乳酸菌は、日本の食卓に古くからなじみのある素材です。発酵乳やみそ、漬物に加えて、カプセルや顆粒の乳酸菌サプリも数多く売られています。ビフィズス菌と合わせて「腸内環境」をテーマにした機能性表示食品も多く、新しく参入する事業者にとって検討しやすい成分です。

本記事は、乳酸菌サプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた内容です。研究の結果が菌株ごとに違う理由、生菌と加熱殺菌菌体の違い、表示のルール、剤形と包装の決め方を整理します。乳酸菌は「どの菌株を選ぶか」で、使える研究も表示も変わります。最初に菌株の考え方を押さえておくと、配合と広告の両方で迷いにくくなります。

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研究で分かっていること

乳酸菌の研究結果は菌の種類全体ではなく菌株ごとのもので、同じ種類の菌でも菌株によって結果が異なります。

菌株は、属名・種名に続く固有の記号で区別されます。たとえば Bifidobacterium animalis subsp. lactis の後に、菌株ごとの記号が付きます。次の2つのレビューは、菌株の違いが結果を左右することを示しています。

レビュー対象結果
系統的レビュー・メタ解析、The American Journal of Clinical Nutrition 2014(PubMed 25099542)機能性便秘の成人を対象としたランダム化比較試験14件(1,182人)全体では腸の通過時間が短くなり、排便回数が週1.3回増えた。排便回数の増加は B. lactis では有意だったが、L. casei Shirota では有意ではなかった。試験間のばらつきと偏りのリスクが大きく、解釈には注意が必要とされた
系統的レビュー・メタ解析、Frontiers in Medicine 2018(PubMed 29868585)菌株を特定できるプロバイオティクスのランダム化比較試験228件効果は菌株ごと、目的ごとに異なると結論。異なる菌株をまとめて評価すると、誤った結論につながると指摘した

2014年のメタ解析は、便秘の方を対象にした試験を集めたものです。健康な方向けの商品の表示に、そのまま持ち込める結果ではありません。著者らも、どの菌株をどの量でどのくらいの期間使うと良いかを決めるには、十分な規模の試験が必要だとしています。

生菌と加熱殺菌菌体の違い

生きた菌(プロバイオティクス)と加熱殺菌した菌体(ポストバイオティクス)は、定義も規格も研究も別の原料として扱います。

生菌(プロバイオティクス)加熱殺菌菌体(ポストバイオティクス)
国際的な定義適切な量を摂取したときに健康上の利益をもたらす生きた微生物(ISAPP 2014)健康上の利益をもたらす、生きていない微生物やその構成成分の調製物(ISAPP 2021)
規格の書き方生菌数。賞味期限の終わりの時点で保証する数が基本菌数または菌体の量。生きているかどうかは問わない
製造の注意熱・水分・酸素に弱く、包装と保管が重要比較的安定で、錠剤・飲料・菓子にも使いやすい
研究の範囲試験に使った生きた菌株の結果試験に使った加熱殺菌菌体の結果。同じ菌株の生菌の結果を流用できない

ISAPP(国際プロバイオティクス・プレバイオティクス科学協会)は、研究者による国際的な学術団体です。上の定義は、同協会の専門家パネルの合意声明として専門誌に掲載されています。

(2026年10月11日時点で、各論文の公開抄録を確認)

機能性表示食品として届け出る場合

乳酸菌・ビフィズス菌は、特定の菌株を関与成分として、腸内環境やお腹の調子に関する表示で機能性表示食品に多く使われています。

ビフィズス菌の届出では「腸内環境を良好にし、腸の調子を整える」という趣旨の表示がよく見られます。2020年には、特定の乳酸菌について「健康な人の免疫機能の維持に役立つ」という趣旨の届出も公表されました。いずれも、届け出た菌株とその量の根拠に基づく表示です。

機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。

2024年の制度改正で、サプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務になりました。2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を報告することも届出者の義務です。

乳酸菌で機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。

  • 根拠となる菌株:研究レビューで使う論文が、配合する菌株そのものの試験であること
  • 関与成分の量:根拠とする研究と同じ菌数を、賞味期限まで保証できること
  • 菌数の分析方法:生菌数または菌体数を測る方法と、その結果を保証する体制

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いわゆる健康食品として売る場合の表示

届出をしない乳酸菌サプリでは、身体への効果をうたう表示は避け、菌株名や菌数などの事実を中心に伝えます。

健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。

法律かかわる規定乳酸菌サプリで注意すること
医薬品医療機器等法(薬機法)承認前の医薬品の広告の禁止(第68条)食品なのに「便秘が治る」「腸の病気に」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある
健康増進法誇大表示の禁止(第65条)健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない
景品表示法優良誤認表示の禁止根拠のない「業界最多の菌数」「医師も推薦」などの表示

消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。

比較的安全な言い方避けるべき言い方
「1包に〇〇菌(菌株記号)を〇億個配合」(菌株と量の事実)「便秘に効く」「腸の病気を防ぐ」
「賞味期限まで〇億個を保証」(期限時点の菌数)製造時の菌数だけを大きく見せる表示
「加熱殺菌乳酸菌」(実際の状態)加熱殺菌菌体を「生きた乳酸菌」と書く表現

別の菌株の論文を引用して、自社の菌株にも同じ効果があるように見せる表示は避けてください。菌株が違えば、研究の結果も違うものとして扱います。

乳酸菌の製剤設計

生菌は水分と熱を避けられるカプセルや顆粒が中心で、加熱殺菌菌体はほとんどの剤形に使えます。

剤形選ばれる理由検討すること
ハードカプセル味がなく、生菌を水分から守りやすい菌数と粒の大きさ、PTP包装やアルミ袋
顆粒スティック1回分ずつ包装でき、持ち運びやすい吸湿を防ぐ包材
錠剤・チュアブル錠1回あたりの費用を抑えやすい打錠時の圧力と熱。生菌では菌数が減りやすい
飲料・菓子日常の食品として取り入れやすい加熱工程があるため、加熱殺菌菌体が向いている

仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。

  1. 菌株と原料の由来:菌株ごとの研究がある原料を選びます。原料メーカーに菌株名と規格書を確認し、自社の規格書にも菌株名を残します。
  2. 1日あたりの量:生菌は、製造時ではなく賞味期限の終わりの菌数で決めます。根拠とする研究がある場合は、同じ程度の量に合わせます。
  3. 組み合わせる成分:食物繊維やオリゴ糖を組み合わせる配合がよくあります。植物素材を加える場合は、食品に使えるかどうかを一つずつ確認します。
  4. 包装と保管:生菌はPTP包装やアルミ袋で水分を防ぎます。賞味期限の根拠となる保管温度と、輸送の条件も決めておきます。

最初に確認すること:食品に使える成分か

日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。

厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。

食品に使われる乳酸菌・ビフィズス菌自体は、日本で広く流通しています。注意が必要なのは、「すっきり」や「巡り」をテーマにした配合に加える植物素材です。配合の確認はサプリメントOEMのページで詳しく説明しています。研究の限界を踏まえた表示の考え方は、GABAサプリのOEMの記事も参考になります。

見積もりの前に決めておくこと

菌株、菌数、剤形、包装が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。

  • 菌株名と、生菌か加熱殺菌菌体か
  • 1日あたりの菌数(生菌は賞味期限の終わりの時点)
  • 剤形と包装の形
  • 組み合わせる成分と、その量
  • 保管と輸送の条件
  • 機能性表示食品として届け出るかどうか
  • 初回の製造数と、年間の見込み数

菌株が決まっていない段階でも、ご相談いただけます。生菌と加熱殺菌菌体のどちらが販売方法に合うかから、一緒に整理できます。

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よくある質問(FAQ)

なぜ乳酸菌は菌株が大切なのですか?

研究の結果が菌株ごとに違うためです。2014年のメタ解析では、排便回数の増加が B. lactis では有意で、L. casei Shirota では有意ではありませんでした。ある菌株の研究を、別の菌株の根拠として使うことはできません。

生菌と加熱殺菌菌体は、どちらが良いですか?

目的と剤形によります。生菌は熱と水分に弱く、カプセルや顆粒が中心です。加熱殺菌菌体は安定で、錠剤や飲料、菓子にも使えます。研究も別々なので、選んだ原料の研究を確認します。

菌数はどのように書けばよいですか?

生菌は、賞味期限の終わりの時点で保証できる菌数を書くのが基本です。製造時の菌数だけを書くと、お客様が実際に摂る量より多く見えてしまいます。

機能性表示食品にしない乳酸菌サプリでも、腸内環境と書けますか?

いわゆる健康食品では、身体への効果をうたう表現は避ける必要があります。「腸内環境を整える」のような表現は効果の表示と受け取られやすいため、菌株名や菌数などの事実を中心にしてください。

工場に製造を断られることはありますか?

乳酸菌自体ではなく、組み合わせた植物素材が原因になることがあります。配合するすべての成分が食品に使えるかを、最初に確認します。

参考

  • “The effect of probiotics on functional constipation in adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials”, The American Journal of Clinical Nutrition 2014, PubMed 25099542, doi 10.3945/ajcn.114.089151
  • “Strain-Specificity and Disease-Specificity of Probiotic Efficacy: A Systematic Review and Meta-Analysis”, Frontiers in Medicine 2018, PubMed 29868585, PMC5949321
  • “The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics consensus statement on the scope and appropriate use of the term probiotic”, Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology 2014, PubMed 24912386
  • “The International Scientific Association of Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on the definition and scope of postbiotics”, Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology 2021, PubMed 33948025, PMC8387231
  • 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
  • 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)

(2026年10月11日確認)