プロポリスは、ミツバチが植物の樹脂などを集めて巣に使う、やにのような物質です。日本の健康食品の売り場では古くからなじみのある素材です。とくにブラジル産のグリーンプロポリスは、エタノールで抽出したエキスのカプセルや錠剤、液体の商品として長く売られています。
本記事は、プロポリスサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた解説です。研究の現状、機能性表示食品といわゆる健康食品の表示の違い、産地と抽出方法の選び方、アレルギーの注意をまとめます。プロポリスは歴史のある素材ですが、研究の結果は指標によって分かれています。その中身を知っておくと、表示と広告の言葉を選びやすくなります。
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研究で分かっていること
ヒト試験のメタ分析では、炎症や酸化ストレスの一部の指標に変化が見られた一方、変化しなかった指標も多く、試験の多くは持病のある方が対象です。
| 試験/レビュー | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| 系統的レビュー・メタ分析、Frontiers in Nutrition 2025(PMID 40421039) | 27件の無作為化比較試験(29群)、成人1,539人。健康な方の試験は4件で、多くは2型糖尿病などの持病のある方 | CRP、IL-6、TNF-α などの炎症指標が低下し、抗酸化の指標が上昇。IL-10、IL-2、IL-8、MDA、SOD などは差なし。試験ごとのばらつきが大きい |
| 系統的レビュー・メタ分析、Avicenna Journal of Phytomedicine 2021(PMID 34804893) | 6件の無作為化比較試験、417人。2型糖尿病や慢性腎臓病の方を含む | 肝臓の酵素の一つ(AST)が低下。総コレステロール、LDL、HDL、中性脂肪、ALT は差なし |
| 無作為化二重盲検試験、Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine 2021(PMID 33680059) | 日本の高齢者79人(解析は68人)、プロポリスエキス配合食品を24週間 | 認知機能テストの言語記憶がプラセボより有意に改善。副作用はなかった |
2つのメタ分析は、どちらも変化した指標と変化しなかった指標の両方を報告しています。2025年のメタ分析の著者は、試験の設計や量、対象者の違いによって結果にばらつきがあり、さらに質の高い試験が必要だとしています。同じメタ分析は、研究に外部からの資金提供はなかったと記載しています。
日本の高齢者を対象にした2021年の試験は、人数が68人と少なく、評価項目も多数です。著者の一人がプロポリス製品の販売会社から顧問料を受けていることが、論文に記載されています。
(2026年10月12日時点で、各論文の公開抄録を確認)
機能性表示食品として届け出る場合
機能性表示食品は届出者が自らの責任で科学的根拠を消費者庁に届け出る制度で、プロポリスエキスでは、加齢に伴う記憶力などの認知機能の維持に関する表示の届出があります。
機能性表示食品として販売するには、販売前に、機能性の科学的根拠と安全性の情報を消費者庁に届け出ます。表示できるのは届け出た根拠の範囲の内容で、病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。国が審査して許可する制度ではありません。
プロポリスエキスの届出の趣旨は、年齢とともに低下する認知機能のうち、記憶力や注意力、判断力などを維持するというものです。日常の健康な方の機能を表す表示で、病名を挙げた表示ではありません。
2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務になりました。この義務は2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を消費者庁に報告することも届出者の義務です。
- 根拠の取り方:既存の研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか
- 原料の規格:根拠の研究と同じ産地・同じ抽出方法のエキスか
- 分析の方法:製品中の関与成分の量を測る方法と、その結果を保証する体制
プロポリスは産地と抽出方法で成分が大きく変わります。根拠の研究で使われたエキスと、実際に使う原料が同じ規格かを最初に確認します。
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いわゆる健康食品として売る場合の表示
機能性表示食品として届け出ないプロポリスサプリは、体への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | プロポリスサプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 「炎症を抑える」「免疫力を高める」「抗菌作用」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 「最高品質」「No.1」など根拠のない表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1粒にプロポリスエキス〇mg配合」(量の事実) | 「炎症に効く」「のどの痛みに」 |
| 「ブラジル産プロポリスをエタノールで抽出」(原料の事実) | 病名や症状名を挙げた表現 |
| 「ミツバチ由来の原料を使用しています」(アレルギーへの配慮) | 「アレルギーの心配なし」など安全を言い切る表現 |
プロポリスは、海外の研究でも「抗菌」「抗炎症」といった言葉で紹介されることが多い素材です。論文の言葉をそのまま商品の説明に使うと、医薬品的な効果の表示になるおそれがあります。
プロポリスの製剤設計
プロポリスは産地と抽出方法で成分が大きく変わるため、原料の規格を決めることが製品設計の出発点になります。
| 剤形 | 選ばれる理由 | 検討すること |
|---|---|---|
| ソフトカプセル・ハードカプセル | 独特の強い味とにおいを感じにくい | カプセルの素材と、エキスの量 |
| 錠剤 | なじみがあり、1回あたりの費用を抑えやすい | チュアブルにする場合は味 |
| 液体エキス | 昔からある形で、量を調整しやすい | エタノールの量と、その表示 |
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 産地と抽出方法:ブラジル産グリーンプロポリスでは、アルテピリンCという成分が品質管理の目印として使われています。抽出方法も成分に影響します。中国・北京産のプロポリスを使った研究では、エタノールと水の割合によってフェノール類の抽出量が大きく変わりました。75%エタノールで、抽出量と抗酸化の値が最も高くなっています。原料メーカーに産地、抽出の溶媒と割合、成分の分析値を確認します。
- 1日あたりの量:機能性表示食品にするなら、根拠とする研究と同じエキスを同じ量で使います。
- アレルギーへの配慮:プロポリスは、皮膚に触れて起こるアレルギー(接触皮膚炎)の原因として知られています。養蜂家や、プロポリスを含む化粧品などを使った方での報告があります。ニュージーランドの医薬品規制当局は、プロポリスを含む製品の使用者で過敏反応の例があり、アレルギー歴のある方はとくに注意が必要としています。
- アレルゲン表示:食品表示基準で表示が必要な特定原材料と、表示が推奨される特定原材料に準ずるものに、プロポリスは含まれていません。義務ではありませんが、ミツバチ由来の原料であることと、体質に合わない場合は使用を中止する旨の注意書きを、商品ごとに検討します。
- 組み合わせる成分:ローヤルジェリーなどの他のミツバチ由来原料や植物素材と組み合わせることがあります。組み合わせる成分は、一つずつ食品に使えるかを確認します。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
プロポリス自体は日本の健康食品で広く使われていますが、組み合わせる植物素材が問題になることがあります。配合の確認はサプリメントOEMのページで説明しています。アレルゲン表示の考え方はサプリのアレルゲン表示、エイジングケアの別の成分はアスタキサンチンのガイドもご覧ください。
見積もりの前に決めておくこと
産地、抽出方法、1日あたりの量、剤形、包装が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- プロポリスの産地と抽出方法、成分の規格
- 1日あたりの量と、1袋(1本)あたりの日数
- 剤形と、液体の場合はエタノールの量
- アレルギーに関する注意書きの内容
- 組み合わせる成分と、その量
- 機能性表示食品として届け出るかどうか
- 初回の製造数と、年間の見込み数
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よくある質問(FAQ)
プロポリスには、しっかりした研究の根拠がありますか?
2025年のメタ分析では、炎症や酸化ストレスの一部の指標に変化が見られましたが、変化しなかった指標も多く、試験ごとのばらつきも大きい結果でした。試験の多くは持病のある方が対象です。研究の条件と限界を踏まえた言葉を選ぶことが大切です。
なぜブラジル産のプロポリスがよく使われるのですか?
日本の健康食品では、ブラジル産グリーンプロポリスのエキスが長く使われてきました。アルテピリンCという成分が品質管理の目印として研究されており、規格を決めやすいことも理由の一つです。
抽出方法で何が変わりますか?
エタノールと水の割合によって、抽出されるフェノール類の量が大きく変わることが研究で示されています。原料メーカーに抽出の溶媒と割合、成分の分析値を確認してください。
アレルギーの注意書きは必要ですか?
プロポリスは食品表示基準で表示が必要なアレルゲンには含まれていません。一方で、接触皮膚炎の原因として知られており、過敏反応の報告もあります。ミツバチ由来であることを示し、体質に合わない場合の注意を書くことを検討してください。
工場に製造を断られることはありますか?
プロポリス自体ではなく、組み合わせた植物素材が原因になることがあります。配合するすべての成分が食品に使えるかを、最初に確認します。
参考
- “Propolis supplementation on inflammatory and oxidative stress biomarkers in adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials”, Frontiers in Nutrition 2025;12:1542184, PMID 40421039, PMC12104767
- “The effects of propolis supplementation on metabolic parameters: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled clinical trials”, Avicenna Journal of Phytomedicine 2021;11(6):551-565, PMID 34804893
- “Cognitive Improvement and Safety Assessment of a Dietary Supplement Containing Propolis Extract in Elderly Japanese: A Placebo-Controlled, Randomized, Parallel-Group, Double-Blind Human Clinical Study”, Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine 2021:6664217, PMID 33680059
- “Artepillin C, is it a good marker for quality control of Brazilian green propolis?”, Natural Product Research 2017;31(20):2441-2444, PMID 28299979
- “Effect of Ethanol/Water Solvents on Phenolic Profiles and Antioxidant Properties of Beijing Propolis Extracts”, Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine 2015:595393, PMID 26351514
- “Propolis: a review of properties, applications, chemical composition, contact allergy, and other adverse effects”, Dermatitis 2013;24(6):263-282, PMID 24201459
- Medsafe(ニュージーランド医薬品・医療機器安全庁)「Complementary corner: Propolis - reports of hypersensitivity reactions」(2010年9月) https://www.medsafe.govt.nz/profs/PUArticles/ComplementaryCornerPropolisSept10.htm
- 消費者庁「アレルギー表示について」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月12日確認)