健康食品の配合に植物素材を加えるとき、見落としやすい制度があります。食品衛生法の「指定成分等含有食品」です。対象の素材を含む食品は販売できますが、包装の表示、製造の管理、健康被害情報の届出に、通常の食品より重い義務がかかります。

本記事は、日本国内で健康食品を販売したい事業者の方に向けた内容です。制度の仕組み、対象の4成分と流通している別名、包装に必要な表示を整理します。製造基準の要件と、健康被害情報の届出のルールも説明します。素材名が別名や英名で書かれていると、対象だと気づかないことがあります。配合を決める前に、原料の学名まで確認しておくと安心です。

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指定成分等含有食品とは

指定成分等含有食品は、特別の注意が必要として国が指定した成分を含む食品で、2020年6月1日から表示・製造・届出の特別なルールがあります。

制度の根拠は、平成30年の食品衛生法改正(平成30年法律第46号)で設けられた第8条です。厚生労働省の通知によると、関係する省令と告示は令和2年3月27日に公布され、令和2年6月1日に施行されました。

現在の食品衛生法第8条は、指定成分等を「厚生労働大臣及び内閣総理大臣が食品衛生基準審議会の意見を聴いて指定したもの」と定めています。指定成分等を含む食品を取り扱う営業者には、健康被害の情報を得たときの届出が義務づけられています。

通常の食品との違いは次のとおりです。

項目通常の食品指定成分等含有食品
販売食品衛生法などの一般的なルールの範囲で可能可能(禁止ではない)
包装の表示食品表示基準の一般的な表示一般的な表示に加え、指定成分等含有食品である旨などの表示が必要
製造・加工一般的な衛生管理製造基準告示に適合する方法(GMPによる管理)で製造・加工する
健康被害の情報この制度による届出義務はない営業者は都道府県知事等に届け出る義務がある

指定成分等含有食品は、禁止された食品ではありません。ただし、表示・製造・届出の3つの義務を満たす体制が必要になります。

対象の4成分と流通している別名

現在、指定成分等は、コレウス・フォルスコリー、ドオウレン、プエラリア・ミリフィカ、ブラックコホシュの4つです。

指定は「食品衛生法第8条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する指定成分等」(令和2年厚生労働省告示第119号)で行われました。令和8年1月5日に最終改正された留意事項の通知の届出様式でも、この4つが選択肢として示されています。

厚生労働省の通知は、指定成分等は別名で流通していることがあるとして、代表例を挙げています。

指定成分等通知に挙げられている別名の例
コレウス・フォルスコリーColeus、Forskolin、Coleus forskohlii
ドオウレンクサノオウ、ハックツサイ、ヨウシュクサノオウ、グレーターセランディン、Greater celandine、Chelidonium majus など
プエラリア・ミリフィカ白ガウクルア、White Kwao Krua、Pueraria mirifica
ブラックコホシュラケモサ、Black cohosh、Black snakeroot、Actaea racemosa

原料の規格書や海外の原料メーカーの資料では、英名や学名だけが書かれていることがあります。配合表のすべての植物素材について、学名で照らし合わせると見落としを防げます。

指定成分等は、食品衛生基準審議会の意見を聴いて追加されることがあり得ます。配合を決める時点で、最新の告示と通知を確認してください。指定成分等とは別に、医薬品とみなされる成分がないかも確かめます。考え方は食薬区分のガイドで解説しています。

包装に表示しなければならない事項

指定成分等含有食品の包装には、通常の表示に加えて、指定成分等含有食品である旨、注意喚起の文、事業者の電話番号を表示します。

食品表示基準第3条第2項は、指定成分等含有食品に次の表示を求めています。

表示事項表示の方法
指定成分等含有食品である旨「指定成分等含有食品(○○)」と表示する(○○は指定成分等の名称)
特別の注意を必要とする成分である旨「指定成分等とは、食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物です。」と表示する
体調に異変を感じた際の対応「体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止し、医師に相談してください。加えて、体調に異変を感じた旨を表示された連絡先に連絡してください。」と表示する
食品関連事業者の連絡先表示内容に責任を有する者の電話番号を表示する

食品表示基準の別表第二十は、文字の大きさも定めています。指定成分等含有食品である旨と、特別の注意を必要とする成分である旨は、JIS Z 8305に定める14ポイント以上の文字で表示します。小さな包装では、表示の面積が足りるかを早めに確認する必要があります。

指定成分等含有食品の表示は、原材料名やアレルゲンなどの通常の表示に追加するものです。通常の表示を省略できるわけではありません。

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製造・品質管理の基準

指定成分等含有食品は、形態にかかわらず、製造基準告示(令和2年厚生労働省告示第121号)に適合する方法、つまりGMPによる管理で製造・加工しなければなりません。

食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)は、製造・加工の方法を定めています。指定成分等含有食品は、厚生労働大臣の定める基準に適合する方法で製造・加工します。その基準が「指定成分等含有食品の製造又は加工の基準」(令和2年厚生労働省告示第121号)です。

留意事項の通知は、基準を設けた理由を説明しています。工程管理が不十分だと、生理活性の強い成分の含有量がばらつき、摂取目安量を守っても健康被害につながるおそれがあるためです。厚生労働省の通知に示された確認項目は次の10項目です。

  1. 総括責任者などの設置
  2. 製品標準書などの作成
  3. 原材料の製造管理と品質管理
  4. 製品の製造・品質・出荷の管理
  5. バリデーションの実施
  6. 製造手順などの変更の管理
  7. 製造手順などからの逸脱の管理
  8. 品質情報の管理
  9. 自己点検
  10. 文書と記録の作成方法、管理

総括責任者は製造所ごとに置き、製造管理と品質管理の知識が必要です。医師・薬剤師などの資格、大学での薬学・栄養学・化学などの課程の修了、または製造管理・品質管理の業務に5年以上従事した経験のいずれかが求められています。

通知はほかにも、ロットごとに試験検査に必要な量の2倍以上を参考品として、消費期限などから1年間保管するよう求めています。複数の製造所を経る場合は、製造所ごとに工程に応じた基準を守ります。収穫後の細断や粉砕などの簡易な加工だけを行う製造所は、基準の適用外です。

工場に確認すること確認の理由
製造基準告示に沿った体制があるか指定成分等含有食品は、形態にかかわらず告示の基準で製造する必要があるため
指定成分等の含有量を管理する試験方法生理活性の強い成分のばらつきを防ぐことが基準の目的であるため
参考品の保管と記録の方法ロットごとの参考品の保管が求められているため
販売者との情報共有の方法健康被害情報の届出と、品質問題の是正に連携が必要なため

健康被害情報の届出

指定成分等含有食品を取り扱う営業者は、健康被害の情報を得たら、重篤な場合は概ね15日以内、その他は概ね30日以内を目安に、都道府県知事等に届け出ます。

食品衛生法第8条第1項は、営業者が健康被害の情報を得た場合、遅滞なく、都道府県知事、保健所を設置する市の市長または特別区の区長に届け出ることを義務づけています。届出を受けた都道府県知事等は、厚生労働大臣に報告します。

令和6年8月23日付けの留意事項の通知(令和8年1月5日最終改正)は、届出の範囲を次の2つとしています。

  • 健康被害と疑われる事例:症状の重篤度にかかわらず、摂取した方に生じた体調変化で、因果関係が不明なものも含む。摂取前からの病気による症状で悪化がなかった場合と、医師が因果関係を否定した場合は除く
  • 研究報告など:国内外の健康被害の報告や研究報告で、自社が取り扱う食品で同じ被害が起きる可能性が示されるもの

届出には、「いわゆる『健康食品』・無承認無許可医薬品健康被害防止対応要領について」の別紙様式(情報提供票)を使います。届出時期の目安は、死亡を含む重篤な場合は情報を得た日から概ね15日以内、その他は概ね30日以内です。件数が急に増えた場合などは、目安によらず速やかに届け出ます。

表示内容に責任を有する事業者(表示責任者)を通じて届け出ることもできます。通知は、表示責任者が、販売部門から独立した安全管理責任者を置くなどして、健康被害情報を適正に管理することが望ましいとしています。

自社ブランドで販売する場合は、お客様からの問い合わせ窓口が届出の起点になります。製造を委託する工場と、情報共有や回収の分担を契約の段階で決めておくことが大切です。

機能性表示食品にも、届出者による健康被害情報の報告の義務があります。指定成分等含有食品の制度とは別の義務で、両方に当たる商品では両方の義務を守ります。機能性表示食品の義務は機能性表示食品の届出のガイド、保健機能食品の制度の違いはトクホのガイドで説明しています。

見積もり・相談の前に決めておくこと

配合するすべての植物素材を学名で確認し、指定成分等を含むかどうかを最初に決めておくと、表示と工場選びの手戻りを防げます。

  • 配合するすべての植物素材の名称と学名、部位、抽出の方法
  • 指定成分等(またはその別名)を含むかどうか
  • 含む場合、製造基準告示に沿って製造できる工場か
  • 包装に、14ポイント以上の文字で注意表示を入れる面積があるか
  • お客様からの健康被害の情報を受け付け、届け出る担当者と手順
  • 機能性表示食品として届け出るかどうか
  • 初回の製造数と、年間の見込み数

指定成分等を含まない配合にする選択肢もあります。企画の目的に合う素材を、最初の段階で工場と一緒に検討すると、制度上の負担と製品の方向性の両方を見ながら決められます。

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よくある質問(FAQ)

指定成分等含有食品は、販売が禁止されているのですか?

禁止されていません。食品として販売できますが、指定成分等含有食品である旨などの表示、製造基準告示に沿った製造、健康被害情報の届出という義務を守る必要があります。

指定成分等は、いくつありますか?

現在は、コレウス・フォルスコリー、ドオウレン、プエラリア・ミリフィカ、ブラックコホシュの4つです。追加される可能性があるため、配合を決める時点で最新の告示と通知を確認してください。

原料の名前がクサノオウやラケモサでも、対象になりますか?

厚生労働省の通知は、クサノオウやグレーターセランディンをドオウレンの別名の例として、ラケモサをブラックコホシュの別名の例として挙げています。名前だけで判断せず、学名で確認することをおすすめします。

健康被害の情報は、どのくらいの期間で届け出ればよいですか?

留意事項の通知では、死亡を含む重篤な場合は情報を得た日から概ね15日以内、その他の場合は概ね30日以内が目安です。症状が軽くても、因果関係が不明なものも含めて届出の対象になります。

錠剤やカプセルでなければ、製造基準は適用されませんか?

適用されます。留意事項の通知は、食品の形態にかかわらず、すべての指定成分等含有食品が製造基準を守って製造されることを求めています。収穫後の細断や粉砕などの簡易な加工だけを行う製造所は適用外です。

参考

(2026年10月12日確認)