卵殻膜は、卵の殻の内側にある薄い膜です。日本では美容や関節をテーマにした健康食品に使われています。1日あたり数百mgと少ない量で使われるため、1日1粒のカプセルにしやすい成分です。
本記事は、卵殻膜サプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた内容です。研究で分かっていること、日本での扱いと卵のアレルゲン表示、いわゆる健康食品として売る場合の表示、原料の種類と剤形の決め方を整理します。卵殻膜の試験は海外で行われた小規模なものが中心で、結果も評価項目によって分かれています。その点を知っておくと、表示と広告の言葉選びで失敗しにくくなります。
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研究で分かっていること
卵殻膜のランダム化試験は小規模なものが中心で、こわばりや一部の痛みの指標で差がみられた一方、主要な評価項目では差がなかった試験もあります。
| 試験 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| ランダム化二重盲検プラセボ対照試験、Clinical Rheumatology 2009(PubMed 19340512、PMC2711914) | 変形性膝関節症の方67人。そのままの卵殻膜1日500mgまたはプラセボを8週間 | 痛みとこわばりの指標でプラセボと差があり、10日目から差がみられた。機能と全体の指標では、有意な差はなかった |
| ランダム化二重盲検プラセボ対照試験、Journal of Medicinal Food 2021(PubMed 32633648、PMC7989856) | 変形性膝関節症の40〜75歳150人。卵殻膜1日300mgまたはプラセボを12週間 | 主要な評価項目(6週目の痛みの点数)は、両群とも同じように下がり差がなかった。ひざの質問票の「痛み」「日常生活」の項目では差がみられた |
| ランダム化二重盲検プラセボ対照試験、Journal of Medicinal Food 2019(PubMed 31381494、PMC6748399) | 変形性膝関節症の方88人。水に溶けるように加水分解した卵殻膜1日450mgまたはプラセボを12週間 | 元の数値のままでは、関節の指標・6分間の歩行距離・ひざの曲がる範囲のいずれも有意な差はなかった。開始時の値で補正した解析では、こわばりや歩行距離に差がみられた |
3件とも、ひざの関節の病気がある方を対象にした研究です。健康な方向けの食品の表示に、そのまま持ち込める結果ではありません。
3件とも、企業の資金で行われました。2009年と2019年の試験は卵殻膜の原料を扱う企業がスポンサーで、著者の一部がその企業の社員や有償の顧問です。いずれも単独の試験で、同じ原料と量での独立した再現はまだありません。
(2026年10月12日時点で、各論文の公開抄録と公開本文を確認)
日本での扱い
卵殻膜は卵から作られる食品原料で、日本で販売するときは特定原材料「卵」の表示を前提に設計します。
卵殻膜は、卵の殻と同じく卵から取り出す素材です。厚生労働省の食薬区分では、「卵殻」が「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」の動物由来物等に載っています。卵殻膜の原料についても、効能効果をうたわない食品として扱われているかを、原料メーカーの規格書と合わせて工場と確認します。
アレルゲン表示では、卵は表示が義務づけられた特定原材料です。消費者庁の資料では、卵の範囲は鶏・あひる・うずらなど、一般的に食べる鳥の卵とされています。鶏卵から作る卵殻膜の原料を使う場合は、卵を含む旨の表示を工場と確認します。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 卵のアレルゲン表示 | 卵は表示義務のある特定原材料。卵殻膜の原料を使う場合は、卵を含む旨の表示を確認する |
| 製造ラインの混入 | 同じラインで卵を含まない製品を作る場合は、洗浄や製造順などの混入防止策を工場と確認する |
| 機能性表示食品にする場合 | 届出者が自らの責任で、自社の原料と量について科学的根拠と安全性の情報を消費者庁へ届け出る |
機能性表示食品は、国の審査や許可ではありません。2024年の制度改正で、サプリメント形状の機能性表示食品はGMPに基づく製造管理が届出者の義務となり、2026年9月1日に完全施行されています。海外の試験は病気のある方が対象のため、届け出るなら、根拠の取り方から工場や専門家と検討します。
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いわゆる健康食品として売る場合の表示
届出をしない卵殻膜サプリは、関節への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、配合量や原料の事実を中心に伝えます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | 卵殻膜サプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 食品なのに「ひざの痛みが消える」「軟骨を修復する」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 根拠のない「10日で実感」「医師も推薦」などの表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1粒に卵殻膜〇mg配合」(量の事実) | 「関節痛に効く」「ひざの病気に」 |
| 「毎日の健康づくりに」(使用場面) | 病名や症状名を挙げた表現 |
| アレルゲン欄での卵の表示(義務の事実) | 海外の試験の結果を、製品の効果のように見せる表現 |
卵殻膜の製剤設計
試験で使われた1日300〜500mgは、1日1〜2粒のカプセルに収まる量です。そのままの卵殻膜と加水分解した卵殻膜は、別の原料として扱います。
| 原料の種類 | 特徴 | 試験で使われた量 | 検討すること |
|---|---|---|---|
| そのままの卵殻膜(粉末) | 膜を細かくした粉末。水に溶けにくい | 1日300mg、500mg | カプセルや錠剤向き。粉末の粒の大きさ |
| 加水分解した卵殻膜 | 分解して水に溶けやすくしたもの | 1日450mg | 粉末スティックや飲料にも使いやすい。味の確認 |
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 原料の種類:そのままの卵殻膜か、加水分解したものかを決めます。片方の試験の結果を、もう片方の根拠として使うことはできません。
- 1日あたりの量:根拠として紹介する研究の原料と量に合わせます。
- アレルゲン表示:卵を含む旨の表示と、製造ラインでの混入防止策を工場と確認します。
- 組み合わせる成分:関節をテーマにした配合では、コンドロイチンやグルコサミンと組み合わせることがあります。美容をテーマにする場合は、コラーゲンなどとの組み合わせも考えられます。植物素材を加える場合は、食品に使えるかどうかの確認が欠かせません。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
卵殻膜は卵から作る食品原料ですが、関節や美容をテーマにした配合では、組み合わせる植物素材が問題になることがあります。配合の確認はサプリメントOEMのページで詳しく説明しています。アレルゲン表示の全体像はサプリのアレルゲン表示、組み合わせの候補はコンドロイチンサプリのOEMとグルコサミンサプリのOEMの記事も参考になります。
見積もりの前に決めておくこと
原料の種類、1日あたりの量、剤形、アレルゲン表示が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- そのままの卵殻膜か、加水分解した卵殻膜か
- 1日あたりの量と、1袋(1箱)あたりの日数
- 剤形と包装の形
- 卵のアレルゲン表示と、製造ラインの確認
- 組み合わせる成分と、その量
- 初回の製造数と、年間の見込み数
テーマを関節にするか美容にするかで、組み合わせる成分と表示の考え方が変わります。配合が固まっていない段階でも、ご相談いただけます。
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よくある質問(FAQ)
卵殻膜のひざへの効果は、研究で確かめられていますか?
海外の小規模な試験で、こわばりや一部の痛みの指標に差がみられました。一方で、主要な評価項目では差がなかった試験もあり、3件とも企業の資金によるものです。研究の条件と限界を踏まえた言葉選びが大切です。
卵殻膜は卵のアレルゲン表示が必要ですか?
卵殻膜は鶏卵から作られる原料で、卵は表示が義務づけられた特定原材料です。卵を含む旨の表示を前提に、原料の規格書と製造ラインの混入防止策を工場と確認します。
そのままの卵殻膜と加水分解した卵殻膜は、同じものですか?
別の原料です。加工の方法が違い、試験の結果も分かれています。片方の試験の結果を、もう片方の根拠として使うことはできません。
卵殻膜はどのくらいの量が使われていますか?
紹介した試験では、そのままの卵殻膜で1日300mgまたは500mg、加水分解した卵殻膜で1日450mgが使われています。1日1〜2粒のカプセルに収まる量です。
工場に製造を断られることはありますか?
卵殻膜自体ではなく、組み合わせた植物素材や、卵を扱わない製造ラインの事情が理由になることがあります。配合と製造ラインの条件を、最初に確認します。
参考
- “Eggshell membrane in the treatment of pain and stiffness from osteoarthritis of the knee: a randomized, multicenter, double-blind, placebo-controlled clinical study”, Clinical Rheumatology 2009, PubMed 19340512, PMC2711914
- “Mildly Processed Natural Eggshell Membrane Alleviates Joint Pain Associated with Osteoarthritis of the Knee: A Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Study”, Journal of Medicinal Food 2021, PubMed 32633648, PMC7989856
- “A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Prospective Clinical Trial Evaluating Water-Soluble Chicken Eggshell Membrane for Improvement in Joint Health in Adults with Knee Osteoarthritis”, Journal of Medicinal Food 2019, PubMed 31381494, PMC6748399
- 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
- 厚生労働省「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(別添2、2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734639.pdf
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月12日確認)