インドには金属の素形材を作る工場が多くの工業都市に広がっていて、ポンプのケーシング、バルブボディ、鍛造のフランジといった部品で引き合いを出すと、読み切れないほどの見積が返ってくることがあります。難しいのは、候補を見つけることではありません。どの鋳造工場・鍛造工場が実際にその部品を作るのか、見積に書かれた材質が図面の材質と同じなのか、港から遠く離れた工場で作られる重い部品をどう検査するのか、そして日本へ入れるときに何を確認するのか、という点です。

本記事では、日本の製造業の調達・生産技術の担当者が、インドで鋳造品・鍛造品を調達するときに固有の手順を整理します。工法の選び方、材質の指定、試験片と証明書、鋳物特有の不良といった部品そのものの仕様はベトナム鋳物調達|発注前に決める材質と検査で詳しく扱っており、インドの工場でもそのまま当てはまるため、ここでは繰り返しません。インド企業の輸出資格(IEC)やBIS認証、日印CEPAの原産地証明の発給機関はインドから仕入れる|BIS認証と輸出書類の進め方をご覧ください。

💬 インドの鋳造品・鍛造品を検討中で、実際に作る工場を最初の発注の前に確かめたい方へ。 案件ごとに部品に合う工場を探し、見極め、管理します。アジア各国からの調達をご覧いただき、図面と年間数量をお問合せフォームからお送りください。

手順1:部品に近い仕事をしている産地から候補を探す

インドの鋳造・鍛造工場は、特定の用途を中心に育った産地(クラスター)に集まっているため、最初の候補は、自社の部品に近い仕事をしている産地から選びます。

産地の得意分野は、その土地の工場がどんな木型・造型ライン・溶解設備・機械加工に慣れているかを表しています。ポンプ用の鋳物で育った町と、エンジンメーカーや衛生陶器向けの町とでは、得意な形状や材質が違います。インド鋳物協会(IIF)の鋳造情報センターは、主な鋳造クラスターとしてバタラ、ジャランダル、ルディアナ、アグラ、プネ、コールハープル、ショラプル、ラージコート、ムンバイ、ベルガウム、コインバトール、チェンナイ、ハイデラバード、ハウラー、インドール、アーメダバード、ファリダバードを挙げ、一部の産地の得意分野も示しています。

産地鋳造情報センターが挙げる得意分野
コインバトールポンプ用の鋳物
コールハープル、ベルガウム(ベラガヴィ)自動車用の鋳物
ラージコートディーゼルエンジン用の鋳物
ハウラー衛生用の鋳物

鍛造も産地に集まっています。政府系の支援で行われた産地調査では、プネやルディアナの鍛造工場が取り上げられています。ただし、これは出発点であって順位ではありません。ある製品で知られた産地にも、まったく別の部品を作る工場がたくさんあります。

産地へたどり着くには、次の3つの団体が手がかりになります。

  • インド鋳物協会(IIF):全国の鋳造業の団体で、地域事務所と支部があります
  • インド鍛造工業会(AIFI):鍛造会社の全国団体です
  • EEPC India(インド技術輸出促進評議会):商工省のもとで設立された団体で、買い手と売り手の商談会や International Engineering Sourcing Show を開いており、鋳造品・鍛造品は重点分野として扱われています

(2026年10月19日時点で、IIF鋳造情報センターが公表しているインド鋳造業の概要と、EEPC Indiaの公表資料を確認)

手順2:実際に鋳込む・鍛造する工場を特定する

価格の話をする前に、どの会社が鋳込み(または鍛造し)、どこが機械加工し、どこが熱処理するのかを聞きます。インドの見積は、複数の工場をまとめる輸出商社から届くことがあるためです。

輸出商社はインドの機械部品取引の正当な担い手です。小さな鋳造工場は輸出資格を持たず、輸出書類を作ったり海外の買い手とやり取りしたりする体制がないこともあります。鋳造・機械加工・塗装を複数の工場からまとめてくれる商社は、発注側の手間を実際に減らしてくれます。リスクは商社そのものではなく、誰が作っているかがわからないことです。作っている工場がわからなければ、その工場を監査できず、2回目の注文が別の工場に回ってもわからず、材料証明書に見たこともない社名が載っていても確かめようがありません。

最初の引き合いに、次の4つの質問を入れてください。

  1. どの会社の、どの工場で鋳込む(鍛造する)のか
  2. 機械加工と熱処理は、別の会社ならどこが行うのか
  3. 材料証明書には誰の名前が載り、その会社は溶解と試験の記録を持っているのか
  4. 工程のどれかを別の工場へ移す前に、連絡をもらえるか

明確に答え、実際に作業する工場の訪問を受け入れてくれる相手なら、こちらで確かめられます。特に大事なのは4つ目の変更連絡のルールです。鋳造工場・鍛造工場・熱処理先を変えるときは発注側の承認が要る、と売買契約に書いておきます。日本の協力工場との取引で「4M変更」の連絡を求めているのと同じ考え方です。

手順3:材質は自社の規格で指定し、IS規格の「同等品」は書面で承認する

インドの工場はインド規格(IS)の記号で見積を出すことがあるため、求める規格と材質を明記し、IS規格の「同等材」は翻訳ではなく、承認が必要な代替として扱います。

インド規格局(BIS)は鋳造品・鍛造品の材料規格を発行しています。たとえば IS 210 はねずみ鋳鉄品、IS 1865 は球状黒鉛鋳鉄品の規格です。国内向けの仕事が中心の工場はこれらで作るのが自然で、欧州や日本、米国へ輸出している工場は EN・JIS・ASTM で作ることもあります。どちらでも構いません。問題は、両方の規格名を書かずに「同等(equivalent)」とだけ書かれた見積です。日本の図面が FC250 や FCD450 のようにJIS記号で書かれているなら、工場がどの規格のどの材質で鋳込むのかを、横に並べて書いてもらいます。

図面に対して、各候補に次のことを書いてもらってください。

  • 鋳込む(鍛造する)規格と材質。自社の規格と違うなら、両方の規格を並べて
  • 証明書に載せる特性、試験片の種類、どのロットのものか
  • 熱処理をどこで行い、熱処理の単位とロットをどう結び付けるか

材料証明書の区分(EN 10204の2.2・3.1・3.2など)と、どれなら納入品そのものの試験結果がわかるかは、ベトナム部品調達の品質書類——何をいつ求めるかで説明しています。木型や鍛造型は発注側が費用を払う型ですので、所有権と回収の条件はベトナム製造委託の金型管理|所有権と契約条項の考え方で契約に入れます。

(2026年10月19日時点で、BISの規格目録に掲載された IS 210:2009 と IS 1865:1991 を確認。注文書に引用する前に、現行の改訂版を確認してください)

💬 インドから「同等材」と書かれた見積が届き、図面の材質と比べてから受けたい方へ。 図面と見積書をLINEでお送りください。規格の対照と、確認すべき点を整理してお返しします。

手順4:現地での立会検査の段階を、注文書に書く

鋳造品・鍛造品は重く、不良の多くは内部にあるため、どの段階で誰が現地で立ち会うかを注文書に書いておきます。コンテナが日本の港に着いてからでは、どの不良も返送の運賃を伴います。

軽い部品なら、日本で受入検査をする選択肢もあります。鋳造品・鍛造品ではそうはいきません。部品が重く、問題になる不良は内部にあることが多く、不合格のロットはどちらへ運ぶにも費用がかかります。検査は、証拠が生まれる段階で、作っている現場で行う計画にします。

段階現地で確認すること立ち会う人
木型・鍛造型の承認図面との照合、縮み代と削り代、鋳出し文字最初の鋳込み・鍛造の前に、自社の技術者か検査員
初品全寸法、切断または非破壊検査、材料と硬さの結果検査員。証明書と実際の試験を突き合わせる
材料試験合意した試験片での化学成分と機械試験EN 10204の3.2を求めるなら立会人
出荷前合意した欠陥リストと寸法での抜き取り残金を払う前に検査員
積み込み梱包、防錆、表示、コンテナ内の固定検査員、または合意した写真と積込報告書

抜き取り基準の考え方はベトナム調達の品質管理・検品代行ガイド、残金の支払いを検査結果に結び付ける方法はベトナム製造委託の支払い条件|前払いリスクが参考になります。鋳造工場と機械加工工場が別会社の場合は、加工して巣(ブローホール)や鍛造のしわが出たときに誰が費用を持つか、溶接補修を認めるかどうかを、事前に決めておきます。

手順5:重量物の輸送と梱包を、見積に含めてもらう

鋳造品・鍛造品は、コンテナの容積より先に重量の上限に達し、しかも多くの産地は港から遠いため、積み出し港と内陸輸送を見積に書いてもらいます。

密度の高い金属部品は、箱の中がまだ空いているうちにコンテナの重量上限や、港までの道路の重量制限に達します。これによって、梱包のしかた、1回の注文に要るコンテナの数、より安い積み出し地点があるかどうかが変わります。木箱1つあたりの総重量、コンテナ1本に入る木箱の数の見込み、積み出し港を書いてもらってください。西部の産地はナバシェバやムンドラ、南部はチェンナイ、ハウラーのような東部はコルカタの港から積み出されることが多いですが、実際の経路は工場とその物流業者が決めます。

鉄鋼部品の海上輸送では、梱包について2つの点を注文書に書きます。加工面には航海と保管に耐える防錆をすること、木箱は中身の重さごと吊り上げられる強度にすることです。インドの部品を他国の部品と一緒に日本へ運びたい場合や、運賃・関税・検品費を足して他国の見積と比べたい場合は、アジア複数国の見積もりを同条件で比較する方法をご覧ください。

手順6:日本へ入れる前に、協定と税番を確認する

最初の注文の前に、自社の部品のHSコードについて、日印CEPAの特恵税率が使えるか、原産地証明をどう用意するかを確かめます。インドはRCEPに参加していないため、RCEPは使えません。

日印CEPA。 日本とインドの包括的経済連携協定は2011年8月1日に発効しています。特恵税率を使うには、品目ごとの原産地規則を満たし、インド側の発給機関が出す原産地証明書を用意します。発給の枠組みはインドから仕入れる|BIS認証と輸出書類の進め方にまとめています。

税番と事前教示。 鋳造品・鍛造品は、素材として鉄鋼製品の類に分類されることもあれば、機能に応じて機械やポンプの部分品として別の類に分類されることもあります。税番が変われば税率も原産地規則も変わります。日本の税関には、輸入の前に品目分類(関税率)や原産地の取り扱いを照会し、文書で回答を受けられる事前教示制度があります。量産を始める前に照会しておくと、着地コストの前提が固まります。

日本以外へ直接送る場合。 インドから海外の自社工場へ直接送る場合は、その国の規制も確認します。たとえば米国国際貿易委員会は2022年の見直しで、インド産の炭素鋼製フランジに対する米国のアンチダンピング・相殺関税の命令を継続しました(調査番号701-TA-563、731-TA-1331)。EUでは炭素国境調整メカニズム(CBAM)が2026年1月1日から本格適用され、輸入者には認可の取得などの義務があります。規則(EU)2023/956の附属書Iには第72類(一部の合金鉄を除く)と、第73類のうち7326(その他の鉄鋼製品)などの項が載っていますが、7325(その他の鉄鋼の鋳造製品)は載っていません。機械や車両の部分品として分類される部品は、さらに別の類です。対象品目の拡大案も出ているため、利用する前に最新の状況を確認してください。

(2026年10月19日時点で、日本税関の日インドCEPAの案内、日本税関の事前教示制度の案内、EUR-Lexの規則(EU)2023/956、欧州委員会のCBAMのページ、米国国際貿易委員会の炭素鋼製フランジの公表資料を確認。個別の品目についての通関上の助言ではありません)

インドで調達した鋳物・鍛造素材を、タイなど第三国の工場で加工して日本へ入れる流れも考えられます。タイ側の加工委託の進め方はタイで金属・樹脂部品の製造委託|家電・機械向けをご覧ください。

よくある質問

1. インドで鋳物を頼むなら、どの都市がよいですか?
A. 一つの答えはありません。コインバトール、コールハープル、ベルガウム、ラージコート、ハウラーなどは特定の用途で知られていますが、どの産地にも別の製品を作る工場があります。自社の部品の種類で候補を絞り、工場ごとに確かめてください。

2. 見積の相手が鋳造工場ではなく輸出商社でも問題ありませんか?
A. それ自体は問題ありません。複数の工場をうまくまとめている商社も多くあります。どこで鋳込み、加工し、熱処理するのか、証明書に誰の名前が載るのかを聞き、工程を別の工場へ移す前の連絡を契約で求めてください。

3. JISの材質の代わりに、インド規格(IS)の材質を受け入れてもよいですか?
A. 化学成分・機械的性質・試験方法を両方の規格で比べたうえで、書面で承認した場合だけにします。「同等」と書かれた材質は、承認するまでは代替品です。

4. インドの鋳造品にRCEPの特恵税率は使えますか?
A. 使えません。インドはRCEPに参加していません。日本へ入れるなら日印CEPAを確認します。原産地規則は品目ごとに違うため、税関の事前教示で確かめておくと確実です。

5. 検査は日本に着いてからでは遅いですか?
A. 鋳造品・鍛造品では、現地での検査を基本にすることをおすすめします。重くて返送費がかさみ、内部の不良は外観ではわからないためです。木型の承認、初品、出荷前の各段階で立ち会う計画を注文書に書いてください。

まとめ

インドでの鋳造品・鍛造品の調達は、「産地での候補探し・実際に作る工場の特定・IS規格の同等材の書面承認・現地での立会検査・重量物の輸送条件・日印CEPAと税番」を最初の注文の前に固めると、届いてからの手戻りを大きく減らせます。

規格・協定・各国の規制は改定されることがあります。注文や通関の前に、最新の内容を確認してください。

💬 インドの鋳造工場・鍛造工場を探し、確かめ、現地で検査するところまで日本語でサポートします。 輸送と日本への輸入の段取りも、最初の鋳込みの前に整理します。お問合せフォーム・LINEからご相談ください。


※出典:インド鋳物協会(IIF)鋳造情報センター「インド鋳造業の概要」(foundryinfo-india.org)、EEPC India 公表資料、インド規格局(BIS)規格目録 IS 210:2009・IS 1865:1991、日本税関 日インドCEPAの案内、日本税関「事前教示制度」の案内、規則(EU)2023/956 第2条(1)・附属書I(EUR-Lex)、欧州委員会 CBAMのページ、米国国際貿易委員会 炭素鋼製フランジ(インド・イタリア・スペイン)の5年見直し(2022年)。2026年10月19日確認。