台湾ではマシニングセンタ、旋盤、研削盤、射出成形機まで幅広い機械が作られていて、日本の工場でも導入の候補に挙がることがあります。それでも、初めて台湾の機械を買うのはカタログで見るより難しい仕事です。同じ機種でも、メーカーから直接買うのか、代理店から買うのかで、その後のサービスがまったく違います。NC装置とそのソフトウェアのオプションは、機械本体とは別の判断になることが多くあります。そして発注側を守る受け入れの試験は、機械が木箱に入る前に、台湾で行う必要があります。
本記事では、日本の製造業の生産技術・設備担当者が、台湾製の工作機械や射出成形機を購入するときの手順を順に整理します。台湾企業の実在確認、原産地証明、日本との協定の有無は台湾からの仕入れ|工場委託と輸出手続きの進め方で扱っていますので、ここでは機械を買うことそのものに絞ります。台湾に部品の加工を委託する場合は台湾 精密加工の委託|図面と検査成績書の決め方をご覧ください。
💬 台湾の工作機械や射出成形機を検討中で、仕様の詰め・立会検査・輸送をまとめて任せたい方へ。 機械ごとに合う購入先を探し、見極め、管理します。アジア各国からの調達をご覧いただき、作りたい部品と条件をお問合せフォームからお送りください。
手順1:誰が機械の面倒を見るかで、買い先を決める
買い先は見積の安さだけでなく、機械が届いた後に誰がサービスをするかで選びます。アラームが出たとき、部品が壊れたときに電話する相手がその会社だからです。
台湾の機械メーカーは、自社で直接輸出することもあれば、国ごとに代理店を置くことも、その両方のこともあります。日本に代理店があるメーカーに問い合わせると、代理店を紹介されることもあれば、メーカーが直接見積を出して据付とサービスは代理店が受け持つこともあります。誰と交渉し、誰が保証を負うかがここで決まるので、早めに聞いておきます。
| 買い先 | 得られるもの | 確認すること |
|---|---|---|
| メーカーから直接 | 技術者と直接やり取りできる。輸送・据付・輸入は自社で手配 | 日本で据付とサービスを誰が行うか。遠隔地からの保証請求をどう扱うか |
| メーカーが指定した日本の代理店 | 国内での据付・サービス・部品在庫、日本語の教育 | その製品系列の正式な代理店か。部品を実際にどれだけ在庫しているか |
| 商社・調達代行 | 複数メーカーの比較、仕様の詰め、検査と輸送の一括手配 | メーカーの保証が使用者である自社に引き継がれるか。サービスの連絡先はどこか |
どの買い先でも、保証の条件を書面で求めてください。何が対象か、いつから数えるのか(出荷日・到着日・検収日)、部品代・作業費・出張費が含まれるのか。あわせて、NC装置とサーボの予備部品を国内のどこで持っているかを聞きます。
手順2:マシニングセンタ・旋盤の仕様は、加工する部品から決める
仕様は、最も大きい部品、最も硬い材料、最も厳しい公差という「やらせたい仕事」から決め、オプションは一つ残らず注文書に書きます。注文請書に載っていないオプションは、届かないオプションです。
まず、代表的な部品か部品群を決めます。図面・材料・年間数量を相手に渡し、それに合う機械とサイクルタイムを提案してもらいます。そのうえで、仕様を1行ずつ固めます。
- ストロークとテーブル:最も大きいワークと治具を合わせた状態での各軸のストローク、テーブルの大きさ、積載質量
- 主軸:テーパと工具の取り付け方式、回転数の範囲、実際に使う回転数での出力とトルク、主軸の中を通すクーラントが要るか
- 工具交換装置:マガジンの本数、最大の工具径・長さ・質量
- 精度と受け入れの基準:幾何精度の検査をどの試験規格で行うかを書きます。ISO 10791-1:2015は横形主軸のマシニングセンタの幾何精度試験、ISO 13041-1:2020は横形主軸のNC旋盤・ターニングセンタの幾何精度試験を定めており、どちらもISOで現行版と確認されています。ほかの構成の機械は、同じシリーズの別のパートが扱います
- 切りくずとクーラント:材料に合ったチップコンベヤの形式、クーラントタンク、必要ならオイルスキマーやミストコレクタ
- 電源:工場の電圧・相数・周波数・接地の方式を書き、変圧器が要るかを聞きます
電源は、日本の工場では特に念を押す項目です。日本の商用電源の周波数は、おおむね東日本が50Hz、西日本が60Hzで、同じ県の中でも分かれる地域があります。周波数が変わると、モーターやポンプの回転数・能力が変わる機器があります。インバーターで駆動する部分は両方に対応することが多いものの、油圧ユニットやクーラントポンプ、チラーなどの付帯機器まで含めて、自社の工場の周波数で作ってもらう前提を注文書に書いてください。自社の受電条件がはっきりしなければ、電力会社や社内の電気主任技術者に確認してから仕様に入れます。
(2026年10月19日時点で、iso.org の ISO 10791-1:2015 と ISO 13041-1:2020 の掲載ページを確認)
手順3:射出成形機は、手持ちの金型に合わせて選ぶ
射出成形機は、それで動かす金型に合わせて選びます。注文の前に、手持ちの金型をすべて、プラテン・タイバー間隔・型厚の範囲と照らし合わせてください。
型締力は最初に見る数字ですが、到着後に問題になるのは、たいてい別のところです。よくあるのは物理的に入らないことです。金型がタイバーの間を通らない、型厚の範囲より厚すぎる・薄すぎる、機械にない突き出しの配置になっている、といったものです。日本で長く使ってきた金型を移す場合は、特に一つずつ確かめます。
| 仕様の項目 | 決めること | なぜ効くか |
|---|---|---|
| 型締力 | 投影面積と材料から、成形技術者と合意した余裕を見て | 低すぎるとバリ、高すぎると電力と場所の無駄 |
| タイバー間隔とプラテンの大きさ | 最も大きい金型が入ること | 載せられない金型は動かせない |
| 型厚の範囲と型開きストローク | 最も薄い型と厚い型、製品の取り出しをカバー | 突き出しと取出ロボットに空間が要る |
| 射出容量とスクリュ | ショット量、スクリュ径、樹脂に合ったスクリュの形 | ガラス入りや熱に弱い樹脂は別のスクリュ・シリンダが要ることがある |
| ロケートリング・ノズル・突き出しの配置 | 手持ちの金型に合わせる | アダプタ板や金型の改造を避けられる |
| 駆動方式 | 油圧・全電動・ハイブリッドを、部品と電気代で比べる | 繰り返し精度、保守、電力需要が変わる |
| インターフェース | ロボット、中子の油圧回路、ホットランナー、温調機の接続 | 周辺機器が機械とつながらないと動かない |
金型の取り付け寸法は、金型図面か金型メーカーの資料から一覧にし、台湾のメーカーにも同じ一覧を送ります。新しく金型を作る場合は、成形機の仕様を金型メーカーにも渡して、両方が同じ前提で設計するようにします。
💬 台湾の複数の機械を比べていて、どの仕様の差が自社の部品に効くのか判断しにくい方へ。 部品図と金型のデータをLINEでお送りいただければ、見積を同じ項目で並べて整理します。
手順4:NC装置とオプションは、機械と同じくらい慎重に選ぶ
NC装置は、作業者がどうプログラムを組むか、保全担当がどう故障を探すか、予備の基板がどれだけ早く届くかを決めます。メーカー・シリーズ・ソフトウェアのオプションを注文書に書きます。
同じ機種でも、複数のメーカーのNC装置から選べることがあり、どれを選ぶかで価格・納期・サービスが変わります。次のことを聞いてください。
- どのメーカーの、どのシリーズが選べるか:自社のプログラマーと保全担当がすでに慣れているのはどれか。既存の機械と同じなら、教育と予備品の負担が軽くなります
- どのソフトウェアのオプションが含まれるか:追加軸、高速加工の機能、マクロ、対話式プログラムなどは、別ライセンスのことがよくあります。注文書に並べ、立会検査で画面上の表示を確かめます
- 言語と資料:画面の表示言語、アラーム一覧、保守マニュアルを日本語で用意できるか。できなければ、英語のどこまでを社内で読めるかを考えて決めます
- 国内のサービスと予備品:NC装置とドライブを日本で誰がサービスし、予備の基板やサーボユニットをどこに置いているか
- バックアップ:パラメータ、ラダー、オプションの設定の完全なバックアップを機械と一緒に渡してもらう。制御装置が壊れたときに元に戻せます
手順5:台湾での立会検査で、自社を守る
木箱に入れる前に、注文時に合意した試験計画に沿ってメーカーの工場で機械を検査し、見つかった不具合が直るまで出荷を認めないようにします。
立会検査(工場出荷前の受け入れ試験、FAT)は、メーカーが安い費用で問題を直せる最後の機会です。試験計画は出荷の1週間前ではなく、注文と一緒に合意します。
| 確認すること | 見るところ | 持ち帰る証拠 |
|---|---|---|
| 仕様 | 注文書のオプションがすべて付いているか、銘板が注文と一致するか | 銘板とNC画面上のオプション一覧の写真 |
| 幾何精度 | 合意したISOの試験規格と許容値で測っているか | 実測値の入った署名付きの試験成績書 |
| テストカット・試し成形 | 自社の部品を、自社の材料・サイクルで | 測定した部品と、プログラムまたは成形条件表 |
| ならし運転 | 合意した時間、アラームなしで連続運転できるか | アラーム履歴の画面 |
| 電気と安全 | 電源が自社の電圧・周波数に設定されているか、カバー・インターロック・非常停止が働くか | 写真と電気図面 |
| 資料 | 取扱説明書、電気図面、パラメータのバックアップ、予備品リスト | 検査の場で受け取った写し |
台湾まで行けない場合は、試験計画を持った代理人に立ち会ってもらうか、少なくとも測定値を画面に映したライブ映像での確認を条件にします。
手順6:輸出・輸送・日本での受け入れを、出荷前に決める
台湾を出る前に、輸出管理の該当判定・梱包・日本での関税の見込みを決め、到着前に据付の準備を済ませます。最後の支払いは到着ではなく、自社工場での検収に結び付けます。
台湾の輸出管理。 機械に台湾の輸出許可が要るかどうかは、戦略性高科技貨品(SHTC)の規制リストの仕様に当たるか、最終用途・最終需要者に懸念があるかで決まり、仕向け地によっては別のルールもあります。工作機械はこうした仕様に近いことがあるため、見積の段階でメーカーに該当・非該当の判定を書面で求めてください。仕組みは台湾 電子機器OEM/ODM|設計の権利と輸出管理で説明しています。
梱包。 各軸を輸送用の金具で固定すること、露出面の防錆、メーカーの指示どおりのクーラントや作動油の抜き取り、防湿の包装、輸入国の規則に合った木材の木箱を求めます。木箱を閉じる前に、中の機械の写真を撮ってもらいます。
日本の関税。 日本と台湾の間には経済連携協定がないため、関税は通常の税率で見込みます。機械の税番と税率は、日本の実行関税率表で確認し、判断に迷う場合は輸入の前に税関の事前教示制度で品目分類を照会すると、文書で回答を受けられます。他国の機械と比べるときは、アジア複数国の見積もりを同条件で比較する方法で、運賃・関税・据付費を足した価格に直してください。
日本での受け入れ。 基礎、電源工事、エア、搬入経路と揚重を、船が出る前に計画します。機械を使うのは自社の事業場ですので、国内の安全に関する法令(労働安全衛生法の関係法令など)に照らして必要な対応がないかも、輸入前に社内の安全担当と確認しておきます。契約では据付と試運転調整を分け、最後の支払いは到着ではなく、台湾で使ったのと同じ試験計画による自社工場での検収に結び付けます。
試作品や小ロットの部品を台湾で作り、その後に量産設備を自社に入れる流れの場合は、台湾で試作・小ロット生産|量産前に固めることもあわせてご覧ください。
よくある質問
1. 台湾の機械はメーカー直と日本の代理店、どちらから買うべきですか?
A. 誰が機械のサービスをするかで決めます。直接買えば技術者と直接やり取りでき、国内の代理店なら据付・予備品・サービスが近くにあるのが普通です。日本ではどの形になるのかを、メーカーに聞いてください。
2. NC装置はどれを選べばよいですか?
A. 自社のプログラマーと保全担当が扱え、国内でサービスと予備品が手に入るものです。メーカー・シリーズ・ライセンスの要るソフトウェアのオプションをすべて注文書に書き、立会検査で画面上で確かめます。
3. 東日本と西日本で、機械の仕様は変わりますか?
A. 周波数が違います。おおむね東日本が50Hz、西日本が60Hzです。モーターやポンプには周波数で回転数や能力が変わるものがあるため、油圧ユニットや付帯機器まで含めて、自社工場の電圧・相数・周波数を注文書に書いてください。
4. 精度の検査はどの規格で行えばよいですか?
A. 注文時にISOの試験規格と許容値を合意します。たとえばマシニングセンタならISO 10791、旋盤ならISO 13041のシリーズです。実測値の入った署名付きの成績書が受け入れの証拠になります。
5. 日本で使っている金型を、新しい台湾製の射出成形機で使えますか?
A. 注文の前に、金型ごとにタイバー間隔、プラテンの大きさ、型厚の範囲、ロケートリング、ノズル、突き出しの配置を照らし合わせてください。型締力だけでは、金型が載るかどうかはわかりません。
まとめ
台湾製の工作機械・射出成形機の購入は、「やらせたい仕事→買い先→仕様とNC装置→試験計画」の順に固め、台湾での立会検査で不具合を直してから出荷し、最後の支払いを自社工場での検収に残すと、到着後のトラブルを大きく減らせます。
規格・輸出管理・関税は改定されることがあります。注文の前に、最新の内容を確認してください。
💬 台湾の機械メーカーの比較から立会検査、日本の工場までの輸送まで、日本語で一貫してサポートします。 作りたい部品と設置する工場の条件をお知らせください。お問合せフォーム・LINEからご相談ください。
※出典:ISO 10791-1:2015・ISO 13041-1:2020(iso.org の掲載ページ、現行版であることを確認)、日本税関「事前教示制度」の案内。2026年10月19日確認。