ヘスペリジンは、みかんなどの柑橘類に含まれるポリフェノールの一種です。日本では、冬や冷房の効いた室内での「冷え」をテーマにしたサプリや飲料に使われ、機能性表示食品として届け出た商品も数多くあります。

本記事は、ヘスペリジンサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた内容です。研究で分かっていること、機能性表示食品として届け出る場合といわゆる健康食品として売る場合の表示、剤形と原料規格の決め方を整理します。商品に使われるのは、多くの場合、水に溶けやすく加工した糖転移ヘスペリジンです。原料の違いと試験の条件を知っておくと、表示と広告の言葉選びで失敗しにくくなります。

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研究で分かっていること

糖転移ヘスペリジンで手足の温度や血流に差が出たとする試験はありますが、どれも少人数・短期で、原料企業がかかわっています。

試験対象結果
ヒト試験、Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 2010(PubMed 20378967)冷えの感じ方を女子大学生97人に調査したうえで、3段階の実験を実施室温24℃の環境で、糖転移ヘスペリジン500mgは手足の先の温度の低下を抑えた。温かい飲料での実験でも、指の温度が長く高く保たれた。自律神経の指標には傾向の変化
プラセボ対照試験、Frontiers in Physiology 2021(PubMed 34248662、PMC8260939)健康な女性6人。糖転移ヘスペリジン1,000mgを含む飲料を1回飲み、6時間座り続ける足首の周囲の増え方が、プラセボより小さかった。下肢の皮膚温は徐々に上がった
ランダム化二重盲検クロスオーバー試験、Scientific Reports 2026(PubMed 42270667、PMC13253825)健康な成人30人(解析29人)。モノグルコシルヘスペリジン1日300mgの錠剤を2週間リンパの流れの指標とした胸管の太さに、全体ではプラセボとの差はなかった。運動習慣のない8人に絞った解析では差があった

3件とも、原料企業がかかわっています。2010年の論文の筆頭著者は原料企業の研究所に所属し、2021年の試験は同じ企業の資金で行われました。2026年の試験は、飲料企業の資金による大学との共同研究で、著者の多くがその企業の社員です。

人数は6人から30人程度で、摂取の期間も1回から2週間と短いものです。2026年の試験で差が出たのは、全体ではなく、運動習慣のない一部の人に絞った解析でした。結果を広告に使う場合は、こうした条件をあわせて読む必要があります。

(2026年10月18日時点で、各論文の公開抄録と公開本文を確認)

機能性表示食品として届け出る場合

モノグルコシルヘスペリジンは、気温が低いときの手足の血流や体温を保つ趣旨の表示で、機能性表示食品に多く使われています。

届け出られた表示には、周囲が冷えるときに健やかな末梢血流を保ち、末梢体温を維持するといった趣旨のものがあります。冷えによる皮膚表面の温度の低下を軽減する、といった趣旨の届出もあります。表示の範囲は届出ごとに違い、コラーゲンペプチドなどほかの関与成分と組み合わせた届出もあります。

機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。

2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務となりました。2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を報告することも届出者の義務です。

ヘスペリジンで機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。

  • 根拠の取り方:研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか
  • 関与成分の量:モノグルコシルヘスペリジンの1日あたりの量を、根拠とする研究と合わせる
  • 分析の方法:製品中のモノグルコシルヘスペリジンの量を測る方法と、その結果を保証する体制

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いわゆる健康食品として売る場合の表示

届出をしないヘスペリジンサプリは、血流や冷えへの効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、原料と量の事実を中心に伝えます。

健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。

法律かかわる規定ヘスペリジンサプリで注意すること
医薬品医療機器等法(薬機法)承認前の医薬品の広告の禁止(第68条)食品なのに「血流をよくする」「冷え性を治す」「血圧を下げる」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある
健康増進法誇大表示の禁止(第65条)健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない
景品表示法優良誤認表示の禁止根拠のない「体温が〇℃上がる」「医師も推薦」などの表示

消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。

比較的安全な言い方避けるべき言い方
「1日分に糖転移ヘスペリジン〇mg配合」(量の事実)「冷え性に効く」「血行障害を改善」
「糖転移ヘスペリジンを使用」(原料の事実)血圧や血管の病気に触れる表現
機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内)「むくみが消える」など、試験の条件を示さない表現

「冷え」は日常の言葉ですが、「冷え性」を治すものとして書くと医薬品的な表現になります。季節や使う場面を伝える表現にとどめ、表示全体で効果をうたっていないかを確認します。

ヘスペリジンの製剤設計

ヘスペリジンはそのままでは水に溶けにくいため、商品には水に溶けやすい糖転移ヘスペリジンが多く使われ、飲料や顆粒にも配合できます。

2024年の実験の論文では、水と油への溶けやすさの指標(log P)が、ヘスペリジンで2.13、ブドウ糖を結合させたヘスペリジンで−3.45と報告されています。値が小さいほど水に溶けやすいことを示します。欧州食品安全機関(EFSA)の2024年の評価では、糖転移ヘスペリジンはヘスペリジンとデキストリンから酵素反応で作られています。

剤形選ばれる理由検討すること
錠剤・ハードカプセル1回あたりの費用を抑えやすい。2026年の試験も錠剤1日数百mgを入れる場合の粒の大きさと粒数
飲料糖転移ヘスペリジンは水に溶けやすく、温かい飲み物にも使える味と、製品の中での安定性
顆粒スティック水やお湯に溶かして飲める味と包装

仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。

  1. 原料の種類と規格:ヘスペリジンと糖転移ヘスペリジンは、溶けやすさが大きく違います。規格書で、モノグルコシルヘスペリジンと未反応のヘスペリジンの割合を確認します。
  2. 1日あたりの量:機能性表示食品にするなら、根拠とする研究の量に合わせます。試験によって300mg、500mg、1,000mgと量が違います。
  3. 組み合わせる成分:冷えや美容をテーマに、コラーゲンペプチドなどと組み合わせる配合があります。植物素材を加える場合は、食品に使えるかどうかの確認が欠かせません。
  4. アレルゲン:柑橘の種類を規格書で確認します。オレンジは、表示が推奨される「特定原材料に準ずるもの」の20品目の一つです。

安全性については、EFSAの2024年の評価が、提案された使用量(成人で1日最大364mg)では安全と結論づけています。量を多くする設計では、根拠とする資料を原料メーカーと確認します。

最初に確認すること:食品に使える成分か

日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。

厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。

ヘスペリジンは、2026年8月5日更新の「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に例示されています。ウンシュウミカンの果皮・未熟果実も同じリストにあります。食品に使える原料ですが、医薬品的な効果をうたえば医薬品と判断されるおそれがあります。

冷えをテーマにした配合では、組み合わせる植物素材が問題になることもあります。配合の確認はサプリメントOEMのページで詳しく説明しています。組み合わせの候補はコラーゲンペプチドサプリのOEM、表示はサプリのアレルゲン表示の記事も参考になります。

見積もりの前に決めておくこと

原料の種類と規格、1日あたりの量、剤形、組み合わせる成分が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。

  • ヘスペリジンの種類(糖転移ヘスペリジンか、ヘスペリジンか)と規格
  • 1日あたりの量と粒数、1袋(1本)あたりの日数
  • 剤形と、飲料や顆粒の場合は味
  • 組み合わせる成分と、その量
  • 包装の形
  • 機能性表示食品として届け出るかどうか
  • 初回の製造数と、年間の見込み数

1日数百mgを配合する場合は、粒数や粒の大きさが変わります。配合が固まっていない段階でも、ご相談いただけます。

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よくある質問(FAQ)

ヘスペリジンと糖転移ヘスペリジンは同じものですか?

違います。糖転移ヘスペリジンは、ヘスペリジンにブドウ糖を結合させて水に溶けやすくした原料です。飲料や顆粒に使いやすく、機能性表示食品の多くはモノグルコシルヘスペリジンを関与成分にしています。

冷えや血流への効果は、研究で確かめられていますか?

手足の温度や血流に差が出たとする試験はありますが、6人から30人程度の少人数で、期間も短いものです。どの試験にも原料企業がかかわっており、根拠は限定的と考えるのが妥当です。

「冷え」をテーマにした商品で、どこまで書けますか?

機能性表示食品として届け出れば、届け出た範囲の表示ができます。届出をしない場合は、「冷え性を治す」「血流をよくする」など身体への効果をうたう表現は避け、季節や使う場面を伝える表現にとどめます。

1日にどれくらいの量を配合しますか?

試験で使われた量は、1日300mgの錠剤、1回500mg、飲料で1回1,000mgなどさまざまです。機能性表示食品にする場合は、根拠とする研究の量に合わせます。

ヘスペリジンは食品に使えますか?

ヘスペリジンは、厚生労働省の「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に例示されています。食品に使えますが、医薬品的な効果をうたうと医薬品と判断されるおそれがあります。

参考

  • “Effects of alpha-glucosylhesperidin on the peripheral body temperature and autonomic nervous system”, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 2010, PubMed 20378967, doi 10.1271/bbb.90742
  • “Gravity-Induced Lower-Leg Swelling Can Be Ameliorated by Ingestion of α-Glucosyl Hesperidin Beverage”, Frontiers in Physiology 2021, PubMed 34248662, PMC8260939
  • “Effects of monoglucosyl hesperidin on human lymphatic circulatory function: A randomized placebo-controlled, double-blind, crossover trial”, Scientific Reports 2026, PubMed 42270667, PMC13253825
  • “In Vitro Biological Activities of Hesperidin-Related Compounds with Different Solubility”, Antioxidants 2024, PubMed 38929166, PMC11200626
  • EFSA NDA Panel “Safety of glucosyl hesperidin as a Novel food pursuant to Regulation (EU) 2015/2283”, EFSA Journal 2024, PubMed 39119058, PMC11306971
  • 厚生労働省「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734639.pdf
  • 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」(食物アレルギー表示に関するハンドブック) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
  • 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
  • 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)

(2026年10月18日確認)