トラネキサム酸は、海外の通販や口コミで「飲む美容成分」として紹介されることがある成分です。海外の商品をもとに、トラネキサム酸を配合したサプリを自社ブランドで作りたいという相談もあります。
結論から言うと、日本でトラネキサム酸を配合したサプリを食品として作る道は、現状では開かれていません。食薬区分のリストに名前はありませんが、日本では医療用医薬品と一般用医薬品の有効成分として使われているためです。本記事では、確認できた事実と、食品として扱えない理由、代わりに検討できる食品素材を説明します。
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結論:日本での扱い
トラネキサム酸はどちらの成分リストにも載っていませんが、日本では医薬品の有効成分としてのみ使われており、食品の原材料として使える根拠はありません。
食薬区分では、成分ごとの扱いが別添1(専ら医薬品)と別添2(医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない)の2つのリストで示されています。2026年8月5日更新の両リストに、トラネキサム酸は載っていません。
| 成分 | リスト | 食品に使えるか |
|---|---|---|
| トラネキサム酸 | 別添1・別添2のどちらにも掲載なし | 使える根拠がない。配合するには、厚生労働省に照会して判断を求める必要がある |
リストに名前がないことは、食品に使ってよいという意味ではありません。別添1は「例示」で、どちらのリストにもない成分は、製造・輸入する事業者が判断を求める仕組みになっています。トラネキサム酸は日本で医薬品として使われている成分のため、照会しても食品と判断される見込みは高くないと考えて企画するのが現実的です。
海外での扱いとの違い
米国でも、トラネキサム酸の内服薬は処方薬として承認されており、海外でも医薬品として扱われている成分です。
米国FDAの医薬品データベース(Drugs@FDA)によると、トラネキサム酸650mgの内服錠は2009年11月13日に承認されました。販売区分は処方薬(Prescription)です。
| 国・地域 | トラネキサム酸の扱い(確認できた範囲) |
|---|---|
| 日本 | 医療用医薬品(内服薬・注射剤)と、第1類医薬品の内服薬の有効成分 |
| 米国 | 内服錠が処方薬として承認(2009年) |
海外の通販で手に入る商品があっても、日本で食品として作れる理由にはなりません。日本の工場は日本の法律のもとで製造します。
なぜ日本ではこの扱いなのか
食薬区分の判断基準は「専ら医薬品としての使用実態のある物」を専ら医薬品の成分とし、トラネキサム酸は日本で医薬品としてのみ使われています。
46通知の別添「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いについて」は、専ら医薬品の成分の考え方として、次のものを挙げています。
- 専ら医薬品としての使用実態のある物
- 処方せん医薬品に相当する成分を含む物であって、保健衛生上の観点から医薬品として規制する必要性がある物(ほかの項目もある)
PMDAの添付文書では、トラネキサム酸は抗プラスミン剤として医療用医薬品に使われています。注射剤は処方箋医薬品です。一般用医薬品では、しみ(肝斑に限る)を効能・効果とする第1類医薬品の内服薬があります。
その第1類医薬品の添付文書には、安全に使うための注意が書かれています。血栓を溶けにくくする作用のある成分であること、2カ月を超えて続けて服用しないことなどです。血栓症のある人やそのおそれのある人は、服用前に医師や薬剤師に相談するよう求めています。トラネキサム酸を食品として扱えない背景には、こうした医薬品としての管理が必要な性質があります。
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代わりに検討できる食品素材
美容を意識したサプリには、日本で食品に使え、肌に関する研究や機能性表示食品の届出がある素材があります。
どの素材もトラネキサム酸とは働き方が違い、トラネキサム酸の代わりになると説明することはできません。研究の現状は素材ごとに異なるため、各ガイドで正直に整理しています。
| 素材 | 日本での主な使い方 | 研究の現状(各ガイドの要約) |
|---|---|---|
| ビタミンC | 栄養機能食品として、国が定めた文言で機能を表示できる(2026年10月の改正で文言が変わった) | 大規模なレビューでは、一般の人への効果は小さいか確認されていない |
| セラミド | 機能性表示食品で、肌の水分を保つ趣旨の届出がある | メタ解析で効果はあるが小さく、試験ごとのばらつきが大きい |
| アスタキサンチン | 機能性表示食品で、紫外線を浴びた肌の潤いに関する届出がある | 肌の水分量は解析で結果が分かれ、しわでは差がない |
| コラーゲンペプチド | 機能性表示食品で、肌の水分量や弾力に関する届出がある | 肯定的なメタ解析がある一方、資金提供のない試験では効果なしとの解析もある |
アミノ酸のL-シスチンも、別添2に載っている食品に使える素材です。ただし、いわゆる健康食品として売る場合、どの素材でも「しみが消える」「美白」といった表現は使えません。しみや肌の色をうたう表現は、医薬品や医薬部外品の効能効果にあたるおそれがあります。
見積もり・相談の前に決めておくこと
トラネキサム酸を使わない前提で、製品で伝えたいことと販売方法が決まっていれば、代わりの設計と見積もりを同時に進められます。
- 製品で伝えたいこと(肌のうるおい、日々の栄養補給など、食品として表示できる範囲)
- 機能性表示食品として届け出るか、いわゆる健康食品として売るか
- 配合したい成分の一覧と、原料の規格書
- 剤形(錠剤、カプセル、粉末など)と1日あたりの摂取目安
- 商品名・パッケージ・販売ページで使いたい主な言葉
- 参考にしている海外商品の全成分表示
参考にしている海外商品の成分表があれば、トラネキサム酸以外にも日本で使えない成分がないかを一度に確認できます。
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よくある質問(FAQ)
海外で個人輸入されているトラネキサム酸サプリと同じものを、日本で作れますか?
食品としては作れません。トラネキサム酸は日本で医薬品の有効成分として使われており、食品の原材料として使える根拠がありません。日本の工場で食品として製造することはできません。
配合量を医薬品より少なくすれば、食品として作れますか?
量を減らしても、食品として扱えることにはなりません。食薬区分は成分そのものの扱いを判断するもので、量の大小で区分が変わる仕組みではありません。
海外の工場で作って輸入すれば、日本で食品として売れますか?
売れません。日本国内で販売する以上、輸入品にも薬機法と食薬区分が同じように適用されます。医薬品の成分を含む製品は、医薬品としての承認と許可がなければ販売できません。
リストに載っていないなら、照会すれば使えるようになりますか?
照会の手続き自体はあります。どちらのリストにもない成分は、事業者が都道府県の薬務担当課を通じて厚生労働省に資料を出し、判断を求められます。ただし資料には国内外での医薬品としての承認前例も含まれ、トラネキサム酸は日本で医薬品として承認されている成分です。
ドラッグストアで買える医薬品があるのに、なぜ食品は作れないのですか?
ドラッグストアで買える製品も、第1類医薬品という医薬品です。薬剤師が情報を提供して販売する区分で、添付文書には服用期間などの注意があります。医薬品として承認を受けた製品であり、食品とは別の制度で管理されています。
参考
- 厚生労働省「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示」別添1「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」(2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734637.pdf
- 厚生労働省 同 別添2「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734639.pdf
- 厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日 薬発第476号)別紙「医薬品の範囲に関する基準」および別添「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いについて」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6938&dataType=1&pageNo=1
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品の添付文書情報(トラネキサム酸製剤) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)一般用医薬品・要指導医薬品の添付文書情報(トラネキサム酸を含む第1類医薬品) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcSearch/
- U.S. Food and Drug Administration, Drugs@FDA, NDA 022430(tranexamic acid tablets, 2009年11月13日承認)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145
(2026年10月18日確認)