機械や部品を海外に送るとき、梱包は「壊さずに届ける」ためだけのものではありません。木箱、木製パレット、荷物を固定するための角材(ダンネージ)には、国際基準 ISPM 15 に沿った消毒と表示が求められます。表示が抜けていたり読めなかったりすると、輸入国の港で止められ、消毒や返送の対応に追われることがあります。

一方で、輸出梱包を担当する方の多くは、本業は設計・購買・生産管理で、梱包の規則に詳しいわけではありません。「梱包業者に任せているから大丈夫」と思っていても、実際には木箱だけ処理済みでダンネージは未処理、パレットは別の業者から入った出所不明のもの、ということが起こり得ます。

本記事では、日本からアジアへ機械・部品を輸出する方、ベトナムなどアジアの工場から日本へ製品を送る方に向けて、ISPM 15の対象と免除、消毒方法、マークの読み方、日本とベトナムで確認する先、防錆・乾燥剤・固定、発注の進め方を整理します。

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ISPM 15とは何か、何が対象か

ISPM 15は国際植物防疫条約(IPPC)の国際基準「Regulation of wood packaging material in international trade」で、国際貿易で使う未加工の木材でできた梱包材(パレット、木箱、ダンネージなど)が対象です。合板などの加工木材だけで作った梱包材や、厚さ6 mm以下の木材だけで作った梱包材は免除されます。

ISPM 15は2002年に採択され、その後たびたび改正されています。IPPCの公式ページに掲載されている現行版は2018年版で、附属書1(認められた消毒方法)は2018年4月の植物検疫措置委員会(CPM)第13回会合で改正されました。

ISPM 15が対象とするのは、木枠、木箱、こん包箱、ダンネージ、パレット、ケーブルドラム、スプール・リールなどの木材こん包材です。一方、リスクが低いとして次のものは免除されています。

  • 厚さ 6 mm以下 の薄い木材だけで作った梱包材
  • 合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB)、単板など、接着剤・熱・圧力またはその組み合わせで作った加工木材だけで作った梱包材
  • 製造時に加熱されたワイン・蒸留酒の樽
  • ワイン、葉巻などのギフト箱のうち、有害動植物がいない状態まで加工された木材で作ったもの
  • おが屑、かんな屑、木毛
  • 車両やコンテナに恒久的に取り付けられた木製部材

ここから、次のような実務上の判断ができます。

  • 樹脂パレットは木材ではないため、ISPM 15の対象外です
  • 合板だけで作った木箱は加工木材として免除の対象です
  • 脚が未加工の角材で、面が合板のように組み合わせた梱包材は、未加工の部分に消毒と表示が必要です

ISPM 15は国際基準で、具体的な義務は輸入国が定めます。独自の要件を追加している国もあるため、新しい仕向け地では必ず現行の規則を確認します。

認められた消毒方法と処理コード

ISPM 15の2018年版では、HT(熱処理)、DH(誘電加熱)、MB(臭化メチルくん蒸)、SF(フッ化スルフリルくん蒸)の4つの消毒方法が認められ、それぞれのコードがマークに入ります。どの方法でも、樹皮を除いた木材を使うことが前提です。

コード方法ISPM 15の主な要件
HT蒸気式または乾燥式の熱処理室での熱処理木材の断面全体(中心部を含む)で56 ℃以上を30分以上連続して保つ
DH誘電加熱(マイクロ波など)木材の断面全体(表面を含む)で60 ℃以上を1分連続して保つ。処理の条件は植物防疫機関が定めるか承認する
MB臭化メチルくん蒸規格の濃度と時間の表による。最小寸法が20 cmを超える木材を含む場合は使えない
SFフッ化スルフリルくん蒸2018年に追加。最小寸法20 cm超の木材、または含水率75%超の木材には使えない

実務で押さえておきたい点です。

  • 樹皮の除去: どの消毒方法でも、梱包材は樹皮を除いた木材で作ります。残ってよいのは、幅3 cm未満の樹皮片、または幅3 cm超でも1片の面積が50 cm²未満の樹皮片だけです。MBとSFでは消毒前に樹皮を除きます
  • 臭化メチルはオゾン層を破壊する物質で、ISPM 15自身がIPPCの「臭化メチルの代替・削減」の勧告に触れています。MBを選ぶ場合は、仕向け国が受け入れるかを先に確認します
  • 熱処理は乾燥ではありません。56 ℃・30分を満たしても、木材が十分に乾いているとは限りません。湿った木箱はコンテナ内で結露やカビの原因になるため、製品が湿気に弱い場合は、含水率の条件(人工乾燥材の指定など)を別に決めます

上の表は、IPPCが公表しているISPM 15の2018年版の英語本文(沿革の最終更新は2019年2月)を要約したものです(2026年10月27日確認)。古い資料にはDHに「最小寸法20 cm以下」などの条件が書かれていることがありますが、2018年版で20 cmの制限があるのはMBとSFです。詳しい処理の条件は、各国の植物防疫機関(NPPO)が定めるか承認します。

マークの読み方と付け方

ISPM 15のマークは、IPPCのシンボル、ISOの2文字の国コード、植物防疫機関が割り当てる生産者・消毒実施者のコード、処理コードの4要素で構成されます。読みやすく、消えにくく、手書きでなく、できれば向かい合う2面以上に付けます。

附属書2によるマークの決まりは次のとおりです。

  • シンボル: IPPCの麦の穂の図柄。コードの左側に置きます
  • 国コード: ISOの2文字コード。日本はJP、ベトナムはVNです。生産者コードとハイフンでつなぎます
  • 生産者・消毒実施者のコード: その国の植物防疫機関が割り当てる固有のコードです
  • 処理コード: HT、DH、MB、SFのいずれか。国コードと生産者コードの後に、別の行またはハイフンで区切って入れます

マークは長方形か正方形で、枠線で囲み、シンボルとコードの間を縦線で区切ります。枠の中には他の情報を入れてはいけません。会社のロゴなどを入れる場合は枠の外に置きます。マークは読みやすく、消えにくく、移し替えられないもので、使用中に見える場所に、できれば向かい合う2面以上に付けます。手書きは不可です。赤とオレンジは危険物の表示に使われる色のため避けるよう求められています。

特に注意したいのは次の場面です。

  • ダンネージ: 積み込みのときに現場で切る角材も、消毒済みでマークが付いている必要があります。マークの要素がそろわないほど小さく切った木片は、ダンネージに使うべきでないとされています
  • 修理したパレット・木箱: 部材の約3分の1までを交換したものは「修理」とされ、交換に使う木材は消毒済みのもの(追加した部材ごとにマークを付ける)か加工木材でなければなりません
  • 再製造したもの: 約3分の1を超えて交換したものは「再製造」とされ、以前のマークを恒久的に消し、改めて消毒とマークの表示が必要です

梱包が届いたら、マークの4要素がそろっているか、読めるか、処理コードが仕向け国の要件に合うか、生産者コードが取引している業者のものかを、ロットごとに確認します。

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日本とベトナムで確認する先

日本では農林水産省の植物防疫所が木材こん包材の制度を所管し、輸出用の消毒と表示は「輸出用木材こん包材消毒実施要領」に沿って行います。ベトナムでは農業環境省の栽培・植物保護局(2025年7月1日より前は植物保護局)が植物検疫を所管しています。

日本から輸出する場合。 植物防疫所のページによると、日本は2007年4月から国際基準に基づく対応を行っています。ISPM 15に沿った国に輸出する場合、木材こん包材は「輸出用木材こん包材消毒実施要領」(平成15年10月16日制定、令和3年1月12日最終改正)に従って消毒し、表示します。農林水産省はこの要領に基づく登録機関として、一般社団法人 全国植物検疫協会と、一般社団法人 全国木材検査・研究協会の2団体を登録しており、これらの団体が消毒実施者の認定と生産者の登録を行っています。認定・登録を受けた事業者の一覧は、各団体のウェブサイトで公開されています。

梱包業者に発注するときは、その業者(または消毒を依頼する先)が認定・登録を受けているかを確認し、マークの生産者コードと照合します。仕向け国ごとの要件は、植物防疫所が国別の情報をまとめて公開しています。

ベトナムなどアジアから日本へ送る場合。 日本に入る貨物の木材こん包材も、日本の輸入の要件を満たす必要があります。ベトナムでは、ベトナム政府が公表している統合文書(100/2026/VBHN-TT-BNNMT)で、通達12/2025/TT-BNNMT(2025年7月1日施行)により「植物保護局(Cục Bảo vệ thực vật)」の名称が「栽培・植物保護局(Cục Trồng trọt và Bảo vệ thực vật)」に置き換えられたことが確認できます。輸出入の植物検疫の手続きは現在、通達33/2014/TT-BNNPTNT(その後の改正を含む)に定められており、これを置き換える通達案の意見募集が2026年6月16日から7月16日まで行われました。確認日の時点で、新しい通達の公布は確認できていません。手続きが変わる可能性があるため、ベトナムの梱包業者がISPM 15のマークを付けるためのコードを受けているかを含め、出荷の時点で同局または地域の植物検疫支局に確認します。

ベトナムの工場から家具など木製品を調達する場合の工場選びは、ベトナムから家具を輸入・調達するをご覧ください。

重量物・機械の梱包で決めること

機械や重量物の輸出梱包では、ISPM 15に加えて、木箱の構造と強度、製品の固定、防錆と乾燥剤、荷印と重心の表示、吊り位置を、製品と輸送経路に合わせて決めます。

項目決めることよくある失敗
木箱の形式すかし箱(木枠)か密閉箱か、合板張りか湿気に弱い製品をすかし箱で送る
底板(スキッド)製品重量と重心に合わせた角材の寸法と配置重心が偏り、フォークリフトで傾く
固定ボルト留め、当て木、バンド、緩衝材輸送中の振動で製品が箱の中で動く
防錆防錆油、気化性防錆剤(VCI)のフィルム・紙海上輸送中に結露して錆びる
乾燥剤防湿フィルムで包んだうえで乾燥剤を入れるフィルムで密閉せず、乾燥剤が効かない
表示天地、取扱注意、重心、吊り位置、総重量吊り位置の表示がなく、現地で誤った位置を吊る
書類梱包明細(パッキングリスト)と箱番号箱番号と明細が合わず、通関や受け入れで手間取る

いくつか補足します。

  • 防錆と乾燥剤はセットで考えます。 乾燥剤は、防湿フィルムで製品を包んで外気を遮断したうえで効果が出ます。すかし箱に乾燥剤だけを入れても、海上輸送中の湿気には追いつきません。乾燥剤の量は、包む容積、フィルムの性能、輸送期間で決まるため、梱包業者と計算の根拠を確認します
  • 重心と吊り位置は、現地で荷を扱う人が見て分かるように表示します。外国語が読めない作業者もいるため、絵表示を使います
  • コンテナでの固定: 木箱そのものが丈夫でも、コンテナの中で動けば製品は傷みます。ラッシングや当て木で固定する方法を、積み込みを行う業者と決めておきます
  • 輸入国での再使用: 木箱を現地で保管や返送に使う場合は、繰り返しの使用に耐える構造にします

大型の溶接構造物をベトナムで調達する場合の輸送の考え方は、ベトナム製缶・溶接構造物の調達をご覧ください。

梱包業者への発注と受け入れの確認

輸出梱包を外部に任せる場合も、仕様書と確認の手順は発注者が持つことが大切です。木箱・パレット・ダンネージのすべてがISPM 15の要件を満たし、マークが付いていることを、出荷ごとに記録します。

発注のときに仕様書に書くこと:

  1. 製品の寸法、重さ、重心、吊り位置、湿気・振動への弱さ
  2. 仕向け国と輸送経路(海上・航空、積み替えの有無、現地での保管期間)
  3. 木箱の形式、材質(未加工材か合板か)、底板の構造
  4. ISPM 15の消毒方法とマーク、ダンネージの扱い
  5. 防錆、防湿フィルム、乾燥剤の仕様
  6. 荷印と表示の内容、言語、絵表示
  7. 梱包明細の書式と箱番号の付け方

受け入れ・出荷時の確認:

  • 木箱・パレット・ダンネージのすべてにマークがあるか。とくに現場で追加したダンネージ
  • マークが読めるか、手書きでないか、処理コードが仕向け国の要件に合うか
  • 樹皮が残っていないか、虫の穴や木くずがないか
  • 防湿フィルムの破れ、乾燥剤の入れ忘れがないか
  • 写真で記録を残す。マーク、固定の状態、箱番号を、コンテナごとに撮影します

検品の進め方はベトナムの検品・品質管理もあわせてご覧ください。

本記事は参考情報です。ISPM 15、日本の植物防疫所とベトナムの所管機関の情報は2026年10月27日に確認しました。出荷の時点で、仕向け国の現行規則と各国の植物防疫機関に確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 樹脂パレットにもISPM 15のマークは必要ですか?
ISPM 15は未加工の木材でできた梱包材が対象のため、樹脂パレットは対象外です。ただし、樹脂パレットの上に木製のダンネージや木枠を使う場合、その木材には消毒とマークが必要です。仕向け国独自の要件も確認します。

Q2. 合板の木箱は消毒しなくてよいのですか?
合板、パーティクルボード、OSBなど、接着剤・熱・圧力で作った加工木材だけで作った梱包材は、ISPM 15で免除されています。ただし、脚や補強に未加工の角材を使っている場合は、その部分に消毒とマークが必要です。

Q3. マークのHTとMBは何が違いますか?
HTは熱処理で、木材の中心部まで56 ℃以上を30分以上保つ方法です。MBは臭化メチルによるくん蒸で、オゾン層を破壊する物質のため、仕向け国が受け入れるかを事前に確認します。ほかにDH(誘電加熱)とSF(フッ化スルフリル)も認められています。

Q4. 日本で輸出用の木箱を作るとき、どこに確認すればよいですか?
制度は植物防疫所が所管し、「輸出用木材こん包材消毒実施要領」に沿って消毒と表示を行います。消毒実施者の認定と生産者の登録は、農林水産省が登録した全国植物検疫協会と全国木材検査・研究協会が行っており、一覧は各団体のサイトで確認できます。

Q5. ベトナムの工場から日本へ送る木箱は何を確認すればよいですか?
日本の輸入の要件を満たすISPM 15のマークが、木箱・パレット・ダンネージのすべてに付いているかを確認します。ベトナムでの手続きやマークのコードについては、農業環境省の栽培・植物保護局または地域の植物検疫支局に、出荷の時点で確認します。

まとめ

輸出梱包のISPM 15は、「木箱を処理済みにする」だけでは足りません。パレット、ダンネージ、修理した梱包材まで含めて、すべての未加工の木材が消毒され、4要素のそろったマークが付いていることを、出荷ごとに確認します。そのうえで、防錆と乾燥剤、固定、表示を製品と輸送経路に合わせて決め、仕様書として発注者が持っておくことが、トラブルを減らす近道です。

粉体・粒体を運ぶフレコンバッグの調達については、姉妹記事のフレコンバッグの海外調達で解説しています。

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参考(2026年10月27日確認)