スピルリナは、らせん状の形をした藍藻(シアノバクテリア)の一種です。乾燥させた粉末を固めた錠剤が定番で、日本では健康食品として長く売られてきました。青汁や他の植物素材と組み合わせやすく、毎日の健康習慣をテーマにした商品で相談の多い素材です。
本記事は、スピルリナサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた解説です。研究の現状、機能性表示食品といわゆる健康食品の表示の違い、藻類ならではの品質管理、剤形の決め方を整理します。スピルリナの研究は、誰を対象にした試験かを押さえておくことが大切です。対象者を見落とすと、広告の言葉が研究の範囲を超えてしまいます。
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研究で分かっていること
メタ分析では血中脂質や血圧の指標に変化が報告されていますが、試験の多くは持病や肥満のある方が対象で、健康な方の加齢に関する研究ではありません。
| 試験/レビュー | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| 系統的レビュー・用量反応メタ分析、Pharmacological Research 2023(PMID 37263369) | 無作為化比較試験20件(23群)、1,076人 | LDLコレステロール、総コレステロール、中性脂肪が低下し、HDLコレステロールが上昇 |
| 系統的レビュー・メタ分析、Nutrients 2021(PMID 34578932) | 収縮期血圧は5件・230人、拡張期血圧は4件・214人。高血圧、2型糖尿病、慢性の関節痛、潰瘍性大腸炎の方。1日1〜8g、2〜12週間 | 収縮期・拡張期とも血圧が低下し、とくに高血圧の方で大きかった |
| 系統的レビュー・メタ分析、Frontiers in Nutrition 2025(PMID 40655486) | 23件の研究、過体重・肥満の成人1,035人 | 体重、総コレステロール、中性脂肪、LDL、拡張期血圧などに変化。体組成や血糖の指標への影響は限られていた |
2025年のメタ分析は、多くの項目で根拠の確実性を「非常に低い」と評価しています。試験ごとのばらつきが大きく、信頼区間も広いため、質の高い研究が必要だとしています。
血圧のメタ分析は試験数が5件と少なく、対象者はいずれも持病のある方でした。こうした結果は研究の事実として知っておくものです。健康な方が飲んだ場合に同じ変化が出るとは言えず、商品の訴求に使うことはできません。
(2026年10月12日時点で、各論文の公開抄録を確認)
機能性表示食品として届け出る場合
機能性表示食品は届出者が自らの責任で科学的根拠を消費者庁に届け出る制度で、スピルリナから取り出したフィコシアニンでは、肌の潤いに関する表示の届出があります。
機能性表示食品として販売するには、販売前に、機能性の科学的根拠と安全性の情報を消費者庁に届け出ます。表示できるのは届け出た根拠の範囲の内容で、病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。国が審査して許可する制度ではありません。
フィコシアニンは、スピルリナに含まれる青い色素たんぱく質です。届出は、スピルリナから抽出・規格化したフィコシアニンを関与成分とするもので、スピルリナの粉末そのものの届出ではありません。スピルリナの錠剤に同じ表示ができるわけではない点に注意してください。
2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務になりました。この義務は2026年9月1日に完全施行されています。
- 関与成分の選び方:スピルリナ全体ではなく、根拠のある特定の成分を関与成分にする
- 原料の規格:根拠の研究と同じ製法・同じ量の原料か
- 分析の方法:製品中の関与成分の量を測る方法と、その結果を保証する体制
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いわゆる健康食品として売る場合の表示
機能性表示食品として届け出ないスピルリナサプリは、体への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | スピルリナサプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 「血圧を下げる」「コレステロール対策」「デトックス」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 「完全栄養食」「No.1」など根拠のない表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1日分(〇粒)にスピルリナ〇g配合」(量の事実) | 「血圧が気になる方に」「コレステロールを下げる」 |
| 「藍藻スピルリナを乾燥させて錠剤にしました」(素材の事実) | 病名や検査値を挙げた表現 |
| 「ロットごとに分析した原料を使用」(品質の事実) | 「臨床で実証済み」など、研究の対象者と限界を示さない表現 |
スピルリナの研究は、血圧やコレステロールなどの検査値に関するものが中心です。研究の結果をそのまま広告に使うと、検査値の改善をうたう表示になり、医薬品的な効果の表示とみなされるおそれがあります。
スピルリナの製剤設計
スピルリナはグラム単位で使われることが多く、品質の面では、藻類に特有の汚染の検査が製品設計の重要な部分になります。
| 剤形 | 選ばれる理由 | 検討すること |
|---|---|---|
| 錠剤(粉末を打錠) | 最も定番の形で、数粒でグラム単位の量にできる | 藻のにおいと味、1回の粒数 |
| ハードカプセル | 錠剤よりにおいや味を感じにくい | グラム単位にするとカプセルの数が多くなる |
| 粉末・顆粒スティック | 飲み物に混ぜやすく、量を調整しやすい | 濃い緑色と草のような風味、容器への色移り |
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 原料の産地と培養方法:スピルリナは屋外の開放池や、閉じた設備で培養されます。原料メーカーに培養方法と、どの項目をどの頻度で検査しているかを確認します。
- 藻類特有の検査:2023年に市販のスピルリナ製品5品(サプリ2品、食品3品)を調べた研究があります。すべての製品からミクロシスチンという藍藻の毒素が検出され、一部の製品からは食中毒の原因になりうる細菌も見つかりました。著者は、開放池での生産方法が原因と考えられるとしています。規格書で、ミクロシスチン、微生物、重金属の検査項目と基準値を確認し、ロットごとの分析証明書を求めます。
- 1日あたりの量:血圧のメタ分析に含まれた試験では、1日1〜8gの量が使われています。錠剤なら1回の粒数が現実的かどうかも合わせて検討します。
- 組み合わせる成分:青汁の素材や他の植物素材と組み合わせることがよくあります。組み合わせる成分は、一つずつ食品に使えるかを確認します。
- 包装:粉末を固めた錠剤は湿気を吸いやすいため、ボトルの乾燥剤やアルミ包装を検討します。
米国食品医薬品局(FDA)は、湖で収穫する別の藍藻について、事業者の取り組みの例を挙げています。ロットごとのミクロシスチン検査、複数の検査法での確認、購入者への分析証明書の提供です。スピルリナでも、同じ考え方で検査の体制を確認しておくと安心です。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
スピルリナ自体は日本で食品として長く流通していますが、植物素材を組み合わせた配合では、その素材が問題になることがあります。配合の確認はサプリメントOEMのページで説明しています。原料の規格と検査の考え方は規格書と分析証明書(COA)、組み合わせの多い素材は青汁のガイドもご覧ください。
見積もりの前に決めておくこと
原料の産地と検査の基準、1日あたりの量、剤形、包装が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- スピルリナ原料の産地と培養方法
- ミクロシスチン・微生物・重金属の検査項目と基準値
- 1日あたりの量と、1袋(1本)あたりの日数
- 剤形と、1回の粒数
- 組み合わせる成分と、その量
- 包装の形
- 初回の製造数と、年間の見込み数
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よくある質問(FAQ)
スピルリナでコレステロールや血圧が下がると書けますか?
書けません。メタ分析では指標の変化が報告されていますが、試験の多くは持病や肥満のある方が対象です。いわゆる健康食品で検査値の改善をうたうと、医薬品的な効果の表示とみなされるおそれがあります。
健康な方向けの商品に、研究の結果を使えますか?
紹介したメタ分析は、健康な方の加齢に関する効果を調べたものではありません。研究の結果を健康な方向けの訴求に広げることは避けてください。
スピルリナで特に注意すべき品質の問題は何ですか?
藍藻の毒素であるミクロシスチンと、微生物の汚染です。2023年の研究では、調べた市販品5品のすべてからミクロシスチンが検出されました。規格書で検査項目を決め、ロットごとの分析証明書を確認します。
スピルリナが錠剤で売られることが多いのはなぜですか?
研究で使われる量がグラム単位のためです。粉末を固めた錠剤なら、数粒で必要な量にでき、カプセルより粒数を抑えやすくなります。
工場に製造を断られることはありますか?
スピルリナ自体ではなく、組み合わせた植物素材が原因になることがあります。配合するすべての成分が食品に使えるかを、最初に確認します。
参考
- “The effect of Spirulina supplementation on lipid profile: GRADE-assessed systematic review and dose-response meta-analysis of data from randomized controlled trials”, Pharmacological Research 2023;193:106802, PMID 37263369
- “Effect of Spirulina Supplementation on Systolic and Diastolic Blood Pressure: Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials”, Nutrients 2021;13(9):3054, PMID 34578932, PMC8468496
- “Effects of spirulina supplementation alone or with exercise on cardiometabolic health in overweight and obese adults: a systematic review and meta-analysis”, Frontiers in Nutrition 2025;12:1624982, PMID 40655486, PMC12245695
- “Microbiota and Cyanotoxin Content of Retail Spirulina Supplements and Spirulina Supplemented Foods”, Microorganisms 2023;11(5):1175, PMID 37317149, PMC10221061
- 米国食品医薬品局(FDA)「Blue-Green Algae Products and Microcystins」 https://www.fda.gov/food/natural-toxins-food/blue-green-algae-products-and-microcystins
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月12日確認)