押出品は、射出成形品より買いやすく見えます。高価な金型はいらず、断面図は1枚で済み、工場はメートル単価かキロ単価ですぐに見積を出してくれます。ところが初回の納品で、片側の端では寸法が合っているのに反対側では外れている、切ったときより長さが縮んでいる、「バージン材」のはずの塩ビに粉砕品が混ざっていた、という問題がまとめて出てきます。

原因は工場の腕よりも、押出が連続して流れる工程だという点を発注側が条件に落としていないことにあります。射出成形のように1個ずつ型で決まるのではなく、冷えながら形が決まり、冷えた後も少し縮み、1本の中でも場所によって寸法が違うからです。

本記事では、ベトナムの押出工場に見積を依頼する前に決めておく4つ、(1)押出金型と試作、(2)寸法をいつ・どこで・どう測るか、(3)配合と再生材、(4)長尺品の表示と梱包、を日本の発注側の目線で整理します。

この記事が扱う範囲 — 熱可塑性樹脂を連続して押し出すパイプ・異形押出(プロファイル)・シートの発注条件です。1個ずつ型で作る成形品は樹脂射出成形、金型の所有権・持込・返却は金型管理、書類をどの段階で求めるかは品質書類に分けました。同じ押出でも金属はアルミ押出材、型で加硫するゴム部品はゴム成形品にまとめています。

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最初に分ける|パイプ・異形押出・シートは別の買い物

パイプ、異形押出、シートは似た押出機で作りますが、何で仕様が決まるか、何で揉めるかがそれぞれ違います。どれを買うのか、パイプならどの製品規格に合わせるのかを最初に書きます。

圧力管を毎日流している工場は、窓枠用の異形押出の見積も、パイプの感覚で公差や試験を想定して出してくることがあります。日本側の引き合いに「どの種類か」が書いていないと、前提がそろいません。

判断基準パイプ異形押出(プロファイル)シート
仕様を決めるもの製品規格+呼び径+圧力の区分自社の図面厚さ・幅・表面仕上げ・平面度
金型工場の手持ちのサイズで足りることが多い断面に合わせて新しく作る(金型+冷却しながら形を保つサイジング)平らな金型は手持ちが多く、表面はロールで決まる
揉めやすい点一番薄いところの肉厚、耐圧試験の不合格断面寸法の外れ、長さ方向の曲がり・ねじれ幅方向の厚さのばらつき、表面のキズ
主な試験規格が求める寸法・耐圧・加熱収縮寸法と相手部品とのはまり具合、加えて指定したもの厚さ分布、外観、指定した物性

パイプの国際規格は、水道・圧力排水用のポリエチレン管が ISO 4427-2:2019、硬質塩ビ(PVC-U)管が ISO 1452-2:2009 です。日本国内で使う給水用なら、日本の図面は JIS K 6742(水道用硬質ポリ塩化ビニル管、2016年改正)や JIS K 6762(水道用ポリエチレン二層管、2019年改正)を指していることが多いはずです。どれを使うかは用途と販売先で決まります。規格を書かない引き合いは、肉厚も材料の区分も試験の中身も工場に決めさせることになる、という点だけ押さえてください。なお日本で給水用途に使う部材は、製品規格とは別に水道法側の基準への適合が問われます。給水用の部材を海外で作るときは、ベトナムの工場に話す前に、自社の品質保証部門か販売先に必要な確認を聞いておくのが近道です。

決めること1|押出金型は「鋼材代」ではなく「試作回数」で見積もらせる

新しい異形押出の金型が一発で図面どおりになることはまれで、試作のたびに修正して寄せていきます。金型代に何回の試作が含まれ、それを超えたら誰が払うかを先に決めます。

異形押出には、溶けた樹脂を断面の形にする金型(ダイ)と、冷える間に形を保つサイジング(キャリブレーター)が要ります。樹脂は均一には流れません。厚い部分は速く、薄い部分は遅く流れ、金型を出た瞬間に膨らんで、冷えると縮みます。そのため金型メーカーは試作のたびに流路を削り直し、冷えた断面が図面に合うまで追い込みます。

引き合いに入れて、各社に答えてもらう項目は次のとおりです。

  • 金型代に含まれる試作回数と、発注側が図面を変えた場合の追加試作の費用の扱い
  • 各試作で送ってもらうサンプルの長さと本数、断面をカットした写真と測定値を付けるかどうか
  • 誰が金型を設計するか。押出工場の社内か、外部の金型屋か。外部なら試作中の修正をどちらが受け持つか
  • 想定する冷却ラインの長さとライン速度。同じ金型でも速度が変われば結果が変わります。見積の速度と、承認したときの速度をそろえます
  • 二色押出(共押出)の有無。柔らかいシールのリップ、色の表層、再生材の芯など別の材料を重ねるなら最初に言います。押出機がもう1台要り、金型も別物になります

押出に固有の注意が1つあります。押出金型は特定の押出機と冷却ラインに合わせて調整されているため、金型の所有権が自社にあっても、別の工場へ移せば試作のやり直しになるのが普通です。所有権の書き方、刻印、引き揚げの条件そのものは、射出成形の型と同じ論点なのでベトナム製造委託の金型管理に譲ります。

決めること2|寸法は「いつ・どこで・どう測るか」まで図面に書く

押出品の寸法は冷えて落ち着くまで動きます。断面のどこを、押し出してからどれだけ経って、何で測るかを決めておかないと、誠実な検査員が2人いても結果が2つ出ます。

樹脂は切った後も縮みます。工場のライン上の測定器、工場の検査台、日本の受入検査がそれぞれ違う値を出すのは、品質と関係のない理由であることが少なくありません。次の4点を図面か検査基準書に書きます。

  1. 測る前の置き時間と温度。押し出してから何時間後に、何度の環境で測るか。これがないと、特に長さで揉めます
  2. 断面の測り方。パイプなら ISO 3126:2005 が外径・真円度・長さ・肉厚の測り方を定めているので、規格名を書けば工場の「平均外径」と自社の「平均外径」が同じ意味になります。異形押出なら、ノギス、投影機、断面のスキャン、相手部品に合わせた通り・止まりゲージのどれで見るかを決めます
  3. 長さ方向の形。曲がり、ねじれ、真直度は、1本を定盤に置いて初めて分かります。何メートルの区間で測り、許容値をいくつにするかを書きます
  4. 切断長さ。公差と、長さを測るときの温度を書きます。温かいうちに切った長尺品は、日本に着く頃には短くなっていることがあります

パイプの場合、加熱したときの縮み(加熱収縮、押出で残った内部のひずみの目安)は ISO 2505:2023、内圧に対する強さは ISO 1167-1:2006 で試験します。どの試験をどの条件でやるかは、工場の慣習ではなく、最初に指定した製品規格から決まります。

日本の図面の「普通公差」をそのまま流用しない

日本の図面には「指示なき寸法公差は JIS B 0405 中級」や「社内規格による」といった注記が入っていることがよくあります。前者は主に削り出しの金属部品を想定した普通公差で、押出品の断面にそのまま当てはめると、出せない公差になったり、出せないまま「了解」と返ってきたりします。後者は相手から見れば中身のない一文です。はまり具合を決める数か所の寸法だけに印を付けて公差を書き、残りは押出品として現実的な一般公差にするほうが話は早く進みます。図面と公差の書き方の基本はベトナム切削加工の発注前に決める図面と公差にまとめています。

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決めること3|配合と再生材の割合を仕様に書く

押出品は純粋な樹脂ではなく、安定剤・充填剤・再生材を含む「配合(コンパウンド)」から作ります。工場ごと・ロットごとに変わるのはここなので、仕様の一部として書きます。

塩ビは樹脂だけで押し出すことはなく、熱安定剤、滑剤、耐衝撃改質剤、多くの場合は炭酸カルシウムのような充填剤を加えます。硬質塩ビに充填剤が入るのは普通ですが、量によって剛性、衝撃強さ、表面の質が変わり、値下げを求められたときに一番動かしやすいのもここです。最低限、次を書きます。

  • ベースの樹脂とグレード、または承認済みグレードの一覧(射出成形の材料指定と同じ考え方です)
  • 充填剤の上限(効く部品の場合)と、その確かめ方。たとえばサンプルの灰分で見る、など
  • 安定剤の種類。完成品をEUに出す場合、REACH附属書XVII 項目63を改正した規則 (EU) 2023/923 により、塩ビ製品は鉛が塩ビ材料の重量の0.1%以上なら上市できなくなりました(2024年11月29日から。回収塩ビには別の期限があります)。安定剤の種類は思い込みではなく書面で受け取ります
  • 耐候と色。屋外品なら紫外線対策の配合、色なら基準サンプル、見る光源、ロット間の色差をどう受け入れるか

「再生材」には3種類ある

ひとくちに再生材といっても中身は3つあり、どれを認めるかを注文書に書く必要があります。

種類出どころ分かることよくある扱い
社内の粉砕品自社の立ち上げ時のロスや端材(同じ配合)中身は分かるが、繰り返すほど熱の履歴が重なる書面の上限までなら認めることが多い
工場由来の再生材他社の工場から買った端材出どころ次第。別グレードが混ざる可能性出どころを承認した場合のみ認める
使用済み品由来の再生材回収した使用済み製品を選別・再加工最もばらつく。異物や古い添加剤の可能性試験込みで意図して指定するか、認めない

表面と色をそろえたいときは、芯を再生材、表層をバージン材にする共押出という中間の選択もあります。再生材の含有率を自社や顧客が表示したい場合は、EN 15343:2007 が再生プラスチックの追跡と含有率の計算方法を定めているので、工場の再生材の仕入先がそれに沿った記録を出せるかを聞きます。

食品に触れる部品は特に注意が要ります。日本の食品衛生法では、合成樹脂製の器具・容器包装は使ってよい物質を定めるポジティブリスト制度に移っており、制度の導入は2020年6月1日、経過措置を経て2025年6月1日から完全施行です。再生材を含め、配合を工場任せにしたままでは日本側で適合を説明できません。輸入時の届出の流れはマレーシアのゴム製品OEMの「日本へ輸入するときに確認すること」でも触れています。

何を決めるにしても、割合と種類は書面に残してください。**粉砕品について何も書いていない注文書は、混ぜることを禁じていません。**どの書類をどの段階で取り寄せるかはベトナム部品調達の品質書類にあります。

決めること4|長尺品の表示・梱包・積み方を決める

押出品は長く、軽く、変形しやすいので、工場を出たときに公差内だったものが日本に着いても公差内かどうかは、梱包の仕方で決まります。

傷みの原因は、ほとんどが力と熱です。支え方が偏って曲がった長尺品、積み上げの下で楕円につぶれたパイプ、互いにこすれたプロファイル、暑いコンテナの中で荷重を受けて柔らかくなった薄肉部、といったものです。書面で決めておくのは次の項目です。

  • 長さと束ね方。使うコンテナに合わせた定尺、1束の本数、断面をつぶさない結束の方法
  • 支え。直線品は決めた間隔で木やプラスチックのスペーサーを入れる、脚の細いプロファイルは木枠に入れる、パイプは積み上げの高さに上限を設ける
  • 保護。プロファイルやシートの見える面に保護フィルム、パイプの端にはごみや虫が入らないようキャップ
  • ライン上での印字。パイプや多くのプロファイルは、押し出しながら連続して印字できます。規格、サイズ、製造日、ラインやロットの記号を一定間隔で印字しておけば、日本で不具合が見つかったときにどの直(シフト)の品物かまでたどれます
  • コイル巻き。細いポリエチレン管はコイルで納めることがあります。折れないよう巻きの最小径を決めます

束ごとのラベルには品番、図面の版、ロット記号、長さを入れ、パッキングリストと一致させます。積み込み前の数量確認、寸法の抜取、梱包方法そのものの確認は、出荷前検査の項目として組み込めます。進め方はベトナムの品質管理・検品代行ガイドを参照してください。

見積を並べる前に確認する|単価の「単位」をそろえる

押出品の見積は、断面、配合のルール、測定の計画、梱包をすべての工場が同じ前提で見ているときに初めて比べられます。

引き合いに入れるものをまとめると次のとおりです。

  • 断面図(効いている寸法、一般公差、基準面)。パイプなら製品規格と区分
  • 配合:樹脂とグレード、充填剤の上限、安定剤の書面、耐候と色の基準、認める再生材の種類と割合
  • 金型代に含む試作回数と、修正を受け持つ側
  • 測定の計画、切断長さと公差、製品への印字
  • 年間の使用長さか重量、1回の発注量、梱包と積み方

単価の単位も工場によって違います。メートル単価で出す工場もあれば、1メートルあたりの想定重量を前提にキロ単価で出す工場もあります。キロ単価なら、根拠になっている1メートルあたりの理論重量と、実際の重量が振れたときの精算方法を聞いてください。そうしないと「同じ値段」の2社が、実は違う量の材料を前提にしていることがあります。並べ方の全体はベトナム製造委託の見積もり(RFQ)の取り方、関税と原産地の考え方はEPA・AJCEP・RCEPの選び方が参考になります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 工場の測定値と日本の受入検査の値が合わないのはなぜですか?
A. 多くは、測った時間・温度・場所が違うためです。樹脂は押し出した後も縮み、1本の中でも断面の寸法は少しずつ違います。置き時間、測り方、測る位置を書面で決め、同じ条件どうしで比べてください。

Q2. 押出金型の試作は何回くらいかかりますか?
A. 断面次第です。単純な中実の断面なら早く落ち着くこともありますが、細い脚、中空の部屋、厳しい公差があるほど回数は増えます。推測するより、各社に「金型代に何回の試作が含まれ、追加1回はいくらか」を見積に書いてもらうほうが確実です。

Q3. 粉砕品(再生材)を全面禁止にしてもよいですか?
A. できますし、そうすべき部品もあります。ただし全面禁止にすると、工場が自社のきれいな端材を使う普通の手段がなくなり、価格に表れることがあります。同じ配合の社内粉砕品は書面の上限まで認め、外から買った再生材は承認制にする、という決め方をする発注側も多くあります。

Q4. 自社で払った金型なら、別の工場へ簡単に移せますか?
A. 移すことはできますが、試作のやり直しを見込んでください。押出金型は特定の押出機と冷却ラインに合わせて調整されているため、移した先で慣らしが必要になるのが普通です。所有権と引き揚げの条件は金型の契約に書いておきます。

Q5. パイプはどの規格に合わせればよいですか?
A. 使う国と用途が求める規格です。ポリエチレンの水道管なら ISO 4427-2、硬質塩ビの圧力管なら ISO 1452-2 が国際的な基準で、日本国内の給水用なら JIS K 6742 や JIS K 6762 が図面に書かれていることが多いはずです。引き合いに規格と区分を書き、工場に選ばせないことが大切です。

まとめ

樹脂押出品は「型代が安くて断面図1枚で済む」ぶん、決めておくべきことが図面の外に残りやすい品目です。押出金型は試作回数と修正の負担で見積もらせる。寸法は置き時間・測り方・測る位置まで書き、日本の図面の普通公差の注記をそのまま流さない。配合は充填剤・安定剤・再生材の種類と割合まで書面にし、食品に触れるなら日本の制度に合うかを先に確かめる。長尺品は束ね方・支え・印字・ラベルまで決める。この4つがそろえば、見積は同じ物差しで並び、初回納品で揉める余地は大きく減ります。

💬 押出工場の探索・選定から、試作の立ち会い、出荷前検査、輸出手続きまで代行します。 Sunsho Tradeはホーチミンに拠点を置く日系商社です。ベトナムでの製造・OEM、調達・輸出支援のどちらでもご相談いただけます。お問合せフォームまたはLINEからお気軽にどうぞ。


※出典:ISO 4427-2:2019、ISO 1452-2:2009、ISO 3126:2005、ISO 2505:2023、ISO 1167-1:2006、EN 15343:2007、Commission Regulation (EU) 2023/923(REACH附属書XVII 項目63の改正)、JIS K 6742:2016、JIS K 6762:2019、厚生労働省「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」説明資料。2026年10月19日確認。