ラクトフェリンは、牛乳や母乳に含まれるたんぱく質の一種です。日本では乳業メーカーを中心に研究と製造が進み、サプリだけでなく、育児用ミルクなどの食品にも使われています。機能性表示食品として、内臓脂肪や免疫の働きに関する表示をした商品もあります。
本記事では、ラクトフェリンサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けて、研究で分かっていること、機能性表示食品として届け出る場合といわゆる健康食品として売る場合の表示の違い、乳のアレルゲン表示、剤形の決め方を整理します。ラクトフェリンは熱に弱いたんぱく質で、研究には腸溶加工した錠剤を使ったものもあります。根拠にする研究と同じ形で作れるかどうかが、製剤設計の出発点になります。
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研究で分かっていること
日本の臨床試験では、腸溶加工したラクトフェリンで内臓脂肪の面積が減った報告や、健康な人の日常の体調の点数が良かった報告がありますが、どちらも企業がかかわった規模の小さめの試験です。
| 試験 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| 二重盲検プラセボ対照試験、British Journal of Nutrition 2010(PMID 20691130) | 腹部肥満のある22〜60歳の日本人26人。腸溶加工したラクトフェリン錠(1日300mg)を8週間 | 内臓脂肪の面積がプラセボ群(−1.8cm²)より大きく減った(−14.6cm²)。体重・BMI・ヒップ周囲もプラセボより大きく減った |
| ランダム化二重盲検プラセボ対照試験、Nutrients 2023(PMID 37764743、PMC10537451) | 18〜65歳の健康な成人157人を割り付け、解析は145人。ラクトフェリン1日200mgの錠剤を12週間 | 呼吸器と全身の症状の合計点数がプラセボ群より低かった。免疫にかかわる細胞(形質細胞様樹状細胞)の活性の指標が高かった。副作用はなかった |
研究の限界も知っておく必要があります。2010年の試験は26人・8週間と小さく、筆頭著者は日本の企業の研究開発本部の所属です。2023年の試験は、研究費と試験食品を乳業メーカーが提供し、著者9人のうち5人がその会社の社員でした。
2つの試験は、測ったものも使った形も違います。2010年の試験は腸溶錠でしたが、2023年の試験は、錠剤を数十秒なめてから飲み込む方法でした。「ラクトフェリンなら同じ結果になる」とは言えず、根拠にする試験の量と形に合わせることが大切です。
(2026年10月12日時点で、各論文の公開抄録と、公開されている本文を確認)
機能性表示食品として届け出る場合
ラクトフェリンは機能性表示食品の関与成分として使われており、内臓脂肪やBMI、健康な人の免疫機能の維持などに関する趣旨の届出があります。
機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。ラクトフェリンでは、「肥満気味な方の内臓脂肪を減らすのを助け、高めのBMIの改善に役立つ」趣旨や、「健康な人の免疫機能の維持に役立つ」趣旨の届出が見られます。
届出の表示は、その届出の根拠と、1日あたりの量、対象者に結びついています。同じラクトフェリンでも、量や形が違えば同じ表示はできません。
2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMPに基づく製造管理が届出者の義務となり、2026年9月1日に完全施行されています。届け出るときに決めることは、主に次の3つです。
- 根拠の取り方:既存の研究を集めた研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか
- 関与成分の量と形:根拠とする研究の1日あたりの量と、腸溶加工の有無を合わせる
- 分析の方法:製品中のラクトフェリンの量を測る方法と、保存中に量が保たれることの確認
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いわゆる健康食品として売る場合の表示
機能性表示食品として届け出ないラクトフェリンサプリは、免疫や脂肪への効果をうたうと医薬品とみなされたり誇大表示になったりするおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | ラクトフェリンサプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 「風邪をひかない」「感染症を防ぐ」「脂肪を燃やす」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 根拠のない「医師も推薦」「No.1」などの表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。2026年9月に公表されたインターネット上の監視結果では、いわゆる健康食品の「免疫力向上」「脂肪燃焼」といった表示が、健康増進法に違反するおそれがあるとして改善指導の対象になりました。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1日3粒にラクトフェリン〇mg」(量の事実) | 「免疫力アップ」「風邪予防」 |
| 「牛乳由来のたんぱく質」(素材の事実) | 「内臓脂肪が落ちる」「やせる」 |
| 機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内) | 研究の量・形・資金提供を示さない「臨床で実証済み」 |
ラクトフェリンの製剤設計
ラクトフェリンは熱に弱いたんぱく質のため、根拠にする研究に合わせた腸溶加工の要否と、製造工程で熱をかけすぎないことが仕様の中心になります。
| 剤形 | 選ばれる理由 | 検討すること |
|---|---|---|
| 腸溶錠 | 胃で溶けにくく、腸で溶けるように設計できる | コーティングの均一さと、溶け方の試験 |
| 腸溶カプセル | 味やにおいがなく、粉末を詰めやすい | カプセルの素材と、溶け方の試験 |
| 錠剤・チュアブル錠(腸溶なし) | 工程が少なく、なめる・かむ形にもできる | 根拠にする研究が腸溶でないことを確認 |
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 原料の由来と純度:食品に使われるラクトフェリンは、主に牛乳から作られます。原料メーカーに製法、純度、規格書を確認します。
- 1日あたりの量:研究では1日200mgや300mgが使われています。機能性表示食品にするなら、根拠とする研究の量に合わせます。
- 腸溶加工の有無:根拠とする研究が腸溶錠なら腸溶に、なめる錠剤ならその形に合わせます。
- 熱と保存:打錠やコーティングの工程で熱をかけすぎない条件と、保存中の量の変化を確認します。
- 組み合わせる成分:乳酸菌やビタミンと組み合わせる配合がよくあります。組み合わせる成分ごとに、食品に使えるかの確認が必要です。
乳のアレルゲン表示
ラクトフェリンは牛乳由来のたんぱく質のため、乳のアレルゲン表示が必要です。食品表示基準では、乳は表示が義務の特定原材料の一つで、原材料名の後に「(乳成分を含む)」のように表示します。添加物に表示する場合は「(乳由来)」と書きます。
原料が食品素材として扱われるか、添加物として扱われるかで書き方が変わります。原料メーカーの規格書で扱いを確認し、表示の案を工場と一緒に確かめてください。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
牛乳由来のラクトフェリンは食品として広く使われていますが、エイジングケアをテーマにした配合では、組み合わせる植物素材が問題になることがあります。配合の確認はサプリメントOEMのページで説明しています。剤形は腸溶カプセルの製造ガイド、表示はアレルゲン表示のガイド、組み合わせる成分は乳酸菌のガイドもご覧ください。
見積もりの前に決めておくこと
原料、1日あたりの量、腸溶加工の有無、包装が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- ラクトフェリンの原料と純度、1日あたりの量
- 腸溶加工の有無と、剤形
- 組み合わせる成分と、その量
- 乳のアレルゲン表示の案
- 包装の形と、1袋(1本)あたりの日数
- 機能性表示食品として届け出るかどうか
- 初回の製造数と、年間の見込み数
腸溶加工をするかどうかで、工程の数と試験の内容が変わります。根拠にする研究を先に決めておくと、仕様の話が早く進みます。
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よくある質問(FAQ)
ラクトフェリンで内臓脂肪が減ると言えますか?
2010年の日本の試験では、腸溶加工したラクトフェリンを1日300mg、8週間とった26人で、内臓脂肪の面積がプラセボより大きく減りました。ただし小規模な試験で、いわゆる健康食品で「やせる」「脂肪が落ちる」とうたうことはできません。
免疫について表示できますか?
機能性表示食品として、健康な人の免疫機能の維持に関する根拠を届け出れば、その範囲で表示できます。いわゆる健康食品で「免疫力アップ」とうたうと、誇大表示などとみなされるおそれがあります。
腸溶加工は必ず必要ですか?
根拠にする研究によります。内臓脂肪の試験は腸溶錠でしたが、免疫に関する2023年の試験は、錠剤をなめてから飲み込む方法でした。研究と同じ形で作ることが大切です。
乳アレルギーの表示は必要ですか?
必要です。ラクトフェリンは牛乳由来のたんぱく質で、乳は表示が義務の特定原材料です。原材料名の後に「(乳成分を含む)」のように表示します。
工場に製造を断られることはありますか?
ラクトフェリン自体ではなく、組み合わせた植物素材が原因になることがあります。腸溶加工の設備や試験の体制も工場ごとに異なるため、最初に配合と剤形を確認します。
参考
- “Potent anti-obesity effect of enteric-coated lactoferrin: decrease in visceral fat accumulation in Japanese men and women with abdominal obesity after 8-week administration of enteric-coated lactoferrin tablets”, British Journal of Nutrition 2010;104(11):1688-1695, PMID 20691130, doi 10.1017/S0007114510002734
- “Effects of Bovine Lactoferrin on the Maintenance of Respiratory and Systemic Physical Conditions in Healthy Adults-A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial”, Nutrients 2023;15(18):3959, PMID 37764743, PMC10537451, doi 10.3390/nu15183959
- 消費者庁「アレルギー表示について」(令和8年4月時点) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_260401_01.pdf
- 消費者庁「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」(令和8年4月作成) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_260401_02.pdf
- 消費者庁「インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する改善指導について(令和8年4月~6月)」(令和8年9月4日) https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms213_260904_01.pdf
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月12日確認)