イチョウ葉エキスは、イチョウの葉からとった抽出物です。日本では古くから健康食品に使われ、中高年の記憶力をテーマにした商品が数多く売られています。機能性表示食品として届け出た商品もあり、売り場での認知度が高い素材です。
本記事は、イチョウ葉エキスサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた内容です。研究で分かっていること、機能性表示食品として届け出る場合といわゆる健康食品として売る場合の表示、ギンコール酸の規格と飲み合わせの注意、剤形の決め方を整理します。海外の長期の大規模試験では、はっきりした差は出ていません。その点を知っておくと、表示と広告の言葉選びで失敗しにくくなります。
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研究で分かっていること
高齢者を長期間追った海外の大規模試験と、健康な人の試験をまとめたメタ分析では、イチョウ葉エキスとプラセボの間にはっきりした差はみられていません。
| 試験/レビュー | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| GEM試験、ランダム化二重盲検試験、JAMA 2008(PubMed 19017911、PMC2823569) | 米国の75歳以上の3,069人(認知機能が正常な人と軽度認知障害の人)。イチョウ葉エキス120mgを1日2回、中央値6.1年 | 認知症の発症率はプラセボと差がなかった。有害事象の出方は両群で同程度。米国国立衛生研究所の助成 |
| GEM試験の認知機能の解析、JAMA 2009(PubMed 20040554、PMC2832285) | 同じ試験の72〜96歳の3,069人 | 記憶・注意・言語などの領域で、年あたりの低下の速さにプラセボとの差はなかった |
| GuidAge試験、ランダム化二重盲検試験、Lancet Neurology 2012(PubMed 22959217) | フランスで、もの忘れを訴えて受診した70歳以上の約2,800人。イチョウ葉エキス120mgを1日2回、5年 | アルツハイマー病への移行はプラセボと差がなかった。資金は医薬品企業 |
| メタ分析、Human Psychopharmacology 2012(PubMed 23001963) | 健康な人を対象としたランダム化比較試験(記憶13件、1,132人など) | 記憶・実行機能・注意のいずれも効果の大きさはほぼゼロで、差はなかった |
GEM試験とGuidAge試験は、どちらも1日240mgを数年にわたって飲み続けた試験です。両試験は、病気の発症を防げるかを調べた試験で、日本の機能性表示食品の届出の根拠とは目的が違います。健康な人の短期の試験をまとめたメタ分析でも、記憶への効果ははっきりしませんでした。
2009年のコクランレビュー(PubMed 19160216)は、認知機能の低下がある人を対象にした36件の試験を調べ、結果は一貫しないと結論づけています。一方で、副作用の出方はプラセボと差がなかったとしています。
(2026年10月14日時点で、各論文の公開抄録を確認)
機能性表示食品として届け出る場合
イチョウ葉エキスは、フラボノイド配糖体とテルペンラクトンを機能性関与成分として、中高年の記憶力に関する表示で機能性表示食品に使われています。
届け出られた表示には、加齢によって低下する脳の血流や、認知機能の一部である記憶力の維持に関する趣旨のものがあります。対象者は、記憶力の低下が気になる健康な中高年の方とされ、病気の方、妊産婦、授乳婦は対象外です。表示は届出者が示した原料と量についてのもので、同じイチョウ葉エキスでも、規格や量が違えば同じ表示ができるとは限りません。
機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。
2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務となりました。2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を報告することも届出者の義務です。
イチョウ葉エキスで機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。
- 根拠の取り方:研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか
- 関与成分の量:フラボノイド配糖体とテルペンラクトンの1日あたりの量を、根拠とする研究と合わせる
- 分析の方法:製品中の関与成分とギンコール酸の量を測る方法と、その結果を保証する体制
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ギンコール酸と飲み合わせの注意
イチョウの葉にはアレルギーの原因となるギンコール酸が含まれるため、精製したエキスを使い、血液を固まりにくくする薬との飲み合わせにも配慮します。
関税中央分析所の報告によると、ギンコール酸は微量でも接触皮膚炎やアレルギーを起こすため、健康食品に使うイチョウ葉エキスは精製して取り除く必要があります。同じ報告は、業界団体の日本健康・栄養食品協会が、規格品のギンコール酸を5ppm以下と定めていることを紹介しています。5ppm以下は法律の基準ではなく、業界団体の自主規格です。
厚生労働省の「統合医療」情報発信サイト(eJIM)は、米国の公的機関の情報を翻訳して、次の点を紹介しています。
- 出血のリスクがある人は、出血のリスクを高める可能性があるため注意が必要
- 研究レビューで、抗凝固剤(血液を固まりにくくする薬)など医薬品との相互作用の可能性が示されている
- 生や煎った種子と、加工していない葉は、有害な量の毒性物質を含む可能性がある
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| ギンコール酸の量 | 原料のロットごとに、5ppm以下などの規格に対する分析結果を確認する |
| 原料の形 | 精製したエキスを使い、葉の粉末をそのまま使わない |
| 摂取上の注意 | 医薬品を服用中の方、とくに血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方への注意書きを入れる |
| 対象者 | 妊娠中・授乳中の方や子どもへの注意書きを入れるかを検討する |
機能性表示食品として届け出られた商品にも、血液を固まりにくくする薬を服用している方への注意を書いた例があります。いわゆる健康食品として売る場合も、同じ配慮をしておくと安心です。
いわゆる健康食品として売る場合の表示
届出をしないイチョウ葉エキスサプリは、記憶や脳への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、原料と量の事実を中心に伝えます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | イチョウ葉エキスサプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 食品なのに「物忘れを防ぐ」「血流を良くする」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 根拠のない「ドイツで医薬品として使われているから効く」「医師も推薦」などの表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1日分にイチョウ葉エキス〇mg配合」(量の事実) | 「認知症を防ぐ」「もの忘れが治る」 |
| 「ギンコール酸5ppm以下の規格のエキスを使用」(原料の事実) | 「海外では医薬品」と、効果の裏付けのように書く表現 |
| 機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内) | 病名や症状名を挙げた表現 |
イチョウ葉エキスの製剤設計
イチョウ葉エキスは1日あたりの量が少なく、ソフトカプセル・錠剤・ハードカプセルのいずれにも使えます。原料の規格を最初に確認します。
| 剤形 | 選ばれる理由 | 検討すること |
|---|---|---|
| ソフトカプセル | 油に溶かしたDHA・EPAなどと一緒に包める | カプセルの皮の素材(ゼラチンの由来など)と粒の大きさ |
| 錠剤 | 小さく作りやすく、1回あたりの費用を抑えやすい | 崩れ方(崩壊性)と、エキス特有の苦みのコーティング |
| ハードカプセル | 味がなく、他の粉末の成分と組み合わせやすい | 吸湿と、配合量に合う号数 |
国民生活センターが2019年に公表した調査では、錠剤・カプセル状の健康食品100銘柄のうち42銘柄が、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しませんでした。錠剤にする場合は、崩壊性を確かめる試験を工場と決めておくと安心です。
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 原料の規格:フラボノイド配糖体とテルペンラクトンの含有率、ギンコール酸の上限を規格書で確認します。ロットごとの分析結果も求めます。
- 1日あたりの量:機能性表示食品にするなら、根拠とする研究の量に合わせます。いわゆる健康食品でも、量の根拠を説明できるようにします。
- 組み合わせる成分:DHA・EPAやホスファチジルセリンと組み合わせる配合があります。植物素材を加える場合は、食品に使えるかどうかの確認が欠かせません。
- 摂取上の注意と包装:飲み合わせの注意書きを表示の段階で決めます。吸湿しやすい配合では、アルミ包装やボトルの乾燥剤を検討します。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
イチョウ(種子・葉)は、2026年8月5日更新の「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に例示されています。食品に使える原料ですが、医薬品的な効果をうたえば医薬品と判断されるおそれがあります。
脳や集中をテーマにした配合では、組み合わせる植物素材が問題になることもあります。配合の確認はサプリメントOEMのページで詳しく説明しています。組み合わせの候補はホスファチジルセリンサプリのOEMとDHA・EPAサプリのOEM、制度は食品と医薬品の区分の記事も参考になります。
見積もりの前に決めておくこと
原料の規格、1日あたりの量、剤形、摂取上の注意が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- イチョウ葉エキスの規格(フラボノイド配糖体・テルペンラクトンの含有率、ギンコール酸の上限)
- 1日あたりの量と粒数、1袋(1本)あたりの日数
- 剤形と、カプセルの皮の素材
- 組み合わせる成分と、その量
- 摂取上の注意の文言と包装の形
- 機能性表示食品として届け出るかどうか
- 初回の製造数と、年間の見込み数
原料の規格によって、費用や分析の項目が変わります。配合が固まっていない段階でも、ご相談いただけます。
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よくある質問(FAQ)
イチョウ葉エキスの記憶への効果は、研究で確かめられていますか?
海外の大規模な試験では、はっきりした差は出ていません。米国の75歳以上の3,069人を約6年追ったGEM試験では、認知症の発症にも認知機能の低下の速さにもプラセボとの差はありませんでした。健康な人の試験をまとめたメタ分析でも、記憶への効果はほぼゼロでした。
それでも機能性表示食品があるのはなぜですか?
機能性表示食品は、届出者が自らの責任で科学的根拠を示して届け出る制度です。イチョウ葉エキスは、中高年の記憶力の維持などに関する表示で届け出られています。届出は消費者庁の審査や許可ではない点に注意が必要です。
ギンコール酸とは何ですか?
イチョウの葉に含まれる成分で、微量でもアレルギーや接触皮膚炎を起こすとされています。業界団体の自主規格では5ppm以下と定められています。原料のロットごとに分析結果を確認します。
医薬品を飲んでいる人への注意書きは必要ですか?
厚生労働省のeJIMは、抗凝固剤など医薬品との相互作用の可能性を紹介しています。医薬品を服用中の方、とくに血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方への注意書きを入れることをおすすめします。
イチョウ葉エキスは食品に使えますか?
イチョウ(種子・葉)は、厚生労働省の「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に例示されています。食品に使えますが、医薬品的な効果をうたうと医薬品と判断されるおそれがあります。
参考
- “Ginkgo biloba for prevention of dementia: a randomized controlled trial”, JAMA 2008, PubMed 19017911, PMC2823569
- “Ginkgo biloba for preventing cognitive decline in older adults: a randomized trial”, JAMA 2009, PubMed 20040554, PMC2832285
- “Long-term use of standardised Ginkgo biloba extract for the prevention of Alzheimer’s disease (GuidAge): a randomised placebo-controlled trial”, Lancet Neurology 2012, PubMed 22959217
- “Is Ginkgo biloba a cognitive enhancer in healthy individuals? A meta-analysis”, Human Psychopharmacology 2012, PubMed 23001963
- “Ginkgo biloba for cognitive impairment and dementia”, Cochrane Database of Systematic Reviews 2009, PubMed 19160216
- 関税中央分析所報 第60号「GC-MS を用いたギンコール酸の定性分析」 https://www.customs.go.jp/ccl_search/info_search/foodstuffs/r_60_04_j.pdf
- 厚生労働省 eJIM「イチョウ[ハーブ - 医療者]」 https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c04/25.html
- 厚生労働省「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734639.pdf
- 国民生活センター「錠剤・カプセル状の健康食品の品質等に関する実態調査」(令和元年8月1日) https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20190801_1.pdf
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月14日確認)