バレリアン(和名 セイヨウカノコソウ、学名 Valeriana officinalis)は、欧州で古くから使われてきたハーブです。米国や欧州では、睡眠やリラックスをテーマにしたサプリやハーブティーの素材として知られています。
睡眠系のハーブには日本で食品に使えないものもあるため、バレリアンも使えないと考えられがちです。結論から言うと、バレリアンの根・根茎は、医薬品的な効能効果をうたわなければ日本でも食品に使えます。本記事では、厚生労働省の最新のリストで確認した部位ごとの扱い、海外との違い、日本でサプリにするときの表示・研究・安全性の注意点を整理します。
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結論:日本での扱い
セイヨウカノコソウ(バレリアン)の根・根茎は、厚生労働省の非医薬品のリスト(別添2)に載っており、食品に使えます。
別添2の正式名は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」です。2026年8月5日更新の別添2では、セイヨウカノコソウと、日本のカノコソウが別々に掲載されています。2026年8月5日更新の別添1(専ら医薬品のリスト)には、どちらの記載もありません。
| 成分・部位 | リスト | 食品に使えるか |
|---|---|---|
| セイヨウカノコソウ(Valeriana officinalis L.、他名 ワレリア)根・根茎 | 別添2 | 使える(医薬品的な効能効果をうたわない場合) |
| カノコソウ(Valeriana fauriei Briq.、他名 キッソウコン)根・根茎 | 別添2 | 使える(医薬品的な効能効果をうたわない場合) |
| 上記2種の葉・茎・花など地上部 | どちらのリストにも記載なし | 配合前に最新の通知で確認し、必要に応じて照会する |
注意したいのは、リストに載っているのが根・根茎だけだという点です。地上部を使った原料は、どちらのリストにも載っていません。リストにない部位を使う場合は、都道府県の薬務担当課を通じて判断を求めることができます。
名前が似ているノヂシャ(Valeriana locusta、他名 マーシュ)も別添2に全草で載っています。ノヂシャはサラダに使われる野菜で、バレリアンとは別の植物です。原料の規格書では、学名と使用部位を必ず確認します。
海外での扱いとの違い
EUではバレリアンの根は伝統的なハーブ医薬品として評価されていますが、日本では効能をうたわない限り食品として扱えます。
| 国・地域 | 扱い | 出典 |
|---|---|---|
| 日本 | 根・根茎は別添2。医薬品的な効能効果をうたわなければ食品に使える | 厚生労働省 別添2(2026年8月5日更新) |
| EU | 欧州医薬品庁(EMA)が、ハーブ医薬品としてのバレリアン根のモノグラフを公表している | EMA |
| 米国 | 経口のハーブ製品の多くはダイエタリーサプリメントとして販売されている。NCCIHが研究と安全性の情報をまとめている | 米国国立衛生研究所 NCCIH |
EMAのモノグラフは、エタノール抽出物などをハーブ医薬品として扱うときの基準です。EMAは、バレリアン根の医薬品を12歳未満の子どもに使わないこと、妊娠中・授乳中に使わないことも示しています。食品として作る場合でも、対象者の決め方の参考になります。
なぜ日本ではこの扱いなのか
専ら医薬品のリストは、医薬品としての使用実態がある物や毒性の強い成分を含む物などが対象です。バレリアンの根・根茎は、非医薬品のリストに分類されています。
厚生労働省は、専ら医薬品のリストの考え方として、次のような物を挙げています。2023年の専門家会議の議事概要に示された考え方です。
- 解熱鎮痛消炎剤、ホルモン、抗生物質など、専ら医薬品としての使用実態がある物
- 毒性の強いアルカロイドなど、毒劇薬指定成分に相当する成分を含む物
- 麻薬、向精神薬、覚せい剤のような作用がある物
- 処方せん医薬品に相当する成分を含む物で、保健衛生上の観点から規制が必要な物
バレリアンの根・根茎は、別添1ではなく別添2に掲載されています。ただし、昭和46年の通知(薬発第476号)は、別添2は食品としての安全性を評価したリストではないと明記しています。別添2に載っていることは、安全性を国が保証したという意味ではありません。
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日本でサプリにするときの注意点
バレリアンを食品として売るときは、医薬品的な効能効果をうたわず、研究の結果が分かれていることを踏まえ、対象者と量を慎重に決めることが欠かせません。
表現:効能をうたうと医薬品とみなされる
別添2の成分は、医薬品的な効能効果を標ぼうすると医薬品と判断されます。「眠れるようになる」「不眠に」など身体への効果や症状名を挙げる表現は、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがあります。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1日分にセイヨウカノコソウ根エキス〇mg配合」(量の事実) | 「眠れるようになる」「不眠に効く」 |
| 「夜のくつろぎの時間に」(使用場面) | 「欧州では医薬品として使われる」など医薬品を連想させる説明 |
| 原料の学名と使用部位の説明 | 「臨床で実証済み」など、研究の条件と限界を示さない表現 |
研究:結果は試験によって分かれている
睡眠に関するバレリアンの研究は多いものの、結果は一致していません。
| レビュー | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| 系統的レビュー・メタ解析、The American Journal of Medicine 2006(PMID 17145239) | プラセボ対照の16試験、1,093人 | 6試験の「睡眠の質がよくなったか」の評価で有意な差。ただし出版バイアスがあり、多くの試験に方法上の問題。量や製剤もばらばら |
| 系統的レビュー・メタ解析、Journal of Evidence-Based Integrative Medicine 2020(PMID 33086877) | 60研究、6,894人。主観的な睡眠の質は10研究・1,065人で解析 | 結果のばらつきは抽出物の品質の違いによる可能性。根・根茎全体を使う方が安定した結果が期待できると考察 |
米国のNCCIHも、睡眠への効果を示す根拠は一貫していないとしています。どちらのレビューも、病気の方を含む試験を対象にしています。商品の説明では、研究の条件と限界を踏まえた言葉を選びます。
(2026年10月18日時点で、各論文の公開抄録を確認)
安全性と量:対象者と摂取の目安を慎重に
NCCIHは、1日300〜600mgを6週間までの範囲で使われてきたとし、長期の安全性は分かっていないとしています。頭痛や胃の不調などの副作用の報告があり、ごくまれに肝障害の報告もあります。その多くは、他のハーブと組み合わせた場合です。
摂取の目安は、研究で使われた量と原料の規格を確かめて決めます。妊娠中・授乳中の方や子どもを対象にしない設計にし、その旨を表示で伝えると安心です。
指定成分・アレルゲン・組み合わせる素材
バレリアンは、食品衛生法の指定成分等含有食品の4成分には含まれません。指定成分としての表示や届出の義務はかかりませんが、健康被害の情報を集める体制は整えておきます。
海外の睡眠系の商品では、バレリアンにメラトニンやアシュワガンダを組み合わせた配合をよく見かけます。メラトニンとアシュワガンダは、日本では専ら医薬品の成分で食品に使えません。組み合わせる素材は一つずつ確認してください。
見積もり・相談の前に決めておくこと
原料の学名・部位・規格と、1日あたりの量、剤形が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- 原料の学名と使用部位(根・根茎であること)、エキスか粉末か、抽出溶媒
- 1日あたりの量と、1袋あたりの日数
- 剤形(ハードカプセル、錠剤、お茶、粉末スティックなど)
- 組み合わせる成分と、その量
- 対象者(妊娠中・授乳中の方や子どもを除くかどうか)と注意表示
- 初回の製造数と、年間の見込み数
バレリアンは独特の強いにおいがあるため、剤形と包装の選び方で飲みやすさが変わります。においを抑えたい場合は、カプセルやコーティングした錠剤も検討します。
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よくある質問(FAQ)
バレリアンのサプリは、日本の工場で作れますか?
根・根茎を使った原料なら作れます。セイヨウカノコソウの根・根茎は別添2に載っており、医薬品的な効能効果・形状・用法用量にあたらなければ、食品として製造・販売できます。
葉や地上部を使った原料は使えますか?
別添1・別添2のどちらにも、バレリアンの地上部の記載はありません。地上部を使う場合は、配合前に最新の通知を確認し、必要に応じて都道府県の薬務担当課を通じて判断を求めます。
海外で売られているバレリアンサプリと同じものを作れますか?
全成分しだいです。バレリアンの根・根茎は使えますが、メラトニンやアシュワガンダのように日本で食品に使えない成分が含まれていれば、同じ配合では作れません。表示も、日本の法律に合わせて書き直す必要があります。
「睡眠」や「眠り」という言葉は使えますか?
いわゆる健康食品では、「眠れる」など身体への効果をうたう表現は避けます。機能性表示食品として届け出る場合は、届出者が自らの責任で科学的根拠を示した範囲で表示します。どちらの場合も、表示全体で効果をうたっていないかを確認してください。
海外の工場で作ったバレリアン製品を輸入して売れますか?
どこで製造しても、日本で売る以上は日本の食薬区分と表示のルールがそのまま適用されます。原料の部位、配合するすべての成分、表示の内容を、輸入の手続きとあわせて事前に確認してください。
参考
- 厚生労働省「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示」別添2「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734639.pdf
- 厚生労働省「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示」別添1「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」(2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734637.pdf
- 厚生労働省「令和5年度第1回医薬品の成分本質に関するワーキンググループ議事概要」(2023年6月26日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34441.html
- 厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日 薬発第476号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6938&dataType=1&pageNo=1
- European Medicines Agency, “Valerianae radix” https://www.ema.europa.eu/en/medicines/herbal/valerianae-radix
- U.S. National Center for Complementary and Integrative Health, “Valerian” https://www.nccih.nih.gov/health/valerian
- “Valerian for sleep: a systematic review and meta-analysis”, The American Journal of Medicine 2006, PMID 17145239, doi 10.1016/j.amjmed.2006.02.026
- “Valerian Root in Treating Sleep Problems and Associated Disorders-A Systematic Review and Meta-Analysis”, Journal of Evidence-Based Integrative Medicine 2020, PMID 33086877, doi 10.1177/2515690X20967323
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145
(2026年10月18日確認)