化粧品や日用品の中には、船や飛行機で運ぶときに「危険物」として扱われるものがあります。代表的なのは、ヘアスプレーや制汗スプレーのようなエアゾール(スプレー缶)と、アルコールを多く含む化粧水・除菌剤・香水、マニキュアや除光液のような引火しやすい液体です。店頭では普通に売られている商品でも、輸送のルールは別に決まっています。
本記事では、日本の化粧品・日用品を輸出するときに、どんな品が危険物になりうるのか、何を根拠に判定するのか、安全データシート(SDS)のどこを見るのかを、国際規則と国土交通省の告示などの一次資料で確認できた範囲で整理します。商品ごとの判定は、その商品のSDSと、運送を引き受ける船会社・航空会社の確認によって決まる点を最初にお伝えしておきます。
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危険物輸送のルールの全体像
危険物の輸送ルールは、国連の勧告を土台に、海上はIMDGコード、航空はICAOの技術指針とそれを実務向けにまとめたIATAの危険物規則があり、日本では船舶と航空機それぞれの法令と告示で定められています。
国際海事機関(IMO)は、IMDGコード(国際海上危険物規程)をSOLAS条約(海上人命安全条約)第VII章の下で強制力のある規則と位置づけ、2004年1月1日から強制化しています。改正は2年ごとで、国連の危険物輸送に関する勧告の改正を反映するものとされています。
航空では、国際航空運送協会(IATA)が、危険物規則(DGR)を「ICAO技術指針の現場向けマニュアル版」と説明しています。同協会は、危険物を正しく分類する責任は荷送人(貨物を送り出す側)にあると明記しています。
| 輸送手段 | 国際的なルール | 日本の法令 |
|---|---|---|
| 海上 | IMDGコード(SOLAS条約第VII章) | 危険物船舶運送及び貯蔵規則、船舶による危険物の運送基準等を定める告示 |
| 航空 | ICAO技術指針、IATA危険物規則 | 航空法第86条、航空法施行規則第194条と関係告示 |
| 共通の土台 | 国連の危険物輸送に関する勧告 | — |
日本の「船舶による危険物の運送基準等を定める告示」は、引火点の試験方法などについて「IMDGコード」の該当箇所を直接参照しており、国際規則と同じ考え方で作られていることが分かります。
化粧品・日用品で危険物になりうる品
化粧品・日用品で危険物になりうるのは主に、高圧ガスに当たるエアゾールと、引火性液体類に当たるアルコールや溶剤を多く含む液体で、ほかに強い酸・アルカリの洗浄剤なども確認の対象になります。
| 商品の例 | 該当しうる区分 | 告示の品名の例 |
|---|---|---|
| ヘアスプレー、制汗スプレー、日焼け止めスプレー、消臭スプレー | 高圧ガス | 国連番号1950「エアゾール」 |
| アルコールを多く含む化粧水、除菌剤、ハンドジェル | 引火性液体類 | 国連番号1170「エタノール又はその溶液」 |
| 香水、オーデコロン | 引火性液体類 | 国連番号1266「香料製品類(引火性のもの)」 |
| マニキュア、除光液 | 引火性液体類 | 成分によって品名が決まる |
| 強い酸・アルカリを含む洗浄剤 | 腐食性物質 | 成分によって品名が決まる |
上の表は「なりうる」品の例です。同じ種類の商品でも、成分と配合量によって危険物に当たるかどうかが変わります。国土交通省の航空機の手荷物に関する案内でも、化粧品類として、ヘアスプレー、化粧水、日焼け止め、マニキュア、除光液、香水などが、引火性液体や高圧ガスを含みうるものの代表例に挙げられています。
アルコールを含んでも一律に危険物ではない
告示の別表では、エタノールの品名に「アルコールの含有率が24容量%以下の水溶液を除く」とあり、特別規定でもその水溶液は危険物に該当しないとしています。香料製品類についても、条件を満たすものは危険物に該当しないとする特別規定があります。アルコールが入っているかどうかだけで判断せず、SDSに書かれた区分を確認します。
引火性液体類の判定基準
危険物船舶運送及び貯蔵規則は、引火性液体類を「引火点が摂氏60度以下の液体」などと定め、告示は引火点と初留点によって危険の程度を容器等級Ⅰ〜Ⅲに分けています。
引火点は、液体から出る蒸気に火を近づけたときに燃え始める最も低い温度です。規則第2条は、密閉容器試験による引火点が摂氏60度以下の液体を引火性液体類の基本とし、引火点が35度を超えて燃焼継続性がないと認められるものは除くとしています。
告示の判定基準は次のとおりです。
| 容器等級 | 判定基準 | 危険の程度 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 初留点が35℃以下の液体 | 高い |
| Ⅱ | 引火点が23℃未満で、初留点が35℃を超える液体 | 中程度 |
| Ⅲ | 引火点が23℃以上60℃以下で、初留点が35℃を超える液体 | 低い |
初留点は、液体を加熱したときに沸騰して最初に蒸留されはじめる温度です。告示は、容器等級Ⅰ〜Ⅲに当たらない物質は引火性液体類に該当しないとも注記しています。容器等級によって、使える容器や「少量危険物」として運べる量が変わります。
なお、ここで挙げた数値は船舶輸送の告示のものです。日本国内での保管や貯蔵に関わる消防法の「危険物」は別の制度で、区分の仕方が違います。輸出のための判定と、倉庫での保管の基準を混同しないよう注意してください。
エアゾールの扱い
エアゾールは国連番号1950の高圧ガスで、中身の燃えやすさによって引火性高圧ガス(等級2.1)か非引火性非毒性高圧ガス(等級2.2)に分かれます。
告示の特別規定は、エアゾールの等級を次のように決めるとしています。
- 引火性の成分が85質量%以上で、燃焼時の発熱量が30kJ/g以上のもの(一定のガスを含まないものに限る)は等級2.1
- 引火性の成分が1質量%以下で、燃焼時の発熱量が20kJ/g以下のもの(同上)は等級2.2
- それ以外は、国連の「試験方法及び判定基準」の試験で等級を決める
また告示は、エアゾールについて、充てんされたガスが偶発的に出ないよう措置したものに限るとし、毒物に当たる物質を含まず容積が50mLを超えないものは危険物に該当しないとしています。小さな試供品サイズのスプレーには、この規定が関わる可能性があります。ただし、これは船舶の告示の規定です。航空輸送では航空会社の規則によって扱いが異なることがあるため、必ず個別に確認します。
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少量危険物と荷送人の申告
告示の別表に許容量が定められた危険物は、内装容器あたりの量などの要件を満たせば「少量危険物」として表示が簡略化されますが、荷送人が危険物を正しく申告する責任はなくなりません。
告示は、別表で「少量危険物の許容容量又は許容質量」の欄に数量が書かれている危険物について、要件に適合するものを「少量危険物」とし、その容器には専用の「少量危険物用表示」を表示することとしています。化粧品・日用品に関係する品名の許容量は、例えば次のとおりです。
| 告示の品名 | 容器等級・区分 | 少量危険物の許容量(内装容器あたり) |
|---|---|---|
| エアゾール(容積1L以下) | 高圧ガス | 1L |
| エタノール又はその溶液 | 容器等級Ⅱ | 1L |
| エタノール又はその溶液 | 容器等級Ⅲ | 5L |
| 香料製品類(引火性のもの) | 容器等級Ⅱ・Ⅲ | 5L |
ほかにも外装を含めた総質量などの要件があり、適用の可否は運送を引き受ける側と確認します。
荷送人が出す危険物明細書
危険物船舶運送及び貯蔵規則第17条は、危険物の荷送人に対し、あらかじめ危険物明細書を船舶所有者または船長に提出するよう求めています。記載事項には、荷送人と荷受人の名称・住所、危険物の国連番号・品名・等級・隔離区分・副次危険性等級・容器等級、個数と質量または容積などが含まれます。荷送人が危険物をコンテナに詰めて運送する場合は、第30条により、コンテナごとに「コンテナ危険物明細書」を作成して提出します。容器・包装・表示が規則に適合していることも付記し、写しを3か月間保管する決まりです。告示は、少量危険物として運送する場合、明細書に「limited quantity」または「LTD QTY」の文字(日本の港の間の運送では「少量危険物」も可)を記載するとしています。
つまり、危険物に当たる品を「一般の貨物」として出すことはできません。国連番号や容器等級は、次に説明するSDSの「輸送上の注意」から読み取ります。
航空輸送で気をつけること
航空法第86条は、爆発性・易燃性の物件などを航空機で輸送することを禁止し、施行規則第194条が告示の基準に従って輸送するものを例外としているため、航空便では海上以上に事前の確認が欠かせません。
航空法施行規則第194条は、輸送禁止の物件として高圧ガスや引火性液体(密閉式の引火点が摂氏60度以下の液体など)を挙げたうえで、告示で定める技術上の基準などに従って輸送するものは含まないとしています。実務では、航空会社が受け付けるかどうか、どの便で運べるかを、SDSをもとに航空会社やフォワーダーが判断します。航空会社が独自に、より厳しい制限を設けている場合もあります。
サンプルを手荷物で運ぶのは別の話
国土交通省の手荷物の案内では、化粧品類(引火性液体・高圧ガスを含むもの)は、1容器0.5Lまたは0.5kg以下、1人あたり化粧品類・医薬品類・スプレー缶の合計で2Lまたは2kg以下とされています。ただし同じ資料は、手荷物として持ち込める危険物は個人が使用するものに限るとしています。海外の取引先に見せる商品サンプルを、出張の手荷物に入れて大量に運ぶことは想定されていません。サンプルも、数量によっては貨物として手配することを考えます。
SDSの役割と見るべき項目
SDS(安全データシート)は化学品の性質や取扱いを伝える書類で、国連のGHS(化学品の分類と表示の世界調和システム)では16項目のうち第14項が「輸送上の注意(Transport information)」として、国連番号・品名・輸送上の等級・容器等級を記載する欄になっています。
GHSの附属書4は、第14項について、道路・鉄道・海上・航空の輸送のための基本的な分類情報を示す項目と説明し、次の情報を記載するよう定めています。情報がない、または関係がない場合は、その旨を書くこととされています。
| 第14項の小項目 | 内容 |
|---|---|
| 国連番号 | 国連勧告による4桁の番号(例:エアゾールは1950) |
| 国連品名 | 国連勧告による正式な品名 |
| 輸送上の等級 | 最も主要な危険性による等級と副次危険性 |
| 容器等級 | 該当する場合の容器等級 |
日本でも、厚生労働省の通知は、SDSの「輸送上の注意」にJIS Z 7253に沿って、輸送に関する国際規制の情報と、国内規制がある場合はその情報を記載するよう示しています。
一般消費者向けの商品はSDSがないこともある
労働安全衛生法第57条の2は、危険物などを譲渡・提供する者にSDSにあたる文書の通知を義務づけていますが、「主として一般消費者の生活の用に供される製品」として譲渡・提供する場合は対象外としています。小売用の化粧品や日用品では、SDSが最初から用意されていないことがあるのはこのためです。
その場合は、メーカーに輸送の確認のためのSDSの作成・提供をお願いします。SDSは処方に対応した書類なので、処方が変わったら最新版をもらうこともあわせて押さえておきます。アルコールの配合量や噴射剤が変われば、輸送上の区分も変わりうるからです。なお、SDSは取扱い・輸送のための書類で、商品を使う人への安全性や効能を示すものではありません。
出荷までの確認の手順
品目の一覧から危険物になりうる品を洗い出し、SDSの第14項で区分を確認し、運送を引き受ける側の受託可否を確かめてから、容器・表示・申告を整えて出荷します。
- 品目の一覧を作る:スプレー、アルコールや溶剤を含む液体、強い洗浄剤に印を付ける
- SDSを集める:該当しそうな品のSDSを、最新の処方のものでメーカーから取り寄せる
- 第14項を確認する:国連番号・等級・容器等級が書かれているか、「非危険物」とあるか
- 受託可否を確かめる:SDSをフォワーダーに送り、船会社・航空会社が引き受けるか、条件は何かを確認する
- 容器・表示・申告を整える:少量危険物の扱いが使えるかも含め、梱包と表示を決め、危険物明細書などを用意する
- 混載の積み方を決める:危険物とほかの貨物の隔離の基準に沿って、同じコンテナに積めるかを確認する
告示は、危険物の隔離の基準を別表で定めています。食品・化粧品・日用品を同じコンテナにまとめる場合も、危険物に当たる品があれば、この基準に沿った積み方が必要です。混載の進め方は日本の化粧品・日用品をアジアへ輸出|海外販路でも触れています。
Sunshoができること
Sunsho Tradeは、日本国内で化粧品・日用品・食品を仕入れ、複数の仕入先の商品を1回の出荷にまとめて、ベトナムとアジア各国の輸入業者・卸へ輸出する日系商社です。危険物に当たりうる品があっても、それだけで取引をお断りすることはありません。
当社は、品目の一覧から確認が必要な品を洗い出し、メーカーへのSDSの依頼、フォワーダーへの受託可否の確認、梱包と書類の準備までを、輸出の手配の一部として進めます。食品と組み合わせた出荷については日本食品の輸出・海外卸、化粧品・日用品のサービス全体は日本の化粧品・日用品の輸出をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. ヘアスプレーは船で輸出できますか?
エアゾールは国連番号1950の高圧ガスとして扱われますが、危険物として正しく区分し、容器・表示・申告を整えれば、引き受ける船会社を選んで輸送を検討できます。告示の別表には少量危険物の許容量も定められています。
Q2. アルコールが入った化粧水はすべて危険物ですか?
すべてではありません。告示では、アルコールの含有率が24容量%以下のエタノール水溶液は危険物に該当しないとされています。商品ごとの区分はSDSの「輸送上の注意」で確認します。
Q3. SDSはどこで手に入りますか?
商品のメーカーに依頼します。一般消費者向けの商品は労働安全衛生法上のSDSの通知義務の対象外のため、用意がないこともあります。その場合は輸送の確認のために作成・提供をお願いします。
Q4. 引火点が何度なら危険物になりますか?
船舶輸送の規則では、密閉容器試験による引火点が摂氏60度以下の液体が引火性液体類の基本です(燃焼継続性がないものなどの例外あり)。告示は引火点23℃と初留点35℃を境に容器等級Ⅰ〜Ⅲを分けています。
Q5. 飛行機のほうが早いので、化粧品を航空便で送れますか?
危険物に当たらない品は一般の貨物として送れますが、危険物に当たる品は航空法と航空会社の規則に従う必要があり、受け付けない便や航空会社もあります。航空便を考える場合は、SDSを早めにそろえて確認します。
まとめ
化粧品・日用品で危険物になりうるのは、エアゾールと、アルコールや溶剤を多く含む液体が中心です。判定の土台は国連の勧告で、海上はIMDGコードと国土交通省の告示、航空はICAO技術指針・IATA危険物規則と航空法が具体的なルールを定めています。
商品ごとの判定はSDSの第14項「輸送上の注意」で確認し、最終的には運送を引き受ける側が受託を判断します。一般消費者向けの商品はSDSがないこともあるため、輸出を考えた時点でメーカーに依頼しておくと、出荷直前の手戻りを防げます。
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参考(2026年10月24日確認)
- 危険物船舶運送及び貯蔵規則 第2条・第17条・第30条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50000800030
- 国土交通省「船舶による危険物の運送基準等を定める告示」(令和7年1月1日最終改正版) https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001892633.pdf
- IMO「Dangerous goods」(IMDGコードの位置づけ) https://www.imo.org/en/OurWork/Safety/Pages/DangerousGoods-default.aspx
- IATA「Dangerous Goods Regulations (DGR)」 https://www.iata.org/en/programs/cargo/dgr/
- 航空法 第86条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC0000000231
- 航空法施行規則 第194条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/327M50000800056
- 国土交通省「機内への持込み又はお預け手荷物に制限がある品目の代表例」(令和8年4月24日更新) https://www.mlit.go.jp/common/001425421.pdf
- United Nations「Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals (GHS) Tenth revised edition」附属書4 https://digitallibrary.un.org/record/4030607/files/1391662_EN.pdf
- 厚生労働省「毒物及び劇物取締法における毒物又は劇物の容器及び被包への表示等に係る留意事項について」の一部改正(令和7年12月25日) https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001622226.pdf
- 労働安全衛生法 第57条の2(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057