プラスチック製のストローやスプーンを紙や木に切り替える、発泡容器をバガス容器に替える、といった動きは飲食店や小売店で広がっています。その一方で、「紙なら食品衛生法の規制は関係ないのか」「プラスチック資源循環法で何が義務になったのか」「海外から輸入するときは何を届け出るのか」といった点は、意外と整理されていません。
本記事では、環境配慮型の食品容器やカトラリーを日本で使う・販売する・輸入するときに関係する規制を、法令本文と消費者庁・厚生労働省・環境省・経済産業省の資料で確認できた範囲に絞って整理します。確認日は2026年10月26日です。規則は改正されることがあるため、実際の判断の前には最新の情報を確認してください。調達の実務(仕様・見本・検品)は紙コップ・紙容器の海外調達で詳しく扱っています。
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関係する法律は大きく二つ
環境配慮型の食品容器に関係する日本の法律は、安全性を定める食品衛生法と、プラスチックの使用削減を求めるプラスチック資源循環法の二つが中心です。
食品衛生法は、食品に触れる器具・容器包装が健康を損なわないための法律です。材質が紙でも木でもプラスチックでも、食品に触れる以上は対象になります。器具・容器包装の規格基準を定めるのは内閣総理大臣(所管は消費者庁)で、輸入の届出先は厚生労働大臣(窓口は検疫所)です。
プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(以下、プラスチック資源循環法)は、プラスチックの使用量を減らし、回収・再資源化を進めるための法律です。2022年4月に施行され、飲食店や小売店が無償で配るスプーンやストローなどについて、使用の合理化が求められています。
| 項目 | 食品衛生法 | プラスチック資源循環法 |
|---|---|---|
| 目的 | 器具・容器包装の安全性 | プラスチックの使用削減と資源循環 |
| 対象の材質 | 紙・木・樹脂などすべて(ポジティブリストは合成樹脂のみ) | 主としてプラスチック製の製品 |
| 主な義務 | 規格基準への適合、輸入届出、販売先への説明 | 特定プラスチック使用製品の使用の合理化 |
| 紙ストロー・木製スプーン | 対象(食品に触れるため) | 主たる素材がプラスチックでなければ特定プラスチック使用製品の対象外 |
食品衛生法の基本的な考え方
食品衛生法は、有害な器具・容器包装の販売や輸入を禁じ、規格基準を満たさないものの製造・輸入・使用を禁じています。
食品衛生法第16条は、有毒・有害な物質が含まれ、または付着して健康を損なうおそれがある器具・容器包装を、販売し、販売のために製造・輸入し、または営業上使用してはならないと定めています。これは材質を問いません。
第18条第1項は、内閣総理大臣が器具・容器包装やその原材料の規格、製造方法の基準を定めることができるとしています。第2項により、規格に合わない器具・容器包装の販売や、販売のための製造・輸入、営業上の使用は禁止されます。消費者庁の資料では、器具・容器包装には一律に満たすべき一般規格と、材質や用途ごとの個別規格があると説明されています。
合成樹脂のポジティブリスト制度
合成樹脂については、規格に定められた物質だけを使えるポジティブリスト制度があり、2025年6月1日に完全施行されました。
第18条第3項は、政令で定める材質の原材料について、規格に定められていない物質は器具・容器包装に使ってはならないと定めています。これがポジティブリスト制度です。消費者庁のQ&Aによれば、対象の材質は「合成樹脂」で、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、熱可塑性エラストマーを含み、ゴム(熱硬化性エラストマー)は含みません。
制度の経緯は次のとおりです(消費者庁の資料で確認)。
- 2020年6月1日: ポジティブリスト制度の施行
- 2023年11月30日: リストの再整理
- 2025年6月1日: 完全施行
あわせて、規格基準の改正(消費者庁告示第95号)が2025年5月30日に公布され、6月1日に施行されました。消費者庁の資料によると、清涼飲料水などの容器包装に個別に設けられていた規格を削除してポジティブリスト制度での管理に一本化し、個別規格のない合成樹脂には「総溶出物規格」を導入する内容です。規格・試験法の変更に係る規定は2026年6月1日から施行され、2027年6月1日より前に販売・製造・輸入・営業上使用されている器具・容器包装については従前の例によることができる、とされています。
環境配慮型の容器でも、合成樹脂を使っている部分はこの制度の対象です。たとえば紙コップの内面のPE・PLAコーティング、樹脂製の蓋、樹脂でコーティングした紙容器、バガス容器に付ける樹脂の蓋や窓がこれに当たります。PLAは植物由来ですが、合成樹脂であることに変わりはありません。
紙や木はどう扱われるか
紙の繊維や木材そのものは合成樹脂ではないため、ポジティブリストの対象外です。ただし消費者庁のQ&Aは、ポジティブリストの対象外の物質であっても、事業者は食品衛生法にもとづく従来の管理を守り、自らの責任で安全性を確保する必要があるとしています。紙ストローの接着剤、木製カトラリーの表面処理、バガス容器の耐水・耐油の添加剤など、何が使われているかを把握しておくことが前提になります。
販売先への説明義務
合成樹脂を使った器具・容器包装を販売・製造・輸入する事業者は、販売先にポジティブリストへの適合を説明しなければなりません。
食品衛生法第53条第1項は、ポジティブリスト対象の材質を使った器具・容器包装を販売し、または販売のために製造・輸入する者は、販売の相手方に対し、規格に適合した原材料のみを使っていることなどを説明しなければならないと定めています。第2項では、原材料を販売する事業者に対し、容器包装の製造者から確認を求められたときに必要な説明をするよう努めることが求められています。
海外の工場から紙コップや蓋を輸入して飲食店に卸す場合、輸入者がこの説明をする立場になります。工場から樹脂の種類や適合を示す情報を受け取り、販売先に渡せる形で整えておくことが必要です。
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輸入するときの届出
販売用・営業用の器具・容器包装を輸入する場合は、食品衛生法第27条にもとづき、輸入のたびに届出が必要です。
第27条は、販売の用に供し、または営業上使用する食品・添加物・器具・容器包装を輸入しようとする者は、その都度、厚生労働大臣に届け出なければならないと定めています。届出は通関地を管轄する検疫所に提出します。大阪検疫所の案内では、届出書は貨物到着の7日前から受け付けており、器具・容器包装については、食品が触れる部分の材質と色が確認できる資料、製品のカラー写真やカタログ、登録検査機関等の試験成績書が挙げられています。
初めて輸入する場合は、届出予定の検疫所に事前に相談するよう厚生労働省が案内しています。必要な試験の項目は材質や用途で変わるため、品目が決まった段階で相談するのが確実です。
プラスチック資源循環法の12品目
プラスチック資源循環法は、無償で提供される主としてプラスチック製のスプーンやストローなど12品目を「特定プラスチック使用製品」とし、提供事業者に使用の合理化を求めています。
環境省のページでは、特定プラスチック使用製品として次の12品目が挙げられています。
- フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー、飲料用ストロー
- ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシ
- 衣類用ハンガー、衣類用カバー
このうちフォークからストローまでの5品目は、各種商品小売業、飲食料品小売業(一部を除く)、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業が対象業種です。主たる事業がこれらに当たらなくても、事業の一部で該当すれば、その範囲で対象になります。
使用の合理化の方法として、提供方法の工夫(有償で提供する、ポイント還元などで辞退を促す、提供前に意思を確認する、繰り返し使用を促す)と、提供する製品の工夫(薄肉化・軽量化、再生可能資源や再生プラスチックなど原材料の種類の工夫、適切な寸法、繰り返し使える製品)が示されています。先行事例として、木製スプーンや紙ストローの提供も紹介されています。
紙や木の製品は対象になるか
経済産業省・環境省のパンフレットは、「主としてプラスチック製」とは、複数の素材でできた製品のうち、製品全体に占めるプラスチックの割合が重量比で一番大きいものだと説明しています。そのうえで、主たる素材がプラスチックではない製品や、飲料パックと一体で販売されるストローのように商品と一体不可分の製品は、特定プラスチック使用製品の対象にならないとしています。また、特定プラスチック使用製品の定義からは、容器包装リサイクル法に規定する容器包装は除かれています。
多量提供事業者
前年度に提供した特定プラスチック使用製品の量が5トン以上の事業者は「多量提供事業者」とされます。環境省のページによると、主務大臣はすべての提供事業者に指導・助言を行い、多量提供事業者の取組が著しく不十分な場合には勧告・公表・命令などを行うことがあります。
環境に関する表示の注意点
「生分解性」「堆肥化可能」「プラスチックフリー」といった表示をするには、その製品についての試験や認証の根拠が必要です。根拠があれば必ず使えるというものでもなく、販売する国の規則で確認します。
環境配慮型の容器は、表示で差をつけたくなる商品です。しかし、たとえば紙コップ本体は紙でも蓋が樹脂なら「プラスチックフリー」は製品全体には当てはまりません。PLAは植物由来ですが、分解するかどうかは処理の条件によります。表示をするなら、どの部分について、どの試験・認証にもとづく主張なのかを説明できる資料をそろえてください。表示に関する規則は国ごとに異なるため、輸出する場合は販売する国の現行の規則で確認が必要です。本記事では、特定の文言が「使える」とは書きません。
当社がお手伝いできること
当社は工場を持たない商社です。案件ごとに、ベトナム・中国・タイなどアジア各地から合う工場を探し、見本・量産・検品・輸出を管理します。材質や部品構成の情報、試験成績書など、輸入届出や販売先への説明に必要な資料を工場から取りそろえる段取りもお手伝いします。他社のロゴやデザインを真似た製品は作りません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 紙ストローや木製スプーンにも食品衛生法は関係しますか?
関係します。食品衛生法は材質を問わず、食品に触れる器具・容器包装に適用されます。ポジティブリストは合成樹脂が対象のため紙や木そのものは対象外ですが、事業者は自らの責任で安全性を確保する必要があります。
Q2. ポジティブリストはいつから完全に適用されていますか?
消費者庁の資料では、2020年6月1日に施行された制度が、2023年11月30日のリスト再整理を経て、2025年6月1日に完全施行されたと説明されています(2026年10月26日確認)。
Q3. 紙ストローに切り替えれば、プラスチック資源循環法の義務はなくなりますか?
主たる素材がプラスチックではない製品は特定プラスチック使用製品の対象になりません。ただし、プラスチック製のスプーンなど他の対象品目を無償で提供していれば、その品目については使用の合理化が求められます。
Q4. 海外から容器を輸入するときは何を届け出ますか?
販売用・営業用であれば、食品衛生法第27条により輸入のたびに検疫所へ届け出ます。材質と色が分かる資料、写真やカタログ、試験成績書などが求められるため、初めての場合は事前に検疫所へ相談してください。
Q5. 「堆肥化可能」と表示するには何が必要ですか?
その製品について主張を裏付ける試験や認証の資料が必要です。蓋や接着剤などを含め、表示が製品全体に当てはまるかも確認してください。輸出する場合は販売国の現行の規則で確認が必要です。
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参考(2026年10月26日確認)
- 食品衛生法(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000233
- 消費者庁「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/appliance/positive_list/
- 厚生労働省「輸入食品監視業務」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu_kanshi/index.html
- 大阪検疫所「食品等輸入届出」 https://www.forth.go.jp/keneki/osaka/syokuhin-kanshi/todokede.html
- 環境省「プラスチック資源循環」 https://plastic-circulation.env.go.jp/about/pro/gorika
- 消費者庁 ポジティブリスト制度の資料 https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/appliance/assets/standards_cms101_250613_001.pdf
- 環境省 プラスチック資源循環法パンフレット https://plastic-circulation.env.go.jp/wp-content/themes/plastic/assets/pdf/pamphlet.pdf