クロセチンは、クチナシの果実に含まれる黄色の色素の成分で、カロテノイドの仲間です。日本では、目のピント調節と睡眠の質の両方をテーマにできる成分として、機能性表示食品にも使われています。
本記事では、クロセチンサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた内容です。研究で分かっていること、機能性表示食品といわゆる健康食品の表示の違い、原料の規格と剤形の決め方を整理します。クロセチンの試験は日本で行われたものが中心ですが、どれも人数が少なく、差が出たのは一部の指標です。試験で何を測ったかを知っておくと、表示と広告の言葉選びで失敗しにくくなります。
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研究で分かっていること
日本で行われた小規模なクロスオーバー試験では、クロセチン1日7.5mgで、画面作業の後のピント調節や睡眠の一部の指標に差がみられました。
| 試験 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験、『日本補完代替医療学会誌』2017(doi 10.1625/jcam.14.9) | 目の疲れを自覚する健康な成人22人(完了21人)。クロセチン7.5mgを含むソフトカプセルまたはプラセボを4週間ずつ | 画面作業の後に休んだときの瞳孔の反応(縮瞳率の回復)が、プラセボより大きかった。検査日の目の疲労感は摂取前より軽くなった。過去1週間の自覚の評価には差がなかった |
| ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験、Complementary Therapies in Medicine 2018(PubMed 30477864) | 睡眠に軽い不満がある健康な成人30人。クロセチン1日7.5mgまたはプラセボを14日間ずつ | 脳波で測った深い眠りの指標(デルタパワー)と、起床時の眠気・すっきり感の自己評価がプラセボより良好。寝つくまでの時間、睡眠効率、総睡眠時間、途中で目覚める時間には差がなかった |
| 二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験(予備試験)、Phytomedicine 2010(PubMed 20537515) | 睡眠に軽い不満がある健康な成人男性21人。2週間ずつ | 活動量計で測った途中で目覚める回数が、プラセボより少なかった。質問票の評価は改善の傾向にとどまった |
試験はどれも20〜30人規模で、期間は2〜4週間です。2017年の目の試験は原料企業の資金で行われ、著者の一部はその企業の社員です。2018年の睡眠試験も、同じ原料企業の資金提供を受けています。睡眠の2試験は著者が一部重なっており、ほかの研究グループによる再現はまだ多くありません。
2017年の目の試験では、涙の量を測る検査(シルマーテスト)で、クロセチン摂取後に片方の目で涙の量が減っていました。群間の差はなく、著者は偶然の変動の可能性が高いとしつつ、さらなる検討が必要としています。
近視の子どもを対象にした試験も報告されています。ただし、子どもと目の病気を対象にした試験のため、健康な大人向けの商品の根拠にはならず、広告で引用することは避けてください。
(2026年10月14日時点で、各論文の公開抄録と公開本文を確認)
機能性表示食品として届け出る場合
クロセチンは、睡眠の質と目のピント調節をサポートするという趣旨の表示で、機能性表示食品に使われています。
届出の例では、睡眠の質(眠りの深さ)を高め、起床時の眠気や疲労感を和らげるという趣旨の表示があります。目については、パソコン作業などで生じる目の調節機能の低下を和らげるという趣旨です。関与成分はクロセチン、1日あたり7.5mgとした例が見られます。
機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。表示できるのは届け出た根拠の範囲の内容で、病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。
2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務となりました。2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を報告することも届出者の義務です。
クロセチンで機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。
- 根拠の取り方:研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか
- 関与成分の量:原料の量ではなく、クロセチンの量で根拠の研究と合わせる
- 分析の方法:製品中のクロセチンの量を測る方法と、賞味期限まで量を保つ体制
目と睡眠のどちらを表示するか、または両方を表示するかで、根拠とする研究が変わります。届け出る表示を最初に決めておくと、配合と分析の準備がしやすくなります。
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いわゆる健康食品として売る場合の表示
機能性表示食品として届け出ないクロセチンサプリは、目や睡眠への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、配合量などの事実を中心に伝えます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | クロセチンサプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 食品なのに「視力が回復する」「ぐっすり眠れる」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 根拠のない「眼科医も推薦」「No.1」などの表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1粒にクロセチン〇mg配合」(量の事実) | 「視力回復」「不眠に効く」 |
| 「パソコン作業の多い毎日に」「夜のリラックスタイムに」(使用場面) | 目の病名や睡眠の病名を挙げた表現、近視の子どもの試験を根拠のように見せる表現 |
| 機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内) | 試験の人数や条件を示さずに「臨床で実証済み」とする表現 |
クロセチンの製剤設計
クロセチンは1日数mgで使われる成分で、試験ではクロセチンの量を規格化したクチナシの色素を油と一緒にソフトカプセルに詰めています。
| 剤形 | 選ばれる理由 | 検討すること |
|---|---|---|
| ソフトカプセル | 油に分散させて詰められ、試験と同じ形にしやすい | 皮膜の素材(ゼラチンか植物由来か)と、中身の色が透けて見えるかどうか |
| ハードカプセル | 粉末の原料で、他の成分と組み合わせやすい | 粉末にした原料の安定性と、1粒に入る量 |
| 錠剤 | 1回あたりの費用を抑えやすい | 打錠の工程での安定性と、色素の色が錠剤に出ること |
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 原料の由来と規格:クチナシの果実から得た原料かを確認し、クロセチンの含有量とその測り方を規格書で確かめます。2017年の試験では、1粒にクロセチン7.5mgを含むよう規格化したクチナシの色素を使っています。
- 1日あたりの量:機能性表示食品にするなら、根拠とする研究のクロセチン量に合わせます。紹介した試験は、どれも1日7.5mgです。
- 組み合わせる成分:目をテーマにするならルテインやビルベリー、睡眠をテーマにするならほかの成分と組み合わせることがあります。組み合わせる成分ごとに、食品に使えるかの確認が欠かせません。
- 包装と安定性:カロテノイドは光と酸素の影響を受けやすい成分です。遮光性のある包装を検討し、賞味期限までのクロセチン量の安定性を工場と確認します。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
クチナシ(果実・茎・葉)は、「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に載っています(2026年8月5日更新版で確認)。リストは改正が続いているため、配合前に最新の通知で確認してください。注意が必要なのは、目や睡眠をテーマにした配合に加えるほかの植物素材です。
配合の確認はサプリメントOEMのページで詳しく説明しています。目をテーマにした組み合わせは、ルテイン・ゼアキサンチンサプリのOEMとビルベリーサプリのOEMの記事も参考になります。
見積もりの前に決めておくこと
原料の規格、1日あたりの量、剤形、包装が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- クロセチン原料の規格(クロセチンの含有量)と、1日あたりの量
- 原料の規格書と分析結果の有無
- 剤形と、ソフトカプセルなら皮膜の素材
- 組み合わせる成分と、その量
- 光を防ぐ包装の形
- 機能性表示食品として届け出るかどうか、届け出るなら目と睡眠のどちらか
- 初回の製造数と、年間の見込み数
配合が固まっていない段階でも、ご相談いただけます。販売先のお客様の層に合わせて、目と睡眠のどちらを軸にするかから一緒に整理できます。
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よくある質問(FAQ)
クロセチンの目への働きは、研究で確かめられていますか?
日本で行われた21人のクロスオーバー試験で、画面作業の後のピント調節にかかわる瞳孔の反応と、検査日の目の疲労感に差がみられました。一方で過去1週間の自覚の評価には差がなく、試験は原料企業の資金によるものです。研究の条件と限界を踏まえた言葉選びが大切です。
睡眠についてはどのような結果がありますか?
30人の試験では、深い眠りの脳波の指標と、起床時の眠気・すっきり感の自己評価がプラセボより良好でした。寝つくまでの時間や総睡眠時間には差がなかったため、「よく眠れる」と一般化せず、測った指標に沿って伝えます。
試験ではどのくらいの量が使われていますか?
紹介した試験では、クロセチン1日7.5mgを2〜4週間とっています。原料の量ではなく、クロセチンの量で比べることが大切です。
機能性表示食品にしないクロセチンサプリでも、ピント調節や睡眠と書けますか?
いわゆる健康食品では、目や睡眠への効果をうたう表現は避ける必要があります。「パソコン作業の多い毎日に」のような使用場面の表現でも、全体として効果をうたう表示になっていないかを確認してください。
工場に製造を断られることはありますか?
クチナシの果実は、食品に使える原材料のリストに載っています。組み合わせた植物素材や、原料の規格書がそろわないことが原因になることがあります。配合するすべての成分と規格書を、最初に確認します。
参考
- 海貝尚史ほか「Visual Display Terminal作業に伴う調節機能低下に対するクロセチン摂取の影響―ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験―」『日本補完代替医療学会誌』2017;14(1):9-16, doi 10.1625/jcam.14.9
- “Effect of crocetin on quality of sleep: A randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover study”, Complementary Therapies in Medicine 2018, PubMed 30477864, doi 10.1016/j.ctim.2018.09.003
- “Effect of crocetin from Gardenia jasminoides Ellis on sleep: a pilot study”, Phytomedicine 2010, PubMed 20537515, doi 10.1016/j.phymed.2010.03.025
- “The Effect of Dietary Supplementation of Crocetin for Myopia Control in Children: A Randomized Clinical Trial”, Journal of Clinical Medicine 2019, PubMed 31394821, PMC6724222
- 厚生労働省「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(別添2、2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734639.pdf
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月14日確認)