毎年11月から12月、ベトナムの工場に発注している日本側の担当者は同じ二択を迫られます——この注文をテト前に仕上げてもらうか、テト明けに回すか。着荷は1か月以上ずれます。

この記事にその年のテトの日付は書きません。日付は毎年動き、公式の休暇日程が出るのも遅いからです。代わりに旧暦1月1日(テト元日)を0週として引き戻す逆算表を置きます。テト元日さえ分かれば、締め切りはこの表から出ます。

書いているのはホーチミンで発注と検品をしている側です。先に一つだけ——工場が言う「再開日」と、その工場が本当にフル稼働に戻る日は別の日です。

テトをまたぐ発注の逆算表 — テト元日を0週として数える

テト対応は「その年の日付を調べる」のではなく、旧暦1月1日から週単位で引き戻すと毎年そのまま使えます。

テト元日からの週やること落としたときに起きること
10〜8週前フォワーダーに本船を確認し、スペースを押さえる希望の便に載れない
8〜6週前テト前着荷分の最終発注を確定(仕様・数量・資材を凍結)工場はテト明け生産へ回す
4週前工場に休暇日程と再開予定日を書面で出させる「明けすぐ」前提の計画が崩れる
3週前原産地証明(C/O)など通関書類の要否と申請先を確定発給機関も休み、明けまで待ち
2週前出荷前検品(手直しと再検品の時間もこの週に)直す作業者がもういない
1週前貨物搬入(カット日)と通関。カット日は出港日より前次の便まで待つ
0週工場・物流・行政・銀行がまとめて止まる
1〜2週後書類上は再開。人員は揃いきっていない品質リスクが上がる
3〜4週後実質的にフル稼働へ戻る

この週数は相場ではなく、逆算の目盛りです。 実際の日数は品目・工場・航路で変わるので、自社の品目で一度実測して補正を(リードタイムの全体像)。

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公式の休暇日程を待つと、締め切りをすでに過ぎている

旧正月の具体的な休日は毎年首相が決定する仕組みで、公表が遅いことは国側でも問題視されています。発表を待って逆算を始めると、表の「8〜6週前」を過ぎていることが珍しくありません。

2019年労働法(45/2019/QH14)は、旧正月の具体的な休日を毎年の実情に応じて首相が決定すると定めています。さらに2026年8月、内務省が改正法案の中で祝日・テト休暇の実施日程を9月30日までに通知する規定を提案したと報じられました(Dân trí 2026年8月4日)。裏を返せば、現状は発表が遅いと国側も認めているということです。この案は審議中のため、確定情報として計画に織り込まないでください。

法定は5日、実際はそれより長い

法定の旧正月休暇は有給5日ですが、前後の土日や年次有給が接続し、実際の停止はこれより長くなります。法定日数で納期を組むと必ず外れます。

2019年労働法の第112条は、旧正月について賃金全額支給の休暇を5日と定めています(JICAによる日本語訳PDF)。ただし5日は下限です。日程は前後の土日と接続するよう組まれるのが通例で、民間工場が法定を上回る休暇を与えることも禁じられていません。「ベトナムは何日休むのか」に一律の答えはなく、発注先ごとに書面で確認するしかありません(工場監査ガイド)。

「再開日」と「本当に回り出す日」は別の日

休暇明けに全員が戻るわけではありません。戻らなかった分の採用と再教育が挟まるため、書類上の再開日とフル稼働の日には差が出ます。

ホーチミン市の発表では、2026年のテト明けについて2月25日時点の復帰率は約95%、つまり約5%が不足していました。休みを延ばした、実家の近くで仕事を探した、条件のよい企業に移った——理由はこのあたりです(Tuổi Trẻ 2026年2月26日、ホーチミン市内務局)。

数%を小さいと見るかは、どの工程が抜けたかによります。検査担当や熟練者が抜けるとその工程だけ能力が落ち、休暇明け最初のロットは検査で引っかかりやすくなります。テト賞与は休暇前に支払われるのが一般的で(賞与は労働法第104条上、使用者が決める制度で法定義務ではありません)、受け取ってから帰省する構造です。

打ち手は、テト明け1〜2週目に初回ロット・新規工場・仕様変更を伴う品を置かないこと。その時期に生産するなら抜取り数と基準を厳しくします(検品ガイド)。それでも不良が出てしまったときの判断——作り直させるか値引きで受けるか、費用は誰が持つか——は不良・納期遅延が起きた後の対応に分けて書きました。

前倒しで押し込むか、テト明けに回すか

残り時間が「8〜6週前」を割っているなら、押し込まない方が損失は小さくなります。前倒しは在庫と品質のリスクを、テト明けは欠品リスクを自社が引き受ける選択です。

判断基準A:テト前に押し込むB:テト明け生産に回す
品質リスク高い。検品・手直しの時間から削られる中。明け直後の2週間を外せば下がる
コスト特急対応や残業の上乗せが出やすい通常条件で交渉しやすい
船・スペース出荷が集中する時期に当たる集中期を外せる
在庫の負担明けの入荷分まで先に抱える抱えなくてよい
欠品リスク低い高い。定番品は販売機会を失う
向く品欠品が許されない定番リピート品初回ロット、新規工場、仕様変更品
目安発注確定まで8〜6週以上ある場合のみ残りが足りない、品質優先の品

ぶれやすいのは、営業が「欠品させたくない」、品質が「急がせたくない」と別々の理由で正しいことを言うときです。残り週数で機械的に決め、足りなければBにすると止まりません(MOQガイド支払い条件の決め方)。

Bを選ぶと現地の販売先の年間数量にも響きます。独占を渡している相手なら、最低購入数量の起算と未達時の扱いを先に決めておくこと(独占販売契約で押印前に決める7項目)。

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工場より先に詰まるのは物流のほう

テト対応で注文が実際に死ぬのは、工場の稼働ではなく船と書類です。スペース・カット日・原産地証明は生産完了日とは別枠で逆算してください。

  • 本船のスペース。 テト前は出荷が集中します。生産が間に合っても、載る船がなければ着荷は休暇明けです。
  • カット日。 実質の締め切りは出港日ではなく、その前に置かれる貨物搬入期限です。何日前かは航路とフォワーダーで変わるので便ごとに確認を。1便逃すかどうかがテトを越えるかどうかを決めます。
  • 原産地証明(C/O)。 協定ごとに様式が異なり、発給は行政窓口を通るためテト期間は止まります。2025年5月にはベトナム商工省が発給窓口を同省に一本化し、VCCIが持っていた一部様式の発給権限が取り消されました(ジェトロ ビジネス短信 2025年5月)。前回と同じ手順で通ると決めつけないでください。

輸送中にテトをまたぐ場合、船は動きます。止まるのはベトナム側に残った手続きです。書類は出港前に出し切る——原則はこれだけ(調達代行の使い方)。

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よくある質問(FAQ)

Q. テト前に着荷させたい場合、いつまでに発注を確定すべきですか。 A. 逆算表では「テト元日の8〜6週前」を目安に置いています。相場ではなく目盛りなので、自社の品目で実測して補正を。

Q. ベトナムの工場は何日休みますか。 A. 一律の答えはありません。法定は有給5日(労働法第112条)ですが、前後の土日と接続し、工場が独自に延ばすこともあります。発注先ごとに書面で確認を。

Q. テト期間中に工場や担当者と連絡は取れますか。 A. 担当者個人にはつくことがあります。ただしラインも行政窓口も銀行も動かないため、確認はできても物と書類は進みません。

Q. 貨物が輸送中にテトに入ったらどうなりますか。 A. 船は動きます。止まるのはベトナム側に残った手続きです。出港後に書類の差し替えが必要になると、休暇明けまで動きません。

まとめ

つまずく原因は、その年の日付を調べてから動き出すことにあります。公式日程は遅れて出るので、待っていると発注を確定すべき週をもう過ぎています。代わりにテト元日を0週として引き戻す。10〜8週前に船、8〜6週前に最終発注、4週前に休暇日程を書面で、3週前に通関書類、2週前に検品、1週前に搬入。一度補正すれば翌年以降は当てはめるだけです。

そして工場の言う再開日を稼働再開日と読まないこと。休暇明け1〜2週目に初回ロットや新規工場を置かない——これだけで明けの手戻りは大きく減ります。