複数の国のサプライヤーに見積もりを依頼すると、建値(インコタームズ)も、運賃込みか別立てかも、通貨も、支払条件もバラバラに返ってくることが少なくありません。単価表の数字だけを並べて「安い方」を選ぶと、実際に工場から着地するまでの総コストで逆転していた、という失敗が起こります。本記事では、価格そのものではなく、比較の条件をそろえる手順を整理します。

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比較の土台を同じ条件にそろえる

結論: 同じHSコード・同じ数量・同じ仕様で見積もりを依頼しないと、価格の差が仕様の差なのか国の差なのか判断できません。

見積もり依頼の時点で、HSコード(税率の確認に必要)、数量、仕様、納期をすべての候補先に対して同じ条件で提示します。仕様が少しでも違えば、それだけで価格差が生まれ、国ごとの調達条件の比較にならなくなります。

そろえる条件そろえないとどうなるか
HSコード適用される関税率が変わり、着地価格が比較にならない
数量・ロット単価が変わり、国ごとの実力差が見えない
仕様・材質品質の差が価格差に混ざる
納期特急対応の割増が混ざる

インコタームズと運賃を分けて見る

結論: 建値(EXW・FOB・CIFなど)が違うと運賃・保険料の負担者が変わるため、まず同じ建値に換算してから単価を比べます。

ある候補からEXW(工場渡し)の見積もり、別の候補からCIF(運賃・保険料込み)の見積もりが来た場合、見た目の単価を比べても意味がありません。運賃・保険料をどちらが負担するかを国際商業会議所(ICC)のインコタームズの定義に沿って確認し、同じ建値に引き直してから比較します。

項目A社(例)B社(例)C社(例)
建値A社の価格(EXW)B社の価格(FOB)C社の価格(CIF)
運賃別途見積もりを取得別途見積もりを取得B社の見積もりに含む
保険別途手配別途手配含む
同一建値への換算後単価換算して比較換算して比較そのまま比較可

関税と協定の有無を反映する

結論: 仕入れ先の国によって使える協定(EPA・FTA・RCEPなど)と原産地規則が異なるため、着地価格には協定適用後の関税率を織り込みます。

同じ品目でも、仕入れ先の国によって適用できる協定が異なります。ASEAN諸国からの輸入では二国間EPA・AJCEP・RCEPのいずれかを選べる場合があり(タイ・マレーシアから日本へ輸入|EPA・AJCEP・RCEPの選び方)、台湾のように協定自体が存在しない国もあります(台湾からの仕入れ|工場委託と輸出手続きの進め方)。韓国は日本との間でRCEPが唯一の特恵の枠組みで(韓国から仕入れる|企業確認とRCEP活用の進め方)、インドはRCEPに参加していないためベトナムとの特恵はAIFTAに限られます(インドから仕入れる|BIS認証と輸出書類の進め方)。関税率を確認せずに単価だけを比較すると、協定を使える国が不利に見えてしまうことがあります。

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為替と支払条件をそろえて比べる

結論: 見積もり通貨と支払条件が違う場合は、同じ基準日の為替レートと同じ支払サイトに引き直してから比較します。

見積もりが異なる通貨(米ドル・現地通貨・円建てなど)で出てきた場合、比較する時点の為替レートで自社の基軸通貨に換算します。また、前払い比率や支払サイト(30日・60日など)が違うと、資金繰り上のコストも異なります。価格だけでなく、支払条件による実質的な負担の違いも比較表に含めます。

項目確認すること
建値通貨どの通貨で見積もられているか
換算基準日どの時点のレートで自社通貨に換算するか
支払条件前払い比率・支払サイトが同じか

検品費用を含めた着地価格で比べる

結論: 現地での検品・立会い費用を含めずに比較すると、安く見えた見積もりが着地後に逆転することがあります。

工場出荷時点の単価が最も安くても、現地での検品・出荷前立会いの手配費用、不良対応のやり直しにかかる費用まで含めると、総コストで見劣りすることがあります。検品を自社で行うか、代行を依頼するかによっても費用構造が変わるため、比較表には検品費用の行を必ず設けます。

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よくある質問

1. 複数国の見積もりを比較するとき、最初に何をそろえればよいですか?
A. HSコード・数量・仕様・納期を、すべての候補先に対して同じ条件で提示することです。条件がそろっていないと、価格差が国の差なのか仕様の差なのか判断できません。

2. 建値(インコタームズ)が違う見積もりはどう比較しますか?
A. 運賃・保険料をどちらが負担するかを確認し、国際商業会議所(ICC)のインコタームズの定義に沿って同じ建値に換算してから単価を比べます。

3. 関税はどのタイミングで比較に織り込みますか?
A. 仕入れ先の国ごとに使える協定(EPA・FTA・RCEPなど)と原産地規則を確認し、協定適用後の関税率を着地価格に含めた段階で比較します。

4. 為替レートはどの時点のものを使えばよいですか?
A. 決まった基準はありませんが、比較する候補先すべてで同じ基準日のレートを使うことが重要です。基準日がバラバラだと、為替変動が価格差に混ざります。

5. 検品費用はどの候補にも同じようにかかりますか?
A. 国や工場によって検品体制が異なるため、費用も一律ではありません。自社検品か代行かを含めて、比較表に検品費用の項目を必ず立てて確認します。


※出典:国際商業会議所(ICC)が定めるインコタームズ(Incoterms®)の各建値の定義。価格・関税率・為替レートは取引時点で変動するため、実際の比較では最新の情報を確認してください。2026年9月25日確認。