マグネシウムは、骨や歯、エネルギーづくりにかかわるミネラルです。日本では栄養機能食品として表示できる成分の一つで、単体のサプリのほか、カルシウムや亜鉛と組み合わせた商品にも使われています。海外では「睡眠」をテーマにしたマグネシウムサプリも話題になっています。
本記事では、マグネシウムサプリを自社ブランドでOEM製造したい事業者の方に向けて、研究で分かっていること、栄養機能食品として表示する場合の決まり、いわゆる健康食品として売る場合の表示、原料と剤形の決め方を整理します。栄養機能食品のマグネシウムの基準は2026年10月1日に改正され、上限値と文言が変わりました。国が決めた機能の文言に睡眠は含まれていないため、研究の話題と表示を分けて考えることが大切です。
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研究で分かっていること
マグネシウムと睡眠の研究は結果が一貫しておらず、2026年の系統的レビューは、根拠の確実性は低いか非常に低いと評価しています。
| 試験・レビュー | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| 系統的レビュー、Journal of Dietary Supplements 2026(PMID 42661485) | マグネシウムだけを使い、大人の睡眠に関する項目を調べたランダム化比較試験12件。対象者・原料の種類・量・期間は試験ごとに大きく異なる | 主観的な評価、脳波、活動量計などで結果が一貫しない。一部の大人で主観的な項目に小さな利点がある可能性はあるが、確実性は低いか非常に低い |
| ランダム化比較試験、Nature and Science of Sleep 2025(PMID 40918053、PMC12412596) | 睡眠の質が低いと自己申告した18〜65歳の健康な大人155人。マグネシウムビスグリシネート(マグネシウムとして1日250mg)またはプラセボを4週間 | 不眠の重さを測る質問票(ISI)の点数の下がり幅が、マグネシウム群で−3.9、プラセボ群で−2.3(p=0.049)。効果量は小さい(d=0.2)。ほかの心理面の項目では差がない |
2025年の試験は、主観的な質問票による4週間の結果で、著者自身も客観的な測定と長い期間の試験が必要だと述べています。2026年のレビューの筆頭著者は、2025年の試験の共著者でもあります。マグネシウムの種類や量が違えば、同じ結果になるとは限りません。
(2026年10月12日時点で、各論文の公開抄録を確認)
栄養機能食品として表示する場合
マグネシウムは栄養機能食品の対象成分で、2026年10月1日の改正後は、1日あたりの摂取目安量に96mg以上320mg以下を含めば、国が決めた文言で機能を表示できます。
栄養機能食品は、国が決めた栄養成分について、決められた機能を表示できる制度です。届出や国の個別審査は必要ありません。そのかわり、量の範囲と表示する文言が、食品表示基準の別表第十一で決まっています。
別表第十一は、2026年10月1日公布・施行の内閣府令(令和8年内閣府令第89号)で改正されました。マグネシウムの基準は次のとおりです。
| 項目 | 改正後(2026年10月1日施行) | 改正前 |
|---|---|---|
| 1日あたりの摂取目安量に含まれる量 | 下限値96mg、上限値320mg | 下限値96mg、上限値300mg |
| 栄養成分の機能 | 「マグネシウムは、骨や歯を作るのに必要な栄養素のひとつです。」 「マグネシウムは、エネルギーを作るのを助ける栄養素のひとつです。」 「マグネシウムは、血液循環を正常に保つのを助ける栄養素のひとつです。」 | 「マグネシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です。」 「マグネシウムは、多くの体内酵素の正常な働きとエネルギー産生を助けるとともに、血液循環を正常に保つのに必要な栄養素です。」 |
| 摂取をする上での注意事項 | 「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。マグネシウムを多量に摂取すると軟便(下痢)になることがあります。一日の摂取目安量を守ってください。乳幼児・小児は本品の摂取を避けてください。」 | 「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。多量に摂取すると軟便(下痢)になることがあります。一日の摂取目安量を守ってください。乳幼児・小児は本品の摂取を避けてください。」 |
上限値の320mgは、今回の見直しで栄養素等表示基準値をそのまま上限値に採用したものです。下限値の96mgは、栄養素等表示基準値320mgの30%です。消費者庁の資料は、日本人の食事摂取基準(2025年版)で、通常の食品以外からの摂取の耐容上限量が成人で1日350mgとされていることも示しています。
改正後は、機能の文言が3つの文に分かれました。注意事項には「マグネシウムを」という成分名が加わっています。亜鉛など、ほかの成分と一緒に表示するときに、どの成分の注意かを分かりやすくするための変更です。
改正府令の附則には経過措置があり、令和12年(2030年)3月31日までに製造・加工・輸入される加工食品は、改正前の基準によることもできます。経過措置で改正前の基準による場合は、量も文言も注意事項も改正前の基準でそろえます。
機能の文言と注意事項は、主旨が同じでも言い換えや省略が認められていません。ほかにも、次の表示が必要です。
- 「栄養機能食品(マグネシウム)」のような、栄養機能食品である旨と成分の名称
- 1日あたりの摂取目安量と、摂取の方法
- 「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」の文言
- 「本品は、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。」の文言
- 1日あたりの摂取目安量に含まれるマグネシウムが、栄養素等表示基準値に占める割合
マグネシウムのように食事摂取基準で摂取基準が決まっている栄養素は、機能性表示食品の機能性関与成分にはできません。睡眠に関する表示をマグネシウムで届け出ることはできない点に注意が必要です。制度の全体像は、栄養機能食品の解説で20成分の基準とあわせて説明しています。
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いわゆる健康食品として売る場合の表示
栄養機能食品の表示をしないマグネシウムサプリは、身体への効果をうたうと医薬品とみなされるおそれがあり、表示できる内容は大きく限られます。
健康食品の広告や表示には、主に次の法律がかかわります。
| 法律 | かかわる規定 | マグネシウムサプリで注意すること |
|---|---|---|
| 医薬品医療機器等法(薬機法) | 承認前の医薬品の広告の禁止(第68条) | 「ぐっすり眠れる」「不眠に」「便通を整える」など医薬品的な効果をうたうと、未承認医薬品の広告とみなされるおそれがある |
| 健康増進法 | 誇大表示の禁止(第65条) | 健康の保持増進の効果について、著しく事実と異なる表示や、人を誤認させる表示はできない |
| 景品表示法 | 優良誤認表示の禁止 | 根拠のない「医師も推薦」「No.1」などの表示 |
消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」で、問題となる表示の例を示しています。違反かどうかは、個々の言葉だけでなく、表示全体から判断されます。
| 比較的安全な言い方 | 避けるべき言い方 |
|---|---|
| 「1日分(3粒)にマグネシウム〇mg」(量の事実) | 「眠りの質を高める」「寝つきがよくなる」 |
| 栄養機能食品の決まった文言(範囲内の量で、言い換えずに使う) | 栄養機能食品の文言に睡眠やリラックスの言葉を付け足す表現 |
| 「夜の習慣に」(使用場面。全体で効果をうたわない) | 特定の原料の試験結果を、種類も量も違う商品に当てはめる表現 |
マグネシウムの製剤設計
マグネシウムは1日に数十〜数百mgと量が多く、原料によってマグネシウムの割合や溶けやすさ、味が大きく違うため、原料選びが設計の中心になります。
| 剤形 | 選ばれる理由 | 検討すること |
|---|---|---|
| 錠剤 | 1回あたりの費用を抑えやすく、量を正確にそろえやすい | 量が多いと粒が大きくなるか、1日の粒数が増える |
| ハードカプセル | 味がなく、他の成分と組み合わせやすい | 1粒に入る量が限られる |
| 顆粒・粉末スティック | 飲み物に溶かす使い方に向く | 原料による苦みや味の調整 |
仕様を決めるときに確認することは次のとおりです。
- 原料の種類:酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、クエン酸マグネシウムなど、いくつかの原料があります。酸化マグネシウムは重さの約6割がマグネシウムですが、クエン酸マグネシウムは割合が低く、同じ量に必要な原料の重さが大きく変わります。
- 1日あたりの量:栄養機能食品にするなら、改正後は96〜320mgの範囲です。原料に含まれるマグネシウムの割合から、配合量を計算します。
- 軟便への配慮:注意事項にあるとおり、多くとると軟便になることがあります。上限値の範囲でも、1回量を分けるなど、飲み方の案内を考えておきます。
- 組み合わせる成分:カルシウム、亜鉛、ビタミンD、植物素材などと組み合わせることがあります。植物素材は、食品に使えるかどうかの確認が欠かせません。
マグネシウムは、原料の重さとマグネシウムそのものの量が大きく違う成分です。仕様書には原料名と、マグネシウムとしての量の両方を書いておくと、工場とのやりとりで行き違いが起きにくくなります。
最初に確認すること:食品に使える成分か
日本では成分によって食品か医薬品かが決まるため、配合するすべての成分が食品に使えるものでなければ、サプリとして製造できません。
厚生労働省は、昭和46年の通知(薬発第476号)の考え方に基づき、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を示しています。このリストにある成分を含む製品は、表示にかかわらず医薬品と判断されます。
マグネシウム自体は食品に使われていますが、睡眠やリラックスをテーマにした配合では、組み合わせる植物素材が問題になることがあります。配合の確認は、サプリメントOEMのページで詳しく説明しています。組み合わせる成分を検討する際は、亜鉛、ビタミンD、マルチビタミン、GABAの成分ガイドも参考にしてください。
見積もりの前に決めておくこと
原料の種類、1日あたりの量、剤形、組み合わせる成分、表示の方針が決まれば、工場は正確な見積もりを出せます。
- マグネシウムの原料の種類と、マグネシウムとしての1日あたりの量
- 1日あたりの粒数、または1包の量
- 剤形と、顆粒の場合は味
- 組み合わせる成分と、その量
- 栄養機能食品として表示するかどうかと、使う基準(改正後か経過措置か)
- 初回の製造数と、年間の見込み数
量が多い成分なので、1日の粒数を先に決めておくと、原料と剤形の選択肢が絞りやすくなります。
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よくある質問(FAQ)
マグネシウムの栄養機能食品の基準は、2026年に変わったのですか?
変わりました。2026年10月1日施行の改正で、上限値が300mgから320mgになり、機能の文言は3つの文に分かれました。2030年3月31日までに製造する食品は、改正前の基準によることもできます。
栄養機能食品のマグネシウムで、睡眠について書けますか?
書けません。国が決めた機能の文言は、骨や歯、エネルギー、血液循環に関するものだけです。決まった文言に言葉を付け足したり、言い換えたりすることも認められていません。
マグネシウムは睡眠に役立つと研究で分かっていますか?
2026年の系統的レビューは、結果が一貫せず、根拠の確実性は低いか非常に低いと評価しています。2025年の試験では小さな差が出ましたが、特定の原料と量による4週間の結果です。
なぜ注意事項に軟便のことが書かれているのですか?
マグネシウムを多くとると、軟便(下痢)になることがあるためです。栄養機能食品のマグネシウムでは、軟便と、乳幼児・小児は摂取を避ける旨を含む注意事項を、決められた文言のまま表示します。
マグネシウムの原料は、何を選べばよいですか?
1日の量と剤形で決まります。マグネシウムの割合が高い原料は粒を小さくしやすく、割合が低い原料は粒数が増えます。味や溶けやすさも違うため、試作で確かめながら工場と選ぶと確実です。
参考
- Lopresti AL, et al. “Magnesium Supplementation for Sleep in Adults: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials”, Journal of Dietary Supplements 2026, PMID 42661485, doi 10.1080/19390211.2026.2719670
- Schuster J, et al. “Magnesium Bisglycinate Supplementation in Healthy Adults Reporting Poor Sleep: A Randomized, Placebo-Controlled Trial”, Nature and Science of Sleep 2025, PMID 40918053, PMC12412596, doi 10.2147/NSS.S524348
- 消費者庁「食品表示基準」別表第9~別表第21(令和8年10月1日内閣府令第89号による改正後) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/
- 消費者庁「知っていますか?栄養機能食品」(令和8年10月) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_nutrient_function_claims/
- 消費者庁食品表示課「栄養機能食品に関する食品表示基準の一部改正について」(消費者委員会食品表示部会 令和8年8月6日 資料2)
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条/健康増進法 第65条(e-Gov法令検索)
(2026年10月12日確認)