ナットウキナーゼは、納豆を作る納豆菌の発酵で生まれる酵素です。日本の朝食になじみのある納豆に由来するため、素材の背景を伝えやすく、カプセルや錠剤のサプリとして売られています。
本記事は、ナットウキナーゼサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けた成分ガイドです。研究で分かっていること、医薬品を服用中の方への注意、機能性表示食品として届け出る場合といわゆる健康食品として売る場合の表示の違い、原料規格と剤形の決め方を整理します。ナットウキナーゼは、試験の規模や期間によって結果が分かれている成分です。研究の条件と安全面の注意を知っておくと、表示と広告の言葉選びで失敗しにくくなります。
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研究で分かっていること
8週間ほどの小規模な試験では血圧の指標に差が出た報告がある一方、約3年間続けた265人の試験では、どの測定項目にも差が見られませんでした。
| 試験・レビュー | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| 無作為化二重盲検試験、Hypertension Research 2008(PubMed 18971533) | 治療を受けていない、収縮期血圧130〜159mmHgの20〜80歳86人(完了は73人)。1カプセル2,000FU、8週間 | 収縮期・拡張期血圧がプラセボ群より有意に低下 |
| 無作為化二重盲検試験、Clinical Hemorheology and Microcirculation 2021(PubMed 33843667) | 心血管の病気の兆候がない265人(年齢の中央値65.3歳)。1日2,000FU、中央値で3年間 | 頸動脈の壁の厚さと硬さの変化に差はなし。血圧や血液の凝固・線溶などの検査項目にも、有意な影響は見られなかった |
| 系統的レビューとメタ解析、Reviews in Cardiovascular Medicine 2023(PubMed 39076715) | 無作為化比較試験6件、546人 | 血圧の指標はプラセボ群より低かった。一方、総摂取量が比較的少ない場合は総コレステロールが高くなる結果も示された |
血圧に差が出た2008年の試験と、2016年に北米で行われた試験は、いずれも8週間と短く、人数も100人未満です。長期間の試験では差が出ておらず、研究の結果は一致していません。北米の試験は、試験に使った製品の販売会社が資金を出していました。
メタ解析は、一部の脂質の指標が悪い方向に動いた結果も報告しています。論文の一部の結果だけを取り出して商品の説明に使わず、全体を読むことが大切です。
(2026年10月12日時点で、各論文の公開抄録を確認)
医薬品を服用中の方への注意
ナットウキナーゼは、血液を固まりにくくする薬を服用中の方との組み合わせに注意が必要な素材で、販売時には医師・薬剤師への相談を案内することが欠かせません。
厚生労働省のパンフレット「健康食品の正しい利用法」は、薬を飲んでいる人が健康食品を使う場合は、医師・薬剤師などに相談するよう求めています。同じパンフレットは、ビタミンKが抗凝固剤のワルファリンの薬効を弱める例を挙げています。食品安全委員会の報告書(2015年)も、ビタミンKがワルファリンの薬効を減弱させることがあるという報告を紹介しています。
北米の試験では、ビタミンK2を取り除いたナットウキナーゼの原料が使われていました。原料によってビタミンK2の扱いが違うため、原料メーカーにビタミンK2の含有量を規格書と分析表で確認してください。
論文では、次のような症例の報告もあります。
- アスピリンを服用していた方が、ナットウキナーゼを1日400mg、7日間摂った後に小脳出血を起こした例(Internal Medicine 2008、PubMed 18310985)
- 機械弁による心臓の手術の後に、ワルファリンをやめてナットウキナーゼに置き換え、弁に血栓ができた例(Proceedings (Baylor University Medical Center) 2015、PubMed 25552810)
どちらも1人ずつの症例報告で、危険の大きさを示すものではありません。ただし、表示や広告で「薬の代わりになる」と受け取られる表現は、安全面からも避ける必要があります。販売ページや同封物では、医薬品を服用中の方に、医師・薬剤師への相談を案内します。
機能性表示食品として届け出る場合
ナットウキナーゼは機能性表示食品に使われていますが、届出の表示は届出者が示した根拠の範囲に限られ、いわゆる健康食品の表示には持ち込めません。
機能性表示食品は、届出者が自らの責任で、機能性の科学的根拠と安全性の情報を販売前に消費者庁へ届け出る制度です。国の審査や許可ではありません。表示できるのは届け出た根拠の範囲の内容で、病気の治療や予防を目的とする表現は認められていません。
届出の例には、納豆菌由来のナットウキナーゼを1日2,000FUとし、末梢の血流と、血圧が高めの方の血圧に関する表示をした商品があります。対象は「血圧が高めの方」に限られ、病気の方を対象にした食品ではありません。
2024年の制度改正で、錠剤・カプセルなどのサプリメント形状の機能性表示食品は、GMP(製造工程管理の基準)に基づく製造管理が届出者の義務となりました。2026年9月1日に完全施行されています。健康被害の情報を報告することも、届出者の義務です。
ナットウキナーゼで機能性表示食品を目指すときに決めることは、主に次の3つです。
- 根拠の取り方:既存の研究レビューを使うか、最終製品で臨床試験を行うか。長期間の試験で差が出なかった報告も含めて評価する
- 関与成分の量:根拠とする研究で使われた1日あたりのFUと合わせる
- 分析の方法:製品中のナットウキナーゼの活性を測る方法と、その結果を賞味期限まで保証する体制
制度の全体像は、機能性表示食品の届出の解説で詳しく説明しています。
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いわゆる健康食品として売る場合の表示
機能性表示食品として届け出ない場合、血液や血管、血圧への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | ナットウキナーゼサプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 食品なのに「血液をサラサラにする」「血栓を溶かす」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 根拠のない「納豆〇パック分のパワー」「No.1」などの表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「納豆菌の発酵から得た酵素」(原料の事実) | 「血液サラサラ」「血栓を溶かす」 |
| 「1日分にナットウキナーゼ〇FU」(規格の事実) | 病名や検査値を挙げた表現 |
| 「医薬品を服用中の方は医師・薬剤師にご相談ください」(安全の案内) | 「薬に頼らない」など、医薬品の代わりと受け取られる表現 |
ナットウキナーゼの製剤設計
ナットウキナーゼは重さではなく酵素の活性(FU)で規格を決め、製造と保存の間に活性が保たれるかを確かめることが品質の要になります。
FUは、ナットウキナーゼがたんぱく質の一種であるフィブリンを、決められた条件で分解する活性をもとにした単位です。同じ重さでも原料によって活性が違うため、試験や届出の量もFUで示されています。原料メーカーには、1gあたりのFUを分析表で示してもらいます。
| 剤形 | 選ばれる理由 | 検討すること |
|---|---|---|
| ハードカプセル | 加熱や圧力をかけずに充てんでき、味も感じにくい | 1日分のFUが何粒に収まるか |
| 腸溶性のカプセル | 胃の酸から中身を守る設計にできる | 皮膜の素材と、溶け方の試験の結果 |
| 錠剤 | 1回あたりの費用を抑えやすい | 打錠の圧力や熱で活性が下がらないかの確認 |
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 原料の規格:1gあたりのFU、ビタミンK2の含有量、納豆菌の由来と製法を、規格書と分析表で確認します。
- 1日あたりの量:製品1日分のFUを先に決め、原料の活性から必要な原料の量を計算します。機能性表示食品にするなら、根拠とする研究の量に合わせます。
- 剤形と安定性:酵素は加工や保存の条件で活性が変わることがあります。原料メーカーの安定性データを確認し、賞味期限の終わりまでFUが保たれるかを試験で確かめます。
- 表示:ナットウキナーゼは大豆を発酵させて得るため、大豆の扱いを原料の規格書で確認します。大豆は、消費者庁のアレルゲン表示で推奨の20品目に入っています。医薬品を服用中の方への相談の案内も、表示の段階で決めておきます。
腸溶性のカプセルの考え方は、腸溶カプセルの解説で詳しく説明しています。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
納豆由来の原料は食品として使われてきましたが、組み合わせる植物素材が問題になることがあります。配合の確認はサプリメントOEMのページで、大豆の表示はアレルゲン表示の解説で詳しく説明しています。研究の評価の仕方は、GABAサプリのOEMでも解説しています。
見積もりの前に決めておくこと
原料の活性、1日分のFU、剤形、注意表示が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- ナットウキナーゼ原料の1gあたりのFUと、ビタミンK2の含有量
- 1日分のFUと、1袋(1本)あたりの日数
- 剤形と、腸溶性にするかどうか
- 組み合わせる成分と、その量
- 医薬品を服用中の方への注意表示と、包装の形
- 機能性表示食品として届け出るかどうか
- 初回の製造数と、年間の見込み数
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よくある質問(FAQ)
ナットウキナーゼの研究では、何が分かっていますか?
8週間ほどの小規模な試験では、血圧の指標に差が出た報告があります。一方、265人が約3年間続けた試験では、頸動脈の変化にも血圧にも差が見られませんでした。研究の結果は一致しておらず、根拠は限定的です。
血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方にも売れますか?
厚生労働省のパンフレットは、薬を飲んでいる人が健康食品を使う場合は医師・薬剤師に相談するよう求めています。論文には、抗血小板薬との組み合わせで出血が起きた症例の報告もあります。販売ページや同封物で、医師・薬剤師への相談を必ず案内してください。
なぜ重さではなくFUで規格を決めるのですか?
ナットウキナーゼは酵素のため、同じ重さでも原料によって活性が違います。試験や届出の量もFUで示されているため、原料の分析表で1gあたりのFUを確認し、製品1日分のFUで規格を決めます。
ナットウキナーゼに大豆の表示は必要ですか?
大豆は、消費者庁のアレルゲン表示で推奨の20品目に入っています。表示は義務ではありませんが、大豆を発酵させて得る原料のため、規格書で大豆の扱いを確認し、表示するかどうかを決めておくことをおすすめします。
工場に製造を断られることはありますか?
ナットウキナーゼ自体ではなく、組み合わせた植物素材が原因になることがあります。配合するすべての成分が食品に使えるかを、最初に確認します。
参考
- “Effects of nattokinase on blood pressure: a randomized, controlled trial”, Hypertension Research 2008, 31(8):1583-1588, PubMed 18971533
- “Nattokinase atherothrombotic prevention study: A randomized controlled trial”, Clinical Hemorheology and Microcirculation 2021, 78(4):339-353, PubMed 33843667
- “Nattokinase Supplementation and Cardiovascular Risk Factors: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials”, Reviews in Cardiovascular Medicine 2023, PubMed 39076715
- “Consumption of nattokinase is associated with reduced blood pressure and von Willebrand factor, a cardiovascular risk marker: results from a randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter North American clinical trial”, Integrated Blood Pressure Control 2016, PubMed 27785095
- “Cerebellar hemorrhage provoked by combined use of nattokinase and aspirin in a patient with cerebral microbleeds”, Internal Medicine 2008, PubMed 18310985
- “Consequence of patient substitution of nattokinase for warfarin after aortic valve replacement with a mechanical prosthesis”, Proceedings (Baylor University Medical Center) 2015, PubMed 25552810
- 厚生労働省「健康食品の正しい利用法」 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin05.pdf
- 食品安全委員会「いわゆる『健康食品』に関する報告書」(2015年12月) https://www.fsc.go.jp/osirase/kenkosyokuhin.data/kenkosyokuhin_datakenkosyokuhin_houkoku.pdf
- 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月12日確認)