マルチビタミンは、サプリの新規参入で最初に企画されることの多い商品です。ビタミンとミネラルを1粒にまとめるだけに見えますが、日本で表示をするときは、成分ごとに決まったルールを一つずつ満たす必要があります。

本記事は、マルチビタミンサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた内容です。研究で分かっていること、栄養機能食品として表示する場合の決まり、いわゆる健康食品として売る場合の表示、剤形と配合の決め方を整理します。マルチビタミンは成分が多い分、表示の確認も成分の数だけ必要です。最初に全体像を知っておくと、配合を決め直す手間を減らせます。

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研究で分かっていること

米国の大規模試験では、マルチビタミン・ミネラルの毎日の摂取で高齢者の認知機能の検査値に小さな差が出た一方、認知機能の低下の発生率には差がありませんでした。

試験対象結果
COSMOS-Mind、Alzheimer’s & Dementia 2023(PMID 36102337)米国の高齢者2,262人(平均73歳)。市販のマルチビタミン・ミネラルまたはプラセボを3年間事前に決めた副次評価項目で、全般的な認知機能の検査値がプラセボより有意に良かった(平均z値の差0.07)
COSMOS内の3研究のメタ解析、American Journal of Clinical Nutrition 2024(PMID 38244989)対面・電話・ウェブで認知機能を調べた3つの研究、計5,203人(60歳以上)全般的な認知機能と記憶で、マルチビタミン・ミネラル群が有意に良かった。著者は差の大きさを「認知の老化2年分に相当」と表現
COSMOS-Mind の発生率の解析、Alzheimer’s & Dementia 2023(PMID 37035889)同じ2,262人。3年間の軽度認知障害と認知症の発生発生率に差はなかった。著者は統計的な検出力が低いことも記載
Physicians’ Health Study II、JAMA 2012(PMID 23162860)50歳以上の米国の男性医師14,641人。マルチビタミンまたはプラセボを中央値11.2年がんの発生率がわずかに低かった(ハザード比0.92)。がんによる死亡や部位別のがんには有意差なし

どの試験も、対象は米国の中高年・高齢者です。差が出た項目でも、その大きさは小さいものでした。COSMOSの一部の研究者は、試験品にかかわる企業から研究支援を受けたことを開示しています。

日本の若い世代や女性、食事の内容が違う人に、同じ結果が当てはまるとは限りません。商品の広告で、試験の結果を広く当てはめないように注意が必要です。

(2026年10月11日時点で、各論文の公開抄録を確認)

栄養機能食品として表示する場合

栄養機能食品は、国が決めた栄養成分を下限値から上限値の範囲で含めば、決まった文言で機能を表示できる制度で、マルチビタミンでは成分ごとに確認します。

栄養機能食品は、届出や国の審査は不要です。そのかわり、1日あたりの摂取目安量に含まれる量と、表示する文言が食品表示基準の別表第十一で決まっています。「マルチビタミン」というまとめた機能の表示はなく、表示したい成分ごとに範囲と文言を満たす必要があります。

別表第十一は、2026年10月1日公布・施行の内閣府令(令和8年内閣府令第89号)で改正されました。下限値・上限値、機能の文言、注意事項が見直され、多くの成分で文言が変わっています。マルチビタミンによく使われる成分の基準は次のとおりです。

栄養成分改正後の量(2026年10月1日施行)改正前の量改正後の機能の文言
ビタミンA231〜600μg231〜600μg暗所での視力を正常に保つのを助ける栄養素です/皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです
ビタミンB10.30〜25mg0.36〜25mgエネルギーを作るのを助ける栄養素のひとつです
ビタミンB20.42〜12mg0.42〜12mgエネルギーを作るのを助ける栄養素のひとつです/皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです
ビタミンB60.39〜10mg0.39〜10mgたんぱく質からエネルギーを作るのを助ける栄養素です/皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです
ビタミンB121.20〜60μg0.72〜60μg赤血球を作るのを助ける栄養素のひとつです
ナイアシン3.9〜60mg3.9〜60mgエネルギーを作るのを助ける栄養素のひとつです/皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです
葉酸72〜200μg72〜200μg赤血球を作るのを助ける栄養素のひとつです/胎児の正常な発育を助ける栄養素です
ビタミンC30〜1,000mg30〜1,000mg抗酸化作用により細胞を保護するのを助ける栄養素のひとつです ほか2つ
ビタミンD2.70〜5.0μg1.65〜5.0μgカルシウムの吸収を助ける栄養素です/骨を作るのを助ける栄養素のひとつです
ビタミンE1.95〜150mg1.89〜150mg抗酸化作用により細胞を保護するのを助ける栄養素のひとつです
亜鉛2.55〜17mg2.64〜15mg味覚を正常に保つのを助ける栄養素です/皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです
鉄1.95〜10mg2.04〜10mg赤血球を作るのに必要な栄養素です
カルシウム210〜600mg204〜600mg骨や歯を作るのに必要な栄養素のひとつです
マグネシウム96〜320mg96〜300mg骨や歯を作るのに必要な栄養素のひとつです ほか2つ

表の文言は、各成分名を主語にして「ビタミンCは、〜」の形で表示します。文言を言い換えたり、まとめたりすることはできません。ビタミンCの残り2つは「皮膚や粘膜、骨、血管のコラーゲン合成を助ける栄養素です」「鉄の吸収を助ける栄養素です」です。マグネシウムの残り2つは「エネルギーを作るのを助ける栄養素のひとつです」「血液循環を正常に保つのを助ける栄養素のひとつです」です。

改正府令の附則には経過措置があり、令和12年(2030年)3月31日までに製造・加工・輸入される加工食品は、改正前の基準によることもできます。改正前の基準による場合は、文言だけでなく量も改正前の範囲で確認します。ビタミンDのように下限値が上がった成分は、今の配合が改正後の範囲に入るかを早めに確かめておくと安心です。

成分によっては、決まった注意事項も表示します。

  • ビタミンA:妊娠3か月以内または妊娠を希望する女性は、ビタミンAの過剰摂取にならないよう注意する旨(改正で成分名が入りました)
  • 葉酸:多量摂取により胎児の発育がよくなるものではない旨
  • 亜鉛:摂り過ぎは銅の吸収を阻害するおそれがある旨と、乳幼児・小児は摂取を避ける旨
  • マグネシウム:マグネシウムを多量に摂取すると軟便になることがある旨と、乳幼児・小児は摂取を避ける旨(改正で成分名が入りました)
  • ビタミンK:血液凝固阻止薬を服用している方は摂取を避ける旨

すべての栄養機能食品に共通する表示もあります。「栄養機能食品(ビタミンC)」のような名称の表示、多量摂取で健康が増進するものではない旨、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」の文言、「本品は、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。」の文言などです。

錠剤やカプセルの形の食品では、カリウムは栄養機能食品の対象から外れています。包装の版下を作る前に、改正後の基準と経過措置のどちらで表示するかを決めておきましょう。

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いわゆる健康食品として売る場合の表示

栄養機能食品の表示をしないマルチビタミンは、身体への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。

健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。

法律かかわる規定マルチビタミンサプリで注意すること
医薬品医療機器等法(薬機法)承認前の医薬品の広告の禁止(第68条)「疲れが取れる」「風邪をひきにくくなる」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある
健康増進法誇大表示の禁止(第65条)健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない
景品表示法優良誤認表示の禁止根拠のない「〇種類で完璧な栄養」「No.1」などの表示

消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。

比較的安全な言い方避けるべき言い方
「1日2粒にビタミン〇種、ミネラル〇種」(量の事実)「病気を防ぐ」「免疫力アップ」
栄養機能食品の決まった文言(範囲内の成分だけ)決まった文言を言い換えた表現や、複数の成分をまとめた機能の表現
「毎日の食事で不足しがちな栄養素の補給に」(目的の説明)「認知症対策」など、病名を挙げた表現や海外の試験結果を製品に当てはめる表現

マルチビタミンの製剤設計

マルチビタミンは成分の数が多いため、剤形を選ぶ前に、各成分の量が1粒または1包に収まるかを確かめることが中心になります。

剤形選ばれる理由検討すること
錠剤小さく、1回あたりの費用を抑えやすい粒の大きさと1日の粒数。ミリグラム単位の多い成分は粒が大きくなる
ハードカプセル味がなく、粉のまま詰められる錠剤と同じく、入る量に限りがある
顆粒スティック1回に入る量が多く、カルシウムやマグネシウムを多めに入れやすい味と、湿気を防ぐ包装
2層錠一緒にすると不安定な成分を分けられる製造の手間と費用

仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。

  1. 原料の由来:ビタミンやミネラルには、化合物の種類が複数あります(ミネラルの塩の種類など)。原料メーカーに規格書と含有量を確認します。
  2. 1日あたりの量:栄養機能食品として表示する成分は、下限値以上・上限値以下に収めます。表示しない成分も、上限値を超えない設計にしておくと、あとで表示を追加しやすくなります。
  3. 組み合わせる成分:植物エキスなどを加えるときは、食品に使えるかどうかを成分ごとに確認します。
  4. 包装・安定性:ビタミン類には、光・熱・湿気で減りやすいものがあります。保管中の減少を見込んだ配合量と、アルミ包装や乾燥剤入りのボトルを検討します。

保管中の減少を見込んで多めに配合する場合は、その分を含めても上限値を超えないかを確認します。上限値に近い量で設計する成分ほど、余裕の取り方を工場と早めに相談しておくと安心です。

最初に確認すること:食品に使える成分か

日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。

厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。

ビタミンやミネラル自体は、食品に広く使われています。問題になりやすいのは、エネルギーや美容をテーマにして加える植物素材です。配合の確認は、サプリメントOEMのページで詳しく説明しています。単一の成分の詳しい情報は、ビタミンCサプリのOEM、ビタミンDサプリのOEM、亜鉛サプリのOEMで紹介しています。

見積もりの前に決めておくこと

成分の一覧と量、栄養機能食品として表示する成分、剤形、包装が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。

  • 配合する成分の一覧と、1日あたりの量
  • 栄養機能食品として表示する成分(表示しない場合はその旨)
  • 剤形と1日の粒数、または1包の量
  • 植物素材など、ビタミン・ミネラル以外に加える成分
  • 包装の形
  • 初回の製造数と、年間の見込み数

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よくある質問(FAQ)

マルチビタミンに、ひとまとめの機能表示はありますか?

ありません。栄養機能食品では、成分ごとに下限値・上限値と機能の文言が決まっています。表示したい成分の一つひとつが範囲に入っていることを確認し、その成分の文言をそのまま使います。

マルチビタミンの効果は、研究で確かめられていますか?

米国の大規模試験では、高齢者の認知機能の検査値に小さな差が報告されています。一方で、認知機能の低下の発生率には差がなく、結果を広く当てはめることはできません。広告では、試験の対象と差の大きさを踏まえた言葉を選ぶことが大切です。

栄養機能食品の届出は必要ですか?

届出は不要で、国の個別審査もありません。そのかわり、量の範囲、決まった機能の文言、注意事項、共通の表示事項を、食品表示基準のとおりに表示する必要があります。

上限値を超える量を配合してもよいですか?

上限値を超える成分は、栄養機能食品としての機能の表示ができません。表示をしない成分でも、過剰な量にならない設計にしておくと安心です。2026年10月1日の改正で上限値が変わった成分もあるため、改正後の値で確認してください。

1粒にすべての成分を入れられますか?

成分と量によっては入りきりません。カルシウムやマグネシウムのように量の多い成分を入れると、粒が大きくなったり粒数が増えたりします。顆粒スティックにするか、成分を絞るかを早めに決めると、仕様の決め直しを減らせます。

参考

(2026年10月11日確認)