プラズマローゲンは、リン脂質の一種で、脳に多く含まれる成分です。日本では、ホタテから精製した原料を中心に研究が進み、記憶力をテーマにしたサプリに使われています。機能性表示食品として届け出た商品もあります。
本記事は、プラズマローゲンサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた内容です。研究で分かっていること、機能性表示食品として届け出る場合といわゆる健康食品として売る場合の表示、配合と剤形の決め方を整理します。プラズマローゲンの試験は、研究会や原料企業がかかわるものがほとんどです。資金の出どころと試験の対象者を知っておくと、表示と広告の言葉選びで失敗しにくくなります。
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研究で分かっていること
ホタテ由来のプラズマローゲン1日1〜2mgで、言葉の記憶や集中の検査に差が出た少人数の試験がある一方、最も大きな試験では全体として差はみられませんでした。
| 試験 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| ランダム化二重盲検試験、EBioMedicine 2017(PubMed 28259590、PMC5360580) | 軽度アルツハイマー型認知症または軽度認知障害の、60〜85歳の328人。ホタテ由来のプラズマローゲン1日1mg、24週間 | 全体の解析では、主な評価項目にもほかの項目にもプラセボとの差はなかった。軽度アルツハイマー型認知症の人の記憶検査は、群間の差が有意に届かなかった(P=0.067)。その中の女性と77歳未満の人に絞った解析では差があった |
| ランダム化二重盲検試験、Frontiers in Cell and Developmental Biology 2022(PubMed 35721497、PMC9203127) | 大学の運動部に所属する18〜22歳の男子学生40人(解析対象)。1日2mg、4週間 | 主な評価項目の気分の総合点は、群間の差が有意に届かなかった(p=0.07)。怒りと疲労の項目、集中の検査(内田クレペリン検査)では、プラセボより良い結果だった |
| ランダム化二重盲検試験、Frontiers in Nutrition 2026(PubMed 42656342、PMC13506472) | 言葉の記憶の点数が平均より低い、認知機能が正常な40歳以上の日本人68人(解析は66人)。1日1mg、12週間 | 主な評価項目の言葉の記憶の点数が、プラセボより高かった(p=0.042)。注意に関する一部の項目にも差。有害事象の報告はなかった |
試験の資金と著者の関係にも注意が必要です。2017年と2022年の試験は、プラズマローゲンの研究会の資金で行われました。2017年の試験では、著者の2人がプラズマローゲンの製造方法の特許を出願しています。2026年の試験は、試験品の製造企業の役員と社員が著者に含まれています。
試験の規模は、数十人から三百人程度です。最も大きな2017年の試験は、全体では差が出ず、差があったのは対象を絞った解析でした。2026年の論文の著者も、結果の確認と長期の安全性の評価にはさらに研究が必要だとしています。
(2026年10月18日時点で、各論文の公開抄録と公開本文を確認)
機能性表示食品として届け出る場合
ホタテ由来のプラズマローゲンは、認知機能の一部である、空間や場所を理解する能力といった記憶力の維持の趣旨の表示で、機能性表示食品に使われています。
届出の表示は、届出者が示した原料と量についてのものです。2021年に発売された届出品では、ホタテ由来のプラズマローゲン1日1.0mgを機能性関与成分としていました。原料の由来や量が違えば、自社で科学的根拠を示し直す必要があります。
機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。
2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務となりました。2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を報告することも届出者の義務です。
プラズマローゲンで機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。
- 根拠の取り方:研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか
- 関与成分の量:1日あたりの量を、根拠とする研究と合わせる
- 分析の方法:ミリグラム単位で入るプラズマローゲンの量を、製品中で測る方法と保証する体制
プラズマローゲンは1日1mg前後と配合量がごく少ない成分です。製品中の量を確かめる分析の方法は、届け出る前に原料メーカーと工場で決めておきます。
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いわゆる健康食品として売る場合の表示
届出をしないプラズマローゲンサプリは、記憶や脳への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、原料と量の事実を中心に伝えます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | プラズマローゲンサプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 食品なのに「物忘れを防ぐ」「記憶力が回復する」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 根拠のない「臨床試験で実証」「医師も推薦」などの表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1日分にホタテ由来プラズマローゲン〇mg配合」(量の事実) | 「認知症を防ぐ」「もの忘れが治る」 |
| 「国産ホタテから精製した原料を使用」(原料の事実) | 認知症や軽度認知障害の方の試験結果を、商品の効果のように紹介する表現 |
| 機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内) | 「脳が若返る」など、研究の条件と限界を示さない表現 |
プラズマローゲンは、病気の方を対象にした試験とあわせて語られることの多い成分です。試験の対象者の話を商品の広告に持ち込まないことが、言葉選びの基本になります。
プラズマローゲンの製剤設計
プラズマローゲンは1日1〜2mgで試験されており、ごく少量を均一に配合し、その量を保つことが製剤設計の中心になります。
| 剤形 | 選ばれる理由 | 検討すること |
|---|---|---|
| ソフトカプセル | 油に溶かした原料を包める。届出品にも使われている形 | カプセルの皮の素材と、内容物の油の種類 |
| ハードカプセル | 粉末の原料をほかの粉末と混ぜて詰められる | ごく少量の成分を均一に混ぜる工程 |
国内の試験では、1粒あたり0.5mgのカプセルを1日2粒または4粒飲む方法がとられていました。2022年の試験のカプセルは、エタノールアミン型0.48mgとコリン型0.02mgのプラズマローゲンを含んでいました。
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 原料の由来と含有量:試験の多くはホタテから精製した原料を使っています。ホタテ以外の由来の原料もあるため、由来と、原料中のプラズマローゲンの含有量を規格書で確認します。
- 1日あたりの量:機能性表示食品にするなら、根拠とする研究の量に合わせます。試験で使われた量は1日1mgまたは2mgです。
- 組み合わせる成分:記憶や集中をテーマにした配合では、DHA・EPAなどと組み合わせることがあります。植物素材を加える場合は、食品に使えるかどうかの確認が欠かせません。
- 保管と包装:量が少ないため、賞味期限までに含有量がどれだけ保たれるかが品質を左右します。包装の形と保管条件は、工場と安定性の試験で確かめます。
ホタテ由来の原料を使う場合も、えび・かになど表示義務のある原料が混ざっていないかを規格書で確認します。ソフトカプセルの皮にゼラチンを使う場合は、ゼラチンの表示も検討します。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
2026年8月5日更新の2つのリストには、プラズマローゲンという名前は載っていません。専ら医薬品のリストにも、効能をうたわない限り医薬品と判断しないリストにもありません。ホタテは後者のリストに例示されていますが、対象の部位は貝殻です。原料メーカーに由来と部位を確かめ、配合前に最新の通知と照らし合わせます。
脳や集中をテーマにした配合では、組み合わせる植物素材が問題になることもあります。配合の確認はサプリメントOEMのページで詳しく説明しています。同じテーマの成分はホスファチジルセリンサプリのOEMとDHA・EPAサプリのOEM、表示はサプリのアレルゲン表示の記事も参考になります。
見積もりの前に決めておくこと
原料の由来と含有量、1日あたりの量、剤形、分析の方法が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- プラズマローゲン原料の由来と含有量
- 1日あたりのプラズマローゲンの量と粒数、1袋(1本)あたりの日数
- 剤形と、カプセルの皮の素材
- 組み合わせる成分と、その量
- 製品中の含有量を測る分析の方法
- 包装の形と、機能性表示食品として届け出るかどうか
- 初回の製造数と、年間の見込み数
配合量がごく少ない成分は、混ぜ方と分析の方法で費用が変わります。原料が決まっていない段階でも、ご相談いただけます。
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よくある質問(FAQ)
プラズマローゲンの記憶への効果は、研究で確かめられていますか?
少人数の試験が中心で、確かめられたとはいえない段階です。2026年の68人の試験では、言葉の記憶の点数がプラセボより高くなりました。一方、328人の2017年の試験では、全体として差はみられませんでした。
試験はだれが行ったものですか?
2017年と2022年の試験は、プラズマローゲンの研究会の資金で行われました。2026年の試験は、試験品の製造企業の役員と社員が著者に含まれています。広告で試験を紹介する場合は、こうした条件も踏まえて言葉を選びます。
認知症の方の試験結果を広告に使えますか?
使うべきではありません。病気の方を対象にした試験の結果を商品の効果のように紹介すると、医薬品的な効能効果の表示とみなされるおそれがあります。機能性表示食品の表示も、病気の治療や予防を目的とするものではありません。
1日にどれくらいの量を配合しますか?
国内の試験では、ホタテ由来のプラズマローゲンを1日1mgまたは2mg使っていました。機能性表示食品にする場合は、根拠とする研究の量に合わせます。
プラズマローゲンは食品に使えますか?
2026年8月5日更新の厚生労働省のリストでは、プラズマローゲンという名前はどちらのリストにも載っていません。原料の由来と部位を確認し、配合前に最新の通知と照らし合わせたうえで、食品として使えるかを判断します。
参考
- “Efficacy and Blood Plasmalogen Changes by Oral Administration of Plasmalogen in Patients with Mild Alzheimer’s Disease and Mild Cognitive Impairment: A Multicenter, Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Trial”, EBioMedicine 2017, PubMed 28259590, PMC5360580
- “Orally Administered Plasmalogens Alleviate Negative Mood States and Enhance Mental Concentration: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial”, Frontiers in Cell and Developmental Biology 2022, PubMed 35721497, PMC9203127
- “Orally administered scallop-derived plasmalogens improve cognitive function in healthy middle-aged and older adults: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial”, Frontiers in Nutrition 2026, PubMed 42656342, PMC13506472
- 厚生労働省「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」(2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734637.pdf
- 厚生労働省「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734639.pdf
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月18日確認)