、人件費上昇といった課題も抱えており、「中国の完全な代替」を前提にすると誤算が生じます。
第一に、部材の現地調達率と裾野産業の厚みです。中国は素材から部品、加工までを国内で完結しやすい一方、ベトナムでは部材を中国などから輸入して組み立てるケースも少なくありません。「最終工程はベトナム、でも部材は結局輸入」という構造だと、コストやリードタイムの想定が崩れることがあります。
第二に、インフラと物流です。電力・港湾・道路などのインフラは整備が進んでいるものの、地域差があり、立地によって条件が変わります。
第三に、人件費の上昇です。ベトナムの賃金は上昇傾向にあるとされ、「とにかく安い」という前提だけで移管を判断すると期待外れになり得ます。コストは品目・工程・数量で大きく変わるため、参考値として捉え、自社条件での試算が欠かせません。
第四に、品質・納期マネジメントです。日本式の基準を満たすには、現地での検品体制やコミュニケーションの設計が前提になります。ここを軽視すると、価格は下がっても不良やトラブル対応のコストで相殺されかねません。なお、製品によっては輸入時の登録(công bố)や規格適合が必要になり、制度は変わり得るため最新情報の確認が必要です。
「全面移管」ではなく分散として進める — 現実的なステップ
失敗を避ける鍵は、いきなり全面移管せず、品目を絞ったパイロット調達から始め、現地パートナーと品質・通関・物流を固めながら段階的に比率を上げることです。
現実的な進め方は、おおむね次の流れになります。
- 品目の選定。 すべてを一度に動かさず、移管しやすい品目・工程から優先順位をつけます。部材の調達構造や数量ロットを踏まえ、ベトナムで成立しやすいものを見極めます。
- サプライヤー選定と検品。 候補工場の選定・面談、サンプル評価、現地での検品・品質管理を行います。ここは現地に入り込めるかどうかで精度が変わります。
- 小ロット・試作からの検証。 いきなり量産ではなく、小ロットで品質・納期・コストを実地検証します。
- 貿易書類・通関・物流の整備。 輸出入書類、通関、輸送手配を固め、リードタイムとコストの実数を掴みます。制度・関税は変わり得るため、その都度の確認が前提です。
- 段階的な比率拡大。 検証で問題がなければ、中国とベトナムの調達比率を少しずつ調整し、リスク分散を進めます。
この「小さく始めて、確かめながら広げる」アプローチは、加工・生産を伴う場合も同じです。委託生産やOEMを検討するなら現地生産・OEM支援、できあがった製品をベトナム国内でも売っていきたい場合は現地総代理店・販売代行というように、調達から販売までを地続きで設計できると、分散が「机上の計画」で終わりにくくなります。
現地パートナーの活用がリスクを下げる
言語・商習慣・品質管理の壁を越えるには、現地に根ざし日本語で一気通貫対応できるパートナーを使うことが、チャイナプラスワンを机上論で終わらせない近道です。
ベトナム調達でつまずきやすいのは、技術や価格そのものより「現地で誰が、どこまで動いてくれるか」という実務面です。サプライヤーの見極め、サンプルのやり取り、検品基準のすり合わせ、書類・通関、トラブル時の交渉——これらを遠隔・他言語でこなすのは容易ではありません。
Sunsho Tradeはホーチミンを拠点とする日系商社として、日本企業の「現地パートナー」として動きます。サプライヤー選定・仲介から、検品・品質管理、貿易書類・通関・輸出手配の代行までを日本語ワンストップで担うベトナム製品の調達・輸出支援を軸に、必要に応じて現地での生産や販売(現地総代理店・販売代行)まで地続きでお手伝いします。市場や類似カテゴリの動きを掴みたい場合は、ベトナムのサプリメント市場のような市場レポートも参考になります。
「中国を残しつつ、ベトナムでもう一本の調達ルートを持っておく」——その第一歩を、現実的なサイズで一緒に設計していきましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q1. チャイナプラスワンの「プラスワン」は、ベトナム1国に絞るべきですか?
必ずしも1国である必要はありません。チャイナプラスワンの本質はリスク分散なので、品目によってベトナム・タイ・インドなど複数を使い分ける企業もあります。ただし管理コストも増えるため、まずは取り組みやすい品目で1か国から始め、検証しながら広げるのが現実的です。
Q2. ベトナム調達は中国よりコストが安いのですか?
一概には言えません。賃金は中国より低い傾向とされますが、部材を輸入する構造だと総コストが下がらない場合があります。人件費は上昇傾向にもあり、コストは品目・工程・数量で大きく変わります。数値は参考値とし、自社条件での試算が前提です。
Q3. CPTPPやEVFTAの関税メリットは必ず受けられますか?
条件を満たした場合に受けられるもので、自動的に適用されるわけではありません。原産地規則などの要件があり、税率や運用も変わり得ます。自社の品目で実際に効くかは、最新の協定規定や税関情報、専門家への確認が必要です。
Q4. 小ロットや試作からでも始められますか?
可能です。むしろ、いきなり量産・全面移管せず、小ロットの試作で品質・納期・コストを実地検証してから比率を上げる方が、リスクを抑えやすい進め方です。
Q5. ベトナムに自社拠点がなくても調達できますか?
できます。現地に拠点がなくても、サプライヤー選定・検品・通関・輸出手配を代行する現地パートナーを使えば調達は進められます。Sunshoはこの実務を日本語ワンストップで代行しています。詳しくはお問合せフォームからご相談ください。
※本記事の通商協定・関税・輸入手続き・製品登録(công bố)などの制度、および市場・賃金・コストに関する記述は、いずれも変わり得る一般的な参考情報です。実際のご判断にあたっては、ジェトロ・税関などの公的情報や専門家に最新内容をご確認ください。