β-グルカンは、ブドウ糖がつながってできた食物繊維の一種です。大麦やオーツ麦、パン酵母やビール酵母、しいたけなどのきのこに含まれ、日本でも、もち麦などの大麦食品から酵母やきのこのサプリまで、さまざまな商品に使われています。

ただし、β-グルカンは一つの成分ではありません。大麦と酵母・きのこのβ-グルカンは、つながり方も、研究されてきた内容も、届出の状況も違います。本記事は、β-グルカンサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた解説です。由来ごとの研究、機能性表示食品といわゆる健康食品の表示の違い、剤形と原料規格の決め方を整理します。

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研究で分かっていること

大麦などの穀物のβ-グルカンと、酵母・きのこのβ-グルカンは構造が異なり、それぞれ別の小規模な試験で研究されているため、一方の結果を他方の根拠には使えません。

穀物のβ-グルカンは、β-1,3結合とβ-1,4結合でつながり、枝分かれがありません。きのこや酵母のβ-グルカンは、β-1,3結合の鎖にβ-1,6結合の枝がつく構造です。

試験対象結果
大麦β-グルカン入りパスタの前後比較、PLoS One 2017(PMID 28107445)健康な成人26人、2か月。対照群なしLDLと総コレステロールが低下。腸内細菌がつくるp-クレシル硫酸が減り、血管の反応性の指標が上昇
高β-グルカン大麦の二重盲検試験、Nutrition 2017(PMID 28870472)腹囲・BMIが大きめの日本人100人、1日4.4gを米に混ぜて12週間体重とBMIの減少は試験群が大きかった。内臓脂肪面積は両群で減り、群の間に差はなかった
しいたけ由来β-グルカンの二重盲検試験、European Journal of Nutrition 2021(PMID 33580297)コレステロールがやや高めの成人52人、1日3.5gを8週間脂質や免疫・炎症の指標はプラセボと差なし。腸内細菌の構成はプラセボと異なる変化を示した
ビール酵母由来β-グルカンの二重盲検試験、European Journal of Nutrition 2013(PMID 23340963)かぜをひきやすい健康な成人162人、不溶性β-グルカン1日900mgを16週間症状のあるかぜの回数がプラセボより25%少なかった。症状の点数には有意差なし

大麦パスタの試験は人数が少なく、対照群のない前後比較です。著者自身も、少人数、短期間、対照群がないことを限界に挙げています。高β-グルカン大麦の試験では、主な評価項目の内臓脂肪面積に群間差がなく、差が出たのは一部の対象者に絞った解析でした。

しいたけ由来の試験は、動物実験で見られた脂質の変化が、ヒトでは見られなかった例です。どの試験も、使った由来・量・食品の形が異なります。商品の根拠を考えるときは、実際に使う原料と同じ由来の研究かを確かめることが欠かせません。

(2026年10月12日時点で、各論文の公開抄録を確認)

機能性表示食品として届け出る場合

機能性表示食品は届出者が自らの責任で科学的根拠を消費者庁に届け出る制度で、大麦β-グルカンでは、おなかの調子や食後の血糖値に関する表示の届出があります。

機能性表示食品として販売するには、販売前に、機能性の科学的根拠と安全性の情報を消費者庁に届け出ます。表示できるのは届け出た根拠の範囲の内容で、病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。国が審査して許可する制度ではありません。

大麦β-グルカンの届出には、おなかの調子を整える、食後の血糖値の上昇をおだやかにする、といった趣旨の表示があります。届出の根拠は大麦由来のβ-グルカンに関するもので、酵母やきのこのβ-グルカンに同じ表示ができるわけではありません。

2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務になりました。この義務は2026年9月1日に完全施行されています。

  • 由来の一致:根拠の研究と同じ由来(大麦・オーツ麦・酵母・きのこ)か
  • 関与成分の量:根拠とする研究で使われた1日あたりの量と合わせる
  • 分析の方法:製品中のβ-グルカンの量を測る方法と、その結果を保証する体制

大麦β-グルカンの届出は、パンケーキミックスのような一般食品の形でも出されています。サプリの形にする場合は、1日あたりの量をグラム単位で入れられる剤形かどうかも合わせて検討します。

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いわゆる健康食品として売る場合の表示

機能性表示食品として届け出ないβ-グルカンサプリは、体への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。

健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。

法律かかわる規定β-グルカンサプリで注意すること
医薬品医療機器等法(薬機法)承認前の医薬品の広告の禁止(第68条)「免疫力を高める」「かぜを防ぐ」「血糖値を下げる」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある
健康増進法誇大表示の禁止(第65条)健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない
景品表示法優良誤認表示の禁止「最高純度」「No.1」など根拠のない表示

消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。

比較的安全な言い方避けるべき言い方
「大麦由来β-グルカン〇g配合」(由来と量の事実)「免疫力アップ」「かぜに負けない」
「パン酵母から取り出したβ-グルカンを使用」(原料の事実)由来を書かずに「β-グルカン」とだけ書き、別の由来の研究を引用する表現
「食物繊維の一種です」(素材の説明)病名や検査値を挙げた表現

酵母やきのこのβ-グルカンは、海外では「免疫」の言葉で紹介されることが多い素材です。いわゆる健康食品で免疫やかぜに関する効果をうたうと、医薬品的な効果の表示とみなされるおそれがあります。

β-グルカンの製剤設計

大麦などの穀物のβ-グルカンはグラム単位、酵母・きのこのβ-グルカンはミリグラム単位で使われることが多く、由来によって向く剤形が変わります。

剤形選ばれる理由検討すること
粉末・顆粒スティック(大麦・オーツ麦)グラム単位の量を入れやすい水に溶かしたときのとろみと口当たり
ハードカプセル・錠剤(酵母・きのこ)ミリグラム単位の量に合い、味を感じにくい原料の純度と、β-グルカンの含有量
一般食品の形(大麦)ごはんやパンなど、毎日の食事に取り入れやすい加工によって含有量が変わるため、保証する量の決め方

仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。

  1. 由来と構造:大麦、オーツ麦、パン酵母、ビール酵母、きのこのどれを使うかを最初に決めます。規格書には、由来と結合の種類(β-1,3/1,4か、β-1,3/1,6か)を書いてもらいます。
  2. β-グルカンの含有量:同じ大麦原料でも、品種や加工によってβ-グルカンの量は変わります。原料メーカーに含有量の規格値と分析方法を確認します。
  3. 1日あたりの量:紹介した試験では、大麦は1日4.4g、しいたけ由来は1日3.5g、ビール酵母由来は1日900mgでした。機能性表示食品にするなら、根拠の研究と同じ由来・同じ量に合わせます。
  4. 溶けやすさ:試験で使われたビール酵母由来の原料は、水に溶けない不溶性のβ-グルカンでした。溶けるか溶けないかで、粉末やドリンクにしたときの扱いやすさが変わります。
  5. 組み合わせる成分:乳酸菌や他の食物繊維、植物素材と組み合わせることがよくあります。組み合わせる成分は、一つずつ食品に使えるかを確認します。

最初に確認すること:食品に使える成分か

日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。

厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。

大麦や酵母は食品として広く使われていますが、きのこ由来の原料は、きのこの種類や使う部位によって確認が必要になることがあります。配合の確認はサプリメントOEMのページで説明しています。腸内環境をテーマにした別の成分として、乳酸菌や青汁のガイドもご覧ください。

見積もりの前に決めておくこと

由来、含有量の規格、1日あたりの量、剤形、包装が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。

  • β-グルカンの由来(大麦・オーツ麦・酵母・きのこ)と、保証する含有量
  • 1日あたりの量と、1袋(1本)あたりの日数
  • 剤形と、粉末の場合は溶かし方と味
  • 組み合わせる成分と、その量
  • 包装の形
  • 機能性表示食品として届け出るかどうか
  • 初回の製造数と、年間の見込み数

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よくある質問(FAQ)

大麦のβ-グルカンと酵母のβ-グルカンは同じものですか?

違います。大麦などの穀物のβ-グルカンはβ-1,3結合とβ-1,4結合で枝分かれがなく、酵母やきのこのβ-グルカンはβ-1,6結合の枝を持ちます。研究も届出も由来ごとに別で、一方の根拠を他方に使うことはできません。

β-グルカンで腸内環境と表示できますか?

機能性表示食品として、大麦β-グルカンでおなかの調子を整える趣旨の届出があります。届け出ないいわゆる健康食品では、腸への効果をうたう表現は避け、由来や量などの事実を伝えます。

酵母のβ-グルカンで「免疫」と書けますか?

いわゆる健康食品で免疫やかぜに関する効果をうたうと、医薬品的な効果の表示とみなされるおそれがあります。研究はかぜの回数などを調べた小規模な試験で、結果も項目によって分かれています。

β-グルカンに向いている剤形は何ですか?

由来によって変わります。大麦などの穀物のβ-グルカンはグラム単位で使うため粉末や一般食品の形、酵母やきのこのβ-グルカンはミリグラム単位のためカプセルや錠剤が向いています。

工場に製造を断られることはありますか?

β-グルカン自体ではなく、組み合わせた植物素材や、きのこ原料の種類が原因になることがあります。配合するすべての成分が食品に使えるかを、最初に確認します。

参考

  • “Beta-Glucans Supplementation Associates with Reduction in P-Cresyl Sulfate Levels and Improved Endothelial Vascular Reactivity in Healthy Individuals”, PLoS One 2017;12(1):e0169635, PMID 28107445, PMC5249102
  • “Effects of high β-glucan barley on visceral fat obesity in Japanese individuals: A randomized, double-blind study”, Nutrition 2017;42:1-6, PMID 28870472
  • “Modulation of human intestinal microbiota in a clinical trial by consumption of a β-D-glucan-enriched extract obtained from Lentinula edodes”, European Journal of Nutrition 2021;60(6):3249-3265, PMID 33580297
  • “Yeast (1,3)-(1,6)-beta-glucan helps to maintain the body’s defence against pathogens: a double-blind, randomized, placebo-controlled, multicentric study in healthy subjects”, European Journal of Nutrition 2013;52(8):1913-1918, PMID 23340963, PMC3832763
  • “Edible Mushrooms and Beta-Glucans: Impact on Human Health”, Nutrients 2021;13(7):2195, PMID 34202377, PMC8308413
  • 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
  • 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)

(2026年10月12日確認)