タイ・マレーシア・インドネシアなどASEAN域内のサプライヤーから部品・原料を仕入れ、ベトナムにある自社の日系工場へ運び込む——チャイナプラスワンやASEAN域内での分業が進むなかで、この経路の実務を整理したいという相談が増えています。
本記事では、ASEAN各国からベトナムの自社工場へ部品・原料を輸入する際の書類・関税・原産地証明の考え方を、ベトナムの現行法令をもとに整理します。各国側の輸出手続き(企業登記・規格認証・原産地証明の発給機関)は国ごとに異なるため、タイ・マレーシア・インドネシアの各記事をご覧ください。ベトナム国内の輸入規則は、税関総局(現・財務省 税関局)や法令データベースの公表情報にもとづき、本記事の内容は必ず現行の政令・通達で確認してください。
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まず輸入目的で税制上の扱いを分ける
ベトナムでの輸入は、自社工場での生産に使う原材料・部品なのか、それとも国内で転売する商品なのかによって、適用される関税の考え方が変わります。
自社工場が完成品を輸出する前提で、その原材料・部品・部材を輸入する場合、一定の条件を満たせば輸入関税が免税になる制度があります(輸出加工・輸出生産向けの原材料・部品の輸入免税)。この制度はベトナムの輸出入税法の施行政令であるNghị định 134/2016/NĐ-CP(Nghị định 18/2021/NĐ-CPおよびNghị định 182/2025/NĐ-CPにより改正)に規定されています。免税の対象になるには、免税対象物品リストの事前通知や、輸入した原材料・部品の使用状況を税関へ報告する決算(quyết toán)などの手続きが条件になります。国内向けに販売する完成品の原材料として輸入する場合はこの免税の対象外になるため、自社工場の生産計画のうちどの部分が輸出向けかを整理したうえで、税関または通関業者に個別に確認してください。
FTA税率を使うか、免税制度を使うかを整理する
ASEAN域内からの輸入では、経済連携協定の特恵税率と、輸出加工向けの免税制度は別の制度であり、条件を満たせばどちらか有利な方を選べる場合があります。
タイ・マレーシア・インドネシアなどASEAN加盟国からの輸入では、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)の特恵税率を使う方法と、RCEP(地域的な包括的経済連携協定)の特恵税率を使う方法があります。ベトナムの現行の特恵税率表は、ATIGAについてはNghị định 126/2022/NĐ-CP、RCEPについてはNghị định 129/2022/NĐ-CP(いずれも2022〜2027年期間の税率を規定)で定められています。どちらの協定も原産地規則を満たすことと、対応する原産地証明書(ATIGAはForm D、RCEPは所定の様式)の提出が条件です。
| 選択肢 | 適用条件 | 必要書類 |
|---|---|---|
| ATIGA特恵税率 | ASEAN域内原産であることの証明 | Form D(原産地証明書) |
| RCEP特恵税率 | RCEP原産地規則を満たすことの証明 | RCEP原産地証明書(発給機関発行または自己申告) |
| 輸出加工向け輸入免税 | 完成品を輸出する前提での原材料・部品輸入 | 免税対象物品リストの通知、使用実績の決算 |
(2026年9月25日時点でthuvienphapluat.vnの法令情報を確認)
自社工場が完成品を輸出する場合、免税制度を使うほうが有利なことが多い一方、原材料の一部を国内向け完成品にも使う、あるいは免税の手続き負担を避けたいといった事情があれば、FTA特恵税率を選ぶ判断もあり得ます。どちらを選ぶかは工場の生産計画・輸出比率によって変わるため、通関業者や税関と相談しながら決めることをおすすめします。
原産地証明の実務は各国の発給機関へ
原産地証明書は輸出国側の機関が発給するため、ベトナム側で用意するものではなく、サプライヤーに依頼して取り寄せる書類です。
Form DやRCEP原産地証明書は、タイなら対外貿易局(DFT)、マレーシアなら投資貿易産業省(MITI)、インドネシアなら商業省が指定する発給機関(IPSKA)が発給します(各国の窓口の詳細はタイ・マレーシア・インドネシアの各記事)。発注時点でどの協定の証明書が必要かをサプライヤーに伝え、出荷前に証明書の様式・HSコード・品名が輸入申告の内容と一致しているかを確認してください。証明書とインボイスのHSコードが食い違うと、特恵税率の適用に疑義が生じます。
通関手続きと窓口
ベトナムの税関手続きは電子通関システム(VNACCS/VCIS)を通じて行い、2025年3月の機構改革以降は税関総局に代わって財務省の税関局と地域単位のChi cục Hải quan(地域税関支局)が窓口になっています。
ベトナムの税関組織は2025年3月1日付で再編され、従来の税関総局(Tổng cục Hải quan)は財務省傘下の税関局(Cục Hải quan)となり、地方の税関支局は全国20の地域税関支局(Chi cục Hải quan khu vực)に統合されました。輸入申告や免税手続きの窓口は、工場が所在する地域を管轄する地域税関支局になります。組織名称は変更されたばかりのため、過去の資料やウェブサイトに旧名称(税関総局)が残っていることがあります。最新の管轄・様式は税関の公式情報またはthuvienphapluat.vnで確認してください。
実務の進め方
発注前に協定と原産地規則を確認し、出荷前に証明書とインボイスの整合性を確認し、輸入後は免税を使う場合の使用実績報告を忘れないという3段階で進めます。
- 自社工場の生産計画のうち、輸出向けか国内向けかを整理する(免税制度が使えるかどうかの前提)
- ATIGA・RCEPどちらの特恵税率を使うか、または輸出加工向け免税を使うかを決める
- サプライヤーに必要な原産地証明の様式を伝え、出荷前にHSコード・品名の整合を確認する
- 輸入申告を地域税関支局に提出し、免税を使う場合は対象物品リストの通知や決算などの手続きを期限内に行う
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よくある質問
1. ASEANから輸入した原材料は必ず輸入関税がかかりますか?
A. 自社工場が完成品を輸出する前提であれば、条件を満たすことで輸入免税制度(Nghị định 134/2016/NĐ-CP、改正後)の対象になり得ます。国内向け完成品の原材料は対象外です。生産計画のうちどの部分が輸出向けかを整理したうえで確認してください。
2. ATIGAとRCEP、どちらの特恵税率を使えばよいですか?
A. どちらも原産地規則を満たすことが条件で、証明書の様式が異なります。品目のHSコードで両方の税率を比較し、原産地規則を満たしやすい方を選ぶのが実務的です。
3. 原産地証明書はベトナム側で用意するのですか?
A. いいえ。原産地証明書は輸出国側の発給機関が発行する書類です。タイ・マレーシア・インドネシアそれぞれの発給機関にサプライヤーが申請し、取り寄せる必要があります。
4. 輸入免税とFTA特恵税率は同時に使えますか?
A. 制度としては別のものです。輸出加工向けの免税を使う場合、FTA特恵税率の適用を検討する必要自体がなくなることが多く、どちらか一方を選ぶ判断になります。工場の生産計画に応じて通関業者と相談してください。
5. 税関の窓口はどこになりますか?
A. 2025年3月の機構改革により、従来の税関総局は財務省の税関局となり、地方の窓口は全国20の地域税関支局に統合されました。工場が所在する地域を管轄する地域税関支局が窓口です。
まとめ
ASEAN各国からベトナムの自社工場へ部品・原料を入れる際は、輸出向けか国内向けかで税制上の扱いが分かれること、ATIGA・RCEPの特恵税率と輸出加工向け免税制度は別の仕組みであること、原産地証明は輸出国側の発給機関から取り寄せる書類であることの3点を押さえておくと、通関でのつまずきを減らせます。
ベトナムの制度は改正が続いているため、実際の申告前には税関または専門家に現行の政令・通達を確認してください。
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※出典:thuvienphapluat.vn(Nghị định 134/2016/NĐ-CP、Nghị định 18/2021/NĐ-CP、Nghị định 182/2025/NĐ-CP、Nghị định 126/2022/NĐ-CP、Nghị định 129/2022/NĐ-CP)、ベトナム財務省 税関局(旧・税関総局)の組織改編に関する公表情報。2026年9月25日確認。