ベトナムの工場や仕入先とメールやチャットでやりとりを始めると、見積もりも写真も届き、話はどんどん進みます。しかし、取引を始める前に一度立ち止まって確かめておきたいのが、相手が実在し、名乗っているとおりの会社かという点です。会社名と工場の住所、認証書、口座の名義がそろっていないまま前払いをしてしまうと、後から問題が起きても対応が難しくなります。

本記事では、ベトナムの仕入先と取引を始める前の確認を、会社登記の照合、工場の実在の確認、認証書の照合の3つに分けて、進める順番に整理します。現地で工場の設備や品質管理を細かく見る監査の項目は、ベトナム工場の監査・視察ガイド|チェックリストにまとめていますので、本記事はその前段階の「書類と実在の確認」に絞ります。

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なぜ取引前に仕入先を確かめるのか

仕入先の確認は、相手が登記された実在の会社か、話している相手と工場と請求書の名義が一致しているかを、取引を始める前に確かめるための作業です。

海外の仕入先とのやりとりでは、次のような食い違いが起きることがあります。

  • 見積書の会社名と、請求書や送金先の口座の名義が違う
  • 「自社工場」と説明されたが、実際は別の工場に作らせている仲介の会社だった
  • 認証書の会社名や住所が、取引する会社と一致しない
  • 写真の工場と、登記されている住所が別の場所にある

仲介の会社や外注先を使うこと自体は、ベトナムでもよくあることで、必ずしも悪いことではありません。問題は、それを知らないまま取引を始めることです。誰が作り、誰と契約し、誰に支払うのかを最初に確かめておくと、品質の問題や納期の遅れが起きたときに、誰と話せばよいかがはっきりします。「工場」として出てくる会社が仲介である場合の見分け方は、ベトナム部品サプライヤーの探し方|6ルートでも触れています。

確認は3つの層に分けて進める

仕入先の確認は、会社としての登記、工場としての実在、認証や許可の3つの層に分けると、どこまで確かめたかを整理しやすくなります。

層確かめること主な手段
会社の登記会社名、企業コード、本店の住所、法定代表者、事業の内容企業登録証明書の写し、国家企業登録ポータルでの照合
工場の実在工場の住所、建物と設備、実際に作っている人現地の訪問、ビデオ通話での案内、住所の地図での照合
認証・許可認証の対象の会社・住所・範囲・有効期限認証書の写し、認証機関への照会

3つの層は順番に進めるのが効率的です。会社の登記で食い違いが見つかれば、工場の訪問の前に相手に説明を求めることができます。

会社の登記を照合する

ベトナムの会社は、企業登録証明書に会社名・企業コード・本店の住所・法定代表者などが記載されており、その内容を国家企業登録ポータルの公開情報と照らし合わせて確かめます。

企業登録証明書に書かれていること

ベトナムの企業法(2020年企業法、法律第59/2020/QH14号)第28条は、企業登録証明書(Giấy chứng nhận đăng ký doanh nghiệp)の主な記載事項として、次のものを定めています。

  • 会社名と企業コード(mã số doanh nghiệp)
  • 本店の住所
  • 有限会社・株式会社の法定代表者の氏名・連絡先の住所・国籍・身分証明書類の番号
  • 資本金(会社の場合)

同法第29条によると、企業コードは国家企業登録情報システムが作る番号で、会社の設立時に付与されて企業登録証明書に記載されます。会社ごとに一つだけで、別の会社に使い回されることはありません。企業コードは、税金の義務や行政手続きなどに使われると定められています。

まず仕入先に企業登録証明書の写しを求め、見積書・契約書・請求書に書かれている会社名と企業コードが一致しているかを確かめます。

国家企業登録ポータルで照らし合わせる

同法第32条は、企業登録証明書を受けた会社は、その内容を国家企業登録ポータル(Cổng thông tin quốc gia về đăng ký doanh nghiệp)で公開しなければならないと定めています。公開する内容には、企業登録証明書の内容のほか、事業の業種などが含まれます。登録の内容が変わったときも、変更を公開することになっています。

国家企業登録ポータル(dangkykinhdoanh.gov.vn)には、会社を検索する機能があります。受け取った企業登録証明書の写しの会社名・企業コード・住所が、ポータルの情報と一致しているかを確かめます。写しの方が古く、住所や代表者が変わっている場合もあるため、食い違いがあれば相手に最新の状況を聞きます。

また同法第33条は、組織や個人が、国家企業登録情報システムに保存されている情報の提供を求めることができ、その場合は法律の定める手数料を払うと定めています。検索で見られる範囲より詳しい情報が必要なときは、この仕組みを使うことになります。

なお、企業法は改正されることがあるため、手続きの細かい点は確認する時点の現行の規定で確かめてください。

照合する項目見るところ食い違いがあったときに聞くこと
会社名見積書・契約書・請求書と一致しているか別の会社が窓口になっている理由
企業コード書類とポータルで同じかどの会社と契約するのか
本店の住所工場の住所と同じか別か工場はどこにあり、誰が運営しているか
事業の業種取引する品目を作る・売る業種か製造か、販売・仲介か
法定代表者契約書に署名する人と同じか署名する人の権限

送金先の口座の名義も同じ会社か

会社の登記を確かめたら、送金先の口座の名義が同じ会社かも確認します。個人名義の口座や、別の会社の口座への送金を求められた場合は、理由を書面で確かめてから判断します。途中でメールにより「口座が変わった」と連絡が来たときは、メール以外の方法で相手に確かめるのが安全です。支払い条件の考え方はベトナム製造委託の支払い条件|前払いリスクで解説しています。

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工場が実在するかを確かめる

登記が確かめられても、工場がその住所に実在し、取引する品目を実際に作っているかは別の問題で、訪問かビデオ通話で、住所と設備と作っている人を確かめます。

工場の実在の確認では、次の点を見ます。

  • 住所:企業登録証明書や見積書の住所と、実際の工場の場所が一致しているか。本店と工場が別の場所にあることはよくあるため、工場の住所を別に聞いておく
  • 看板と建物:工場の入口に会社名の看板があるか。同じ建物に複数の会社が入っていないか
  • 設備:取引する品目を作るための設備があり、動いているか
  • 作っている品目:同じ種類の製品を実際に作っているか。製造中の製品や在庫を見る
  • 人:説明する担当者が、その工場の社員か

訪問とビデオ通話の使い分け

現地を訪問できれば最も確実ですが、いつも訪問できるとは限りません。最初の段階ではビデオ通話で工場の中を案内してもらい、入口の看板から製造の現場までを途切れずに映してもらう方法もあります。ただし、ビデオ通話では映された範囲しか見えないため、取引の規模が大きくなる前に、現地での確認を入れるのが安心です。

現地では、設備や品質管理の仕組みまで見るかどうかで、確認の深さが変わります。設備・品質記録・衛生・労働環境などを体系的に見る場合は、ベトナム工場の監査・視察ガイドのチェックリストを使います。

認証書を照合する

ISOなどの認証書は、写しを受け取るだけでなく、認証の対象の会社名・住所・範囲・有効期限が取引する工場と一致しているかを確かめ、必要に応じて発行した認証機関に照会します。

認証書で見るところ確かめること
認証を受けた会社名取引する会社と同じか。親会社やグループ会社の名前になっていないか
対象の住所(サイト)取引する品目を作る工場の住所が含まれているか
認証の範囲取引する品目の製造が範囲に含まれているか
有効期限期限が切れていないか。更新の予定はあるか
発行した認証機関どの機関が発行したか。照会できる連絡先があるか

認証書でよくある食い違いは、グループの別の工場の認証書を見せられている、認証の範囲に取引する品目が含まれていない、期限が切れている、というものです。認証書の写しは画像の加工もできるため、大切な取引では、発行した認証機関のサイトの検索や問い合わせで、認証が有効かを確かめます。

食品・サプリ・化粧品などでは、ISOのほかに、その品目に必要な許可や、国ごとの登録が関わることがあります。どの許可が必要かは品目と、製品を売る国の規則によって異なるため、取引する品目に合わせて確認する項目を決めます。

確認を外部に頼むときに決めること

仕入先の確認を外部に頼むときは、どの層まで確かめるか、報告書に何を書いてもらうか、食い違いが見つかったら誰が相手に聞くかを先に決めておきます。

  • 確認の範囲:会社の登記だけか、工場の実在まで見るか、認証の照会まで含めるか
  • 報告の形:照合した項目と結果、写真、食い違いの有無と相手の説明
  • 食い違いへの対応:相手に確かめるのは依頼者か、確認を頼んだ先か
  • その後の流れ:確認のあと、見積もりの比較、サンプル、検品まで続けて頼むか

確認の結果は「問題なし」か「問題あり」かの二択ではなく、どこまで確かめられ、どこが確かめられなかったかを書いてもらうことが大切です。確かめられなかった点を把握しておけば、その後の契約や支払いの条件で備えることができます。

Sunshoができること

Sunsho Tradeは、ホーチミンに拠点を置く日系の商社です。ベトナムの仕入先と取引を始める前の確認として、次のようなお手伝いをしています。

  • 企業登録証明書の写しの取り寄せと、国家企業登録ポータルの公開情報との照合
  • 工場の住所・建物・設備・作っている品目の確認(訪問またはビデオ通話)
  • 認証書の会社名・住所・範囲・有効期限の照合
  • ベトナム語の書類の日本語での整理と、食い違いがあったときの相手への確認
  • 確認のあとの、見積もりの比較・サンプル・検品の手配

確認の範囲は、取引の内容とご希望に合わせて決めます。サービスの詳細は仕入先確認・検品をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. ベトナムの会社が実在するかは、どこで確かめられますか?
企業登録証明書の写しを受け取り、国家企業登録ポータル(dangkykinhdoanh.gov.vn)の会社検索で、会社名・企業コード・住所が一致しているかを照らし合わせます。

Q2. 企業登録証明書には何が書かれていますか?
企業法第28条は、主な記載事項として、会社名と企業コード、本店の住所、法定代表者の氏名、資本金などを定めています。

Q3. 本店の住所と工場の住所が違うのは問題ですか?
本店と工場が別の場所にあることはよくあります。工場の住所を別に聞き、誰が運営している工場か、取引する品目をそこで作っているかを確かめることが大切です。

Q4. ISOの認証書を受け取れば、確認は十分ですか?
写しだけでは十分とは言えません。認証の対象の会社名・住所・範囲・有効期限が取引する工場と一致しているかを確かめ、大切な取引では発行した認証機関に有効かを照会します。

Q5. 現地に行けない場合でも、工場の実在を確かめられますか?
ビデオ通話で入口の看板から製造の現場までを案内してもらう方法があります。映された範囲しか見えないため、取引の規模が大きくなる前に、現地での確認を入れるのが安心です。

まとめ

ベトナムの仕入先と取引を始める前の確認は、会社の登記、工場の実在、認証の3つの層に分けて進めます。企業登録証明書の会社名・企業コード・住所を国家企業登録ポータルの情報と照らし合わせ、送金先の名義まで確かめます。

そのうえで工場の住所と設備、作っている品目を確かめ、認証書は対象・範囲・期限まで照合します。どこまで確かめられたかを記録しておくと、その後の契約や支払いの条件を決めるときに役立ちます。

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参考(2026年10月25日確認)