エラスチンは、皮膚や血管などにある、伸び縮みする性質をもったたんぱく質です。コラーゲンやヒアルロン酸に続く美容の成分として、錠剤や美容ドリンクに配合されています。機能性表示食品として、肌の弾力やうるおいに関する表示をした商品もあります。
本記事では、エラスチンサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けて、研究で分かっていることと製剤設計を整理します。あわせて、機能性表示食品として届け出る場合と、いわゆる健康食品として売る場合の表示の違いも説明します。食品に使われるエラスチンの多くは、カツオなど動物由来のペプチドです。由来の動物とアレルゲンの確認も、企画の早い段階で必要になります。
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研究で分かっていること
カツオ由来エラスチンペプチドを12週間とった100人の試験で、しわ・肌の水分量の指標がプラセボより良かったと報告されていますが、ヒト試験の数はまだ少数です。
| 試験 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| ランダム化比較試験、Skin Research and Technology 2024(PMID 38481080) | 韓国の健康な成人100人。カツオ由来エラスチンペプチド100mg、12週間 | しわの粗さ・深さ、目もとのしわの体積、肌の水分量、メラニンの指標がプラセボより良い結果。製品に関連する有害事象なし |
| 細胞と摂取の試験、Journal of the Science of Food and Agriculture 2016(PMID 25996804) | ヒトの皮膚の線維芽細胞と、魚由来エラスチン加水分解物の摂取試験 | 細胞の増殖とエラスチン合成が増加。摂取試験では肌の弾力が4%向上(プラセボは2%)し、しわの数と血流にも変化 |
| 吸収の研究、Journal of Agricultural and Food Chemistry 2012(PMID 22548376) | エラスチン加水分解物をとった健康な人の血液 | 血液中に主にプロリルグリシン(Pro-Gly)が現れ、30分後に最大。細胞試験ではPro-Glyがエラスチン合成を高めた |
2024年の試験は韓国で行われ、著者には原料を扱う企業の研究部門の所属者が含まれます。2016年の研究は、著者全員がエラスチン原料を扱う日本の企業の所属です。摂取試験の人数は抄録に書かれていません。
2026年に発表された、肌のペプチドの系統的レビュー(Frontiers in Medicine, PMID 41924746)は、19試験をまとめています。飲むペプチドで肌の水分量などに改善を認めた一方、肌の弾力への効果は一貫しないと結論づけました。コラーゲンなどエラスチン以外のペプチドも含むため、エラスチン単独の評価ではありません。
(2026年10月18日時点で、各論文の公開抄録を確認)
機能性表示食品として届け出る場合
エラスチンペプチドは、肌の弾力とうるおいに関する表示や、血管のしなやかさに関する表示で、機能性表示食品に使われています。
機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、機能性の科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。表示できるのは届け出た根拠の範囲の内容で、病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。
届出の例には、次のような趣旨の表示があります。
- ボニート(カツオ)エラスチンペプチドが、肌の弾力を維持し、肌のうるおいを守ることで肌の健康維持に役立つ
- カツオ由来エラスチンペプチドが、加齢とともに低下する血管のしなやかさの維持に役立つ
肌の表示の例では、エラスチンペプチドを1日110mg配合しています。根拠とする研究と同じ原料と量を使うことが前提です。
2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMPに基づく製造管理が届出者の義務となりました。2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を報告することも届出者の義務です。
エラスチンで機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。
- 根拠の取り方:既存の研究を集めて評価する研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか
- 表示の内容と量:肌か血管か、どちらの表示を目指すかを決め、根拠とする研究の原料と1日あたりの量に合わせる
- 分析の方法:製品中のエラスチンペプチドの量を測る方法と、その結果を保証する体制
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いわゆる健康食品として売る場合の表示
機能性表示食品として届け出ないエラスチンサプリは、肌や血管への作用をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | エラスチンサプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 食品なのに「しわが消える」「肌が若返る」「血管を若く保つ」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 根拠のない「医師も推薦」「No.1」や、使用前後の写真で効果を印象づける表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1日2粒にエラスチンペプチド〇mg配合」(量の事実) | 「しわが消える」「たるみ解消」 |
| 「カツオ由来のエラスチンを使用」(原料の事実) | 「失われたエラスチンを補う」「肌の中で弾力線維になる」 |
| 機能性表示食品として届け出た表示(届出の範囲内) | 「血管年齢が若返る」など、血管への作用をうたう表現 |
飲んだエラスチンが、そのまま肌のエラスチンになるわけではありません。研究で分かっているのは、分解されたペプチドが血液に現れることまでです。表示では、体の中での働きを言い切らないようにしてください。
エラスチンの製剤設計
エラスチンペプチドはミリグラム単位で配合でき、錠剤やカプセルのほか、コラーゲンと組み合わせた美容ドリンクにも使われます。
| 剤形 | 選ばれる理由 | 検討すること |
|---|---|---|
| 錠剤 | 1日1〜2粒に収めやすく、1回あたりの費用を抑えやすい | コラーゲンやヒアルロン酸と組み合わせたときの粒の大きさ |
| ハードカプセル | 味やにおいを気にせず配合できる | カプセルの素材(ゼラチンか植物性か) |
| 飲料・顆粒スティック | 美容ドリンクとして売り場でなじみがある | コラーゲンをグラム単位で入れるなら、飲料や粉末の形になる |
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 原料の由来:由来の動物(カツオなどの魚、またはその他の動物)、使う部位、分解の方法を原料メーカーに確認し、規格書に記載してもらいます。
- 1日あたりの量:上の試験では100mg、届出の例では110mgが使われています。機能性表示食品にするなら、根拠とする研究の量に合わせます。
- アレルゲン表示:カツオは、消費者庁が示すアレルゲン29品目(義務9品目と推奨20品目)に含まれていません。ただし由来の動物やカプセルの素材によっては、推奨品目の「さけ」「さば」「豚肉」「ゼラチン」などに当たらないかを確認します。表示の考え方はアレルゲン表示の解説で説明しています。
- 組み合わせる成分:美容の配合では、コラーゲンペプチドやヒアルロン酸、セラミドと組み合わせることがよくあります。組み合わせる成分も、食品に使えるかの確認が欠かせません。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
エラスチン(エラスチンペプチド)という名称は、2026年8月5日更新の厚生労働省のリストでは、別添1と別添2のどちらにも掲載されていません。動物由来の素材は、由来の動物と部位によって扱いが分かれる場合があるため、原料の規格書で確認します。配合の確認は、サプリメントOEMのページで詳しく説明しています。
見積もりの前に決めておくこと
原料の由来、1日あたりの量、剤形、組み合わせる成分が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- エラスチンペプチドの由来(動物と部位)と、1日あたりの量
- 1袋(1本)あたりの日数
- 剤形と、カプセルの場合は素材
- 組み合わせる成分(コラーゲン、ヒアルロン酸など)と、その量
- 機能性表示食品として届け出るかどうか
- 初回の製造数と、年間の見込み数
由来の動物が決まると、アレルゲン表示とカプセルの素材も決めやすくなります。使いたい原料がある場合は、規格書もあわせてお知らせください。
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よくある質問(FAQ)
エラスチンの肌への作用は、研究で確かめられていますか?
カツオ由来エラスチンペプチドを12週間とった100人の試験で、しわや肌の水分量の指標がプラセボより良い結果でした。ただしヒト試験の数は少なく、原料企業がかかわる研究が中心です。
飲んだエラスチンは、肌のエラスチンになりますか?
そのまま肌のエラスチンになるわけではありません。分解されたペプチドが血液に現れ、細胞の試験でエラスチン合成を高めたという報告があります。体の中での働きは、まだ研究の途中です。
エラスチンとコラーゲンは一緒に配合できますか?
配合できます。美容の配合では、エラスチンをミリグラム単位、コラーゲンをグラム単位で組み合わせることが多く、コラーゲンの量で剤形が決まります。
エラスチンサプリには、アレルゲンの表示が必要ですか?
カツオは消費者庁が示すアレルゲン29品目に含まれていません。ただし由来の動物やカプセルの素材によっては表示が必要になるため、原料の規格書で由来を確認してから表示を決めます。
機能性表示食品にしないエラスチンサプリでも、肌の弾力と書けますか?
いわゆる健康食品では、肌の弾力のような身体への作用をうたう表現は避ける必要があります。肌に関する表示をするなら、機能性表示食品として根拠を届け出ることを検討してください。
参考
- “Oral consumption of Bonito fish-derived elastin peptide (VGPG Elastin) improves biophysical properties in aging skin: A randomized, double-blinded, placebo-controlled study”, Skin Research and Technology 2024, PMID 38481080
- “Elastin hydrolysate derived from fish enhances proliferation of human skin fibroblasts and elastin synthesis in human skin fibroblasts and improves the skin conditions”, Journal of the Science of Food and Agriculture 2016, PMID 25996804
- “Identification of food-derived elastin peptide, prolyl-glycine (Pro-Gly), in human blood after ingestion of elastin hydrolysate”, Journal of Agricultural and Food Chemistry 2012, PMID 22548376
- “Oral and topical peptides for skin aging: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials”, Frontiers in Medicine 2026, PMID 41924746(PMC13037056)
- 厚生労働省「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」(別添1、2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734637.pdf
- 厚生労働省「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(別添2、2026年8月5日更新) https://www.mhlw.go.jp/content/001734639.pdf
- 消費者庁「アレルギー表示について」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月18日確認)