クリルオイルは、南極海などにすむオキアミ(クリル)からとった油です。魚油と同じくDHA・EPAを含み、その多くがリン脂質という形で含まれている点が特徴です。赤い色のもとになるアスタキサンチンも含むため、魚油とは違う素材として商品化されています。

本記事は、クリルオイルサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた内容です。研究で分かっていること、機能性表示食品として届け出る場合といわゆる健康食品として売る場合の表示、オキアミのアレルゲン表示、ソフトカプセルの決め方を整理します。「魚油より吸収が良い」という説明はよく見かけますが、試験の結果は分かれています。その点を知っておくと、表示と広告の言葉選びで失敗しにくくなります。

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研究で分かっていること

クリルオイルが魚油より吸収されやすいかは試験によって結果が分かれ、脳の働きに関する試験も小規模で、結果は一貫していません。

試験対象結果
ランダム化単盲検クロスオーバー試験、Lipids in Health and Disease 2015(PubMed 25884846、PMC4374210)健康な15人。DHA・EPA約1,700mgを含むクリルオイル、オキアミ粉末、魚油を1回ずつ比較72時間の血中への取り込みは、クリルオイルが魚油より多かった。オキアミ粉末と魚油には差がなく、著者は「リン脂質の形だから吸収が良い」という説明には否定的。試験は原料企業がスポンサー
二重盲検クロスオーバー試験、Lipids in Health and Disease 2011(PubMed 21854650、PMC3168413)健康な若い男性12人。DHA・EPA 1,680mgをクリルオイルと2種類の魚油で1回ずつ比較平均値はクリルオイルが最も高かったが、個人差が大きく、統計的な差はなかった。クリルオイルには遊離の脂肪酸が多く含まれていた
ランダム化二重盲検試験、Clinical Interventions in Aging 2013(PubMed 24098072、PMC3789637)日本の研究グループによる試験。61〜72歳の健康な男性45人。クリルオイル、イワシ油、対照の油(中鎖脂肪酸)を12週間記憶や計算の課題中の脳の血流や脳波の指標で、クリルオイル群に対照群との差がみられた。測ったのは脳の活動の指標。試験は原料企業の資金
ランダム化二重盲検試験、Nutrients 2019(PubMed 31151199、PMC6628105)オメガ3指数が低いオランダの思春期の若者267人。クリルオイル(DHA・EPA 1日400mgまたは800mg)またはプラセボを1年認知機能の検査に差はなかった。飲み忘れが多く、血中の値の上がり方は小さかった。資金の一部は原料企業

吸収の試験は、1回飲んだ後の血中の値を比べたもので、体への効果を調べたものではありません。脳の働きの試験は、日本の研究グループの試験が45人と小規模で、測ったのは脳の活動の指標です。思春期の若者を対象にした1年間の試験では、差は出ていません。

(2026年10月12日時点で、各論文の公開抄録と公開本文を確認)

機能性表示食品として届け出る場合

DHA・EPAは、中高年の加齢に伴い低下する、認知機能の一部である記憶力の維持といった趣旨の表示で、機能性表示食品に使われている成分です。

届出の表示は、届出者が示した原料と量についてのものです。クリルオイルのDHA・EPAで届け出る場合も、自社の原料と量で科学的根拠を示す必要があります。魚油の研究の結果を、そのままクリルオイルの根拠にできるとは限りません。

機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。

2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務となりました。2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を報告することも届出者の義務です。

クリルオイルで機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。

  • 根拠の取り方:研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか
  • 関与成分の量:DHA・EPAの1日あたりの量を、根拠とする研究と合わせる
  • 分析の方法:製品中のDHA・EPAの量を測る方法と、その結果を保証する体制

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オキアミのアレルゲン表示

オキアミは、表示義務のある特定原材料「えび」の範囲には含まれませんが、甲殻類のたんぱく質が残る可能性を踏まえて表示を設計します。

消費者庁の食物アレルギー表示のハンドブックでは、「えび」の範囲は十脚目のえび類とされています。しゃこ類、あみ類、おきあみ類は「その他の甲殻類」に分類されるため、えびの表示義務の対象外です。

一方で、市販のクリルオイル製品から、甲殻類の主なアレルゲンとされるトロポミオシンと考えられるたんぱく質が検出されたという報告(Food Chemistry 2013)があります。甲殻類にアレルギーのある方が判断しやすいよう、原材料名でオキアミ由来と分かるようにし、注意書きを入れるかを工場と検討します。

確認すること内容
表示義務の有無オキアミは特定原材料「えび」「かに」の範囲外
原材料名オキアミ由来の油であることが分かる名称にする
任意の注意書き甲殻類にアレルギーのある方への注意書きを入れるかを検討する
ほかの原材料えびやかにを含む原料(グルコサミンなど)を組み合わせる場合は、その原料の表示が必要

いわゆる健康食品として売る場合の表示

届出をしないクリルオイルサプリは、脳や体への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、成分の事実を中心に伝えます。

健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。

法律かかわる規定クリルオイルサプリで注意すること
医薬品医療機器等法(薬機法)承認前の医薬品の広告の禁止(第68条)食品なのに「物忘れを防ぐ」「頭が良くなる」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある
健康増進法誇大表示の禁止(第65条)健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない
景品表示法優良誤認表示の禁止根拠のない「魚油の〇倍吸収」「医師も推薦」などの表示

消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。

比較的安全な言い方避けるべき言い方
「1日分にDHA・EPA〇mg配合」(量の事実)「認知症を防ぐ」「記憶力が回復」
「リン脂質型のDHA・EPAを含むクリルオイル」(成分の事実)「魚油より吸収が良い」と確定した事実のように書く表現
機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内)病名や症状名を挙げた表現

クリルオイルの製剤設計

クリルオイルは酸化しやすい油のため、空気に触れにくいソフトカプセルが中心です。アスタキサンチンの量と原料の規格を最初に確認します。

剤形選ばれる理由検討すること
ソフトカプセル油をそのまま包め、空気に触れにくく、においも抑えやすいカプセルの皮の素材(ゼラチンの由来など)と粒の大きさ
シームレスカプセル小さな粒にしやすい1日に必要な粒数

仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。

  1. DHA・EPAの含有量:原料1gあたりのDHA・EPAの量と、リン脂質の割合を規格書で確認します。1日あたりの量は、粒数と合わせて決めます。
  2. アスタキサンチンの量と色:クリルオイルには天然のアスタキサンチンが含まれますが、量は原料によって違います。保管中にアスタキサンチンが分解して色があせることが品質上の課題とされており、数値を表示するなら賞味期限までの分析結果で確認します。
  3. アレルゲン表示:オキアミの原材料名と、任意の注意書きの有無を決めます。
  4. 酸化とにおい:酸化を防ぐ成分の配合、アルミ包装やボトルの選び方、保管条件を工場と確認します。
  5. 組み合わせる成分:アスタキサンチンや魚油と組み合わせる配合があります。植物素材を加える場合は、食品に使えるかどうかの確認が欠かせません。

最初に確認すること:食品に使える成分か

日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。

厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。

クリルオイル自体は食品の原料ですが、脳や集中をテーマにした配合では、組み合わせる植物素材が問題になることがあります。配合の確認はサプリメントOEMのページで詳しく説明しています。魚油との比較はDHA・EPAサプリのOEM、表示はサプリのアレルゲン表示、組み合わせの候補はアスタキサンチンサプリのOEMの記事も参考になります。

見積もりの前に決めておくこと

原料の規格、1日あたりの量、カプセル、アレルゲン表示が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。

  • クリルオイルの規格(DHA・EPAの含有量、リン脂質の割合)
  • アスタキサンチンの量を表示するかどうか
  • 1日あたりの量と粒数、1袋(1本)あたりの日数
  • カプセルの皮の素材と包装の形
  • オキアミの表示と、任意の注意書きの有無
  • 機能性表示食品として届け出るかどうか
  • 初回の製造数と、年間の見込み数

魚油とクリルオイルのどちらにするかで、原料の費用やカプセルの粒数が変わります。配合が固まっていない段階でも、ご相談いただけます。

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よくある質問(FAQ)

クリルオイルは魚油より吸収が良いのですか?

試験によって結果が分かれています。2015年の試験ではクリルオイルの取り込みが多く、2011年の試験では統計的な差はありませんでした。どちらも1回飲んだ後の少人数の試験のため、「吸収が良い」と確定した事実のように書くのは避けます。

オキアミは、えびのアレルゲン表示が必要ですか?

消費者庁の資料では、おきあみ類は特定原材料「えび」の範囲外です。ただし、クリルオイル製品から甲殻類のアレルゲンと考えられるたんぱく質が検出された報告もあります。原材料名でオキアミ由来と分かるようにし、注意書きの有無を工場と検討します。

クリルオイルの脳への効果は、研究で確かめられていますか?

日本の研究グループによる、健康な高齢男性45人の試験で、脳の活動の指標に差がみられた報告があります。一方、思春期の若者267人を1年間調べた試験では、認知機能の検査に差はありませんでした。研究の条件と限界を踏まえた言葉選びが大切です。

クリルオイルにはアスタキサンチンが入っていますか?

天然のアスタキサンチンが含まれ、油が赤い色をしているのはそのためです。量は原料によって違うため、数値を表示する場合は分析結果で確認します。

魚油の機能性表示食品と同じ表示ができますか?

届出の表示は、届出者が示した原料と量についてのものです。クリルオイルで届け出る場合も、自社の原料と量で科学的根拠を示す必要があります。

参考

  • “Bioavailability of fatty acids from krill oil, krill meal and fish oil in healthy subjects—a randomized, single-dose, cross-over trial”, Lipids in Health and Disease 2015, PubMed 25884846, PMC4374210
  • “Incorporation of EPA and DHA into plasma phospholipids in response to different omega-3 fatty acid formulations—a comparative bioavailability study of fish oil vs. krill oil”, Lipids in Health and Disease 2011, PubMed 21854650, PMC3168413
  • “Effects of krill oil containing n-3 polyunsaturated fatty acids in phospholipid form on human brain function: a randomized controlled trial in healthy elderly volunteers”, Clinical Interventions in Aging 2013, PubMed 24098072, PMC3789637
  • “Effect of 1 Year Krill Oil Supplementation on Cognitive Achievement of Dutch Adolescents: A Double-Blind Randomized Controlled Trial”, Nutrients 2019, PubMed 31151199, PMC6628105
  • “The discoloration mechanism of Antarctic krill oil based on the model systems: Astaxanthin fading mediated by phospholipid reverse micelle interfaces”, Food Chemistry 2026, PubMed 42767033, doi 10.1016/j.foodchem.2026.151217
  • “Detection of tropomyosin and determination of proteins in crustacean oils”, Food Chemistry 2013, PubMed 23768329, doi 10.1016/j.foodchem.2013.02.125
  • 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」(食物アレルギー表示に関するハンドブック) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
  • 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
  • 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)

(2026年10月12日確認)