特定保健用食品(トクホ)は、日本で最もよく知られた健康表示の制度の一つです。許可マークの付いた飲料やヨーグルトを、店頭で見かけたことがある方も多いでしょう。自社ブランドの健康食品を企画するときに、「トクホを取れないか」と考える事業者の方も少なくありません。
本記事は、日本国内で健康食品を販売したい事業者の方に向けた内容です。トクホの許可の仕組み、5つの区分、許可の要件、表示しなければならない事項を整理します。機能性表示食品や栄養機能食品との違いも比べます。トクホは製品ごとに国の審査を受ける制度で、準備にかかる負担は届出制の機能性表示食品とは大きく異なります。最初に違いを知っておくと、商品に合った制度を選びやすくなります。
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特定保健用食品は製品ごとに国が許可する制度
特定保健用食品は、健康増進法第43条第1項に基づき、製品ごとに有効性と安全性の審査を受け、消費者庁長官の許可を得て保健の用途を表示する食品です。
消費者庁の資料は、特定保健用食品を、保健効能成分(関与成分)を含む食品と説明しています。そのうえで、特定の保健の目的が期待できる旨を表示する食品と位置づけています。表示の例として「お腹の調子を整える」などが挙げられています。
健康増進法は、乳児用や病者用など特別の用途に適する旨の表示をするには許可が必要だと定めています。特定保健用食品は、その「特別の用途」の一つである「特定の保健の用途」として位置づけられています。そのため、許可を受けずに保健の用途を表示することはできません。
許可を受けた商品には、許可マーク(許可証票)が付きます。条件付き特定保健用食品には、専用の許可証票が定められています。
トクホの5つの区分
トクホには、通常の特定保健用食品のほか、疾病リスク低減表示、規格基準型、再許可等、条件付きの5つの区分があります。
消費者庁の資料に示されている区分は次のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 特定保健用食品 | 食生活において特定の保健の目的で摂取をする方に、その目的が期待できる旨を表示する食品 |
| 特定保健用食品(疾病リスク低減表示) | 関与成分の疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合に認められる表示。現在はカルシウムと葉酸について、決まった表示の文言が示されている |
| 特定保健用食品(規格基準型) | 許可実績が十分で科学的根拠が蓄積された関与成分について規格基準を定め、消費者庁が基準への適合を審査して許可するもの |
| 特定保健用食品(再許可等) | 既に許可を受けた食品について、商品名や風味などの軽微な変更をしたもの |
| 条件付き特定保健用食品 | 通常の審査で求める根拠のレベルには届かないものの一定の有効性が確認され、限定的な根拠である旨を表示する条件で許可されるもの |
規格基準型の関与成分は、難消化性デキストリンや各種のオリゴ糖などの食物繊維・オリゴ糖類です。成分ごとに、1日摂取目安量に含まれる量、保健の用途の表示、注意事項が決められています。質疑応答集によると、規格基準型は原則として部会と食品安全委員会の審議を省略し、消費者庁が審査します。
条件付き特定保健用食品の許可表示は、「○○を含んでおり、根拠は必ずしも確立されていませんが、△△に適している可能性がある食品です。」の形です。根拠が限定的である旨を省いた表示は、許可の取消しの対象になり得ます。
許可を受けるまでの流れと要件
トクホの申請では、申請書を消費者庁食品表示課に提出し、許可試験を受けたうえで、効果は消費者庁の部会、安全性は食品安全委員会の審議を経て許可が判断されます。
消費者庁の「特定保健用食品に関する質疑応答集」(令和6年12月10日一部改正)は、申請と審査の流れを次のように説明しています。
- 申請書の提出:表示許可申請書を消費者庁食品表示課に提出する(電子メール等でのオンライン提出も可能)
- 許可試験:申請した食品の分析を、国の研究所または登録試験機関で受ける(健康増進法第43条第3項)
- 効果の審議:「特定保健用食品の表示許可等に関する部会」で審議する
- 安全性の審議:食品安全委員会の意見を聴く
- 許可:消費者庁長官が許可する
許可の要件として、質疑応答集は次の項目を挙げています。
- 保健の用途にかかわる科学的根拠が、医学的・栄養学的に明らかにされていること
- 適切な摂取量が、医学的・栄養学的に設定できること
- 添付資料などからみて安全であること
- 関与成分の性状や、定性・定量の試験方法が明らかにされていること
- ナトリウムや糖類などを過剰に摂取させるもの、アルコール飲料ではないこと
- 日常的に食される食品であること
- 「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に含まれるものでないこと
最後の要件にある成分本質リストの考え方は、食薬区分のガイドで解説しています。要件にあるとおり、トクホは「日常的に食される食品」であることが前提です。根拠となるヒト試験は申請する食品で行うことが基本で、試験計画書の公開データベースへの登録や、倫理審査委員会の扱いも質疑応答集で説明されています。
審査の期間や費用は、申請する食品と試験の内容によって大きく異なります。製造を担う工場も、許可試験に出す申請品と同じ設計で量産できる体制が必要です。質疑応答集は、審査の途中で製造工程や関与成分の量が変わった場合、許可試験をやり直す必要があるとしています。
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機能性表示食品・栄養機能食品との違い
トクホと他の2つの制度の最も大きな違いは、販売前に国が製品ごとの審査を行うかどうかです。
| 特定保健用食品(トクホ) | 機能性表示食品 | 栄養機能食品 | |
|---|---|---|---|
| 国の関与 | 製品ごとに国が審査し、消費者庁長官が許可 | 販売の60日前までに消費者庁へ届出(国の審査ではない) | 届出・審査ともに不要 |
| 根拠 | 申請者が提出した有効性・安全性の資料を国が審査 | 届出者が自らの責任で科学的根拠を示す | 国が決めた20成分の基準を満たす |
| 表示の文言 | 許可を受けた表示の内容のとおり | 届け出た根拠の範囲で届出者が作る | 成分ごとに決まった文言 |
| マーク | 許可マーク | 「機能性表示食品」の文字を枠で囲んで表示 | なし |
| 根拠法令 | 健康増進法第43条、食品表示基準 | 食品表示基準 | 食品表示基準 |
機能性表示食品は、届出者が自らの責任で科学的根拠と安全性の情報を販売前に届け出る制度で、国の審査や許可ではありません。2024年の制度改正で、サプリメント形状の機能性表示食品はGMPに基づく製造管理が届出者の義務となり、2026年9月1日に完全施行されています。届出の流れは機能性表示食品の届出のガイドで詳しく説明しています。
栄養機能食品は、ビタミン・ミネラルなど20成分を基準の範囲で含めば、届出なしに決まった文言で機能を表示できる制度です。詳しくは栄養機能食品のガイドで解説しています。
錠剤やカプセルのサプリで新しく健康表示をしたい場合、多くの事業者は機能性表示食品か栄養機能食品を検討します。トクホは「日常的に食される食品」が前提であり、製品ごとの審査に時間と費用がかかるためです。
許可後に表示しなければならない事項
トクホとして販売するときは、「特定保健用食品」の文字、許可を受けた表示の内容、摂取目安量や注意事項などを、決められたとおりに表示します。
食品表示基準と消費者庁の表示例では、主に次の事項の表示が求められています。
- 「特定保健用食品」である旨(条件付きの場合は「条件付き特定保健用食品」)
- 許可等を受けた表示の内容
- 栄養成分(関与成分を含む)の量と熱量
- 1日当たりの摂取目安量と摂取の方法
- 摂取をする上での注意事項
- 「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」の文言
- 調理または保存の方法に特に注意が必要なものは、その注意事項
- 関与成分が栄養素等表示基準値の定められた成分である場合は、基準値に占める割合
質疑応答集は、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」の文言を、容器包装の前面に表示するよう求めています。容器の底面に表示するなど、義務の趣旨を損なう表示方法は適切でないとしています。
義務表示事項を表示しなかった場合は、健康増進法第62条に基づく許可の取消しの対象になり得ます。取消し後も保健の用途の表示を続けた場合は、罰則の対象になると説明されています。
広告やウェブサイトでも、許可を受けた表示の内容を超える表現は避けます。健康増進法第65条(誇大表示の禁止)や景品表示法、薬機法第68条は、トクホの広告にも適用されます。
見積もり・相談の前に決めておくこと
どの制度で健康表示をするか、商品の形と関与成分の量が決まれば、必要な試験と製造の準備を具体的に検討できます。
- 健康表示をするかどうか、するならトクホ・機能性表示食品・栄養機能食品のどれか
- 商品の形(日常的に食される食品か、錠剤・カプセルのサプリか)
- 関与成分と、1日当たりの量
- 規格基準型の関与成分に当てはまるかどうか
- 根拠として使える試験やデータの有無
- 許可試験に出す申請品と同じ設計で量産できるか
- 初回の製造数と、年間の見込み数
制度の選び方によって、必要な準備の量と期間は大きく変わります。商品の形と販売の目標時期を先に決めておくと、現実的な進め方を選びやすくなります。
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よくある質問(FAQ)
トクホと機能性表示食品の違いは何ですか?
トクホは、製品ごとに国が有効性と安全性を審査し、消費者庁長官が許可する制度です。機能性表示食品は、届出者が自らの責任で科学的根拠を消費者庁に届け出る制度で、国の審査や許可ではありません。
錠剤やカプセルのサプリでトクホを取れますか?
許可の要件の一つに「日常的に食される食品であること」があり、トクホの多くは飲料や一般の食品です。錠剤やカプセルで健康表示をしたい場合は、機能性表示食品や栄養機能食品も含めて比較するのが現実的です。
規格基準型とは何ですか?
許可実績が十分で科学的根拠が蓄積された関与成分について、規格基準を定めた区分です。基準に適合していれば、原則として部会と食品安全委員会の審議を省略し、消費者庁が審査します。関与成分は難消化性デキストリンやオリゴ糖などに限られています。
条件付き特定保健用食品とは何ですか?
通常の審査で求める根拠のレベルには届かないものの、一定の有効性が確認された食品を、限定的な根拠である旨を表示する条件で許可する区分です。「根拠は必ずしも確立されていませんが」という文を付けて表示します。
許可を受けた後に、配合や製造工程を変えられますか?
商品名や風味の軽微な変更は、再許可等の区分で扱われます。関与成分の量や製造工程が変わる場合は、許可の内容に影響するため、事前に消費者庁の資料と手続きを確認する必要があります。
参考
- 消費者庁「特定保健用食品について」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_specified_health_uses/
- 消費者庁「特定保健用食品とは」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/food_labeling_cms206_200602_01.pdf
- 消費者庁「特定保健用食品制度の概要」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_specified_health_uses/assets/food_labeling_cms206_221110_03.pdf
- 消費者庁「特定保健用食品に関する質疑応答集」(平成28年1月8日 消食表第5号、令和6年12月10日 消食表第1080号一部改正。令和8年7月10日 特定保健用食品の表示許可等に関する部会 参考資料4) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms206_260709_07.pdf
- 健康増進法 第43条(特別用途表示の許可)・第65条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103
- 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第2条・第3条第2項・別表第二十(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条(e-Gov法令検索)
(2026年10月12日確認)