ベアリングや切削工具は、工場が毎月のように買う消耗品であると同時に、有名メーカーの名前をかたった偽物が出回りやすい品目でもあります。偽物は取り付けたときには見分けがつかず、数か月後に異音・発熱・早期の破損として表に出ます。そのときには、どの仕入れ先から来たどのロットだったのか、たどれないことも少なくありません。

この記事は、ベトナムやアジアの工場で保全・購買を担当する方に向けて、偽物や出どころのわからない部品を避けるための確認手順をまとめたものです。メーカーが公式サイトで案内している真贋確認の仕組みは、各社の公式サイト・公式資料で確認できた内容だけを書いています(2026年10月27日確認)。仕組みは変わることがあるため、使う前にメーカーのページを開き直してください。

メーカー名の扱いについて: 記事中のメーカー名は「買い手が型番で指定する代表的なメーカーの例」と「真贋確認の仕組みを公式に案内しているメーカーの例」です。Sunsho Tradeがそのメーカーの正規代理店であることや、取引関係があることを意味しません。

💬 手元の部品が本物かどうか心配なとき、これから買う部品の流通を確かめたいときはご相談ください。 Sunsho Tradeはホーチミンに拠点を置く日系商社です。お問合せフォームかLINEからどうぞ。

最初に押さえること|本物と認められるのはメーカーだけ

SKFの資料には、SKFの商標が付いた製品や箱が本物かどうかを確認できるのはSKFの専門家だけである、という趣旨が書かれています。売り手が出す「正規品証明書」についても、偽物の売り手がそうした書類を出すことがあり信用できない、と注意しています。また、偽物の価格は本物に近く、価格は見分ける手がかりにならないとも書いています。

ここから言えることは3つです。

  • 商社を含め、売り手はメーカーの代わりに本物だと保証できない。 売り手にできるのは、どこから仕入れたかを示し、購入記録を残すことです。
  • 安さは判断材料にならない。 「安すぎるから偽物」「相場どおりだから本物」のどちらも成り立ちません。
  • 確認に使うのは、メーカーの仕組みと購入記録の組み合わせ。 後で説明するとおり、メーカーへの確認依頼には仕入れ先名と購入の証明を求められます。

ベアリングメーカーが公式に案内している真贋確認の仕組み

ベアリングでは、いくつかの大手メーカーが公式サイトで真贋確認の方法を案内しています。下の表は、各社の公式サイト・公式資料で読めたことだけをまとめたものです。一部は以前に発行されたPDF資料です(SKFの資料は2016年、シェフラーの資料は2021年・2022年の発行)。

メーカー公式に案内されている仕組み公式資料に書かれている注意
SKFスマートフォン用アプリ「SKF Authenticate」(App Store・Google Playで無料)で、疑わしい製品と購入の証明の写真をSKFに送れる。製品と箱のすべての表示をはっきり撮った写真をgenuine@skf.comに送る方法もある確認依頼には仕入れ先の名前と購入の証明が必須。偽物の売り手が出す正規品証明書は信用できない。正規代理店からの購入が本物を確保する最善の方法
NSK工作機械用ベアリング向けの「NSK Verify」(箱の2次元コードを読み取る)と、世界ベアリング協会(WBA)のアプリ「WBA Bearing Authenticator(WBACheck)」WBACheckは、対応する2次元コードを読み取ってWBA加盟各社のベアリングの真贋を判定する
不二越(NACHI)WBAと協力して作られたアプリ「WBA Bearing Authenticator(WBA Check)」箱にデータマトリックスコードが印刷された製品が対象で、QRコードが印刷された製品はこのアプリの対象外。不二越の支店と正規代理店からの購入を求めている
Timken「Bearing Authenticator」アプリが、Timkenとほかの主要ベアリングメーカーの包装のセキュリティラベルを認識する。包装ラベルのQRコードを読み取るTimkenの正規代理店、またはTimkenから直接買うことも本物を確保する方法として挙げている
シェフラー(FAG・INA)アプリ「OriginCheck」で、包装ラベルの「Schaeffler OneCode」(QRコードまたはデータマトリックスコード)を読み取る。疑わしいときは写真をpiracy@schaeffler.comに送る黄色・赤の表示が出たとき、コードが登録されていないとき、本物のコードがコピーされた可能性があるときは、シェフラーの確認が必要としている。正規代理店からの購入を勧め、代理店の一覧を公式サイトで公開している

NTN、ジェイテクト(Koyo)なども型番で指定されることの多いメーカーですが、この記事ではそれぞれの公式サイトで仕組みを確認できていないため、内容は書いていません。各社の現地法人か正規代理店に問い合わせてください。

アプリの結果をどう読むか|3つの限界

アプリは便利ですが、結果の意味を取り違えると逆に安心材料にしてしまいます。

  1. 読み取りで分かるのは、箱のコードが正しいかどうか。 箱そのものが本物からの流用や精巧な複製であれば、コードが正しくても中身が本物とは限りません。SKFが確認依頼に製品の写真と購入の証明を求め、シェフラーが「本物のコードのコピー」もメーカーの確認が必要としているのはそのためです。
  2. コードの種類がメーカーで違う。 不二越の案内ではWBAアプリはデータマトリックスコードが対象でQRコードは対象外、Timkenの案内では包装ラベルのQRコードを読み取るとしており、シェフラーのアプリはQRコードとデータマトリックスコードの両方に対応しています。手元の箱にどのコードがあり、どのアプリが対応するかは、そのメーカーの案内で確かめます。
  3. 最終的な判断はメーカーが行う。 疑わしいときは、アプリの結果だけで済ませず、写真と購入記録をそろえてメーカーに確認を依頼します。

💬 購入記録の残し方や、受け入れ時の確認項目を自社の手順書に落とし込みたいときは、工場の消耗品(MRO)の調達のページもご覧ください。 品目表の型番の確認から一緒に進めます。

受け入れ前に立ち止まるべきサイン

次のサインは、それだけで偽物だと決めつける根拠にはなりません。ただし、1つでも当てはまったらロットを保留し、取り付ける前にメーカーへ確認を依頼するのが安全です。

  • 売り手が仕入れ元を説明できない、または自社で発行した「正規品証明書」しか出さない
  • 正規の流通では受注生産や取り寄せになるはずの型番が、異常に短い納期で届く(SKFの資料でも、正規でない売り手が短い納期を示す場合は疑うよう書かれています)
  • 箱・ラベルの型番と、製品の刻印の型番が一致しない。刻印がかすれている、傾いている、同じロットの中で書体が違う
  • 同じ型番なのに、1つのロットの中に何種類もの箱が混ざっている
  • 取り付けが異常に難しい、運転して早いうちに音や熱が出る(SKFの資料は、取り付けの難しさや早期の故障も偽物のサインになりうるとしています)

保留にしたら、製品と箱のすべての表示をはっきり撮影し、箱は捨てずに保管し、請求書と仕入れ先名を確認依頼に添えられるよう準備します。

ベアリング以外の部品で気をつけること

ベアリング以外の品目では、メーカーが公式に案内している真贋確認の仕組みをこの記事では確認できていません。そのため、仕組みの内容は書かず、工場側でできる確認だけを挙げます。

品目型番・仕様で確認すること受け入れ時に見ること
Vベルト断面形状と長さ。ISO 4184:2025は一般用・細幅Vベルトの有効長さの規格で、複数本掛けの組み合わせ公差も扱うベルト背面の印字が品目表の型番と一致するか。複数本掛けは組で手配されているか
スローアウェイチップISO 1832の形状・寸法記号に加え、メーカー独自のブレーカと材種箱の型番・材種・ロット番号と、チップ本体の表示の一致。開封済みの箱が混ざっていないか
砥石・切断砥石寸法、最高使用周速度、砥粒・粒度・結合度。EN 12413:2019は回転して使う結合研削材の安全要求の欧州規格(超砥粒と研磨布紙は対象外)ラベルの最高使用速度が機械の回転速度以上か。ひび・欠けがないか
保護具ベトナムでは通達16/2026/TT-BNVの別表Iに、保護帽、絶縁手袋、絶縁靴・安全靴、安全帯などがリスクの高い製品として挙がっている適合の表示と書類がそろっているか。輸入品は国の品質検査の対象になる

ベアリング・ベルト・切削工具・砥石が、ベトナムでどの省庁の輸入時の品質検査の対象になるかは、この記事では確認できていません。申告する時点で有効な規則を、品目ごとのHSコードで確認してください。保護具の詳しい扱いはベトナム工場の消耗品をまとめて調達する方法に書いています。

購入記録として残すもの

メーカーへの確認依頼で仕入れ先名と購入の証明を求められる以上、工場側は「どの売り手から買った、どのロットか」を後からたどれる状態にしておく必要があります。

記録何に使うか
完全な型番が書かれた請求書・納品書メーカーへの確認依頼に添える購入の証明。入庫時の型番照合
売り手の名前と所在地、売り手が説明した仕入れ元確認依頼に必要な仕入れ先名
受け入れ時に撮った箱・ラベル・コード・刻印の写真後から疑いが出たときの照合
輸入申告書・原産地証明(輸入品の場合)ロットの出どころをたどる
代替品の承認記録(ある場合)他社型番を技術部門が認めた証拠

書類の求め方全般はベトナムの部品調達と品質書類、売り手の確認方法はベトナムの仕入先確認で解説しています。

Sunsho Tradeがお手伝いすること

Sunsho Tradeはホーチミンに拠点を置く商社で、ベトナム・日本・アジア各地の工場や流通から仕入れ、検品・書類・納品までを管理します。売り手である以上、メーカーに代わって本物だと保証することはできません。そのうえで、次のことを工場の方と一緒に進めます。

  1. 本物を必要とする品目では、どの流通から仕入れるかを発注前に買い手と取り決め、品目ごとの仕入れ元を書類に残す
  2. 受け入れ時に箱・ラベル・コード・刻印を撮影し、購入記録と一緒に保管する。疑いが出たときに、買い手がメーカーへ確認を依頼できるようにする
  3. 品目表の型番に補助記号やブレーカ・材種の抜けがないかを確認する
  4. 代替品を検討するときは、元の型番と候補の両方のカタログを並べ、工場の技術部門が判断できるようにする

関連記事

よくある質問(FAQ)

Q1. SKFのベアリングが本物かどうかは、どう確かめますか?
SKFの資料によると、確認できるのはSKFの専門家だけです。アプリ「SKF Authenticate」で製品と購入の証明の写真を送るか、製品と箱のすべての表示を撮った写真をgenuine@skf.comに送ります。どちらの場合も、仕入れ先の名前と購入の証明が必要です。SKFは正規代理店からの購入を勧めています。

Q2. アプリで「正しいコード」と出れば本物と考えてよいですか?
そうとは限りません。読み取りで分かるのは箱のコードが正しいかどうかで、箱が流用や複製であれば中身は別物の可能性があります。製品の刻印と箱の型番の照合、購入記録の保管、疑わしいときのメーカーへの確認依頼を組み合わせてください。

Q3. WBAのアプリはどのメーカーのベアリングにも使えますか?
NSKの案内では、WBA加盟各社のベアリングを対応する2次元コードで判定するとされています。ただし不二越の案内では、データマトリックスコードが印刷された製品が対象で、QRコードが印刷された製品は対象外です。手元の箱のコードと、そのメーカーの案内を確かめてください。

Q4. 売り手の出す「正規品証明書」は信用できますか?
SKFの資料は、偽物の売り手も正規品だとする証明書を出すことがあり、そうした書類は信用できないとしています。証明書だけで判断せず、仕入れ元の説明、購入記録、メーカーの確認の仕組みで確かめてください。

Q5. Sunsho Tradeはメーカーの正規代理店ですか?
記事中のメーカー名は、型番で指定される代表的なメーカーや、真贋確認の仕組みを公式に案内しているメーカーの例として挙げたもので、正規代理店であることや取引関係を意味しません。本物を必要とする品目では、仕入れる流通を発注前に買い手と取り決め、購入記録を残して、買い手がメーカーに確認できるようにしています。

まとめ

偽物の部品を避ける作業の大部分は、取り付ける前に終わっています。メーカー型番を補助記号まで正しく書くこと、どの流通から来た品かを確かめること、受け入れ時の写真と購入記録を残すこと。メーカーのアプリや確認窓口は心強い仕組みですが、購入記録と組み合わせてはじめて役に立ちます。

💬 これから調達する部品の型番リストや、気になっているロットの写真をお送りください。 Sunsho Tradeが品目ごとの仕入れ元の確認と、購入記録の残し方の整理をお手伝いします。お問合せフォームまたはLINEへどうぞ。