エルボ・チーズ・レジューサー・フランジといった配管部材は、規格品なのでどこで買っても同じ、と考えられがちです。しかし実際の調達で問題になるのは鋼材の品質より、注文書の書き方です。「SUS316L 90°エルボ 50A」と書いただけでは、突合せ溶接か差込み溶接か、肉厚はどのスケジュールか、寸法はJISかASMEか、組み合わせるフランジは10KかClass 150かを、仕入先が推測で埋めることになります。推測が一つずれると、現場の既設配管に取り付けられない部材が届きます。

本記事は、日本の本社や設計部門、ベトナムをはじめアジアにある日系工場の購買・保全担当の方に向けて、継手・フランジを海外から調達するときの注文書の項目、規格の違い、書類(ミルシート)の取り方、日本とベトナムで確認すべき法令の範囲を整理します。規格の名称・範囲・版は、規格団体や各国の規格機関の公式ページで確認したものだけを載せています(2026年10月27日確認)。寸法表・公差・圧力温度基準などの規格本文の数値は、著作権のある規格書でしか確認できないため、本記事では扱いません。

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継手・フランジは「接続方式」とセットで呼ぶ

配管部材は、エルボやチーズといった形状の名前だけでは特定できません。突合せ溶接・差込み溶接・ねじ込み・フランジのどの接続方式かによって、適用される寸法規格がまったく変わります。

調達の現場でよく出てくる区分を表にまとめます。

接続方式代表的な部材よく指定される寸法規格
突合せ溶接(バットウェルド)エルボ(45°・90°)、チーズ、レジューサー(同心・偏心)、キャップASME B16.9(米国)、JIS B 2312(日本)
差込み溶接・ねじ込み小口径の鍛造エルボ・チーズ・カップリング・キャップASME B16.11(米国)
フランジ溶接首付き・差込み溶接式・ブラインドなどASME B16.5(米国)、JIS B 2220(日本)、EN 1092-1(欧州)
サニタリー・クランプ食品・医薬向けのクランプ継手・ユニオン系統ごとの規格を個別に指定

この表は注文書を書くときの目安です。規格ごとに対象のサイズ・圧力区分・材料の範囲が決まっているため、最終的には図面が参照している規格の本体で確認してください。

ASME・JIS・EN の範囲と版(2026年10月27日確認)

アジアの配管部材は、主にASME(米国)、JIS(日本)、EN(欧州)のいずれかの規格で作られています。三つの規格は、サイズの呼び方も圧力の区分の付け方も異なります。

  • ASME B16.9(Factory-Made Wrought Buttwelding Fittings):ASMEの公式ページに2024年版として掲載。工場製の突合せ溶接式継手について、外形寸法・公差・定格・試験・表示を定め、対象はNPS 1/2〜NPS 48(DN 15〜DN 1200)です。ステンレスの調達で見落としやすいのは、低圧の耐食性突合せ溶接継手はB16.9の対象外で、MSS SP-43が扱うと公式ページに書かれている点です。薄肉のステンレス継手は別の規格になる可能性があります。
  • ASME B16.11(Forged Fittings, Socket-Welding and Threaded):ASMEの公式ページに2021年版として掲載。鍛造の差込み溶接式・ねじ込み式継手の規格です。
  • ASME B16.5(Pipe Flanges and Flanged Fittings: NPS 1/2 through NPS 24):ASMEの公式ページに2025年版として掲載。圧力温度基準・材料・寸法・公差・表示・試験を定めます。フランジはClass 150・300・400・600・900・1500がNPS 1/2〜24、Class 2500がNPS 1/2〜12です。NPS 24を超えるフランジはこの規格の範囲外です。
  • JIS B 2220(鋼製管フランジ):圧力は「呼び圧力」で区分し、10Kのように表します。日本規格協会(JSA)の案内では2012年改正版です。確認日にはJSAのWebdeskが緊急メンテナンス中だったため、現行版はJIS検索で改めて確認してください。
  • JIS B 2312(配管用鋼製突合せ溶接式管継手):JSAの案内では2024年1月22日改正です。
  • EN 1092-1(Flanges and their joints — Part 1: Steel flanges, PN designated):BSIのページでBS EN 1092-1:2018(EN 1092-1:2018と同一)が現行(Current, Under Review)と表示。PN 2.5〜PN 400、DN 10〜DN 4000の円形鋼製フランジが対象です。

圧力の区分は、ASMEがClass、JISがK(呼び圧力)、ENがPNと、それぞれ別の体系です。同じ値を三つの単位で表したものではありません。数字を係数で掛けて換算できるものでもない、と考えてください。

規格の違うフランジを混ぜてはいけない理由

同じ「50A」「DN50」のフランジでも、ASME・JIS・ENではボルト穴の位置(ピッチ円)・穴数・ボルト径・ガスケット座の形状が異なることがあります。混ぜると、ボルトが通らないか、通っても設計どおりにシールできないおそれがあります。

ベトナムの日系工場では、日本の設備メーカーが据え付けたラインはJIS、後から別の業者が増設した部分はASME、欧州から輸入した機械はENのフランジ、という混在が起こり得ます。配管の一部やバルブを交換する際に「DN80 フランジ」とだけ書くと、取り合いが合わない部材が届く原因になります。注文書には、少なくとも次の三点を書いてください。

  1. 相手側フランジの規格と圧力区分(例:ASME B16.5 Class 150、JIS B 2220 10K、EN 1092-1 PN 16)
  2. ガスケット座の形状(レイズドフェース・フラットフェースなど)。使えるガスケットがこれで決まります
  3. 溶接端の肉厚(スケジュール)。溶接首付きフランジや継手の開先が、既設の管と合うようにするためです

ネット上には「10K=Class 150 相当」といった換算表が出回っていますが、本記事では載せません。圧力温度基準は材料グループと使用温度によって変わり、規格本文にしか書かれていないためです。別の規格のフランジで代用する場合は、設計者が両方の規格本体を突き合わせ、書面で承認する手順を踏んでください。

注文書に書く項目

継手1行の仕様には、品名・接続方式・サイズ・肉厚・材料(材料規格付き)・寸法規格・ミルシートの種類・表示の要求をそろえます。

複数の仕入先に同じ仕様で見積を依頼すると、比較が初めて意味を持ちます。

項目書き方の例理由
品名90°ロングエルボロングとショートで中心までの寸法が違う
接続方式突合せ溶接適用される寸法規格が決まる
サイズ50A/NPS 2/DN 50図面の表記に合わせ、併記する
肉厚図面のスケジュール既設管と合わせる
材料鋼種+材料規格「SUS316」だけでは不足
寸法規格JIS B 2312 または ASME B16.9仕入先に選ばせない
フランジ(ある場合)規格+圧力区分+座の形状相手側と合わせる
書類EN 10204 の証明書の種類後から追加できないことが多い
表示本体へのヒート番号の刻印書類との照合に使う

食品向けの内面仕上げ、酸洗・不動態化処理、汚染を防ぐ梱包、追加の非破壊検査など、案件固有の要求は見積依頼の段階で書いておきます。寸法規格に自動的に含まれる要求ではありません。

💬 既設ラインがJISかASMEか分からない、という段階からご相談いただけます。 現地の図面・銘板・刻印の確認から仕様書づくりまで、配管部材・バルブ・継手の調達でお手伝いします。

ミルシートは「種類」まで指定する

ミルシート(材料証明書)には、欧州規格EN 10204で定める2.1・2.2・3.1・3.2の種類があります。その出荷ロット自体の試験結果が載るのは3.1と3.2だけです。

EN 10204:2004の序文と定義によると、2.1(Declaration of compliance with the order)は試験結果を含まない適合宣言です。2.2(Test report)は、製造者が自らの手順で同じ製品仕様・同じ製造方法の製品について行う「非特定検査」の結果を載せたもので、検査した製品が実際に納入される製品とは限りません。3.1と3.2は納入する製品そのものを対象にした「特定検査」の結果を載せます。3.1は製造部門から独立した製造者の検査担当者が、3.2はそれに加えて購入者の検査担当者または公的規則で指定された検査員が確認します。また2004年版では旧版の2.3が廃止され、3.1が旧3.1.Bに、3.2が旧3.1.A・3.1.C・3.2に置き換わっています。

詳しい読み方と偽造の見分け方は、バルブ調達とあわせてバルブの調達とミルシートの確かめ方で解説しています。

日本・ベトナムで確認すべき法令の範囲

配管部材そのものは規格品ですが、組み込む先の設備によっては、日本でもベトナムでも別の検査や適合手続きの対象になります。

日本(2026年10月27日、e-Gov法令検索で条文を確認)

  • 高圧ガス保安法:第56条の3は、高圧ガスの製造のための設備のうち、設計・材料の品質・製造中の検査が特に必要として経済産業省令で定める設備を「特定設備」とし、製造者に特定設備検査を義務づけています(登録特定設備製造業者が製造し基準適合証の交付を受けたものなどの例外があります)。輸入した者にも同条第2項で特定設備検査が課されます。どの設備が特定設備に当たるかは省令で決まるため、継手・フランジを組み込む設備が該当するかは、設備の設計者、または高圧ガス保安協会・都道府県の担当窓口で確認してください。
  • 労働安全衛生法:第37条は、別表第一の機械等で政令で定めるもの(特定機械等)の製造に都道府県労働局長の許可を求めています。別表第一にはボイラー・第一種圧力容器が含まれます。第38条は、これらを製造・輸入した者に検査を受けることを求めています。継手・フランジ単体は別表第一に挙がっていません。ただし、ボイラーや第一種圧力容器に組み込む場合は、その機器の手続きの中で材料や構造の書類が求められます。必要書類は機器メーカー・検査機関に事前に確認してください。

ベトナム(2026年10月27日確認)

  • 2026年から、改正製品品質法(法律78/2025/QH15)と政令37/2026/NĐ-CPのもとで、各省がHSコード付きの「中・高リスク製品リスト」を定める仕組みになりました。
  • 内務省の通達16/2026/TT-BNV(2026年7月28日署名、署名日から施行)のリストでは、ボイラーや使用圧力0.7 bar超の圧力容器(HS 7311など)が中リスクに入り、輸入品は流通前の適合公表が求められます。同リストに継手・フランジ単体の行は見当たりませんでした。
  • 商工省の通達33/2026/TT-BCT(2026年7月1日施行、通達41/2023/TT-BCTの後継)は、付属のリストがスキャン画像のため全ページを目で確認しました。中リスクのリストは衛生用紙、化学品と化学品を含む製品、産業用爆薬とその原料、鉱山・防爆用の機械設備、LPGのタンク・容器などで、高リスクのリストは空欄です。鋼管・継手(HS 7304・7306・7307)やバルブ(HS 8481)の行は見当たりませんでした。
  • 科学技術省の通達36/2026/TT-BKHCN(2026年7月1日から適用)は、報道によると中リスクのリストに「ステンレス鋼(thép không gỉ)」を含みます。原本を入手できておらず、対象のHSコードは確認できていません。ステンレス継手が含まれるかどうかは断定しません。 HSコードごとに通関業者・管轄機関で確認してください。

ASEAN域内からベトナムの自社工場へ部材を入れる場合の関税・原産地証明については、ASEAN部品・原料をベトナムの自社工場へ入れるをご覧ください。

Sunsho Trade がお手伝いできること

Sunsho Tradeはホーチミンの日系商社で、工場は持っていません。ベトナム・日本・中国・タイ・台湾などアジア各地の工場・流通から仕入れ、検品・書類・輸出またはベトナム国内への納品までを管理します。

  1. 図面・材料表から、仕入先に出せる仕様書(上の表の項目)をつくり、未確定の点を設計担当の方と詰めます
  2. 同じ仕様で複数の仕入先に見積を依頼し、寸法規格・材料規格・ミルシートの種類を明記させます
  3. 出荷前に、ミルシートと本体の刻印、注文内容を照合します。必要に応じて第三者による出荷前検査も手配します(サプライヤー確認・検品)
  4. 商業書類・原産地証明をそろえ、通関業者と連携して工場や現場に納品します

どのメーカー・工場の製品かは、見積書とミルシートに明記します。発注前にメーカー名の提示を求めていただいて構いません。

よくある質問

Q1. JISのエルボとASMEのエルボは混ぜて使えますか?
混ぜて使えると決めつけないでください。外径・肉厚・中心までの寸法が異なる場合があります。既設の管を測って規格の系統を確認し、同じ系統の継手を手配するのが基本です。混用する場合は、設計者が両規格の本体を照合して判断します。

Q2. 10K・Class 150・PN 16は同じ扱いですか?
三つは別の体系の呼び方で、取り合い寸法と圧力温度基準はそれぞれの規格本文で定められています。本記事では換算表を載せません。既設の相手側フランジの規格と区分をそのまま注文書に書いてください。

Q3. 薄肉のステンレス継手もASME B16.9で注文すればよいですか?
ASMEの公式ページでは、低圧の耐食性突合せ溶接継手はB16.9の対象外で、MSS SP-43が扱うとされています。図面が薄肉継手を指定している場合は、どの規格を適用するかを設計者に確認してから見積を依頼してください。

Q4. ベトナムに継手を輸入するとき、適合公表は必要ですか?
HSコードと施行中のリストで決まります。内務省の通達16/2026/TT-BNVと商工省の通達33/2026/TT-BCTのリストには継手単体の行が見当たりませんでした。ステンレス鋼を含むとされる科学技術省の通達36/2026/TT-BKHCNは、対象のHSコードを確認できていません。HSコードごとに通関業者・管轄機関で確認してください。

Q5. ミルシートはどの種類を求めればよいですか?
案件の仕様書や最終顧客の要求で決まります。出荷ロットそのものの試験結果が必要なら3.1、購入者側や公的な検査員の確認まで必要なら3.2です。どちらも注文時に書いておかないと、後から用意できないことがあります。

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