「JAKIMのハラール認証を持っている工場に頼めば、自社ブランドの商品にもハラールマークを付けられる」と考えて工場を選び、初回の生産が終わってから「このままではロゴは付けられない」と分かる。マレーシアでのハラールOEMでは、このような行き違いがよく起きます。工場に落ち度があったわけではありません。マレーシアの手順書では、工場が持つ「受託製造(OEM)の認証」と、製品に付く認証は別のものとして扱われているからです。
本記事では、日本の食品・化粧品・日用品メーカーがマレーシアの工場でハラール対応の製品を自社ブランドで作るときに、認証が誰に付くのか、誰が申請するのか、配合と契約で何を押さえるべきかを、マレーシアの公的な手順書の条文に沿って整理します。宗教上の判断そのもの(ある原料がハラールかどうか)は認証機関が決めることで、本記事では扱いません。
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認証は「工場」「製品」「原料」の3層に分かれる
マレーシアで自社ブランドのハラール製品を作るときは、工場が持つ受託製造(OEM)スキームの認証、製品の種類ごとのスキームで取る製品の認証、そして原料ごとのハラールの裏付けという3つの層を、それぞれ別に確認します。
マレーシアのハラール認証は、JAKIM(マレーシア・イスラム開発局)と各州のイスラム宗教評議会・宗教局が担っています。国内で生産する製品の手順を定めているのが「Manual Prosedur Pensijilan Halal Malaysia (Domestik) 2020」(マレーシア・ハラール認証手順書(国内)2020。以下「手順書」)です。手順書は、取引表示法2011(Akta 730)に基づく「取引表示(ハラールの認証と表示)命令2011」によって出されたものだと自ら書いています。
手順書の第4項は、認証の区分(スキーム)を9つ挙げています。食品・飲料製品、化粧品、医薬品、飲食店舗、日用品(消費財)、物流サービス、と畜場、受託製造(OEM)、医療機器です。
| 層 | 手順書上の区分 | 持つのは誰か | 何を対象にするか |
|---|---|---|---|
| 工場 | 受託製造(OEM)スキーム | 製造工場 | 書面の契約に基づいて他社の製品を作るという「サービス」 |
| 製品 | 食品・飲料、化粧品、医薬品、日用品、医療機器の各製品スキーム | 製造工場、またはブランドオーナー(申請した側) | 申請した個々の製品と、その製品へのハラールロゴの使用 |
| 原料 | 独立したスキームではなく、第17項の原料要件で確認 | 各原料のメーカー・認証機関 | 原料がすべて受け入れ可能で、出どころが分かること |
(2026年10月17日時点で、JAKIMのハラールポータルに掲載された手順書を確認)JAKIMのポータルには、この手順書に関連して2026年に出された通達(Pekeliling)も掲載されています。実際に申請を進める前に、最新の通達もあわせて確認してください。
工場のOEM認証では、自社の製品は認証されない
手順書の第18項(8)(b)は、受託製造(OEM)スキームは製造された製品のハラール認証として使えず、ハラールロゴを使いたい製品はそれぞれ該当する製品スキームで申請しなければならないと定めています。
ロゴの使用ルールでも同じことが書かれています。第41項(6)は、OEMスキームの認証を持つ者は、自社が加工・製造した製品にハラール・マレーシアのロゴを使用・印刷・貼付・表示してはならず、その製品が食品・飲料スキームや化粧品スキームなどの製品スキームで認証を持つ場合に限って使えるとしています。
では、工場のOEM認証は意味がないのかというと、そうではありません。第17項(17)と第18項(8)(i)は、製品の認証を申請する会社は、委託先の工場が先にOEMスキームの認証を持っていることを確認しなければならないとしています。つまり、OEM認証を持たない工場に委託しても、その製品で認証を取る道は開けません。
候補の工場には、次の順で確認します。
- OEMスキームの認証を現在持っているか。 認証書の写しをもらい、JAKIMのポータルの「Verify Halal Status」でOEMの区分を選んで自分でも検索します。
- そのOEM認証は、どの製品分野の受託製造についてのものか。 第18項(8)(j)は、受託製造の種類ごとに別々に申請するよう定めています(例として、食品と医薬品の受託製造は別申請)。
- 自社の製品に近い製品で、製品スキームの認証を取った経験があるか。 似た配合を通した経験があるかどうかの目安になります。
製品の認証を申請するのは工場か、自社か
手順書の第21項(19)は、食品・飲料、化粧品、医薬品、日用品、医療機器の各製品スキームで、ブランドオーナー(pemilik jenama)を申請できる者に含めているので、製品の認証は工場が持つことも、ブランドオーナーが持つこともできます。
どちらが持つかで、実務の負担と自由度が変わります。
| 確認すること | 工場が製品の認証を持つ | ブランドオーナーが持つ |
|---|---|---|
| JAKIMとのやり取り・監査対応 | 工場 | ブランドオーナー(現場では工場の協力が必要) |
| 委託先を変えるとき | 新しい工場に申請し直してもらう | 第39項(1)(c)は「受託製造会社の変更」を認証取消しの事由に挙げているため、どちらの場合も新たな申請が必要になる |
| 製品の登録内容を管理するのは | 工場 | ブランドオーナー |
| 満たすべき申請条件 | 工場の条件 | 自社の条件。第5項はSSM(マレーシア企業委員会)などの有効な事業登録から始まる |
手順書は、マレーシア国内または国外で登記された会社のうち、マレーシア国内で生産を行う者に適用されるとしており、手数料の表にも国外登記の申請者の区分があります。ただし、マレーシアに法人を持たない日本の会社がブランドオーナーとして申請できるかどうかは、本記事で断定できることではありません。計画を立てる前に、最新の手順書とJAKIMへの確認が必要です。また第6項(8)は、マレーシア国内でまったく加工せず、ラベルを貼り替えただけの完成品(国内品・輸入品とも)を申請の対象外としています。
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配合と表示が越えなければならない条件
ハラールの申請を通すには、配合に入るすべての原料について、元のメーカーまでたどれることと、認められたハラール認証書か、それがない場合は十分な裏付け書類があることが前提になります。
原料の要件は手順書の第17項(1)にあります。要点は次のとおりです。
- 動物由来の原料は、権限のある機関または認められたハラール認証機関の有効な認証を持っていること
- ハラール認証のない原料や、JAKIMが認めていない機関の認証しかない原料は、組成・製造工程図・原料の出どころを示す完全な裏付け書類が必要
- すべての原料について、元のメーカーが特定できること
- 第三者(仕入れ先や商社を含む)が切断・予備混合・詰め替えなどの加工をした原料は、それ自体に有効なハラール認証が必要
- すべての原料を、原料のラベルどおりの詳しさで申請システム(MYeHALAL)に申告すること。第21項では、コードで表示された原料には商品名だけでなく本当の名称を添えることも求めています
JAKIMのポータルには、JAKIMが認める海外のハラール認証機関のリストが掲載されています。日本から持ち込む原料に日本の認証機関の認証が付いている場合は、まずその機関がリストに載っているかを確認し、載っていなければ上記の裏付け書類を準備する前提で計画します。
さらに、日本の会社が見落としやすい条件が2つあります。
- 工場はハラール製品だけを作ることが求められる。 第5項(9)は、申請者が取引製品も含めてハラール製品だけを製造・取り扱うことを求め、第18項(8)(c)はOEMスキームの認証を持つ工場にも同じことを求めています。判断の分かれる原料を含む配合は、その製品だけでなく工場全体の認証に関わるため、慎重な工場ほど断ります。
- 製品名・ブランド名に「halal」を入れられない。 第5項(12)は、申請する会社名・製品名・原料名・ブランド名に「halal」の語や、イスラム教徒向けであることを示す表現を使ってはならないとしています。
ゼラチン、アルコールを使った抽出物、動物由来の添加物などは、配合の中で見落とされやすい原料です。どの原料が受け入れられるかは認証機関が判断することなので、配合の段階で工場と認証の担当者に確認してください。
取り決めは契約書に書く
手順書は工場と依頼主(ブランドオーナー)の間に書面の契約または合意を求めているので、ハラールに関する取り決めはメールではなく製造委託契約の一部として書きます。
これは第18項(8)(h)の要件です。そのうえで、契約には次の項目を入れておくと安心です。
| 契約に入れる項目 | なぜ必要か |
|---|---|
| 製品の認証をどちらが申請し、持つか | 登録内容の管理とJAKIMへの対応の責任が決まる |
| 承認済みの原料と仕入れ先(名称で) | 原料の差し替えが認証に影響するため |
| 原料・仕入れ先・生産場所を変える前の事前連絡 | 変更の前に申請内容を直す時間ができる |
| 認証書と監査結果の共有 | 不適合を取引先より先に知るため |
| 有効期間と更新の担当 | 第35項は化粧品・日用品・医薬品・OEM・医療機器のスキームを3年、食品・飲料製品を2年と定め、第22項(2)は期限の6か月前から3か月前までに更新申請するよう求めている |
| 表示とロゴの承認 | 第41項(1)は、有効な認証を持ち、権限のある機関の許可を得た者だけがロゴを使えるとしている |
認証は自分で確かめ、販売先の国の扱いも確認する
見せられた認証書は必ずJAKIMのポータルで自分で確認し、販売先の国がマレーシアの認証をその製品分野で受け入れるかは別に確認します。
JAKIMのハラールポータルの「Verify Halal Status」では、区分ごとに会社を検索できます。受託製造(OEM)にも独立した区分があります。区分、登録されている製品、有効期限を確認してください。営業資料に載った認証書の画像は、かつて認証があったことしか示しません。
マレーシアの認証が、どの国でもそのまま通用するわけではありません。輸入国が独自のハラール制度を持っていたり、認める海外認証機関のリストを持っていたりします。たとえばインドネシアには独自のハラール製品保証制度があります。判断するのは輸入国なので、初回生産の前に輸入国の当局か輸入者に確認してください。
日本に輸入して国内のイスラム教徒の方やインバウンド向けに販売する場合は、ハラールとは別に、食品なら食品衛生法、化粧品なら医薬品医療機器等法など、品目ごとの日本の輸入・表示の規制がかかります。マレーシアから日本への関税(日マレーシアEPA・AJCEP・RCEP)はタイ・マレーシアから日本へ輸入|EPA・AJCEP・RCEPの選び方、SSMやSIRIM、原産地証明、港についてはマレーシア仕入れ・委託製造の進め方と確認先をご覧ください。部品や機器の委託を検討している場合は、マレーシア ゴム製品OEMやマレーシアEMS|電子機器の製造委託もあわせてご覧ください。
よくある質問
1. 委託先の工場がJAKIM認証を持っていれば、自社ブランドの製品にハラールロゴを付けられますか?
A. 工場のOEM認証だけでは付けられません。手順書の第18項(8)(b)はOEMスキームが製造品の認証にならないとし、第41項(6)は製品スキームの認証がない製品へのロゴ使用を禁じています。製品ごとに製品スキームでの認証が必要です。
2. 製品の認証は、工場ではなく自社の名前で取れますか?
A. 手順書は、食品・飲料、化粧品、医薬品、日用品、医療機器の製品スキームで、ブランドオーナーを申請できる者に含めています。ただし事業登録などの申請条件があり、マレーシアに法人を持たない会社の扱いはJAKIMへの確認が必要です。
3. 委託先の工場を変えると、認証はどうなりますか?
A. 第39項(1)(c)は、受託製造会社の変更を認証取消しの事由に挙げています。工場を変えるときは、新たな申請が必要になる前提で日程を組んでください。
4. ブランド名に「Halal」を入れてもよいですか?
A. 入れられません。第5項(12)は、申請する会社名・製品名・原料名・ブランド名に「halal」の語や、イスラム教徒向けであることを示す表現を使うことを認めていません。
5. 見せられた認証書が本物で有効かは、どう確認しますか?
A. JAKIMのハラールポータルの「Verify Halal Status」で、該当する区分を選んで会社名を検索し、区分・登録製品・有効期限を確認します。
まとめ
マレーシアでのハラールOEMでは、工場のOEM認証と製品の認証は別物であり、製品の認証を工場とブランドオーナーのどちらが持つかを決め、原料の裏付けと契約の取り決めを先に整えることが、ロゴを付けて出荷するための近道です。
手順書は改定や通達で変わることがあります。この記事の条文番号を出発点にして、申請の前に最新の手順書と通達を必ず確認してください。
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※出典:JAKIM「Manual Prosedur Pensijilan Halal Malaysia (Domestik) 2020」第4・5・6・17・18・21・22・35・39・41項、JAKIMハラールポータル(halal.gov.my)の「Verify Halal Status」と海外認証機関リスト。2026年10月17日確認。