ベトナムの工場では、立ち上げから数年たつと消耗品の仕入れ先が自然に増えていきます。ベアリングは地場の販売店、切削工具は日系の工具商、手袋や安全靴は工業団地の近くの店、潤滑油は別の代理店。1件ごとの金額は小さいのに、見積・請求書・納品の窓口が何十にもなり、購買担当の時間の多くがそこに取られます。そして設備が止まったときに、必要なベアリングの型番が誰にもわからない、ということが起きます。

この記事は、ベトナムに工場を持つ日系企業の購買・保全・管理部門の方に向けて、消耗品(MRO:Maintenance, Repair and Operations)の仕入れ先をまとめるときの進め方を、作業の順番で整理したものです。「品目表 → 重要度の分類 → 在庫の基準 → 発注の仕組み → 輸入時の確認 → 窓口の選び方」の順に進みます。

メーカー名の扱いについて: 記事中のメーカー名は「買い手が型番で指定する代表的なメーカーの例」です。名前を挙げていることは、Sunsho Tradeがそのメーカーの正規代理店であることや、取引関係があることを意味しません。

💬 消耗品の品目表を、少ない仕入れ先にまとめたいときはご相談ください。 Sunsho Tradeはホーチミンに拠点を置く日系商社で、品目表の型番の抜けを洗い出すところからお手伝いします。お問合せフォームかLINEからどうぞ。

消耗品(MRO)に含まれるもの

工場の消耗品とは、製品には入らないものの、設備を動かし、人が安全に働くために毎月消費されるものです。製品に入る原材料・図面部品は生産計画に沿って買いますが、消耗品は保全の予定と摩耗の速さに沿って買います。この違いが、承認の流れと会計の扱いを分けます。

よくある分け方は次の5つです。

  • 動力伝達: ベアリング、軸受ユニット、Vベルト、チェーン、スプロケット、カップリング、オイルシール
  • 切削・研削: スローアウェイチップ、エンドミル、ドリル、タップ、のこ刃、砥石、切断砥石、研磨紙
  • 保護具: 保護帽、手袋、安全靴・長靴、保護めがね、防じんマスク、墜落制止用器具
  • 油脂・化学品: 潤滑油、グリース、洗浄剤、接着剤、防錆剤
  • 工具・一般資材: 手工具、テープ、結束バンド、汎用ボルト、電材

型番で指定されることが多いのは、たとえばベアリングならSKF、NSK、NTN、ジェイテクト(Koyo)、シェフラー(FAG・INA)、不二越(NACHI)、Timken、ベルトならGates、バンドー化学、三ツ星ベルト、切削工具ならサンドビック・コロマント、三菱マテリアル、京セラ、住友電工、タンガロイ、OSGといったメーカーです。

偽物が出回りやすいベアリングなどの部品の見分け方は、別の記事偽物のベアリング・工業部品を見分ける確認手順にまとめています。

手順1|品目表は「呼び名」ではなく「メーカー型番」で作る

仕入れ先をまとめるときに一番多い失敗は、既存の品目表が「ベアリング 6205」「耐切創手袋」のような呼び名と数量だけになっていることです。新しい仕入れ先はそれを自分の解釈で見積もり、届いた品は、寿命を左右する細部で今使っているものと違っていた、ということになります。

ベアリングを例にすると、ラジアル軸受の主要寸法はISO 15:2017で標準化されているため、同じ基本番号なら寸法上は互換です(2026年10月27日確認)。一方で、シールかシールドか、内部すきま、精度等級といった補助記号はメーカーごとの表記で、ここが違えば別の品です。切削工具も同じで、チップの形状・寸法はISO 1832で共通ですが、ブレーカと材種はメーカーごとに違います。

品目表には少なくとも次の列を持たせます。

列内容書き方の例
社内コード倉庫の管理番号BRG-0012
メーカーと型番(補助記号まで)カタログどおりの完全な型番メーカーA、6205+シール・すきま記号
主な仕様寸法・材質・等級・規格25×52×15 mm、ISO 15
使用設備設備名と取付位置3号コンベア 駆動側
承認済みの代替品技術部門が認めた他社型番承認者と日付も書く
使用量月あたり、または保全1回あたり四半期に4個
在庫基準最小・最大保全部門が決める
必要書類請求書、原産地証明、成績書、SDS品目のグループごとに

いちばん空欄になりやすく、いちばん時間を節約してくれるのが「承認済みの代替品」の列です。ある型番が手に入らないとき、購買が代わりを推測する必要がなくなります。

手順2|金額ではなく「欠品したら止まるか」で分ける

購買金額によるABC分析は必要ですが、消耗品ではそれだけでは足りません。安いベアリング1個がプレス機の主軸で欠ければライン全体が止まりますが、毎月の金額が大きい手袋は代わりの仕入れ先がいくらでもあります。

分類は2つの軸で行います。

  1. 欠品したときの影響: 設備停止、能率低下、不便なだけ
  2. 調達の難しさ: 国内で手に入る、輸入が必要、1社しか作っていない

「止まる」かつ「調達が難しい」品目は、安全在庫を持ち、承認済みの代替品を決めておく対象です。「止まらない」かつ「どこでも買える」品目は、都度発注に切り替えて在庫を減らせます。

手順3|在庫の最小・最大は保全部門と一緒に決める

在庫の基準は、実際の使用量と、仕入れ先が書面で約束した調達期間をもとに、保全と購買が一緒に決めます。調達期間は品目・仕入れ元・時期によって変わるため、この記事では一般的な数字は示しません。進め方の例です。

  • 過去6〜12か月の出庫記録から使用量を出し、突発故障による使用は分けておく
  • 調達期間は品目表全体ではなく品目ごとに仕入れ先に聞き、品目表に書いて、変わったら更新する
  • 最小在庫=調達期間中の使用量+保全部門が決める予備
  • 保全計画が変わったときや新しい設備が入ったときに見直す

輸入品の調達期間には、通関の時間と、品質検査の対象であれば検査登録の時間も含めて考える必要があります。そのため手順5の確認は早めに行います。

💬 当社が扱う消耗品の範囲とまとめ調達の進め方は、工場の消耗品(MRO)の調達のページでご紹介しています。 既存の品目表をお送りいただければ、型番の抜けている行や、代替品・在庫基準・必要書類の列が空いている行を洗い出します。

手順4|窓口をまとめたら、発注の仕組みもまとめる

仕入れ先を減らす効果が出るのは、発注の仕組みも一緒に単純にしたときです。合意した品目と条件の一覧、1つの発注窓口、決まった納品日、そろった書類の4点がそろってはじめて、購買の手間が減ります。代表的な形は次のとおりです。

  • 基本契約(ブランケットオーダー): 品目・価格条件・納品条件を一定期間で合意し、必要なときに都度の出荷指示を出す
  • 定期発注: 週・月単位で需要をまとめて1本の注文にし、納品回数と請求書の数を減らす
  • 在庫補充型: 在庫が最小を下回ったら倉庫から窓口へ連絡し、最大まで補充する

どの形でも、次の3点は書面で決めておきます。(1) 納品は品目表どおりのメーカー・型番で、勝手に代えない。(2) 型番を代える必要があるときは事前に連絡し、技術部門の承認を待つ。(3) 毎回の納品に付ける書類。

手順5|輸入時の確認はHSコードごとに行う

消耗品のすべてが通常の通関だけで済むわけではありません。保護具の一部は、ベトナムでリスクの高い製品として適合認証と輸入時の品質検査の対象になっています。

ベトナム内務省の通達16/2026/TT-BNV(政府電子情報ポータルに掲載された署名版、2026年10月27日確認)の別表「I. リスクの高い製品・商品」には、労働者用の保護具として次の品目が挙がっています。

別表Iの区分挙がっている品目引用されている国家技術基準
頭部の保護産業用保護帽QCVN 06:2012/BLĐTBXH
呼吸器の保護(医療用マスクを除く)防じんフィルター、防毒マスク・半面形用のフィルターQCVN 08:2012/BLĐTBXH、QCVN 10:2012/BLĐTBXH
手の保護(医療用手袋を除く)絶縁手袋QCVN 24:2014/BLĐTBXH
足の保護絶縁靴・絶縁長靴、安全靴・安全長靴QCVN 15:2013/BLĐTBXH、QCVN 36:2019/BLĐTBXH
墜落の防止安全帯と個人用墜落防止システムQCVN 23:2014/BLĐTBXH
衣服耐熱・耐炎の作業服QCVN 37:2019/BLĐTBXH

これらは、指定認証機関の認証結果にもとづく適合宣言を行い、輸入品は国の品質検査を受けることが求められています。品目ごとにHSコードも示されています。また同通達の第7条は、従来の通達01/2021/TT-BLĐTBXHを失効させています。古い通達を根拠にしている情報は確認し直す必要があります。

使うときの注意点が2つあります。

  • 商品名ではなく、HSコードと品目の説明で照らし合わせる。 「保護手袋」は一般的な呼び名ですが、別表の手の保護の欄に挙がっているのは絶縁手袋です。実際の品目のHSコードを通関担当が別表と照らし合わせてください。
  • ベアリング・ベルト・切削工具・砥石: これらがどの省庁の品質検査の対象リストに入るかは、この記事では確認できていません。申告する時点で有効な規則を、品目ごとのHSコードで確認してください。

ASEAN域内からの輸入で関税の優遇を使う場合は、ASEANの部品をベトナム工場へもあわせてご覧ください。

窓口の選び方|メーカーの正規代理店と商社は役割が違う

2種類の窓口は、解決する問題が違います。メーカーの正規代理店は、そのメーカーの製品の正規流通を保証します。商社は、複数のメーカー・複数の仕入れ元を1つの注文と1そろいの書類にまとめます。

比較の観点メーカーの正規代理店複数の仕入れ元をまとめる商社
扱う範囲そのメーカーの製品複数メーカー・複数の品目グループ
正規流通の確認メーカーが認めた流通品目ごとに仕入れ元を確認する必要がある
請求書・納品の数メーカーごと1本の注文にまとめられる
代替品そのメーカーの製品の中で複数の候補を出せるが、技術部門の承認が必要
製品の技術支援そのメーカーの製品について詳しいことが多い会社によって差がある

両方を使い分けることもできます。メーカーが正規代理店からの購入を勧めている重要な品目(ベアリングなど)は、その品がどの流通から来たのかを窓口に確認し、購入の記録を残しておきます。どこでも買える汎用品は、窓口を1つにまとめて管理する仕入れ先を減らします。

仕入れ先の評価の仕方はベトナムの工場監査、部品の品質書類はベトナムの部品調達と品質書類で解説しています。

Sunsho Tradeがお手伝いすること

Sunsho Tradeはホーチミンに拠点を置く商社で、ベトナム・日本・アジア各地の工場や流通から仕入れ、検品・書類・納品までを管理します。自社工場は持っていません。消耗品については、次のことを工場の方と一緒に進めます。

  1. 今の品目表を見直し、メーカー型番の抜けや、あいまいな行に印を付ける
  2. 買い手が指定するメーカー・型番どおりに仕入れ元を探す。代替品を検討したいときは、工場の技術部門が判断できるよう仕様を並べて示す
  3. 品目ごとに仕入れ元を確認して書類に残し、メーカーへの真贋確認が必要になったときに使える購入記録を保管する
  4. 発注前に、品目グループごとのHSコードと輸入時の書類を確認する
  5. 決めた日程で納品と書類をまとめる

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よくある質問(FAQ)

Q1. 消耗品(MRO)と原材料はどう違いますか?
原材料や図面部品は製品に入り、生産計画に沿って買います。消耗品は製品に入らず、設備を動かし人が安全に働くために使うもので、保全の予定と摩耗の速さに沿って買います。承認の流れや会計の扱いも分けておくと管理しやすくなります。

Q2. 消耗品はすべて1社にまとめるべきですか?
すべてである必要はありません。メーカーが正規代理店からの購入を勧めている品目はその流通を残し、どこでも買える汎用品を1つの窓口にまとめる、という使い分けが現実的です。大事なのは、品目表がメーカー型番で書かれ、承認済みの代替品の列があることです。

Q3. 輸入する手袋や安全靴は、ベトナムで認証が必要ですか?
通達16/2026/TT-BNVの別表Iでは、絶縁手袋、絶縁靴・絶縁長靴、安全靴・安全長靴がリスクの高い製品とされ、認証にもとづく適合宣言と輸入時の国の品質検査が求められています。それ以外の手袋は、実際のHSコードと品目の説明を、その時点で有効な別表と照らし合わせて確認してください。

Q4. ベアリングや切削工具は、輸入時に品質検査がありますか?
この記事では、品目ごとに確認できていません。申告する時点で有効な各省庁の「中リスク・高リスクの製品リスト」を、品目ごとのHSコードで確認してください。

Q5. 新しい仕入れ先が違う型番を納品しないようにするには?
品目表を補助記号まで含めたメーカー型番で書き、勝手に型番を代えないことを書面で取り決め、代える必要があるときは事前連絡と技術部門の承認を条件にします。受け入れ時には、箱の型番を品目表と照らし合わせてから入庫します。

まとめ

消耗品の仕入れ先をまとめる作業は、仕入れ先選びから始まるのではなく、メーカー型番で書かれ、承認済みの代替品があり、保全部門が在庫基準を決め、品目グループごとに必要書類が書かれた品目表から始まります。品目表ができていれば、仕入れ先の比較や切り替えはずっと簡単になり、型番違いや輸入書類の不足も減らせます。

💬 今お使いの消耗品の品目表(ExcelでもPDFでも)をお送りください。 Sunsho Tradeが1行ずつ型番を確認し、輸入時の書類が必要な品目グループを洗い出して、工場に合ったまとめ方をご提案します。お問合せフォームまたはLINEへどうぞ。