ゴム部品は小さく、1個あたりの金額も小さいため、後回しにされがちです。パッキンやOリング、防振ゴムは発注の最後に付け足され、手書きのスケッチで見積を取り、硬さの数字ひとつで承認される。そして届いたOリングには合わせ目にバリが残り、受入で測った硬さは成績書の値と合わず、防振ゴムは数週間使ったところで金具からはがれる、ということが起きます。

こうした問題の多くは、ゴムの配合そのものではありません。工場が選んだ成形方法、誰も書かなかったサイズと表面の規格、硬さをどこで何で測ったか、そして接着品なら金属側の下地処理から起きています。

本記事は、ベトナムからシール、Oリング、防振ゴムなどの型物(成形品)を買う日本の発注側に向けて、この5点を整理します。材料の指定の書き方と試験項目、配合を誰が持つか、ロットの試験成績書に何を求めるかはマレーシアのゴム製品OEMで詳しく扱っており、その考え方はベトナムでもそのまま使えるため、ここでは繰り返しません。

この記事が扱う範囲 — ゴムを型で加硫して作る成形品(Oリング、パッキン、ガスケット、ブッシュ、金属と一体の防振ゴム)に固有の発注条件です。材料指定・配合の所有・ロット試験はマレーシアのゴム製品OEM、金型の所有権と引き揚げは金型管理、書類の求め方は品質書類にあります。押し出して作る長尺のシール材や樹脂の異形品は樹脂押出品、金属のプロファイルはアルミ押出材です。

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決めること1|見積がどの成形方法を前提にしているかを書かせる

圧縮成形・トランスファー成形・射出成形は、同じ部品を違う型代、違うバリの量、違うばらつきで作ります。各社に、価格の前提になっている成形方法を書いてもらいます。

圧縮成形は、重さを量った未加硫のゴム生地を開いた型に置き、プレスで閉じて加硫します。トランスファー成形は、ポットに入れた生地を細い流路から閉じた型に押し込みます。射出成形は、スクリューで閉じた型に送り込みます。どれを選ぶかで、型、サイクル、取り除くバリの量、加硫の均一さが変わります。

判断基準圧縮成形トランスファー成形射出成形
型代最も低い中くらい最も高い
バリ最も多く、仕上げが必要少なめだが、1ショットごとに加硫済みの残りが出る最も少ない(型による)
1個あたりの手間最も多い(生地を手で置く)中くらい最も少ない
向いているもの大きく単純な部品、少量インサートのある部品、複雑な形数量が多く、ばらつきを抑えたいもの
聞くこと生地の重さをどう量り確認するか残りと流路をどう扱うか取り数とサイクル

どれが一般に「良い」ということはありません。年に数百個の大きなガスケットなら圧縮成形の型が合っていることもあり、大量に使うOリングなら射出成形が合っていることもあります。ただし、違う成形方法で出た2つの見積を、単価だけで比べることはできません。成形方法、取り数、仕上げ(バリ取り)が価格に入っているかを、各社に書いてもらってください。

決めること2|Oリングはサイズ規格と表面の等級を指定する

Oリングの注文には、サイズの規格と公差の等級、表面欠陥の等級が要ります。書いていなければ、工場は手持ちの近いサイズと、自社の感覚での「許せるバリ」を出してきます。

Oリングは、ゴム部品の中では珍しく公開された規格がそろっています。使わない手はありません。

  • サイズと公差。ISO 3601-1 は流体用Oリングの内径、太さ、公差、呼び番号を定め、工業用には公差の等級が2つあり、A級がB級より厳しくなっています。日本の図面では JIS B 2401(現行は JIS B 2401-1:2012)の呼び番号で書かれていることが多く、北米の図面では SAE AS568 のサイズ体系がよく使われます。ほとんど同じ寸法でも、体系が違えば互換ではありません。 日本の図面の「P20」「G25」のような呼びは、そのままでは相手に通じないことがあるので、規格番号と一緒に書きます
  • 表面の欠陥。ISO 3601-3 は、バリ、型ずれ、合わせ目の出っ張り、削りすぎ、流れ跡、欠け(充填不足)、へこみといったOリングの表面欠陥を定義し、許容限度を等級で分けています。N級が一般用、S級がより高い性能が要る用途、CS級が最も厳しい等級です。書いていなければ、工場が「普通」と考えるものが届きます
  • 手持ちの型。標準サイズは工場がすでに持っている型で作ることが多く、その場合は型代がかかりません。その代わり、型は自社のものにならず、取り数や型の配置を承認する立場にもありません

もう1点、材料を変えるときの注意です。ISO 3601-1 の寸法表は、一般的なニトリルゴム(NBR)の収縮に合わせて削った型を前提にしています。一部のフッ素ゴムやシリコーンゴムのように縮み方が違う材料では、公差に収めるために専用の型が要ることがあります。既存サイズで材料だけ変えるなら、同じ型を使うのか、使うと寸法がどうなるのかを聞いてください。

決めること3|バリは「なし」ではなく、効く面に限度を書く

型で作るゴム部品には必ず合わせ目があります。「バリなし」と書くのではなく、どの面にどこまで許すかを決め、バリ取りの方法も合意します。

バリは、型の合わせ目からはみ出した薄いゴムの膜です。取り方には、手作業の仕上げ、タンブラー(回転バレル)、バリがきれいにちぎれるよう設計した型、冷凍バリ取り(部品を冷やして薄いバリだけをもろくし、吹き付けで落とす)などがあり、方法ごとに縁の仕上がりが違います。削りすぎはバリより悪いことがあります。シール面に付いた小さな切れ込みは、そのまま漏れになるからです。

図面に書くことは次のとおりです。

  • シール面と、合わせ目のバリを一切許さない面に印を付ける
  • それ以外の面には、バリの厚さと出っ張りの上限を書く。Oリングなら ISO 3601-3 の等級で指定する
  • 型を作る側が合わせ目の位置をずらしてよいか(シール面から外すため)を書く
  • 工場がどのバリ取り方法を使うかを聞き、量産ロットで初めて知るのではなく、初品の段階で承認する

ゴムの寸法公差は一般に ISO 3302-1 によります。この規格は、型で作ったゴムが削った金属のようには寸法を保てないことを前提にしています。日本の図面に金属部品と同じ感覚の公差がすべての寸法に入っていると、断られるか、守れないまま引き受けられるかのどちらかになります。

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決めること4|硬さは「どこで・どの方法で」測るかを決める

製品で測った硬さは、成績書の値と比べられないことがよくあります。試験片で測るのか、製品で測るのか、どの方法で測るのかを決めます。

硬さはすべての発注側が確かめる値で、同時に、いちばん無駄な揉め事を生む値でもあります。デュロメータ(ショアA)は、十分な厚さのある平らな試験片で測る前提の測定器です。小さなOリングの丸い断面や薄いリップに押し当てると、同じ配合の平らな試験片とは違う値が出ます。どちらも間違いではなく、違う測定なのです。決めるのは次の3点です。

  1. どこで測るか。製品と同じバッチで作り、一緒に加硫した平らな試験片で測るのか、製品そのもので測るのか、両方か。図面に書きます
  2. どの方法か。デュロメータ(ショア)なら ISO 48-4、日本では JIS K 6253-3:2023(ISO 48-4:2018 を基に一部変更して作られた規格)です。国際ゴム硬さ(IRHD)なら ISO 48-2:2018 で、薄く小さい試験片向けのマイクロ法を含みます。日本では JIS K 6253-2 が IRHD を扱います。小さなOリングでは、製品でのマイクロ硬さが、完成品で意味のあるほぼ唯一の確認になることがあります
  3. どの測定にどの許容差を当てるか。試験片の硬さで決めた許容差を、丸い製品で測った値にそのまま当てはめないこと

古い図面の「Hs70」に注意する

日本の古い図面や社内規格には、「硬さ Hs70」のような表記が残っていることがあります。これはすでに廃止された旧規格 JIS K 6301 の時代の書き方で、現行の JIS K 6253 のデュロメータとは試験機や条件が一致しない場合があります。ベトナムの工場は「ショアA 70」と読み替えることが多いはずですが、読み替えを工場任せにせず、現行規格の方法と許容差に書き直してから渡すほうが安全です。

受入検査に手持ちのデュロメータしかないなら、それも初品の段階で伝え、承認したサンプルを自社の測定器で測って記録しておきます。以後の受入の値は、別の方法で出た成績書の数字ではなく、自社の基準値と比べることになります。

決めること5|金属との接着品は「金属側」と試験方法を決める

ゴムと金属を一体にした部品は、ゴムそのものより接着面で壊れることが多い部品です。金属の下地処理、接着の試験、荷重とたわみの確認を、配合と同じくらい丁寧に指定します。

防振ゴム、ブッシュ、金具付きのシールは、プライマーと接着剤を塗った金属のインサートの上に直接ゴムを成形して作ります。接着は加硫の間にできあがります。金属表面の洗浄や下地処理が足りなかったり、接着剤の塗りむらがあったりすると、見た目は完璧なまま、使っているうちにはがれます。合意しておく点は次のとおりです。

  • 金属部品を誰が用意するか。自社が支給するのか、ゴム工場が作るのか、ゴム工場が現地の加工屋やプレス屋から買うのか。どの経路かで、さびた・寸法の外れたインサートの責任が誰にあるかが変わります
  • 下地処理。脱脂、ブラストやリン酸塩処理、プライマー、接着剤の順序を聞き、バッチごとに記録しているかを確かめます。接着剤の変更は、発注側の承認が要る変更として扱います
  • 接着の試験。ISO 813:2019(硬い板からの90度はく離)と ISO 814:2017(2枚の板で挟む方法)は、配合や接着剤の系を比べるための試験室の方法です。量産では、ロットごとに抜き取った部品を引きはがして破断面を見る破壊試験を決めておきます。健全な接着ならゴムの中でちぎれ、金属の地肌や接着剤の層が見えるなら接着に問題があります
  • 荷重とたわみ。防振ゴムでは、硬さよりばね特性が大事です。かける荷重、許容するたわみの範囲、確認の頻度を書きます
  • 防錆。屋外で使う、または船で運ぶなら、成形後に露出する金属部分のさび止め

インサートには金属部品としての図面の論点があります。プレスの金具はベトナム板金・プレス加工の委託前に決める4点、削り出しのカラーや軸は切削加工を参照してください。

保管・梱包と加硫日|日本の倉庫での先入れ先出しまで決める

ゴム部品は光、熱、オゾンで劣化します。守れる梱包と、袋ごとの加硫日の表示を求め、在庫の回し方もその日付で決めます。

ISO 2230:2026 は、ゴム製品の検査、記録、包装、保管の指針を示しています。ベトナムからの発注で実務的に効くのは次の点です。

  • 梱包。光を通さない密閉した袋か箱。部品を引っ張ったり、折ったり、フックに掛けたりしない。Oリングをひもや針金で束ねない
  • 表示。品番、配合の記号、ロット、加硫日を袋ごとに入れ、パッキングリストと一致させる
  • 輸送中。熱帯の港からの海上輸送では、コンテナの中で長く熱にさらされることがあります。両端で直射日光やオゾンの発生源から離し、電気機器と一緒に詰めない
  • 在庫の回し方。日本の倉庫での先入れ先出しは、入荷日ではなく加硫日で行う

ロットごとの確認、つまり限度見本との外観比較、寸法、決めた方法での硬さは、出荷前検査の項目に組み込みます。進め方はベトナムの品質管理・検品代行ガイド、初品の承認で残すものは射出成形の記事の試打から量産への判定が参考になります。食品に触れるパッキンなど、日本へ輸入するときの届出や関税分類の注意はマレーシアのゴム製品OEMの「日本へ輸入するときに確認すること」にまとめています。

見積依頼のチェックリスト

ゴム部品の見積は、すべての工場が同じ成形方法の前提、同じサイズと表面の規格、同じ硬さの測り方、同じ試験頻度で見ているときに初めて比べられます。

  • 材料の指定:ゴムの種類、硬さ、試験方法つきの物性(書き方はマレーシアのゴム製品OEM)
  • 成形方法:各社に書かせる。取り数と、バリ取りが価格に入っているか
  • Oリングのサイズ:ISO 3601-1 の等級、JIS B 2401 または AS568 の呼び
  • 表面:ISO 3601-3 の等級、またはバリの限度を面ごとに
  • 硬さ:試験片か製品か、JIS K 6253-3(ISO 48-4)か ISO 48-2 か
  • 接着品:インサートの用意、下地処理、接着とばね特性の試験
  • 型:所有権、刻印、引き揚げ(金型管理)
  • 梱包と表示:遮光の袋、加硫日、ロット

並べ方の全体はベトナム製造委託の見積もり(RFQ)の取り方にあります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 受入で測った硬さが成績書の値と合わないのはなぜですか?
A. 多くは、成績書の値が平らな試験片で測ったもので、受入では製品そのものを測っているか、違う方法で測っているためです。どこで、どの方法で測るかを決め、承認したサンプルを自社の測定器で測った値を基準として残してください。

Q2. 標準サイズのOリングなら、型代なしで注文できますか?
A. できることが多いです。工場は一般的な標準サイズの型を持っています。JIS B 2401 や ISO 3601-1 などのサイズ規格と公差の等級を書いて意図したサイズを受け取り、型は自社のものにならず承認もできないことを了解したうえで使います。

Q3. 「バリなし」という要求は妥当ですか?
A. 一律の要求としては妥当ではありません。型で作るゴム部品には必ず合わせ目があります。バリを許さない面に印を付け、それ以外の面には限度を書き、バリ取りの方法を初品の段階で合意してください。

Q4. 防振ゴムが金具からはがれないことは、どう確かめればよいですか?
A. ロットごとに抜き取った部品で破壊試験をすると決め、破断面を見ます。ゴムの中でちぎれていれば接着は健全で、金属の地肌が見えるなら問題があります。荷重とたわみの確認も加え、接着剤や下地処理の変更は承認が要る変更として扱います。

Q5. ゴム成形品はどのくらい保管できますか?
A. ゴムの種類と保管条件で変わります。配合ごとの目安を工場に聞き、ISO 2230 の保管の指針に沿って遮光・密閉で保管し、加硫日の古いものから使ってください。

まとめ

ゴム部品のトラブルは、配合よりも「書いていなかったこと」から起きます。見積は成形方法の前提をそろえて比べる。Oリングは JIS B 2401 や ISO 3601-1 のサイズと公差の等級、ISO 3601-3 の表面の等級まで書く。バリは効く面にだけ限度を書き、バリ取りの方法を初品で承認する。硬さは試験片か製品か、どの規格の方法かを決め、古い「Hs」表記は現行規格に書き直す。接着品は金属側の下地処理と破壊試験を決め、梱包には加硫日を入れる。これだけで、小さな部品が後から大きな手戻りを生む事態はかなり防げます。

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※出典:ISO 3601-1:2012(Amendment 1:2019を含む)、ISO 3601-3、ISO 3302-1、ISO 48-2:2018、ISO 48-4:2018、ISO 813:2019、ISO 814:2017、ISO 2230:2026、JIS B 2401-1:2012、JIS K 6253-2、JIS K 6253-3:2023。2026年10月19日確認。