ベトナムの工場に製造を任せると、日本の発注者が毎回現地に行って製品を確かめるのは簡単ではありません。そこで使われるのが、出荷前の検品や、製造中・積み込み時の立会いを現地で代わりに行ってもらう方法です。ただ、「検品を頼んだのに、届いた製品に不良が混ざっていた」という事態は、検品の頼み方があいまいなときに起きやすくなります。
本記事では、ベトナムで作った製品の検品を頼む発注者に向けて、検品の種類とタイミング、依頼の前にそろえるもの、合否の基準の決め方、検品報告書の読み方を、判断する順に整理します。品質管理の全体像(工程での作り込みや是正対応)はベトナム調達の品質管理・検品代行ガイドにまとめていますので、本記事では「検品を頼む実務」に絞ってお伝えします。
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検品は「いつ、何を見るか」で種類が分かれる
ベトナムの工場で行う検品は、量産の初めに見る初期検品、製造の途中で見る中間検品、出荷の前に完成品を見る出荷前検品、コンテナへの積み込みに立ち会う積込立会いに大きく分かれ、目的に合わせて組み合わせます。
| 検品の種類 | タイミング | 主な目的 |
|---|---|---|
| 初期検品 | 量産を始めた直後 | 量産の最初の製品が、承認した見本と同じかを確かめる |
| 中間検品 | 製造の途中 | 不良の傾向を早めに見つけ、残りの製造で直してもらう |
| 出荷前検品 | 製品の大半ができ、梱包が進んだ段階 | 出荷してよいかを、抜き取った製品で判断する |
| 積込立会い | コンテナへの積み込み時 | 検品した製品が、正しい数量と梱包で積まれるかを確かめる |
最もよく使われるのは出荷前検品です。完成した製品を見るため、出荷するかどうかの判断に直結します。一方で、出荷前検品で不良が見つかっても、その時点では作り直す時間が残っていないことがあります。初めて取引する工場や、新しい製品では、中間検品や初期検品を組み合わせて、早めに問題を見つける方が、結果として納期を守りやすくなります。
「立会い」と「検品」の違い
立会いは、工場の作業や検査に発注者の側の人が立ち会い、その様子と結果を確かめることを指すことが多い言葉です。たとえば、工場が行う機能試験や、積み込みの作業に立ち会います。検品は、発注者の側の人が自ら製品を抜き取り、決めた項目を確かめることです。どちらを頼むのかを依頼の段階ではっきりさせておくと、報告書に書かれる内容の行き違いを防げます。
依頼の前にそろえる5つのもの
検品を頼む前には、製品の仕様書、承認した見本、検品の項目と方法、欠点の分類と合否の基準、出荷の数量と予定の5つをそろえておく必要があります。
検品をする人は、発注者と工場の間で決めたことしか確かめられません。仕様があいまいなまま検品を頼むと、「どこまでが良品か」の判断が検品する人に任されてしまいます。
- 製品の仕様書:寸法と公差、材質、色、重さ、機能、表示(ラベルや刻印)、梱包の仕様
- 承認した見本:量産の基準になる見本(ゴールデンサンプル)。工場と発注者の両方が同じものを持っていることが大切
- 検品の項目と方法:外観、寸法の測り方、機能の確かめ方、使う道具
- 欠点の分類と合否の基準:どんな不良を致命・重・軽に分けるか、抜き取る数と許容数をどう決めるか
- 出荷の数量と予定:注文の数量、出荷の予定日、梱包の状態がいつそろうか
見本の承認が十分でないまま量産に進むと、検品の段階で「見本と違う」「そもそも基準がない」という問題が起きます。見本の段階での取り決めが、検品の土台になります。
欠点を3つに分けて決める
不良は、重さによって3つに分けて扱うのが一般的です。
| 欠点の分類 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 致命欠点 | 使う人の安全を損なうおそれがある、法令の表示に関わる | 鋭い突起、表示の誤り、異物の混入 |
| 重欠点 | 製品の機能を損なう、返品の理由になる | 寸法の外れで組み付けられない、機能しない |
| 軽欠点 | 機能には影響しないが、見た目や品質の印象を下げる | 小さな汚れ、目立たない傷 |
どの不良をどの分類に入れるかは、製品と売り方によって変わります。同じ「小さな傷」でも、贈答品では重欠点、工業用の部品では軽欠点として扱う、ということもあります。製品ごとに一覧にしておき、工場と検品する人の両方に渡しておきます。
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合否の基準とAQL
出荷前検品では、ロットから決めた数を抜き取り、見つかった不良の数が取り決めた許容数を超えるかで合否を判断する方法が広く使われ、その代表的な国際規格がISO 2859-1です。
ISO 2859-1とは
ISO(国際標準化機構)のサイトによると、ISO 2859-1の正式な名前は「Sampling procedures for inspection by attributes — Part 1: Sampling schemes indexed by acceptance quality limit (AQL) for lot-by-lot inspection」です。日本語にすると、計数値検査(良・不良などを数える検査)の抜取検査手順のうち、ロットごとの検査について、AQL(合格品質限界)を指標にした抜取方式を定めた規格です。
ISOのサイトでは、2026年1月に第3版(ISO 2859-1:2026)が発行され、1999年の版とその追補を置き換えたとされています。第3版では、スキップロット(品質が安定していれば一部のロットの検査を省く方法)の手順が加わりました。また、検査の結果を見ながら、品質が良ければ「なみ検査」から「ゆるい検査」へ、不良が増えれば「きつい検査」へ切り替える切替えのルールを含むことも説明されています。
ISO 2859-1は、連続して作られるロットを一つずつ検査する場合の規格です。単発のロット(孤立ロット)を検査する場合については、別の規格ISO 2859-2(限界品質LQを指標にした孤立ロットの抜取検査)が用意されています。
取引で決めること
ISO 2859-1に沿って検品をする場合でも、次の点は発注者と工場の間で決める必要があります。
- どの版の規格に沿うか:2026年に新しい版が出たため、契約書や検品の指示書にどの版を使うかを書いておく
- 検査水準:ロットの大きさに対して、どれくらいの数を抜き取るか
- AQLの値:致命・重・軽の欠点ごとに、どの値を使うか
- 不合格のときの扱い:全数の選別、作り直し、再検品をどう進めるか、その費用を誰が持つか
AQLの値や検査水準に、どの製品にも当てはまる正解はありません。製品の重要度と、不良が出たときの影響の大きさで決めます。規格の表そのものは規格の本文に載っているため、正確に使うには規格を入手して確かめてください。不合格のときの費用の考え方は、ベトナム工場の不良・納期遅延|費用は誰が持つかで整理しています。
検品報告書の読み方
検品報告書は、最初の結論の欄だけでなく、抜き取った数、欠点の分類ごとの数、写真、測定の結果、梱包と表示の確認まで読み、出荷するかどうかは発注者が判断します。
| 報告書の項目 | 読むときに確かめること |
|---|---|
| 結論(合格・不合格・保留) | 何を根拠にその結論になったか |
| 製品と数量 | 注文の数量のうち、検品の時点でどれだけ完成・梱包されていたか |
| 抜き取った数 | 取り決めた検査水準どおりの数を抜き取ったか |
| 欠点の一覧 | 致命・重・軽ごとの数と、取り決めた許容数との比較 |
| 写真 | 不良の写真だけでなく、良品・梱包・表示の写真があるか |
| 測定・試験の結果 | 寸法や重さの実測値、機能の確認の結果 |
| 梱包と表示 | 外箱の表示、入り数、ラベル、輸送の表示 |
| 特記事項 | 検品の途中で気づいたこと、工場の説明 |
「保留」と書かれたとき
報告書の結論が「保留」になるのは、仕様書に書かれていない点で判断が分かれた、見本と比べて判断がつかなかった、などの場合です。保留の点は、写真と説明を見て発注者が判断します。判断に迷う点が多い場合は、仕様書と見本の取り決めが足りていないことを示しているので、次の注文の前に見直します。
完成していない数量に注意する
出荷前検品の時点で、注文の数量のすべてが完成・梱包されているとは限りません。報告書には、検品の時点で完成していた数量と、まだ製造中の数量が書かれているかを確かめます。検品の後に作られた分は、検品の対象に入っていないことになります。
結論だけで出荷を決めない
報告書の結論が「合格」でも、写真や特記事項に気になる点が書かれていることがあります。逆に「不合格」でも、軽欠点がわずかに許容数を超えただけで、選別して出荷する判断をすることもあります。出荷するかどうか、工場に何を直してもらうかは、報告書の中身を読んだうえで、発注者が決めます。
縫製品のように、検品と別に生地の試験が関わる製品については、縫製品の検品と生地試験|量産前後に確かめることも参考になります。
Sunshoができること
Sunsho Tradeは、ホーチミンに拠点を置く日系の商社です。ベトナムの工場で作った製品について、次のようなお手伝いをしています。
- 仕様書と見本をもとにした、検品の項目と欠点の分類、合否の基準の整理
- 初期検品・中間検品・出荷前検品・積込立会いの手配
- 検品報告書の作成と、写真・測定結果の日本語での報告
- 不良が見つかったときの、工場への説明と是正の依頼
検品の内容とタイミングは、製品と工場、出荷の予定に合わせて決めます。サービスの詳細は仕入先確認・検品をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 出荷前検品はいつ頼めばよいですか?
製品の大半ができ、梱包が進んだ段階で行うのが一般的です。不良が見つかったときに直す時間を残すため、初めての工場や新しい製品では、中間検品や初期検品を組み合わせることをおすすめします。
Q2. 検品を頼む前に何を用意すればよいですか?
製品の仕様書、承認した見本、検品の項目と方法、欠点の分類と合否の基準、出荷の数量と予定の5つです。検品する人は、取り決めたことしか確かめられません。
Q3. ISO 2859-1とはどんな規格ですか?
ISOのサイトによると、計数値検査の抜取検査手順のうち、ロットごとの検査についてAQLを指標にした抜取方式を定めた規格です。2026年1月に第3版が発行され、1999年の版を置き換えました。
Q4. AQLの値はどう決めればよいですか?
どの製品にも当てはまる正解はありません。致命・重・軽の欠点ごとに、製品の重要度と不良が出たときの影響の大きさで決め、どの版の規格に沿うかとあわせて、契約書や検品の指示書に書いておきます。
Q5. 検品報告書が「合格」なら、そのまま出荷してよいですか?
結論だけでなく、抜き取った数、欠点の一覧、写真、特記事項まで読んでから判断します。出荷するかどうかを決めるのは、検品をした人ではなく発注者です。
まとめ
ベトナムでの検品は、初期・中間・出荷前・積込立会いを目的に合わせて組み合わせます。依頼の前に仕様書・見本・検品の項目・欠点の分類と合否の基準・出荷の予定をそろえておくことが、検品の質を決めます。
合否の基準にはISO 2859-1などの抜取検査の規格が使われますが、版や検査水準、AQLの値は取引ごとに決める必要があります。届いた報告書は結論だけでなく中身まで読み、出荷の判断は発注者が行います。
💬 ベトナムでの検品・立会いは、Sunshoにご相談ください。 サービスの内容は仕入先確認・検品、ご相談はお問合せフォーム・LINEからどうぞ。
参考(2026年10月25日確認)
- ISO「ISO 2859-1:2026 Sampling procedures for inspection by attributes — Part 1: Sampling schemes indexed by acceptance quality limit (AQL) for lot-by-lot inspection」 https://www.iso.org/standard/2859-1
- ISO「ISO 2859-2:2020 Sampling procedures for inspection by attributes — Part 2: Sampling plans indexed by limiting quality (LQ) for isolated lot inspection」 https://www.iso.org/standard/64505.html