腸溶性カプセルは、胃の酸の中では溶けにくく、腸に進んでから中身を出すように作ったカプセルです。乳酸菌など酸に弱い原料を使う商品で検討されることが多く、「腸まで届く」という言葉にひかれて相談に来られる事業者も少なくありません。

本記事は、日本国内で自社ブランドのサプリを販売したい事業者の方に向けた内容です。腸溶性カプセルの仕組み、食品に使える素材と医薬品向けの素材の違い、表示と広告の注意点を整理します。腸溶性カプセルは、素材と言葉の両方で、医薬品との境目に近い剤形です。企画の最初に両方を確認しておくと、試作のやり直しや表示の差し替えを防げます。

💬 腸溶性カプセルを検討中の方へ。素材が食品に使えるかの確認から、日本国内のGMP認証を取得した提携工場での製造までご相談いただけます。詳しくはサプリメントOEMをご覧ください。

腸溶性カプセルの仕組み

腸溶性カプセルは、酸に溶けにくい素材で殻を作るか、通常のカプセルに酸に溶けにくい膜をかけることで、胃では崩れにくくしたものです。

通常のハードカプセルやソフトカプセルは、胃の中で溶け始めるように作られています。腸溶性カプセルは、胃を通るあいだは形を保ち、腸に進んでから崩れることを狙います。作り方は主に次の2つです。

作り方内容検討すること
酸に溶けにくい殻を使う殻の素材そのものに酸に溶けにくい性質を持たせる殻の素材が食品に使えるか
通常のカプセルに膜をかけるできあがったカプセルに、酸に溶けにくい膜をかける膜の素材が食品に使えるか、膜の厚さのばらつき

どちらの作り方でも、胃で崩れにくい性質が本当に出ているかは、試験で確かめる必要があります。崩れ方の試験の条件と合格の基準は、工場と事前に決めておきます。

食品に使える素材は限られる

医薬品の腸溶性製剤で広く使われる素材の中には、日本の食品添加物に指定されていないものがあり、サプリには使えません。

日本で食品に使える添加物は、指定添加物、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物に限られます。腸溶性カプセルで名前の挙がる素材を、食品添加物としての扱いで整理すると次のとおりです。

素材由来食品添加物としての扱い注意すること
シェラックラックカイガラムシの分泌液既存添加物(用途はガムベース・光沢剤)昆虫由来のため、植物性をうたう商品には使えない
ゼイントウモロコシの種子のたんぱく質既存添加物(用途は製造用剤)膜として使う場合の配合と、規格書での確認
HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)植物の繊維指定添加物通常のHPMCカプセルは腸溶ではない。他の多糖類との組み合わせで腸溶性を持たせる研究がある
HPMCのフタル酸エステル・酢酸コハク酸エステルHPMCを化学的に加工したもの指定添加物の一覧(食品衛生法施行規則 別表第1)に名前がない医薬品向けの素材。食品には使えない

医薬品で実績のある素材でも、そのまま食品に使えるとは限りません。工場から腸溶の素材を提案されたら、提案された素材が指定添加物か既存添加物に当たるかを、規格書と公的な一覧で確認してください。使える成分と添加物の考え方は、サプリに使える添加物(賦形剤)の記事でも説明しています。

💬 腸溶の素材が食品に使えるか分からない方へ。素材の規格書を拝見し、食品添加物としての扱いを確認したうえで製造方法をご提案します。お問合せフォーム、またはLINEからご相談ください。

「腸で溶ける」と表示するときの注意

カプセルが溶ける場所を説明すること自体と、体への効果をうたうことは別の問題で、表示や広告の全体が医薬品的な効能効果を示していないかが問われます。

厚生労働省の「医薬品の範囲に関する基準」は、医薬品に当たるかどうかを、成分、形状、効能効果、用法用量、販売方法などから総合的に判断するとしています。容器や包装だけでなく、チラシやインターネットの広告も判断の対象です。

同じ基準は、医薬品的な効能効果の例として、疾病の治療や予防を目的とする表現に加え、「胃腸の消化吸収を増す」「健胃整腸」なども挙げています。「腸溶」という言葉そのものの扱いは、基準には書かれていません。腸溶性カプセルの表示では、言葉の組み合わせ全体で判断されることを前提に考えます。

比較的安全な言い方避けるべき言い方
「胃の酸に溶けにくいカプセルを使用」(素材の性質の説明)「腸まで届いて、おなかの調子を整える」
「乳酸菌〇億個配合」(量の事実)「胃腸の働きを助ける」「消化吸収を高める」
機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内)「腸に効く」など、病名や症状と結びつけた表現

形状についても、基準は、錠剤やカプセルは「食品」である旨が明示されていれば、原則として形状だけでは医薬品と判断しないとしています。用法用量では、「食前」「食後」「食間」など、通常の食品とは考えにくい摂取時期の表現は、医薬品的な用法用量とみなすとしています。医薬品との境目の考え方は、食品と医薬品の境目で詳しく説明しています。

腸溶性カプセルが検討される中身

腸溶性カプセルにするかどうかは、原料メーカーが持つ酸への強さのデータをもとに判断し、「酸に弱そうだから」という理由だけで決めないことが大切です。

腸溶性カプセルが検討されるのは、主に次のような原料です。

  • 菌株によって酸への強さが違う乳酸菌・ビフィズス菌
  • 酸や消化の酵素で分解されやすい、たんぱく質やペプチドの原料

乳酸菌は、菌株ごとに性質が異なり、もともと酸に強い菌株もあります。腸溶性カプセルにすると、殻の素材の確認や崩れ方の試験が増えるため、必要性を原料のデータで確かめてから決めます。乳酸菌の製品設計は、乳酸菌サプリのOEMでも説明しています。

機能性表示食品として届け出る場合は、表示できるのは届け出た科学的根拠の範囲の内容です。腸溶性カプセルを使ったことを理由に、届出の範囲を超える表示はできません。届出の流れは機能性表示食品の届出の記事を参照してください。

見積もり・相談の前に決めておくこと

中身の原料、腸溶にする理由、使いたい素材が決まれば、工場は製造方法と試験の範囲を具体的に提案できます。

  • 中身の原料と、原料メーカーが持つ酸への強さのデータ
  • 腸溶にする理由(酸に弱い、においを抑えたい、など)
  • 作り方の希望(酸に溶けにくい殻か、膜をかけるか)
  • 使いたい素材と、素材の規格書
  • 「植物性」など、パッケージでうたいたい内容
  • 機能性表示食品として届け出るかどうか

ロット・費用・納期は工場ごとに異なります。腸溶性カプセルは、素材の確認と崩れ方の試験が加わるため、通常のカプセルより確認の工程が増えます。工程の数は、作り方と素材が決まった時点で見えてきます。

💬 腸溶性カプセルのサプリを企画中の方はSunshoにご相談ください。素材の確認から表示の言葉選びまで、製造の段取りを一緒に整理します。お問合せフォーム・LINEから。

よくある質問(FAQ)

乳酸菌のサプリは、必ず腸溶性カプセルにすべきですか?

必須ではありません。乳酸菌は菌株ごとに酸への強さが異なり、もともと酸に強い菌株もあります。原料メーカーのデータを見て、腸溶にする必要があるかを判断します。

医薬品で使われている腸溶の素材を、サプリにも使えますか?

使えない素材があります。HPMCのフタル酸エステルや酢酸コハク酸エステルのように、医薬品の添加剤として使われていても、日本の指定添加物の一覧に名前がない素材は食品に使えません。

シェラックで腸溶にしたカプセルは、植物性と言えますか?

言えません。シェラックはラックカイガラムシの分泌液から得られる既存添加物で、昆虫由来です。植物性をうたう商品には、別の素材を検討します。

パッケージに「腸溶性カプセル」と書いてもよいですか?

厚生労働省の基準は、「腸溶」という言葉そのものの扱いを定めていません。素材の性質の説明にとどめ、胃腸の働きや消化吸収への効果をうたう表現と組み合わせないことが大切です。判断は表示と広告の全体で行われます。

腸溶性の性質は、どうやって確かめますか?

製品としては、胃の酸に近い条件で崩れにくく、腸に近い条件で崩れることを試験で確かめます。試験の条件と合格の基準は、作り方と素材に合わせて工場と事前に決めます。

参考

(2026年10月12日確認)