イミダゾールジペプチドは、鶏むね肉などに多く含まれるアンセリンとカルノシンの総称です。日本で研究が進んだ成分で、機能性表示食品として「日常生活での一時的な疲労感」に関する表示をした商品も販売されています。

本記事は、イミダゾールジペプチドサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた成分ガイドです。研究で分かっていること、機能性表示食品として届け出る場合といわゆる健康食品として売る場合の表示の違い、剤形と配合の決め方を整理します。疲労感という身近なテーマは訴求しやすい反面、研究の規模は大きくありません。研究の条件を知っておくと、表示と広告の言葉選びで失敗しにくくなります。

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研究で分かっていること

イミダゾールジペプチドの研究は日本の小規模な試験が中心で、疲労感の軽減を示す報告がある一方、結果にはばらつきがあります。

試験・レビュー対象結果
レビュー、Japanese Journal of Complementary and Alternative Medicine 2009(doi 10.1625/jcam.6.123)鶏むね肉由来のイミダゾールジペプチドを使った日本の2件のヒト試験(身体的な負荷による疲労と、日常生活による疲労)2件の試験は、疲労の軽減に役立つ可能性を示唆していると結論
無作為化二重盲検試験、Archives of Gerontology and Geriatrics 2014(PubMed 24880197)65歳以上の56人(追跡は51人)。鶏肉抽出物を1日2.5g(ジペプチドとして1g)、13週間高齢者向けの体力テスト6項目のうち2項目で、プラセボ群より点数が向上。著者は「さらなる研究が必要」としている
3つの試験をまとめた論文、Journal of the International Society of Sports Nutrition 2022(PubMed 35599917)若い男性(11人、15人、8人)。カルノシンとアンセリンを体重1kgあたり各30mg、運動の前に1回摂取1つ目の試験では短い自転車スプリントの最大パワーが約3%向上。2つ目の試験では集団全体として向上は見られず、仕組みも示されなかった

2009年のレビューの著者には、大学の研究者に加えて、民間のクリニックと企業の研究開発部門の所属者が含まれています。研究が誤りという意味ではありませんが、原料の業界から独立した研究とは言えません。元になった日本の試験報告は、国際的な論文データベースで探しにくい点にも注意が必要です。

2022年の論文で使われた量は、一般的なサプリの1日量よりかなり多く、1回だけの摂取です。運動の試験の結果を、毎日の疲労感の訴求にそのまま使うことはできません。

(2026年10月11日時点で、各論文の公開抄録を確認)

機能性表示食品として届け出る場合

イミダゾールジペプチドは、機能性表示食品で「日常生活での一時的な疲労感を軽減する」という趣旨の表示に使われている成分です。

機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、機能性の科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。表示できるのは届け出た根拠の範囲の内容で、病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。

農研機構が公開している届出用の研究レビューの資料では、条件に合う論文3報を採用しています。3報はいずれも日本語の論文で、健康な日本人が飲料でイミダゾールジペプチドを1日200〜400mg摂取した試験でした。1日400mgの2報で疲労感の有意な軽減が見られ、残る1報は軽減の傾向にとどまりました。

2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務となりました。2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を報告することも、届出者の義務です。

イミダゾールジペプチドで機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。

  • 根拠の取り方:既存の研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか
  • 関与成分の量:根拠とする研究で使われた1日あたりの量と合わせる
  • 分析の方法:アンセリンとカルノシンの量を測る方法と、その結果を保証する体制

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いわゆる健康食品として売る場合の表示

機能性表示食品として届け出ない場合、疲労や体力への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。

健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。

法律かかわる規定イミダゾールジペプチドサプリで注意すること
医薬品医療機器等法(薬機法)承認前の医薬品の広告の禁止(第68条)食品なのに「疲れが取れる」「体力がつく」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある
健康増進法誇大表示の禁止(第65条)健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない
景品表示法優良誤認表示の禁止根拠のない「アスリート愛用」「No.1」などの表示

消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。

比較的安全な言い方避けるべき言い方
「1日分にイミダゾールジペプチド〇mg配合」(量の事実)「疲労回復」「スタミナがつく」
「鶏むね肉由来の原料を使用」(原料の事実)病名や症状名を挙げた表現
機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内)「臨床で実証済み」など、研究の規模と条件を示さない表現

イミダゾールジペプチドの製剤設計

イミダゾールジペプチドは水に溶ける粉末の原料で、1日数百ミリグラムの量のため、飲料・カプセル・錠剤・顆粒のいずれにも使えます。

剤形選ばれる理由検討すること
飲料研究や届出の根拠となった試験の多くが飲料鶏由来の原料の風味を抑える味の設計
ハードカプセル・錠剤1日数粒で量を守りやすく、持ち運びやすい粒の数と大きさ
顆粒スティック水に溶かして飲め、量を調整しやすい溶けやすさと味
スポーツ向けの配合アミノ酸やビタミンと組み合わせやすい組み合わせる成分ごとの確認

仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。

  1. 原料の由来:鶏むね肉の抽出物が一般的です。原料メーカーに、アンセリンとカルノシンの含有量と分析方法を確認します。
  2. 1日あたりの量:機能性表示食品にするなら、根拠とする研究の量に合わせます。
  3. 組み合わせる成分:運動やエネルギーをテーマにした配合では、他のアミノ酸や植物素材を加えることがあります。どの成分も、食品に使えるかの確認が欠かせません。
  4. 原料の表示と包装:鶏由来の原料のため、アレルギー表示の要否を原料の規格書で確認します。吸湿しやすい配合では、アルミ包装や乾燥剤も検討します。

鶏むね肉抽出物は、ラットを使った90日間の試験などで安全性が評価されています。ただし、試験の結果は原料ごとに異なるため、採用する原料の安全性資料を原料メーカーから取り寄せてください。

最初に確認すること:食品に使える成分か

日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。

厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。

鶏むね肉の抽出物は食品として使われてきた原料ですが、運動やエネルギーをテーマにした配合では、組み合わせる植物素材などが問題になることがあります。配合の確認は、サプリメントOEMのページで詳しく説明しています。運動をテーマにした成分では、クレアチンサプリのOEMの記事も参考になります。研究の評価の仕方は、GABAサプリのOEMでも解説しています。

見積もりの前に決めておくこと

1日あたりの量、剤形、組み合わせる成分、包装が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。

  • イミダゾールジペプチドの1日あたりの量と、1袋(1本)あたりの日数
  • 剤形と、飲料や顆粒の場合は味
  • 組み合わせる成分と、その量
  • 包装の形
  • 機能性表示食品として届け出るかどうか
  • 初回の製造数と、年間の見込み数

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よくある質問(FAQ)

イミダゾールジペプチドの疲労感への効果は、研究で確かめられていますか?

日本の小規模な試験で、疲労感の軽減を示す報告があります。一方で、試験の数は少なく、有意な差が出なかった試験もあります。表示や広告では、研究の規模と条件を踏まえた言葉を選ぶことが大切です。

機能性表示食品の根拠には、どのくらいの量が使われていますか?

公開されている研究レビューの例では、1日400mgの試験で疲労感の有意な軽減が報告されています。届け出る場合は、根拠とする研究の量に製品の量を合わせます。

機能性表示食品にしない場合、疲れについて書けますか?

いわゆる健康食品では、「疲れが取れる」「疲労回復」のような身体への効果をうたう表現は避ける必要があります。量や原料の由来など、事実の表示が中心になります。

イミダゾールジペプチドに向いている剤形は何ですか?

水に溶ける粉末で1日数百ミリグラムの量のため、飲料・カプセル・錠剤・顆粒のいずれにも使えます。飲料の場合は、鶏由来の原料の風味を抑える設計が必要です。

工場に製造を断られることはありますか?

イミダゾールジペプチド自体ではなく、組み合わせた植物素材などが原因になることがあります。配合するすべての成分が食品に使えるかを、最初に確認します。

参考

  • “Novel Anti-Fatigue Compound: Imidazole Dipeptide”, Japanese Journal of Complementary and Alternative Medicine 2009, 6(3):123-129, doi 10.1625/jcam.6.123
  • “Anserine and carnosine supplementation in the elderly: Effects on cognitive functioning and physical capacity”, Archives of Gerontology and Geriatrics 2014, PubMed 24880197
  • “The ergogenic effect of acute carnosine and anserine supplementation: dosing, timing, and underlying mechanism”, Journal of the International Society of Sports Nutrition 2022, PubMed 35599917
  • “Safety evaluation of chicken breast extract containing carnosine and anserine”, Food and Chemical Toxicology 2008, PubMed 17919801
  • 農研機構「イミダゾールジペプチドの摂取による疲労感軽減作用に関する定性的研究レビュー」(届出用資料の例) https://www.naro.go.jp/org/nfri/yakudachi/sys-review/pdf/old/NARO_nfri_review_imdipeptide1.pdf
  • 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
  • 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)

(2026年10月11日確認)