ホスファチジルセリン(PS)は、脳の神経細胞の膜に多く含まれるリン脂質の一つです。日本では、中高年の記憶力をテーマにしたサプリに使われ、機能性表示食品として届け出た商品もあります。イチョウ葉エキスやDHA・EPAと組み合わせた商品も見かけます。

本記事は、ホスファチジルセリンサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた内容です。研究で分かっていること、機能性表示食品として届け出る場合といわゆる健康食品として売る場合の表示、大豆のアレルゲン表示、剤形の決め方を整理します。初期の研究で使われた原料と、今の商品に使われる原料は別のものです。その点を知っておくと、表示と広告の言葉選びで失敗しにくくなります。

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研究で分かっていること

初期の良い結果は牛の脳からとった原料によるもので、今の主流の大豆由来の原料では、試験の結果が分かれています。

試験対象結果
プラセボ対照試験、Neurology 1991(PubMed 2027477)年齢に伴う記憶力の低下の基準に当てはまる149人。牛の脳由来のPS 100mgを1日3回、12週間日常の学習・記憶の課題で、プラセボより成績が上がった。もともと成績の低い人ほど反応しやすい傾向
ランダム化比較試験、Nutritional Neuroscience 2001(PubMed 11842880)年齢に伴う記憶力の低下の基準に当てはまる57歳超の120人。大豆由来のPS 1日300mgまたは600mg、12週間記憶・反応時間・注意など、どの項目にもプラセボとの差はなかった
ランダム化二重盲検試験、Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition 2010(PubMed 21103034、PMC2966935)もの忘れを自覚する日本の50〜69歳の78人。大豆由来のPS 1日100mgまたは300mg、6か月検査の点数はプラセボ群を含む全群で上がった。もともと点数の低い人に限ると、PS群で言葉を遅れて思い出す課題の点数が上がった。副作用はみられなかった。試験は原料企業の研究者らによる

牛の脳由来のPSは、BSE(牛海綿状脳症)のリスクから使われなくなりました。2010年の論文によると、牛の脳1頭分からとれるPSは約3gと少なく、大豆レシチンから酵素で作る大豆由来のPSが開発されました。大豆由来のPSは、結合している脂肪酸が牛の脳由来のものと大きく違います。

大豆由来のPSの試験は、ここで挙げた2件とも数十人から百数十人の規模です。日本の試験で差が出たのは、全体ではなく点数の低い人に絞った解析でした。著者らは、プラセボ群の点数も上がったことについて、プラセボに使った大豆レシチンの成分が影響した可能性を挙げています。

(2026年10月14日時点で、各論文の公開抄録と公開本文を確認)

機能性表示食品として届け出る場合

大豆由来のホスファチジルセリンは、記憶力が低下した健康な中高年の、言葉を思い出す力の維持といった趣旨の表示で、機能性表示食品に使われています。

届出の表示は、届出者が示した原料と量についてのものです。PSで届け出る場合も、自社の原料と量で科学的根拠を示す必要があります。イチョウ葉エキスなど、ほかの関与成分と組み合わせて届け出た商品もあります。

機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。

2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務となりました。2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を報告することも届出者の義務です。

ホスファチジルセリンで機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。

  • 根拠の取り方:研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか
  • 関与成分の量:PSの1日あたりの量を、根拠とする研究と合わせる
  • 分析の方法:製品中のPSの量を測る方法と、その結果を保証する体制

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いわゆる健康食品として売る場合の表示

届出をしないホスファチジルセリンサプリは、記憶や脳への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、原料と量の事実を中心に伝えます。

健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。

法律かかわる規定ホスファチジルセリンサプリで注意すること
医薬品医療機器等法(薬機法)承認前の医薬品の広告の禁止(第68条)食品なのに「物忘れを防ぐ」「記憶力が回復する」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある
健康増進法誇大表示の禁止(第65条)健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない
景品表示法優良誤認表示の禁止根拠のない「臨床試験で実証」「医師も推薦」などの表示

消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。

比較的安全な言い方避けるべき言い方
「1日分にホスファチジルセリン〇mg配合」(量の事実)「認知症を防ぐ」「もの忘れが治る」
「大豆由来のホスファチジルセリンを使用」(原料の事実)牛の脳由来のPSの研究結果を、今の原料の根拠のように書く表現
機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内)病名や症状名を挙げた表現

大豆のアレルゲン表示

大豆由来のPSは大豆レシチンから作られるため、大豆のアレルゲン表示をどうするかを最初に決めます。

消費者庁の食物アレルギー表示のハンドブックでは、大豆は「特定原材料に準ずるもの」の20品目に入っており、表示が推奨されています。ソフトカプセルの皮に使うゼラチンも、同じ20品目の一つです。

確認すること内容
原料の由来PS原料が大豆由来であることを規格書で確認する
大豆の表示推奨品目の大豆を表示するかを決める
カプセルの皮ゼラチンを使う場合は、ゼラチンの表示も検討する
ほかの原材料組み合わせる成分に、えび・かになど表示義務のある原料が含まれないかを確認する

ホスファチジルセリンの製剤設計

ホスファチジルセリンは1日あたり100mg前後から数百mgで試験されており、カプセルや錠剤に使われます。原料のPS含有率を最初に確認します。

剤形選ばれる理由検討すること
ソフトカプセルDHA・EPAなどの油と一緒に包める。日本の試験でも使われた形カプセルの皮の素材と粒の大きさ
ハードカプセル粉末の原料をそのまま詰められ、ほかの粉末と組み合わせやすい吸湿と、配合量に合う号数
錠剤1回あたりの費用を抑えやすい配合量が多い場合の粒の大きさと崩れ方(崩壊性)

国民生活センターが2019年に公表した調査では、錠剤・カプセル状の健康食品100銘柄のうち42銘柄が、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しませんでした。錠剤にする場合は、崩壊性を確かめる試験を工場と決めておくと安心です。

仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。

  1. 原料の由来と含有率:大豆由来であることと、原料に含まれるPSの割合を規格書で確認します。1日あたりのPSの量は、含有率から逆算して決めます。
  2. 1日あたりの量:機能性表示食品にするなら、根拠とする研究の量に合わせます。研究によって100mg、300mg、600mgと量が違います。
  3. 組み合わせる成分:イチョウ葉エキスやDHA・EPAと組み合わせる配合があります。植物素材を加える場合は、食品に使えるかどうかの確認が欠かせません。
  4. 保管と包装:日本の試験では、試験品を毎月届けて家庭で冷蔵保管してもらっていました。量産品の保管条件と賞味期限は、工場と安定性の試験で確かめます。

最初に確認すること:食品に使える成分か

日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。

厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。

ホスファチジルセリンは、2026年8月5日更新の「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に例示されています。食品に使える原料ですが、医薬品的な効果をうたえば医薬品と判断されるおそれがあります。

脳や集中をテーマにした配合では、組み合わせる植物素材が問題になることもあります。配合の確認はサプリメントOEMのページで詳しく説明しています。組み合わせの候補はイチョウ葉エキスサプリのOEMとDHA・EPAサプリのOEM、表示はサプリのアレルゲン表示の記事も参考になります。

見積もりの前に決めておくこと

原料の規格、1日あたりの量、剤形、アレルゲン表示が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。

  • PS原料の由来と含有率
  • 1日あたりのPSの量と粒数、1袋(1本)あたりの日数
  • 剤形と、カプセルの皮の素材
  • 組み合わせる成分と、その量
  • 大豆・ゼラチンの表示と包装の形
  • 機能性表示食品として届け出るかどうか
  • 初回の製造数と、年間の見込み数

PSの量が多いほど、粒数や粒の大きさが変わります。配合が固まっていない段階でも、ご相談いただけます。

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よくある質問(FAQ)

ホスファチジルセリンの記憶への効果は、研究で確かめられていますか?

大豆由来のPSの試験は少なく、結果が分かれています。日本の78人の試験では、もともと点数の低い人に限ると言葉を思い出す課題の点数が上がりました。一方、オランダの120人の試験では、どの項目にもプラセボとの差はありませんでした。

昔の研究と今の原料は同じですか?

違います。初期の臨床試験は牛の脳からとったPSを使っていましたが、BSEのリスクから使われなくなりました。今は大豆レシチンから酵素で作るPSが主流で、結合している脂肪酸が大きく違います。

機能性表示食品ではどんな表示がされていますか?

記憶力が低下した健康な中高年の、言葉を思い出す力の維持といった趣旨の表示があります。届出の表示は届出者が示した原料と量についてのもので、届出は消費者庁の審査や許可ではありません。

大豆のアレルゲン表示は必要ですか?

大豆は、表示が推奨される「特定原材料に準ずるもの」の20品目の一つです。大豆レシチンから作るPS原料を使う場合は、大豆の表示をどうするかを工場と決めます。

ホスファチジルセリンは食品に使えますか?

ホスファチジルセリンは、厚生労働省の「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に例示されています。食品に使えますが、医薬品的な効果をうたうと医薬品と判断されるおそれがあります。

参考

(2026年10月14日確認)