グリシンは、体内でも作られるシンプルなアミノ酸です。日本では就寝前に飲む顆粒スティックの形で知られ、機能性表示食品として「睡眠の質」や「起床時の爽快感」に関する表示をした商品もあります。
本記事は、グリシンサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた成分ガイドです。研究で分かっていること、機能性表示食品として届け出る場合といわゆる健康食品として売る場合の表示の違い、剤形と配合の決め方を整理します。グリシンは原料を扱いやすい一方で、研究の規模は小さく、原料メーカーがかかわった研究が中心です。研究の条件を知っておくと、表示と広告の言葉選びで失敗しにくくなります。
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研究で分かっていること
就寝前にグリシン3gを摂った日本の小規模な試験で、翌朝の目覚めの感覚や翌日の疲労感の評価が良くなったと報告されていますが、試験の数と人数は限られています。
| 試験 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| 無作為化二重盲検クロスオーバー試験、Sleep and Biological Rhythms 2006(doi 10.1111/j.1479-8425.2006.00193.x) | 睡眠の質に不満のある人が、就寝前にグリシン3gまたはプラセボを摂取。翌朝に睡眠と疲労のアンケートで評価 | 「疲労感」「生き生きとした感じ」「頭のすっきり感」の評価が、プラセボより有意に良好 |
| 無作為化単盲検クロスオーバー試験、Frontiers in Neurology 2012(PubMed 22529837) | 健康な男性10人が参加し、7人を解析。睡眠時間をふだんより25%短くした3夜に、就寝30分前にグリシン3gまたはプラセボ | 翌日の疲労感が有意に軽く、眠気は軽い傾向。パソコンを使った注意力の検査でも成績が向上 |
研究の限界として、次の点に注意が必要です。
- 人数が少ない:2012年の試験で解析されたのは7人で、結果を広く当てはめるには規模が足りない
- 短い期間:どちらの試験も数夜の摂取で、数週間以上続けた場合の研究ではない
- 主観的な評価が中心:改善が報告されたのは、主にアンケートや自己評価の項目
- 原料メーカーの関与:2012年の試験の筆頭著者は食品メーカーの研究所の所属。論文は利益相反なしと記載している
(2026年10月11日時点で、各論文の公開抄録と、2012年の論文の本文を確認)
機能性表示食品として届け出る場合
グリシンは、機能性表示食品で「睡眠の質の向上」や「起床時の爽快感のあるよい目覚め」などの趣旨の表示に使われている成分です。
機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、機能性の科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。表示できるのは届け出た根拠の範囲の内容で、病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。
届出の例では、グリシン1日3.0gを関与成分の量としています。表示の趣旨は、深い睡眠にすみやかに入り、熟眠感などの睡眠の質の向上や、起床時のすっきりした目覚めに役立つというものです。あわせて、日中の眠気や疲労感の軽減、作業効率の向上にも触れています。グリシンとGABAを組み合わせ、それぞれの機能を表示した届出の例もあります。
2024年の制度改正で、サプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務となりました。2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を報告することも、届出者の義務です。
グリシンで機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。
- 根拠の取り方:既存の研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか
- 関与成分の量:根拠とする研究で使われた1日あたりの量と合わせる
- 分析の方法:製品中のグリシンの量を測る方法と、その結果を保証する体制
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いわゆる健康食品として売る場合の表示
機能性表示食品として届け出ない健康食品は、睡眠や目覚めへの効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | グリシンサプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 食品なのに「深く眠れる」「朝すっきり起きられる」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 根拠のない「医師も推薦」「No.1」などの表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1本にグリシン3,000mg配合」(量の事実) | 「睡眠に効く」「不眠を改善」 |
| 「おやすみ前の習慣に」(使用場面) | 睡眠の病名や症状名を挙げた表現 |
| 機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内) | 「臨床で実証済み」など、研究の人数と期間を示さない表現 |
グリシンの製剤設計
グリシンは1日3gとグラム単位で摂るため、錠剤やカプセルより、顆粒スティックや粉末が中心になります。
| 剤形 | 選ばれる理由 | 検討すること |
|---|---|---|
| 顆粒スティック | 1回分の3gを1本にまとめられ、就寝前の習慣に合う | 味と、水なしで飲むか水に溶かすか |
| 粉末(袋・ボトル) | 1回あたりの包装費を抑えやすい | 計量のしやすさと、量の分かりやすい表示 |
| 飲料 | 溶かす手間がない | 味と、賞味期間中の安定性 |
| 錠剤・カプセル | 持ち運びやすい | 1日3gでは粒の数がかなり多くなる |
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 原料の規格:食品用のグリシンを使います。原料メーカーに規格書と純度を確認します。
- 1日あたりの量:研究や届出の例では1日3gです。量を大きく減らすと、研究の条件から離れます。
- 組み合わせる成分:GABAと組み合わせた届出の例もあります。植物素材を加える場合は、食品に使えるかどうかの確認が欠かせません。
- 包装:1回分ずつのスティック包装は、夜の習慣に合い、1日の量も分かりやすくなります。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
グリシン自体は食品に広く使われていますが、睡眠をテーマにした配合では、組み合わせる植物素材が問題になることがあります。配合の確認は、サプリメントOEMのページで詳しく説明しています。組み合わせることが多い成分は、GABAサプリのOEMとL-テアニンサプリのOEMの記事で解説しています。
見積もりの前に決めておくこと
1日あたりの量、剤形、味、組み合わせる成分が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- グリシンの1日あたりの量と、1箱(1袋)あたりの日数
- 剤形と、顆粒や飲料の場合は味
- 組み合わせる成分と、その量
- 包装の形
- 機能性表示食品として届け出るかどうか
- 初回の製造数と、年間の見込み数
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よくある質問(FAQ)
グリシンの睡眠への効果は、研究で確かめられていますか?
就寝前に3gを摂った日本の小規模な試験で、翌朝の目覚めの感覚や翌日の疲労感の評価が良くなったと報告されています。ただし、試験の数も人数も少なく、期間も数夜と短いものです。
なぜ1日3gが多いのですか?
研究で使われた量が就寝前の3gで、機能性表示食品の届出の例も1日3.0gです。量を大きく減らすと、研究の条件から離れます。
機能性表示食品にしない場合、睡眠について書けますか?
いわゆる健康食品では、「深く眠れる」のような身体への効果をうたう表現は避ける必要があります。「おやすみ前の習慣に」のような使用場面の表現でも、全体として効果をうたう表示になっていないかを確認してください。
グリシンがカプセルより顆粒で売られるのはなぜですか?
1日3gとグラム単位で摂る成分だからです。カプセルや錠剤では粒の数が多くなるため、顆粒スティックや粉末が現実的な形になります。
グリシンとGABAを組み合わせられますか?
組み合わせられます。日本では両方を配合し、それぞれの機能を表示した機能性表示食品の届出の例もあります。組み合わせるすべての成分が食品に使えるかを、最初に確認します。
参考
- “Subjective effects of glycine ingestion before bedtime on sleep quality”, Sleep and Biological Rhythms 2006, 4:75-77, doi 10.1111/j.1479-8425.2006.00193.x
- “The effects of glycine on subjective daytime performance in partially sleep-restricted healthy volunteers”, Frontiers in Neurology 2012, PubMed 22529837, PMC3328957
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月11日確認)