ビオチンは、ビタミンB群の一つで、ビタミンB7とも呼ばれます。海外では髪や爪をテーマにしたサプリでよく見かける成分で、日本でも美容をテーマにした商品やマルチビタミンに使われています。
本記事では、ビオチンサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けて、研究で分かっていること、栄養機能食品として表示する場合の決まり、添加物として使える食品の範囲、いわゆる健康食品として売る場合の表示、剤形の決め方を整理します。栄養機能食品のビオチンの文言は、2026年10月1日の改正で少し変わりました。あわせて、ビオチンを多くとると一部の臨床検査の結果に影響するという、医療機関向けの注意喚起も紹介します。
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研究で分かっていること
髪や爪へのビオチンの報告は、ビオチンが不足している人や特定の状態の人に限られ、健康な人を対象にした質の高い試験では、プラセボとの差は示されていません。
| レビュー | 対象 | 結論 |
|---|---|---|
| 文献レビュー、Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology 2024(PMID 39148962、PMC11324195) | 経口のビオチンと髪の成長・質を調べた研究(症例報告を除く)。条件に合ったのは3件 | 最も質の高い二重盲検プラセボ対照試験では、ビオチン群とプラセボ群に差がなかった。残り2件は特定の患者を対象にした偏りのおそれがある研究。髪のサプリとしての有用性は、質の高い研究で支持されていない |
| 文献レビュー、Skin Appendage Disorders 2017(PMID 28879195、PMC5582478) | 髪や爪にビオチンを使った症例報告と臨床試験。症例は18件 | 18件すべてで、髪や爪の状態の背景にビオチンの不足などの原因があり、いずれも改善がみられた。健康な人でとる根拠は不十分 |
2つのレビューは、同じ方向を示しています。はっきりした報告があるのは、ビオチンの不足などの原因がある人で、その多くは1人ずつの症例報告です。健康な人がとって髪や爪が変わるかどうかは、質の高い試験では確かめられていません。
(2026年10月12日時点で、各論文の公開抄録を確認)
栄養機能食品として表示する場合
ビオチンは栄養機能食品の対象成分で、1日あたりの摂取目安量に15μg以上500μg以下を含めば、国が決めた文言で機能を表示できます。
栄養機能食品は、国が決めた栄養成分について、決められた機能を表示できる制度です。届出や国の個別審査は必要ありません。そのかわり、量の範囲と表示する文言が、食品表示基準の別表第十一で決まっています。
別表第十一は、2026年10月1日公布・施行の内閣府令(令和8年内閣府令第89号)で改正されました。ビオチンの基準は次のとおりです。
| 項目 | 改正後(2026年10月1日施行) | 改正前 |
|---|---|---|
| 1日あたりの摂取目安量に含まれる量 | 下限値15μg、上限値500μg | 下限値15μg、上限値500μg(変更なし) |
| 栄養成分の機能 | 「ビオチンは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素のひとつです。」 | 「ビオチンは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。」 |
摂取をする上での注意事項は、改正の前後で同じ次の文言です。
「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。一日の摂取目安量を守ってください。」
下限値の15μgは、ビオチンの栄養素等表示基準値50μgの30%です。上限値の500μgは、医薬部外品の1日最大分量に基づく値で、今回の改正でも変わっていません。量はそのままで、機能の文言の語尾が「栄養素のひとつです」に変わった点が、ビオチンの主な変更点です。
改正府令の附則には経過措置があり、令和12年(2030年)3月31日までに製造・加工・輸入される加工食品は、改正前の基準によることもできます。包材を作り直す時期に合わせて、新しい文言に切り替える計画を立てておくと安心です。
機能の文言と注意事項は、主旨が同じでも言い換えや省略が認められていません。ほかにも、次の表示が必要です。
- 「栄養機能食品(ビオチン)」のような、栄養機能食品である旨と成分の名称
- 1日あたりの摂取目安量と、摂取の方法
- 「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」の文言
- 「本品は、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。」の文言
- 1日あたりの摂取目安量に含まれるビオチンが、栄養素等表示基準値に占める割合
ビオチンのように食品表示基準の別表第九に挙がっている栄養成分は、機能性表示食品の機能性関与成分にはできません。
添加物としてのビオチンが使える食品
ビオチンを添加物として配合する場合は、使用基準にも注意が必要です。2015年3月の厚生労働省の通知では、添加物のビオチンの使用対象は「特定保健用食品」と「栄養機能食品」とされています。母乳代替食品にも、量の上限つきで使えます。
つまり、添加物のビオチンを配合したサプリは、栄養機能食品として設計するのが基本になります。配合の段階で、原料が添加物にあたるか食品素材にあたるかを、原料メーカーの規格書と最新の告示で確認してください。
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いわゆる健康食品として売る場合の表示
栄養機能食品の表示をしない場合や、国が決めた文言以外の言葉を使う場合、髪や肌への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | ビオチンサプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 「髪が生える」「抜け毛が減る」「肌荒れが治る」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 根拠のない「医師も推薦」「No.1」などの表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。2026年9月に公表されたインターネット上の監視結果でも、いわゆる健康食品の「美肌形成」「肌のハリ・ツヤ回復」といった表示が、健康増進法に違反するおそれがあるとして改善指導の対象になりました。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1日2粒にビオチン〇μg」(量の事実) | 「育毛」「抜け毛対策」「髪が生える」 |
| 栄養機能食品として、国が決めた機能の文言そのまま | 国の文言を言い換えた「肌が生まれ変わる」など |
| 「毎日の栄養補給に」(使用場面) | 研究の条件と限界を示さない「臨床で実証済み」 |
ビオチンの製剤設計
ビオチンはマイクログラム単位で配合する成分のため、錠剤やカプセル、マルチビタミンへの配合など、ほとんどの剤形に使えますが、少ない量を均一に混ぜる工夫が欠かせません。
| 剤形 | 選ばれる理由 | 検討すること |
|---|---|---|
| 錠剤 | 小さく飲みやすく、1回あたりの費用を抑えやすい | 微量成分を均一に混ぜる方法 |
| ハードカプセル | 味がなく、他の成分と組み合わせやすい | 配合する成分の量と粒の大きさ |
| マルチビタミン・美容系の配合 | ほかのビタミンやミネラルと一緒に摂れる | 成分ごとの栄養機能食品の範囲 |
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 原料の形:ビオチンは少ない量で使うため、賦形剤で薄めた原料を使うことがあります。原料メーカーに含有率と規格書を確認します。
- 1日あたりの量:栄養機能食品にするなら、15μg以上500μg以下に収めます。製造時のばらつきと保存中の変化を見込んで、配合量を決めます。
- 組み合わせる成分:コラーゲンや亜鉛、ほかのビタミンB群と組み合わせる配合がよくあります。複数の栄養成分で機能を表示する場合は、成分ごとに範囲と文言を確認します。
- 包装:吸湿しやすい配合では、アルミ包装やボトルの乾燥剤を検討します。
臨床検査への影響
ビオチンを多くとると、一部の臨床検査の結果が正しく出ないことがあります。ビオチンを測定の仕組みに使う検査薬があるためです。2017年11月に米国食品医薬品局(FDA)が安全情報を出し、2019年1月には欧州医薬品庁(EMA)も注意を呼びかけました。
日本でも、厚生労働省が2019年9月12日の通知で、ビオチンを測定系に使う体外診断用医薬品の添付文書の点検を、製造販売業者に求めました。2020年には日本臨床検査薬協会が医療機関向けに周知し、美容目的のサプリでビオチンを多くとる人がいることにも触れています。
ビオチンを含むサプリを販売するときは、販売ページや同梱物で「検査を受けるときは、ビオチンを含むサプリをとっていることを医師に伝えてください」と案内しておくと、購入者にとって親切です。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
ビオチンでは、食薬区分に加えて添加物の使用基準の確認も必要です。髪や肌をテーマにした配合では、組み合わせる植物素材が問題になることもあります。配合の確認はサプリメントOEMのページで説明しています。制度は栄養機能食品のガイド、組み合わせる成分はマルチビタミン、亜鉛、コラーゲンペプチドのガイドもご覧ください。
見積もりの前に決めておくこと
1日あたりの量、剤形、組み合わせる成分、表示の方法が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- ビオチンの1日あたりの量と、1袋(1本)あたりの日数
- 剤形と、粒の大きさ
- 組み合わせる成分と、その量
- 栄養機能食品として表示するかどうかと、改正後・改正前のどちらの基準で表示するか
- 包装の形
- 初回の製造数と、年間の見込み数
栄養機能食品として表示する成分が増えるほど、量の範囲と文言の確認が増えます。表示する成分を先に絞っておくと、包材の校正が進めやすくなります。
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よくある質問(FAQ)
ビオチンで髪が増えると言えますか?
言えません。2024年のレビューでは、最も質の高い試験でプラセボとの差がなく、2017年のレビューで報告された改善は、ビオチンの不足などの原因がある人に限られていました。「髪が生える」とうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれもあります。
栄養機能食品のビオチンの量は、2026年10月の改正で変わりましたか?
量の範囲は変わらず、1日あたり15μg以上500μg以下です。機能の文言の語尾が「栄養素です」から「栄養素のひとつです」に変わりました。2030年3月31日までに製造する食品は、改正前の基準によることもできます。
機能性表示食品にできますか?
ビオチンは食品表示基準の別表第九に挙がっている栄養成分のため、機能性表示食品の機能性関与成分にはできません。機能を表示したい場合は、栄養機能食品の制度を使います。
海外のように数mgのビオチンを配合できますか?
添加物のビオチンの使用対象は特定保健用食品と栄養機能食品で、栄養機能食品の上限値は500μgです。配合する原料と表示の方法によって扱いが変わるため、最初に原料の規格書と最新の告示で確認します。
ビオチンが臨床検査に影響するというのは本当ですか?
厚生労働省やFDAなどが、ビオチンを多くとった人の検体で、ビオチンを使う検査薬の結果が正しく出ないことがあると注意を呼びかけています。販売ページなどで、検査の前に医師に伝えるよう案内しておくと親切です。
参考
- “Biotin for Hair Loss: Teasing Out the Evidence”, Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology 2024;17(8):56-61, PMID 39148962, PMC11324195
- “A Review of the Use of Biotin for Hair Loss”, Skin Appendage Disorders 2017;3(3):166-169, PMID 28879195, PMC5582478, doi 10.1159/000462981
- 消費者庁「食品表示基準 別表第9~別表第21(改正後)」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_261001_02.pdf
- 消費者庁「知っていますか?栄養機能食品」(令和8年10月) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/assets/food_labeling_cms206_261001_02.pdf
- 消費者庁食品表示課「栄養機能食品に関する食品表示基準の一部改正について」(消費者委員会食品表示部会 令和8年8月6日 資料2) https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/260806_shiryou2.pdf
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」(令和7年10月1日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/notice/assets/food_labeling_cms205_251001_41.pdf
- 厚生労働省「食品、添加物等の規格基準の一部改正について」(平成27年3月20日 食安発0320第3号) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000078656.pdf
- 厚生労働省「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について」(平成26年6月17日 食安発0617第2号) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000048710.pdf
- 日本臨床検査薬協会「測定系にビオチンを用いる体外診断用医薬品と高用量ビオチンの摂取について(周知依頼)」(2020年8月21日、PMDA掲載) https://www.pmda.go.jp/files/000236194.pdf
- 消費者庁「インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する改善指導について(令和8年4月~6月)」(令和8年9月4日) https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms213_260904_01.pdf
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月12日確認)