ノコギリヤシ(ソウパルメット)は、北米原産のヤシの果実から得られる素材です。日本では中高年の男性向けのサプリとして長く売られてきました。近年は、トイレが近いと感じる中高年の男女を対象にした機能性表示食品の届出も公表されています。

本記事では、ノコギリヤシサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けて、研究で分かっていることと製剤設計を整理します。あわせて、機能性表示食品として届け出る場合と、いわゆる健康食品として売る場合の表示の違いも説明します。ノコギリヤシは、海外の厳密なレビューと日本の試験で評価が分かれる成分です。排尿の悩みという繊細なテーマを扱うため、表示の言葉選びには特に注意が必要です。

💬 ノコギリヤシサプリの企画をお考えですか? 原料と配合の確認から、日本国内のGMP認証を取得した提携工場での製造までご相談いただけます。詳しくはサプリメントOEMをご覧ください。

研究で分かっていること

2023年のコクランの系統的レビューは、ノコギリヤシ単独では排尿の症状スコアにほとんど差がないと結論づけました。一方、日本の健康な中高年の小規模試験では差が報告されています。

試験・レビュー対象結果
コクラン系統的レビュー、Cochrane Database of Systematic Reviews 2023(PMID 37345871)前立腺肥大に伴う下部尿路症状の男性を対象にした27試験、4,656人(プラセボとの比較のみ)単独では、短期・長期とも症状スコアと生活の質にほとんど差がない(確実性の高い根拠)。有害事象もおそらく差がない
ランダム化比較試験、JAMA 2011(PMID 21954478)下部尿路症状のある45歳以上の男性369人。1日320mgから3倍量まで段階的に増量、72週間症状スコアの変化はプラセボと差がなく、副次的な項目もすべて差なし
ランダム化比較試験、Nutrition and Health 2025(PMID 39042923)診断を受けていない、日中の排尿回数が気になる50歳以上の日本人66人(男性53人)。ノコギリヤシ果実エキス320mg、12週間日中の頻回な排尿によるわずらわしさの点数と、排尿日誌の日中の回数がプラセボより低下
多施設ランダム化比較試験、Nutrients 2022(PMID 35334848)排尿の症状がある50歳以上の日本人女性(解析72人)。ノコギリヤシ果実エキス320mg、12週間日中の排尿回数の点数がプラセボより低下。夜間の回数は全体では差なし

コクランのレビューは、27試験のうち10試験が製薬企業の資金、2試験が政府機関の資金で行われ、残りは資金源の記載がないと報告しています。2011年の試験は米国国立衛生研究所(NIH)の助成によるものです。

日本の2つの試験は、いずれも試験品を製造販売する企業が資金や試験品を提供しており、人数も少数です。対象者や評価項目がコクランのレビューと異なるため、結果をそのまま比べることはできません。

2004年の古いメタ解析(BJU International, PMID 15049985)は、特定の1つの抽出物の試験を集めたものです。プラセボより良い結果を報告しました。ただし、試験間のばらつきがあり、2年間で差がなかった大規模な試験が結果に大きく影響していました。

(2026年10月18日時点で、各論文の公開抄録と全文を確認)

機能性表示食品として届け出る場合

ノコギリヤシでは、トイレが近いと感じている中高年の男女の、排尿に行くわずらわしさを緩和するという趣旨の表示の届出が2025年に公表されています。

機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、機能性の科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。表示できるのは届け出た根拠の範囲の内容で、病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。

上の日本の試験は、診断を受けていない健康な方を対象にしていました。機能性表示食品の対象は、病気にかかっていない方です。届け出るなら、根拠とする研究の対象者と、製品で想定する購入者を合わせる必要があります。

2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMPに基づく製造管理が届出者の義務となりました。2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を報告することも届出者の義務です。

ノコギリヤシで機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。

  • 根拠の取り方:既存の研究を集めて評価する研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか。海外の否定的なレビューとの関係も説明が必要です
  • 原料と量:根拠とする研究と同じ抽出方法の果実エキスを使い、1日あたりの量を合わせる
  • 分析の方法:エキスの指標成分(脂肪酸など)を測る方法と、その結果を保証する体制

💬 機能性表示食品にするか、表示をしない健康食品にするか迷っている方へ。 原料と販売方法を伺い、製造の段取りまでご提案します。お問合せフォーム、またはLINEからどうぞ。

いわゆる健康食品として売る場合の表示

機能性表示食品として届け出ないノコギリヤシサプリは、排尿や前立腺への作用をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。

健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。

法律かかわる規定ノコギリヤシサプリで注意すること
医薬品医療機器等法(薬機法)承認前の医薬品の広告の禁止(第68条)食品なのに「頻尿に効く」「夜中のトイレが減る」「前立腺の健康に」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある
健康増進法誇大表示の禁止(第65条)健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない
景品表示法優良誤認表示の禁止根拠のない「医師も推薦」「No.1」や、利用者の体験談で効果を印象づける表示

消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。

比較的安全な言い方避けるべき言い方
「1粒にノコギリヤシ果実エキス320mg配合」(量の事実)病名や「頻尿」「残尿感」など症状名を挙げた表現
「北米産ノコギリヤシの果実を使用」(原料の事実)「トイレの回数が減る」「夜ぐっすり」など効果をうたう表現
機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内)古い肯定的な研究だけを示して「実証済み」とする表現

排尿の症状には、さまざまな原因があります。厚生労働省の統合医療情報サイト(eJIM)は、迅速な治療が必要な病気が原因の場合もあると注意を促しています。表示や販売ページでは、気になる症状がある方に医師への相談を勧める一文を添えると安心です。

ノコギリヤシの製剤設計

ノコギリヤシ果実エキスは脂肪酸を多く含む油状の素材のため、ソフトカプセルが最もよく使われます。

剤形選ばれる理由検討すること
ソフトカプセル油状のエキスをそのまま封入できる皮膜の素材(ゼラチンなど)と、酸化を防ぐ工夫
ハードカプセル粉末化したエキスや他の粉末と組み合わせやすい粉末化の方法と、1粒あたりのエキス量
錠剤粉末原料を多く組み合わせる配合に向く油分の多いエキスは配合量に限りがある

仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。

  1. 原料の部位と抽出方法:日本の試験では、乾燥した果実から超臨界抽出で得たエキスが使われています。原料メーカーに部位・抽出方法・指標成分の規格を確認します。
  2. 1日あたりの量:日本の2つの試験は1日320mgで、2011年の米国の試験も1日320mgを標準量としています。機能性表示食品にするなら、根拠とする研究の量に合わせます。
  3. 組み合わせる成分:カボチャ種子や亜鉛などと組み合わせる配合がよく見られます。組み合わせる素材も、食品に使えるかの確認が欠かせません。亜鉛については亜鉛サプリのOEMで解説しています。
  4. 包装と注意表示:酸化しやすい油状の素材なので、遮光性の包装を検討します。厚生労働省のeJIMは、妊娠中・授乳中の利用は安全でない可能性があるとしています。

最初に確認すること:食品に使える成分か

ノコギリヤシは、果実が「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に例示されており、効能効果をうたわなければ食品に使えます。

厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、成分のリストを示しています。「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」(別添1)と、医薬品的な効能効果をうたわない限り医薬品と判断しない成分のリスト(別添2)です。別添1にある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。

成分・部位リスト食品に使えるか
セレノア・レーペンス(ノコギリヤシ/ノコギリパルメット)の果実別添2(植物由来物等)医薬品的な効能効果をうたわなければ使える
果実以外の部位どちらのリストにも例示なし配合前に個別の確認が必要

(厚生労働省のリスト 2026年8月5日更新版で確認)

食品に使える成分でも、排尿や前立腺への作用をうたえば医薬品とみなされるおそれがあります。食品と医薬品の境目の考え方は食薬区分の解説、機能性表示食品の制度は機能性表示食品の解説、配合の確認の流れはサプリメントOEMのページで説明しています。

見積もりの前に決めておくこと

原料の抽出方法と規格、1日あたりの量、剤形、組み合わせる成分が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。

  • ノコギリヤシ果実エキスの抽出方法と、指標成分の規格
  • 1日あたりの量と、1袋(1本)あたりの日数
  • 剤形(ソフトカプセル・ハードカプセルなど)と皮膜の素材
  • 組み合わせる成分と、その量
  • 機能性表示食品として届け出るかどうか
  • 初回の製造数と、年間の見込み数

使いたい原料が決まっている場合は、規格書もあわせてお知らせください。抽出方法と指標成分が分かると、剤形の提案が早く進みます。

💬 ノコギリヤシサプリの製品化をご検討中の方は、Sunshoにご相談ください。 原料・配合・販売方法を伺い、日本国内のGMP認証を取得した提携工場での製造をご提案します。お問合せフォーム・LINEから。

よくある質問(FAQ)

ノコギリヤシの排尿への作用は、研究で確かめられていますか?

2023年のコクランのレビューは、前立腺肥大に伴う症状のある男性で、単独ではほとんど差がないと結論づけています。日本の健康な中高年を対象にした小規模試験では差が報告されていますが、企業の資金によるもので、人数も少数です。

海外のレビューと日本の試験で、結果が違うのはなぜですか?

対象者と評価項目が違います。コクランのレビューは診断を受けた男性の症状スコア、日本の試験は診断を受けていない方の日中の排尿のわずらわしさや回数を調べています。使った抽出物の種類も試験によって異なります。

女性向けのノコギリヤシサプリは作れますか?

ノコギリヤシの果実は、効能効果をうたわなければ食品に使える成分で、男女どちらに向けた製品も作れます。日本人女性を対象にした試験もあります。妊娠中・授乳中の方への注意表示は検討してください。

機能性表示食品にしないノコギリヤシサプリでも、トイレの悩みに触れられますか?

いわゆる健康食品では、排尿の回数やわずらわしさへの作用をうたう表現は避ける必要があります。使用場面の言い方でも、全体として効果をうたう表示になっていないかを確認してください。

工場に製造を断られることはありますか?

ノコギリヤシの果実自体は食品に使えます。果実以外の部位を使う原料や、組み合わせた植物素材が原因になることがあるため、配合するすべての成分を最初に確認します。

参考

  • “Serenoa repens for the treatment of lower urinary tract symptoms due to benign prostatic enlargement”, Cochrane Database of Systematic Reviews 2023, PMID 37345871(PMC10286776)
  • “Effect of increasing doses of saw palmetto extract on lower urinary tract symptoms: a randomized trial”, JAMA 2011, PMID 21954478(PMC3326341)
  • “Beneficial effects of saw palmetto (Serenoa repens) fruit extract on the urinary symptoms of healthy Japanese adults with possible lower urinary tract symptoms: A randomized, double-blind, placebo-controlled study”, Nutrition and Health 2025, PMID 39042923(PMC12423462)
  • “Beneficial Effects of Saw Palmetto Fruit Extract on Urinary Symptoms in Japanese Female Subjects by a Multicenter, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study”, Nutrients 2022, PMID 35334848(PMC8953103)
  • “Updated meta-analysis of clinical trials of Serenoa repens extract in the treatment of symptomatic benign prostatic hyperplasia”, BJU International 2004, PMID 15049985
  • 厚生労働省「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(別添2、2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734639.pdf
  • 厚生労働省「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」(別添1、2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734637.pdf
  • 厚生労働省 統合医療情報発信サイト(eJIM)「ノコギリヤシ」 https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c04/41.html
  • 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
  • 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)

(2026年10月18日確認)