溶接で作る機械架台、スキッドフレーム、工程用タンクは、プロジェクトのなかで一番大きく、一番最後に届く品物になりがちです。そして問題があったときの損失は、品物の値段に比べて桁違いになります。直角の出ていない架台は、その上に載るすべての機械の据付けを止めますし、溶接部から漏れるタンクは、海を越えて簡単に送り返すわけにいきません。
この記事は、架台・フレーム・ステージ・カバー・ホッパー・圧力のかからないタンクといった製缶品・溶接構造物をベトナムの工場へ出す設計・購買担当者向けです。求める溶接管理の体制、図面に書くこと、溶接後の寸法、塗装とめっき、タンクの試験、そして図面を仕上げる前に聞いておくべき「どこまでの大きさなら日本まで運べるか」を、決める順に整理します。
この記事が扱う範囲 — 鋼材を切断・曲げ・溶接して作る中〜大型の構造物です。薄板の筐体や軽い溶接板金品は板金・プレス、架台の取付面を削る工程の考え方は切削加工に分けています。現地組立に使うボルトはねじ・ボルト・ばねの調達、鍛造のつり金具やフランジは鍛造品の調達をご覧ください。
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手順1|溶接士ではなく「溶接管理の体制」を求める
溶接の品質は、確認された施工要領、資格のある溶接士、溶接管理の担当者、記録という仕組みから生まれます。必要な水準を名前で示すには、ISO 3834シリーズが共通の物差しになります。
ISO 3834シリーズは、工場内と現地での金属材料の融接に関する品質要求を定めています。Part 2(包括的、現行は2021年版)、Part 3(標準的)、Part 4(基本的)の3水準があり、Part 5は適合を主張するために必要な文書を挙げています。国内ではJIS Z 3400(金属材料の融接に関する品質要求事項)が同じ主題を扱っています。認証を持たない工場でも、聞くべきことは同じです。認証の代わりに、訪問と書類で一つずつ確かめることになります。
| 要素 | 指定する規格 | 工場に求めるもの |
|---|---|---|
| 溶接施工要領書(WPS) | ISO 15609-1:2019(アーク溶接) | 図面の継手の種類ごとのWPS |
| 施工法の確認記録(WPQR) | ISO 15614-1:2017(Amd 1:2019)、レベル1または2 | 各WPSの裏付けとなる確認記録 |
| 溶接士の資格 | 日本ならJIS Z 3801(手溶接)・JIS Z 3841(半自動溶接)、国際的にはISO 9606-1 | 実際にこの仕事を溶接する人の証明書 |
| 自動溶接のオペレーター | ISO 14732:2025 | ロボットや台車を使うならその証明書 |
| 体制の水準 | ISO 3834-2・-3・-4 | 認証書、または訪問での各要素の確認 |
| 北米向けの案件 | AWS D1.1/D1.1M:2025 | その規格による施工要領と溶接士資格 |
溶接士の資格は「範囲」の証明。 日本の現場では、日本溶接協会がJIS Z 3801やJIS Z 3841に基づいて行う評価試験の資格がなじみ深いはずです。ISO 9606-1でも、資格は溶接方法、材料区分、継手の種類、溶接姿勢、板厚・管径の範囲ごとに与えられます。どの体系であっても、下向きの板で取った資格は上向きの管の溶接を保証しません。ベトナムの工場が示してくる資格がどの体系のどの範囲かを、図面の継手と突き合わせ、その資格者が実際にこの仕事を溶接するのかも確認します。
ISO 15614-1にはレベルが2つある。 レベル2はレベル1より試験が多く、確認される範囲が狭くなります。契約でレベルを指定しない場合はレベル2の要求が適用されるので、どちらを求めるかを書きます。
手順2|溶接記号は「どの方式で描いたか」まで伝える
溶接部ごとに、サイズ・長さ・位置を示す記号、きずの品質レベル、どの溶接部をどの方法で試験するかを書きます。日本の図面の記号は、ISOの2方式のうち片方です。
溶接記号の方式。 日本のJIS Z 3021:2016(溶接記号)は、ISO 2553:2013を修正して採用した規格で、ISO 2553が併記する「System A」と「System B」のうちSystem Bに基づいて作られています。System Bは基線が1本で、矢の側を溶接する場合は基本記号を基線の下側に置きます。一方、ISO 2553:2019も二つの方式を持ち、System Aは実線と破線の二重の基線で矢の側と反対側を表します。欧州系の図面に慣れた工場が日本の図面を読むと、矢の側と反対側を取り違える余地があります。図面の注記に「溶接記号はJIS Z 3021による」と書き、初回は代表的な継手で読み方を口頭でも確認します。
品質レベル。 ISO 5817:2023は、鋼・ニッケル・チタンとその合金の融接継手のきずについて、B・C・Dの3つの品質レベル(Bが最も厳しい)を定めています。溶接部ごと、または図面ごとにレベルを書けば、「きれいに溶接する」が、ブローホール、アンダカット、融合不良、余盛り過大などの合格限度に変わります。すべてをレベルBにすると、架台の機能は上がらずに費用だけが上がります。
試験の範囲。 全溶接部の外観検査が基本です。そのうえで、どの溶接部に表面の探傷(磁粉・浸透)を、どの溶接部に内部の探傷(超音波・放射線透過)を、どの割合で、どの合格基準でかけるかを書きます。見積の段階で「必要に応じて非破壊検査」は何も決めていないのと同じです。
材料。 溶接を前提にするなら、鋼材は溶接構造用(JIS G 3106のSM材など)か一般構造用(JIS G 3101のSS材など)かを図面で明示し、鋼板のミルシートの種類も指定します(品質書類)。
補修。 溶接補修は確認された要領で行って記録を残すこと、重要な溶接部の補修は発注側の承認を要することを書きます。
💬 製缶品の図面を、ベトナムの工場が質問してくる点——溶接記号の方式、品質レベル、試験範囲、輸送のための分割——の観点で見直し、同じ前提で見積を集めるところまでお手伝いします。 詳しくは製造・OEM支援のページをご覧ください。
手順3|溶接後の寸法公差と測り方を決める
溶接すると鋼材は歪みます。図面には溶接構造物の普通公差、測り方、溶接後に削る面を書きます。
日本の図面の表題欄で普通公差にJIS B 0405を引いていることがありますが、この規格の適用範囲は除去加工または板金成形で作った部品で、溶接構造物は対象として書かれていません。溶接構造物の普通公差はISO 13920:2023が、長さ・角度、形状と位置について4つの等級を定めています。この規格は、個別の公差も普通公差の参照もない製作図を「不完全」とみなすとしています。表題欄に等級を書き、取付パッド、軸受座、ガイドレールなど機能に効く箇所には個別の公差を入れます。
機械を載せる架台では、全長より取付面の平面度と相互の位置のほうが効くのが普通です。溶接し、設計上必要なら応力除去をしてから、取付面を機械加工するのが定石です。工場が自社で削るのか、架台が載る大きさの機械を持つ加工工場へ出すのか、加工時に見つかった歪みに誰が答えるのかを確かめます。
測り方も合意します。どの定盤で、どの測定器で、どの段階で(溶接後、加工後、塗装後)測るか。溶融亜鉛めっきや応力除去で架台は動くので、最後の熱が加わる工程の後に測ります。測定点を図面に書き込んだ寸法検査表を求めます。
手順4|素地調整・塗装・溶融亜鉛めっきを指定する
塗装の指定には素地調整の等級、環境に合った塗装系、膜厚の確認方法を書きます。溶融亜鉛めっきなら、工程が必要とする設計上の配慮も要ります。
塗装系。 ISO 8501-1は鋼材表面の錆の等級と素地調整の等級を定め、ブラスト処理はSa 2½のように「Sa」で表します。ISO 12944シリーズは大気環境の腐食性をC1からCXまでの区分に分け、防食塗装系と結び付けています。仕様書には、素地調整の等級、鋼構造物が置かれる場所の腐食性区分、塗装系(下塗り・中塗り・上塗り)、乾燥膜厚とその測り方、色番号を書きます。ベトナムは湿度が高いので、ブラスト後の鋼材を下塗りまでどう守り、どれだけ置いてよいかを聞きます。
溶融亜鉛めっき。 国際規格はISO 1461:2022です。日本のJIS H 8641(溶融亜鉛めっき)は2021年の改正で、めっきの規定が付着量から膜厚に変わり、HDZT 77のような記号になりました。古い図面に2007年版の「1種A」のような旧記号が残っている場合は、現行の記号か膜厚の数値に直して伝えます。めっきには中空部や閉じた空間の空気抜き・湯抜き穴が必要で、品物がめっき槽に入る大きさでなければなりません。ベトナムでもめっきは別のめっき工場で行うことがあるため、どの工場か、槽の大きさ、誰が運んで誰が検査するかを聞きます。これを知らずに設計した架台は、二度漬けか設計変更になりかねません。
マスキング。 機械加工面、アース端子、ねじ穴、ボルト接合の摩擦面など、塗らずに残す箇所を指定します。
手順5|タンクは漏れ試験と圧力の扱いを先に決める
タンクには漏れ試験または水張り試験の方法、内面の仕様、そして圧力がかかるならどの国の規則が適用されるかの判断が要ります。
圧力のかからないタンクなら、水張りして保持するのか、継手に浸透探傷や真空箱試験をかけるのかを決め、保持時間と合格基準を書面で合意します。食品・薬品・工程用水を入れるなら、溶接部の研削、ステンレスなら酸洗いと不動態化など内面の仕上げを書きます。
圧力がかかる容器は、設置する国の圧力機器の規則に従って設計・製作・検査しなければなりません。日本に設置するなら、労働安全衛生法に基づくボイラー及び圧力容器安全規則や高圧ガス保安法などの対象になり得るため、どの規則が適用されるかを見積の前に専門家と確認します。なお、圧縮・液化ガス用以外で容量300リットルを超える鉄鋼製のタンク類はHS第7309項、300リットル以下は第7310項です。各国の細分は通関業者に確認してください。
手順6|「運べる大きさ」を設計の入力条件にする
輸送できる大きさは設計の入力条件です。標準コンテナか、特殊な機材か、分割かを早めに決め、分割するならボルト継手を設計に織り込みます。
おおまかには、扉から入りつり点に手が届くものは標準コンテナ、高さや幅が出るものはオープントップやフラットラック、最も大きいものは在来船です。一段上がるごとに費用と荷役のリスクが増えます。一般的な寸法表に頼らず、その航路で実際に使える機材の内寸と扉寸法を輸送業者に確認します。
陸送にも制限があります。ベトナム国内では、道路の寸法・重量の上限を超える貨物に通行許可が要り、運輸省のCircular 39/2024/TT-BGTVTで定められたのち、建設省が同じ主題でCircular 12/2025/TT-BXDを出しています。現行の本文を確認し、許可の時間を見込みます。日本側でも、一定の寸法・重量を超える車両で公道を走るには道路法に基づく特殊車両通行許可が要るため、荷揚げ港から据付先までの陸送も含めて大きさを決めます。
大きすぎるなら、ボルト継手でモジュールに分け、工場で全体を仮組みしてから解体してもらいます。継手ごとに合いマークを付け、ボルト一式を継手ごとに梱包します。現地まで一度も組まれない架台は、現地で誤差をさらけ出します。
海上輸送向けの梱包では、機械加工面に防錆剤を塗り、つり点と固縛点を設計に入れ、大物には重心と質量を表示し、積付けの写真を撮ってから閉じます。
| 決めること | 図面を仕上げる前に聞くこと | 遅れて決めたときの代償 |
|---|---|---|
| 溶接管理 | ISO 3834の水準、WPS、WPQR、溶接士の資格 | 溶接のやり直し、資格の取り直し |
| 記号と品質 | JIS Z 3021の方式、ISO 5817のレベル、探傷の方法と範囲 | 記号の読み違い、最終検査での争い |
| 寸法 | ISO 13920の等級、重要寸法、溶接後の機械加工 | 機械が載らない架台 |
| 表面処理 | Sa等級、腐食性区分、塗装系と膜厚、またはJIS H 8641の記号 | 早期の錆、めっきのための設計変更 |
| タンク | 試験方法、保持、合格基準、圧力の規則 | 現地で見つかる漏れ |
| 輸送 | 輸送形態、分割、仮組み、日越双方の陸送 | 動かせない品物 |
初回訪問の一般的な着眼点は工場の監査・視察、出荷前の検品の考え方は品質検査・QC、工程全体の見通しは納期・リードタイムをご覧ください。
💬 仕様書が固まる前でも、図面をお送りください。 Sunsho Tradeはホーチミンから、案件に合う製缶工場の探索・選定、仮組みの立会い、検品、輸出手続きまでを代行します。お問合せフォームまたはLINEへどうぞ。
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よくある質問(FAQ)
Q1. ベトナムの製缶工場にISO 3834の認証は必要ですか?
A. 必ずしも必要ではありません。必要なのは規格が描く仕組み、つまり確認された施工要領、資格のある溶接士、溶接管理、記録です。認証はその仕組みがある証拠の一つで、認証がなければ訪問と書類で各要素を確かめます。
Q2. 溶接士の資格証があれば溶接品質は保証されますか?
A. いいえ。資格証は、定められた範囲の試験に合格したことを示すだけです。実際の溶接品質は、確認された施工要領、開先の準備、検査にも左右されます。WPSとそれを裏付けるWPQRを求めてください。
Q3. 日本の図面の溶接記号はそのまま通じますか?
A. 記号の多くは共通ですが、JIS Z 3021はISO 2553のSystem Bに基づくため、System Aに慣れた相手は矢の側と反対側を取り違える余地があります。図面に「JIS Z 3021による」と注記し、代表的な継手で読み方を確認します。
Q4. 架台が直角の出ていない状態で届くのを防ぐには?
A. ISO 13920の等級と重要な面の個別公差を書き、取付面は溶接後に機械加工し、最後の熱工程の後に測り、測定点を書き込んだ寸法検査表を求めます。
Q5. 構造物がコンテナに入りません。どんな選択肢がありますか?
A. オープントップやフラットラック、在来船、ボルト継手でのモジュール分割です。継手を設計に織り込み、工場で仮組みして合いマークを付けるなら、分割がいちばん素直な解決になることが多いです。ベトナム側と日本側の陸送の許可も含めて決めます。
まとめ
ベトナムでの製缶・溶接構造物の調達は、溶接管理の体制、溶接記号の方式と品質レベル、溶接後の寸法、表面処理、タンクの試験、運べる大きさを図面の段階で決めておけるかどうかで結果が決まります。とくに輸送の大きさは、図面が仕上がってからでは手遅れになりやすい論点です。
価格・納期は構造・材料・溶接量・表面処理と輸送形態で大きく変わり、一般論の相場は役に立ちません。Sunsho Tradeはご要件に合うベトナム国内の製缶工場を探し、価格・品質・納期で選定し、仮組みの立会い・検品・貿易書類の準備・輸出手続きまで一括でお手伝いします。現地組立のボルトや鍛造部品とあわせた調達もご相談ください。