タイ・マレーシア・インドネシアのサプライヤーから日本へ仕入れる場合、使える経済連携協定は1つではありません。それぞれの国と日本の二国間EPA、日本とASEAN全体のAJCEP(日ASEAN包括的経済連携協定)、そしてRCEP(地域的な包括的経済連携協定)。協定ごとに原産地規則も、同じ品目の税率も異なることがあります。

本記事では、日本側の輸入者の立場から「どの協定で申請するか」「原産地証明は何を用意するか」を整理します。特に見落とされがちなのが、RCEPでは日本の輸入者が自分で原産地を申告できるという点です。制度は改正されることがあるため、実際の申告前に税関・専門家へ最新をご確認ください。

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協定ごとに使える原産地証明の違い

二国間EPAとAJCEPは輸出国の発給機関が出す原産地証明書が基本で、RCEPはそれに加えて日本の輸入者による自己申告も認められています。

協定日本税関が受け付ける原産地の証明作成するのは
日タイEPA・日マレーシアEPA・日インドネシアEPA原産地証明書(第三者証明)輸出国の発給機関
日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)原産地証明書(第三者証明)輸出国の発給機関
RCEP原産地証明書、認定輸出者の原産地申告、輸入者の原産地申告発給機関/認定輸出者/日本の輸入者
台湾で作られた貨物日本との協定なし通常の税率

日本税関の「原産地証明手続」のページでは、日タイ・日マレーシア・日インドネシアの各EPAと日ASEAN包括的経済連携が、輸出国の権限ある当局が発給した原産地証明書を提出する「第三者証明制度」に分類されています。RCEPについては4つの制度が示され、そのうち輸出者・生産者による自己申告はオーストラリアとニュージーランドのみです。

(2026年9月24日時点で日本税関の公表資料を確認)

RCEPなら輸入者が自分で原産地を申告できる

RCEPでは日本の輸入者が原産地申告を作成でき、日本税関はこの制度が「日本への輸入に限って」使えると説明しています。

二国間EPAやAJCEPでは、サプライヤーが自国の発給機関に申請して原産地証明書を取り、それを送ってもらう必要があります。サプライヤーが手続きに不慣れだったり、発給が遅れたりすると、特恵税率を使えないまま輸入することになりかねません。

RCEPの輸入者自己申告なら、必要な根拠をそろえられる日本の輸入者は、自社で原産地申告を作って輸入申告と一緒に提出できます。

ただし「根拠」が要ります。日本税関は、原産性を説明する資料として、①原産地基準を満たすことの説明と、②価格表・部品表(材料一覧)・製造工程フロー図などの裏付け資料、を挙げています。これらはサプライヤーから出してもらう必要があり、言葉の壁があると最も止まりやすいところです。

方法利点輸入者に必要なもの
輸出国で発給された原産地証明書原産性の確認はサプライヤーと発給機関が担う証明書を申請・送付してくれるサプライヤー
RCEPの輸入者自己申告海外の証明書を待たなくてよい原産地規則を満たすことを示せる資料

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3つの協定の選び方

同じHSコードで各協定の特恵税率を比べ、そのうえで製品がどの協定の原産地規則を満たすかを確認します。

実務では次の順で進めると迷いません。

  1. HSコードをサプライヤーと確定する(比較の土台を同じにする)
  2. 二国間EPA・AJCEP・RCEPそれぞれの税率を調べる
  3. それぞれの原産地規則を満たすか確認する(ある協定では満たし、別の協定では満たさないことがある)
  4. 他国の部材が入っていないか確認する。AJCEPには累積の規定があり(日本税関FAQ)、RCEPも締約国の材料を累積できるため、二国間EPAでは原産品にならない製品が、これらでは原産品になることがあります
  5. 誰が原産地の書類を用意するかを決める(輸出国の証明書か、RCEPなら輸入者の自己申告か)

台湾からの輸入は通常税率で見積もる

日本と台湾の間には経済連携協定がなく、台湾はRCEPにも参加していないため、台湾で作られた貨物は通常の税率になります。

電子部品・機械・精密部品などで台湾のサプライヤーが最適なことは多く、それ自体は問題ありません。関税を見積もりに含めて比較すればよいだけです。なお原産地は「どこから出荷したか」ではなく、原産地規則上「どこで作られたか」で決まります。

特恵税率が使えなくなる典型的なミス

特恵が使えなくなる原因の多くは、製品が原産品でないことではなく、書類の食い違いです。

ミス起きること防ぎ方
ある協定の証明書で、別の協定の税率を申請特恵が認められない証明書を申請する前に協定を決める
証明書のHSコードと輸入申告のHSコードが違う申請に疑義が出る事前にHSコードをサプライヤーとそろえる
RCEP自己申告の裏付け資料がない原産性を説明できない出荷前に部品表・工程資料を入手する
台湾製品を特恵税率で試算仕入原価が想定より上がる台湾は通常税率で試算する

ベトナム製品の調達についてはベトナム製品の調達・輸出支援、ベトナムからの輸入の実務はベトナム食品の輸入やベトナム家具の輸入もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. タイから日本へ輸入する場合、どの協定を使えばよいですか?
A. 日タイEPA・AJCEP・RCEPのそれぞれで、同じHSコードの特恵税率を比べ、製品がどの原産地規則を満たすかを確認して選びます。原産地証明は申請する協定に合ったものが必要です。

Q2. 日本の輸入者が自分で原産地を申告できますか?
A. RCEPであれば可能です。日本税関は輸入者が作成する原産地申告を受け付けており、この制度は日本への輸入に限って使えると説明しています。原産地規則を満たすことを示す資料が必要です。

Q3. マレーシアのサプライヤーはRCEPで自己申告できますか?
A. 日本税関の説明では、RCEPの輸出者・生産者による自己申告はオーストラリアとニュージーランドのみです。マレーシアのサプライヤーは原産地証明書、または認定輸出者であれば認定輸出者の原産地申告を使います。

Q4. RCEPの輸入者自己申告にはどんな資料が必要ですか?
A. 日本税関は、原産地基準を満たすことの説明と、価格表・部品表・製造工程フロー図などの裏付け資料を挙げています。サプライヤーから事前に入手しておく必要があります。

Q5. 台湾からの輸入に特恵税率はありますか?
A. ありません。日本と台湾の間に経済連携協定はなく、台湾はRCEPにも参加していないため、通常の税率が適用されます。

まとめ

タイ・マレーシア・インドネシアからの輸入では、二国間EPA・AJCEP・RCEPの3つから選べます。税率と原産地規則を同じHSコードで比べること、そしてRCEPなら日本の輸入者が自分で原産地を申告できることを知っておくと、サプライヤー任せにせず特恵税率を確実に使えます。台湾製品は通常税率で見積もりましょう。

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※出典:日本税関「原産地証明手続」、日本税関「RCEP協定に基づく特恵税率の適用(原産性を証明する書類)」、日本税関カスタムスアンサー4022(日ASEAN包括的経済連携協定の概要)。2026年9月24日確認。