DHA・EPAは、魚の油に多く含まれる脂肪酸で、日本の健康食品の売り場で長く定番になっている成分です。ソフトカプセルの商品が多く、機能性表示食品として中高年の記憶に関する表示をした商品もあります。
本記事は、DHA・EPAサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた内容です。研究で分かっていること、機能性表示食品と栄養機能食品の違い、いわゆる健康食品の表示、酸化とにおいを抑える製剤の考え方を整理します。DHA・EPAは知名度が高い一方で、試験によって結果が分かれています。両方の結果を知っておくと、表示と広告の言葉選びで失敗しにくくなります。
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研究で分かっていること
記憶力が低下ぎみの中高年ではDHAで記憶の検査に差が出た試験がある一方、健康な高齢者の大規模な試験やレビューでは差が出ていません。
| 試験/レビュー | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| ランダム化比較試験、Alzheimer’s & Dementia 2010(PMID 20434961) | 記憶の検査の点数が若い成人より低い、55歳以上の健康な485人。DHA 900mg/日またはプラセボを24週間 | 視空間の学習と記憶の検査で誤りが有意に少なかった。言葉の再認記憶も良好。作業記憶と実行機能の検査では差がなかった |
| コクラン・レビュー、Cochrane Database of Systematic Reviews 2012(PMID 22696350) | 認知機能に問題のない60歳以上を対象にした3つの試験(認知機能のデータは約3,500人) | 認知機能の検査で、オメガ3脂肪酸群とプラセボ群に差はなかった。主な副作用は軽い胃腸の不調 |
| VITAL試験の認知機能の解析、Alzheimer’s & Dementia (New York) 2022(PMID 35415212) | 60歳以上の地域在住の健康な高齢者。電話で調べた3,424人と対面で調べた794人。魚由来のオメガ3脂肪酸1g/日(EPA+DHA 840mg) | 2〜3年間の認知機能の変化に、プラセボとの有意な差はなかった |
差が出た2010年の試験は、記憶の検査の点数が低めの人を選んで行われ、期間は24週間でした。一方、対象を絞らない健康な高齢者では、2〜3年の試験でも差は出ていません。試験の対象者と期間によって、結果が分かれている点に注意が必要です。
DHA・EPAの大規模試験には、心臓や血管の病気を調べたものも多くあります。そうした試験は病気の発生を調べたもので、食品の表示の根拠にはなりません。
(2026年10月11日時点で、各論文の公開抄録を確認)
機能性表示食品として届け出る場合
DHA・EPAは、機能性表示食品として「中高年の加齢に伴い低下する、認知機能の一部である記憶力の維持」といった趣旨の表示で届け出られている成分です。
機能性表示食品として販売するには、販売前に、機能性の科学的根拠と安全性の情報を消費者庁に届け出ます。届出は国の審査や許可ではなく、届出者が自らの責任で根拠を示す制度です。表示できるのは届け出た根拠の範囲の内容で、病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。
2024年の制度改正で、届出者の責任は重くなりました。錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品では、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務になりました。この義務は2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を消費者庁などへ報告することも、届出者の義務です。
DHA・EPAで機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。
- 根拠の取り方:既存の研究をまとめた研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか
- 関与成分の量:根拠とする研究で使われた1日あたりのDHA・EPAの量と合わせる
- 分析の方法:製品中のDHA・EPAの量を測る方法と、賞味期限まで量を保つ体制
DHA・EPAには、栄養機能食品という別の道もあります。n-3系脂肪酸を1日あたり0.6g以上2.0g以下含めば、届出なしで「n-3系脂肪酸は、皮膚の健康維持を助ける栄養素です。」と表示できます。表示できる機能は皮膚の健康維持だけで、文言は変えられません。必要な粒数で無理なく飲めるかを、工場と一緒に確認します。
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いわゆる健康食品として売る場合の表示
機能性表示食品として届け出ないDHA・EPAサプリは、身体への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | DHA・EPAサプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 「物忘れに効く」「血液サラサラ」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 根拠のない「医師も推薦」「業界最高純度」などの表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1日3粒にDHA〇mg・EPA〇mg」(量の事実) | 「頭が良くなる」「認知症対策」 |
| 「魚をあまり食べない方の食生活に」(使用場面) | 血液の検査値や、心臓・血管の病気に関する表現 |
| 機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内) | 海外の大規模試験の名前を挙げて、製品の効果のように見せる表現 |
DHA・EPAの製剤設計
DHA・EPAは酸化しやすい油のため、原料の選び方と同じくらい、剤形・酸化を防ぐ配合・包装が品質を左右します。
| 剤形 | 選ばれる理由 | 検討すること |
|---|---|---|
| ソフトカプセル | 油をそのまま包め、空気に触れにくく、においも抑えやすい | 皮膜の素材(ゼラチンか植物由来か)と、粒の大きさ |
| 液体(オイル) | 1回に多くの量をとりやすい | 開封後に酸化が進みやすい。保管方法の表示と短めの使用期限 |
| 粉末(マイクロカプセル化) | 飲料や食品に混ぜやすい | 被覆の品質が、酸化のしにくさとにおいを左右する |
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 原料の由来:イワシなどの魚の油が一般的で、魚を使わない藻類由来のDHA原料もあります。原料メーカーに、油1gあたりのDHA・EPAの量、魚種、精製の方法を確認します。
- 1日あたりの量:機能性表示食品にするなら、根拠とする研究の量に合わせます。粒の大きさと1日の粒数で、無理なく飲める量かを確かめます。
- 組み合わせる成分:酸化を抑えるビタミンEを加えるのが一般的です。アスタキサンチンなど油に溶ける成分と一緒にソフトカプセルにすることもありますが、成分ごとに食品に使えるかの確認が欠かせません。
- 包装・安定性:酸素と光を通しにくい包装と、保管温度の指定を検討します。においの苦情を減らすため、腸で溶けるように設計した皮膜や、香りづけを選べるかを工場に相談します。
魚由来の原料を使う場合は、原料の規格書で魚種を確定させます。そのうえで、アレルギー表示の要否を確認してから包装の表示を決めると安心です。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
DHA、EPA、イワシなどの精製した魚油は、厚生労働省のもう一つのリストに例として載っています。「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」です。注意が必要なのは、記憶や集中をテーマにして組み合わせる植物素材です。配合の確認は、サプリメントOEMのページで詳しく説明しています。ビタミン・ミネラルと組み合わせる場合は、マルチビタミンサプリのOEMもご覧ください。
見積もりの前に決めておくこと
原料の由来、DHA・EPAの量、剤形、包装が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- 原料の由来(魚油か藻類油か)と、魚油なら魚種
- DHA・EPAの1日あたりの量と、1袋あたりの日数
- 剤形と、ソフトカプセルなら皮膜の素材やにおい対策
- 組み合わせる成分と、その量
- 包装の形と保管の条件
- 機能性表示食品・栄養機能食品として表示するかどうか
- 初回の製造数と、年間の見込み数
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よくある質問(FAQ)
DHA・EPAの記憶への効果は、研究で確かめられていますか?
記憶力が低下ぎみの中高年で差が出た試験がある一方、健康な高齢者を対象にした大規模な試験やレビューでは差が見られていません。結果は対象者と期間によって分かれています。広告では、研究の条件と限界を踏まえた言葉を選ぶことが大切です。
機能性表示食品と栄養機能食品は、どう違いますか?
機能性表示食品は、届出者が自ら科学的根拠を示して販売前に届け出る制度で、届け出た範囲の表示ができます。栄養機能食品は届出が不要で、n-3系脂肪酸を決まった量含めば、皮膚の健康維持に関する決まった文言だけを表示できます。
魚のにおいは抑えられますか?
酸化を抑えるビタミンEの配合、酸素を通しにくい包装、においを抑えたソフトカプセルの皮膜などで抑えます。原料の鮮度と精製の度合いも大きく影響するため、原料の規格書で酸化の指標を確認します。
魚を使わないDHAサプリは作れますか?
藻類由来のDHA原料を使えば、魚を使わない商品を設計できます。EPAを含むかどうかや含む量は原料によって異なるため、配合したい量に合わせて原料を選びます。
工場に製造を断られることはありますか?
DHA・EPA自体ではなく、組み合わせた植物素材が原因になることがあります。配合するすべての成分が食品に使えるかを、最初に確認します。
参考
- “Beneficial effects of docosahexaenoic acid on cognition in age-related cognitive decline”, Alzheimer’s & Dementia 2010, PMID 20434961
- “Omega 3 fatty acid for the prevention of cognitive decline and dementia”, Cochrane Database of Systematic Reviews 2012, PMID 22696350
- “Marine n-3 fatty acids and cognitive change among older adults in the VITAL randomized trial”, Alzheimer’s & Dementia (New York) 2022, PMID 35415212
- 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第7条・別表第十一(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
- 厚生労働省「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734639.pdf
- 消費者庁「機能性表示食品について」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月11日確認)