亜鉛は、日本の売り場で単体のサプリとしてもよく見かけるミネラルです。男性向けの配合や、ビタミンCやマルチビタミンと組み合わせた商品にも使われています。亜鉛サプリは、ミリグラム単位の少ない量で配合でき、錠剤やカプセルにしやすい成分です。

本記事では、亜鉛サプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けて、研究で分かっていること、栄養機能食品として表示する場合の決まり、いわゆる健康食品として売る場合の表示、原料と剤形の決め方を整理します。栄養機能食品の亜鉛の基準は2026年10月1日に改正され、上限値と文言が変わりました。亜鉛は銅の吸収や子どもへの注意が表示で求められる成分でもあり、最初に全体を知っておくと設計の手戻りを防げます。

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研究で分かっていること

亜鉛の研究で多い風邪の期間に関する試験は結果のばらつきが大きく、2024年のコクランレビューは、予防の効果はほとんどない可能性があり、治療の効果も確実性が低いと評価しています。

レビュー対象結果
系統的レビュー、Cochrane Database of Systematic Reviews 2024(PMID 38719213)子どもと大人の34試験・8,526人(予防15試験、治療19試験)。亜鉛をほかの成分と組み合わせた試験は除外予防の効果はほとんどないか、ない可能性(確実性が低い)。症状が出てから使うと日数が平均2.37日短い可能性(確実性が低い)。治療で使うと軽い有害事象が増える
系統的レビュー、CMAJ 2012(PMID 22566526)17試験・2,121人。亜鉛をとった人とプラセボなどの比較症状の日数が平均1.65日短い。大人では差があり、子どもでは差がない。試験間のばらつきが大きく、まずい味や吐き気が多い
個人データのメタ分析、British Journal of Clinical Pharmacology 2016(PMID 27378206)酢酸亜鉛のトローチを使った3試験・199人風邪の日数が約2.7〜2.9日短い。人数が少ない分析

研究の限界は、はっきりしています。2024年のコクランレビューでは、多くの試験に偏りのおそれがあり、使った剤形や量も試験ごとに大きく違いました。日数が短くなった結果の多くは、トローチを頻繁になめる方法で、毎日1粒飲む一般的なサプリとは使い方が異なります。

(2026年10月11日時点で、各論文の公開抄録を確認)

栄養機能食品として表示する場合

亜鉛は栄養機能食品の対象成分で、2026年10月1日の改正後は、1日あたりの摂取目安量に2.55mg以上17mg以下を含めば、国が決めた文言で機能を表示できます。

栄養機能食品は、国が決めた栄養成分について、決められた機能を表示できる制度です。届出や国の個別審査は必要ありません。そのかわり、量の範囲と表示する文言が、食品表示基準の別表第十一で決まっています。

別表第十一は、2026年10月1日公布・施行の内閣府令(令和8年内閣府令第89号)で改正されました。亜鉛の基準は次のとおりです。

項目改正後(2026年10月1日施行)改正前
1日あたりの摂取目安量に含まれる量下限値2.55mg、上限値17mg下限値2.64mg、上限値15mg
栄養成分の機能「亜鉛は、味覚を正常に保つのを助ける栄養素です。」
「亜鉛は、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです。」
「亜鉛は、味覚を正常に保つのに必要な栄養素です。」
「亜鉛は、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。」
「亜鉛は、たんぱく質・核酸の代謝に関与して、健康の維持に役立つ栄養素です。」

摂取をする上での注意事項は、改正の前後で同じ次の文言です。

「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。亜鉛の摂り過ぎは、銅の吸収を阻害するおそれがありますので、過剰摂取にならないよう注意してください。一日の摂取目安量を守ってください。乳幼児・小児は本品の摂取を避けてください。」

上限値17mgの根拠は、日本人の食事摂取基準(2025年版)の耐容上限量です。18歳以上で最も小さい35mgから、日本人の摂取量の上位1パーセンタイル値18.5mgを差し引いて決められました。下限値は栄養素等表示基準値8.5mgの30%です。改正前にあった「たんぱく質・核酸の代謝」の文言は、改正後の基準にはありません。

改正府令の附則には経過措置があり、令和12年(2030年)3月31日までに製造・加工・輸入される加工食品は、改正前の基準によることもできます。経過措置で改正前の基準による場合は、文言だけでなく量も改正前の範囲(2.64〜15mg)で確認します。

機能の文言と注意事項は、主旨が同じでも言い換えや省略が認められていません。ほかにも、次の表示が必要です。

  • 「栄養機能食品(亜鉛)」のような、栄養機能食品である旨と成分の名称
  • 1日あたりの摂取目安量と、摂取の方法
  • 「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」の文言
  • 「本品は、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。」の文言
  • 1日あたりの摂取目安量に含まれる亜鉛が、栄養素等表示基準値に占める割合

亜鉛のように食事摂取基準で摂取基準が決まっている栄養素は、機能性表示食品の機能性関与成分にはできません。

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いわゆる健康食品として売る場合の表示

栄養機能食品の表示をしない亜鉛サプリは、身体への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。

健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。

法律かかわる規定亜鉛サプリで注意すること
医薬品医療機器等法(薬機法)承認前の医薬品の広告の禁止(第68条)「風邪が早く治る」「味覚障害に」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある
健康増進法誇大表示の禁止(第65条)健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない
景品表示法優良誤認表示の禁止根拠のない「医師も推薦」「No.1」などの表示

消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。

比較的安全な言い方避けるべき言い方
「1粒に亜鉛〇mg」(量の事実)「風邪をひいたらすぐに」「病気に負けない体へ」
栄養機能食品の決まった文言(範囲内の量で、言い換えずに使う)男性の機能や体の悩みに効くかのような表現
「食事が偏りがちな方の毎日に」(使用場面)トローチの研究結果を、毎日飲む錠剤にも当てはまるように見せる表現

亜鉛の製剤設計

亜鉛は少ない量で配合でき安定しやすい一方、原料によって使える食品が限られることや、金属のような味が出ることが設計のポイントです。

剤形選ばれる理由検討すること
錠剤小さく飲みやすく、1回あたりの費用を抑えやすい他の成分と組み合わせたときの粒の大きさ
ハードカプセル味がなく、他の成分と組み合わせやすい1粒に入る量
チュアブル錠・タブレット菓子水なしで食べられる金属のような味やえぐみを抑える味の設計

仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。

  1. 原料の種類:亜鉛の原料には、グルコン酸亜鉛などの塩類をはじめ、いくつかの種類があります。グルコン酸亜鉛などは食品添加物の使用基準で使える食品や量が限られているため、販売方法に合った原料かを工場と確認します。
  2. 1日あたりの量:栄養機能食品にするなら、改正後は2.55〜17mgの範囲です。原料に含まれる亜鉛の割合から、配合量を計算します。
  3. 組み合わせる成分:ビタミンC、ビタミンB群、植物素材などと組み合わせることがあります。植物素材は、食品に使えるかどうかの確認が欠かせません。
  4. 銅とのバランス:注意事項にあるとおり、亜鉛のとり過ぎは銅の吸収を妨げるおそれがあります。1日あたりの量は、上限値の範囲でも多くしすぎない設計が安心です。

亜鉛は、原料の重さと亜鉛そのものの量が大きく違う成分です。仕様書には原料名と、亜鉛としての量の両方を書いておくと、工場とのやりとりで行き違いが起きにくくなります。

最初に確認すること:食品に使える成分か

日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。

厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。

亜鉛自体は食品に使われていますが、男性向けや体調をテーマにした配合では、組み合わせる植物素材が問題になることがあります。配合の確認は、サプリメントOEMのページで詳しく説明しています。組み合わせる成分を検討する際は、ビタミンC、鉄、マルチビタミンの成分ガイドも参考にしてください。

見積もりの前に決めておくこと

原料の種類、1日あたりの量、剤形、組み合わせる成分、販売方法が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。

  • 亜鉛の原料の種類と、亜鉛としての1日あたりの量
  • 剤形と、チュアブルの場合は味
  • 組み合わせる成分と、その量
  • 包装の形
  • 栄養機能食品として表示するかどうかと、使う文言(改正後か経過措置か)
  • 初回の製造数と、年間の見込み数

販売方法によって使える原料が変わるため、栄養機能食品にするかどうかは早めに決めておくと進めやすくなります。

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よくある質問(FAQ)

亜鉛の栄養機能食品の基準は、2026年に変わったのですか?

変わりました。2026年10月1日施行の改正で、範囲が2.55〜17mgになり、機能の文言は2つになりました。2030年3月31日までに製造する食品は、改正前の基準によることもできます。

「たんぱく質・核酸の代謝」の文言は、まだ使えますか?

改正後の基準にはありません。経過措置の期間中に改正前の基準で表示する場合に限って使えます。その場合は、量も改正前の範囲(2.64〜15mg)で確認します。

亜鉛で風邪が早く治ると書けますか?

書けません。食品で病気の治療をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがあります。研究でも、2024年のコクランレビューは治療の効果を確実性が低いと評価しています。

なぜ注意事項に銅や子どものことが書かれているのですか?

亜鉛のとり過ぎは、銅の吸収を妨げるおそれがあるためです。栄養機能食品の亜鉛では、銅の吸収と、乳幼児・小児は摂取を避ける旨を含む注意事項を、決められた文言のまま表示します。

亜鉛の原料は、何を選べばよいですか?

販売方法と剤形で決まります。グルコン酸亜鉛などの塩類は使える食品が限られるため、栄養機能食品にするかどうかを先に決めてから、工場と原料を選ぶと確実です。

参考

(2026年10月11日確認)